書評『やめる禁煙、治す禁煙 − 意志の限界を薬や治療で補う』 薗(石川)はじめ 著(大月書店 1400円)

一読千金ライブラリー(青森県保険医新聞)掲載

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 はじめ先生は私のお師匠さんです。私自身、小児科医でタバコは吸わないし、喫煙者のまき散らす副流煙に悩まされ続けながら、タバコ問題に主体的に取り組もうと考えたことはなかったのですが、本紙に連載された「禁煙指導のすすめ」によってタバコ問題の真実と医師が禁煙を訴えていくことの重要性を教えられ、眼を見開かされたのでした。

 持ち前のパワーで青森県の禁煙運動をリードし、禁煙活動で結ばれて現在は神戸を基点に全国的に活躍されている薗(石川)はじめ先生の待望の著書が刊行されました。

 健康増進法の施行とタバコ税増税を機に、約350万人が禁煙するといわれています。「値上げを機にやめたい人へ―観念的な決意より科学的な治療を!」「タバコをやめたい、愛する大切な人にタバコをやめてほしいと思っている方たちに贈る最新の禁煙マニュアル」と書かれているように、タバコの害や依存性から始まり、意志に頼るだけでない科学的な禁煙の方法まで詳しく紹介されている優れた一般向けの禁煙ガイドになっています。

 しかし、この本は実は医療関係者にこそ読んでいただきたいのです。タバコ税の大幅増税による死亡者の減少、医療費削減、税収増加、未成年喫煙防止、税の逆進性解消という一石五鳥の効果は諸外国で実証済みにもかかわらず、医療政策に詳しい医師でも理解を示す人は多くありません。医療機関や学会の禁煙化に対して、医療者側から疑問の声が出てくることも稀ではないのが現状です。

 オーストラリアの喫煙対策と対比させながら、日本の常識がいかに世界の非常識であるか、タバコ会社の犯罪性、精神科における禁煙指導、若者には美容やEDへの警告の方が効果的なことなど、実践に役立つ豊富な知識と経験が紹介されており、最新情報を得るためのネット上のリソースも掲載されているなど、禁煙指導の入門書として活用することもできます。

 はじめ先生を始めとする先駆者の努力により禁煙の動きは奔流となりました。全ての医療関係者がここに書かれた真実を知り常識を分かち合うことができれば、無煙社会の実現も夢ではありません。

久芳 康朗(八戸市・医科)

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