八戸市医師会禁煙宣言(案) − タバコのない社会を目指して −(2004.10.05版)

試案作成 くば小児科クリニック 久芳康朗

 八戸市医師会は、地域における医療の専門家集団として、タバコの害から市民の健康と生命を守り、喫煙率を低下させてタバコ病による死亡を減少させ、タバコのない社会づくり1) を推進するために積極的かつ包括的な禁煙活動を行います。

1. 医師会員およびその医療機関に対し

1-1 すべての医療機関の全面禁煙(敷地内禁煙)を強く促進する
1-2 会員医師および医療関係者の禁煙を推進し、喫煙率の継続的な調査を行う
1-3 講習会の開催等により禁煙指導者を育成し、医学的な禁煙支援の普及をはかる
1-4 医師会関連施設および講演会、懇親会等はすべて全面禁煙とする

2. 教育委員会および学校現場と連携しながら

2-1 すべての小学校において、防煙教育(喫煙予防教育)を実施する
2-2 幼児期から青年期に至る、継続的な防煙教育の態勢づくりに努める
2-3 すべての学校における敷地内禁煙を早急に実現させる
2-4 未成年の喫煙率の継続的な調査を実施する
2-5 屋外タバコ自動販売機の撤去やタバコ税大幅増税の要請などを含む、包括的な未成年の喫煙予防対策を、関係諸団体と連携しながら推し進める

3. 関係医療団体、市民団体、行政、地域社会、メディア等と連携しながら

3-1 喫煙および受動喫煙によるタバコの有害性や、タバコ問題の真実についての正しい知識を広く市民に普及啓発する
3-2 受動喫煙による健康被害から市民を守るために、公共施設や飲食店、職場、路上などにおける健康増進法の遵守を促す
3-3 自治体や議会に対し、タバコ抑制のために必要な諸施策を提言する
3-4 会員は地域のオピニオンリーダーとして、地域社会の中で規範となって禁煙を推進する

【趣旨】

1. 医師会員およびその医療機関に対し
 1-1 すべての医療機関の全面禁煙(敷地内禁煙)を強く促進する


 「禁煙推進に関する日本医師会宣言(禁煙日医宣言)」4) にも明記されているように、市民の健康を守り病気を治療する場である医療機関は、完全分煙ではなお不十分であり、全面禁煙でなくてはならない3) 5) 。これを実現するために、医師会としてプロジェクトチームをつくり、会員に対して広報、教育、調査活動を行い、禁煙医療機関のリストを市民に公表し、その他必要な対策を行う2)

 1-2 会員医師および医療関係者の禁煙を推進し、喫煙率の継続的な調査を行う

 医師は市民の健康を守る医療人としての倫理的立場から、社会の規範となってタバコの害を伝え、自らが喫煙しないという姿勢を強くアピールすべきであり、また、そうしなくてはならない3)
 会員医師の喫煙率を定期的に調査することは、次のような側面を持っている。1) もし医師の喫煙率が低ければ、医師会をモデルとして一般の人々にアピールできる。2) もし医師の喫煙率が高ければ、この問題解決が優先されるべきである2)。その結果はマスコミやホームページに公表して市民に広く知ってもらう。

 1-3 講習会の開催等により禁煙指導者を育成し、医学的な禁煙支援の普及をはかる

 日常診療で禁煙支援やニコチン置換療法(NRT)などの禁煙治療を行える医療機関を増やし、そのリストを市民に公表して、禁煙に踏み切りやすくするとともに、ニコチン依存症の治療が保険適応になって受診しやすくなるように働きかける。

 1-4 医師会関連施設および講演会、懇親会等はすべて全面禁煙とする

 医師会から助成を受けている分科会も、受動喫煙を防止することはもとより、医師の喫煙する姿が市民の目に触れることのないように、懇親会場やロビーなども含めて全面禁煙とすべきである。会議や講演会が禁煙であるのに、アルコールが入れば喫煙が許可されるなどということの根拠はどこにもない。
 医師会関連施設には、医師会館だけでなく急病診療所、健診センター、検査センター、看護学校、交流センターも含まれる。

2. 教育委員会および学校現場と連携しながら
 2-1 すべての小学校において、防煙教育(喫煙予防教育)を実施する


 必ずしもすべての学校医が直接防煙教育を行う必要はないが、学校歯科医・薬剤師・養護教諭と共に防煙教育プログラムに積極的に参画し、すべての児童が小学校低学年から防煙教育を受けられるよう努める。

 2-2 幼児期から青年期に至る、継続的な防煙教育の態勢づくりに努める

 現在、喫煙開始年齢が中学生から小学校高学年、そして低学年へと低下している事実を深刻に受け止め、幼児期から始まり青年期に至る、継続的かつ発達段階に応じた防煙教育の必要性が高まっており、医師会としてもこれに積極的に参画し、助言指導を行う。

 2-3 すべての学校における敷地内禁煙を早急に実現させる

 八戸市ではすでに市立小中学校および県立高校の敷地内禁煙が実現したが、近隣町村や私立学校、大学・短大、専門学校、保育園・幼稚園・託児所など全ての保育・教育機関における敷地内禁煙を早急に実現させるために関係各方面に要請を行う。特にタバコ耕作地帯における学校禁煙化が遅れている現状に対する取り組みに力を入れる。

 2-4 未成年の喫煙率の継続的な調査を実施する

 「健康あおもり21」に定められた未成年の喫煙率ゼロ%を達成するためには、喫煙率の継続的な調査が必須であり、これなくして有効な対策の実施とその評価はあり得ない。

 2-5 屋外タバコ自動販売機の撤去やタバコ税大幅増税の要請などを含む、包括的な未成年の喫煙予防対策を、関係諸団体と連携しながら推し進める

 未成年の喫煙予防対策は防煙教育や学校の禁煙化だけでは達成不可能で、地域全体、社会全体で、子どもたちが毎日の生活でタバコを目にすることのない無煙社会を築いていかなくてはいけない。特に未成年が容易にタバコを入手できる屋外タバコ自動販売機の存在と、諸外国と比較して安すぎるタバコ税の問題は未成年の喫煙予防の大きな障害になっていて、タバコ規制枠組条約(平成16年批准)にも対策の必要性が明記されている。

3. 関係医療団体、市民団体、行政、地域社会、メディア等と連携しながら
 3-1 喫煙および受動喫煙によるタバコの有害性や、タバコ問題の真実についての正しい知識を広く市民に普及啓発する


 関係団体とは、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、県・保健所、市町村、教育委員会、市民団体(青森県タバコ問題懇談会など)、町内会などであり、中でもメディアの果たす役割は重要で、メディアを通じた広報・啓蒙活動に力を入れるべきである。逆に TV や映画などにおける喫煙シーンやタバコ会社のイメージアップ広告や市民運動への助成には厳しい監視の目を向けていかなくてはいけない。

 3-2 受動喫煙による健康被害から市民を守るために、公共施設や飲食店、職場、路上などにおける健康増進法の遵守を促す

 健康増進法に定められた受動喫煙防止という最低限の義務すら多くの施設で守られていない現状に対し、医師会としても、市民の健康を守り無煙社会を作るために、関係諸方面に対して積極的な働きかけを行う。
 路上喫煙禁止条例の制定に向けて働きかけを行う。

 3-3 自治体や議会に対し、タバコ抑制のために必要な諸施策を提言する

 首長や国会議員、地方議員、自治体職員などへのタバコ問題の説明と提言を機会ある毎に積極的に行って理解を深めさせ、路上喫煙規制条例やタバコ自販機規制、タバコ税増税、タバコ農家転作の問題など、政治・行政の力が必要な分野における諸施策を推進させる。同時に、社会への説明と世論の喚起を促す。

 3-4 会員は地域のオピニオンリーダーとして、地域社会の中で規範となって禁煙を推進する

 住民健診や健康教室、地域の行事や町内会活動などを通じて、地域のかかりつけ医としてタバコの害について啓発活動を行うとともに、それぞれの会員医師が、タバコの害と自らが喫煙しないという姿勢を、地域社会の中で積極的に伝えていくべきである。

【参考資料】

  1. Tobacco Free Initiative (WHO) 日本語訳  http://www3.ocn.ne.jp/~muen/who-honyaku/tfizenbun.html
  2. 『医師とたばこ〜医師・医師会はいま何をすべきか』(デビッド・シンプソン著,日本医師会訳)第9・10章(HTML版)
      http://www.med.or.jp/nosmoke/
  3. 薗(石川) はじめ:喫煙者に医師の資格はない 健康増進のプロとして範を示せ.月刊ばんぶう.
      http://www.kahns.org/column/professional.html
  4. 禁煙推進に関する日本医師会宣言(禁煙日医宣言)  http://www.med.or.jp/nosmoke/kinensengen.html
  5. 奈良県医師会禁煙宣言  http://www.nara.med.or.jp/whats/kinen.html
  6. 沖縄県医師会禁煙宣言  http://www.okinawa.med.or.jp/kaihou/200404/029.html
  7. 福井県医師会禁煙推進宣言  http://www.fukui.med.or.jp/kinen_window.htm
  8. 鹿児島県医師会禁煙推進宣言  http://www.city.makurazaki.kagoshima.jp/life/li_kenko_bn0310.html
  9. 茨城県医師会禁煙推進宣言  http://www.ibaraki.med.or.jp/kenkou/kinen/
  10. 新居浜市医師会禁煙宣言  http://www.niihama-med.or.jp/Oohashi/kinensengen.html
  11. 那覇市医師会禁煙宣言  http://www.okinawa.med.or.jp/kaihou/200304/046.html
  12. 各学会の禁煙宣言一覧  http://www.hosp.go.jp/~sokayama/clinic/respi/kinen/kinen0.html

■ 禁煙推進に関する日本医師会宣言(禁煙日医宣言)

 喫煙は、がん・心臓病・肺気腫等の疾病の原因となるなど健康に悪影響を与えることが医学的にわかっている。また、受動喫煙についても健康被害があるとの研究結果が報告されている。
 日本医師会は、国民の健康を守るために、喫煙大国からの脱却をめざして、今後とも禁煙推進に向けて積極的に取り組んでいくこととし、ここに禁煙日医宣言を行う。

  1. 我々は、医師及び医療関係者の禁煙を推進する。
  2. 我々は、全国の病院・診療所及び医師会館の全館禁煙を推進する。
  3. 我々は、医学生に対するたばこと健康についての教育をより一層充実させる。
  4. 我々は、たばこの健康に及ぼす悪影響について、正しい知識を国民に普及啓発する。
     特に妊婦、未成年者に対しての喫煙防止を推進する。
  5. 我々は、あらゆる受動喫煙による健康被害から非喫煙者を守る。
  6. 我々は、たばこに依存性があることを踏まえて、禁煙希望者に対する医学的支援のより一層の充実を図る。
  7. 我々は、禁煙を推進するための諸施策について、政府等関係各方面への働きかけを行う。

■ 奈良県医師会禁煙宣言 ― たばこのない健康日本をめざして ―

  1. 医師及び医療関係者の禁煙を推進するとともに、医学生や看護学生に対する禁煙教育を推進します。
  2. 医療機関および医師会関連施設の全面禁煙を推進します。また、医師会が主催する会合はすべて禁煙とします。
  3. 受動喫煙による健康被害からたばこを吸わない人を守ります。
  4. たばこの有害性について、正しい知識を県民に普及啓発します。特に未成年者、妊婦に対して喫煙防止を推進します。
  5. 学校敷地内全面禁煙を教育委員会等に要請します。
  6. 喫煙防止教育や禁煙指導をおこなう医師を養成します。
  7. 禁煙を支援する医療機関の育成充実に努めます。
  8. 喫煙者に喫煙マナーの厳守を求めます。
  9. 禁煙を推進するため、自治体等関係各方面に働きかけを行います。

■ 沖縄県医師会禁煙宣言

  1. タバコは健康上極めて有害であるとの概念を普及させる。
  2. 医師及び医療関係者の禁煙を推進するとともに、医師会関連イベントや会議等の全面禁煙に邁進する。
  3. 県内の医療機関及び医師会関連施設内の禁煙を推進する。
  4. 非喫煙者を受動喫煙による健康被害から守る。
  5. 将来を担う若年者や妊婦に対し、医師会は禁煙キャンペーンを積極的に行う。
  6. 地区医師会は学校や職場における禁煙推進と受動喫煙の防止の指導を積極的に行う。
  7. 県医師会は自治体関係各方面に禁煙を推進する諸施策について積極的に働きかける。
  8. 医師会とその関連施設でのタバコ販売を中止しタバコ自販機の撤去を推奨する。
  9. 医師会関連イベントや研究方面でのタバコスポンサーを受けない。
  10. 県医師会は非喫煙をめざす社会環境整備を推進する。

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