東奥日報のタバコ業界擁護記事に抗議

◎ 問題の記事(2002/7/12東奥日報夕刊)
- この記事はWEBには掲載されなかったため、記事引用の5原則に則って全文を引用させていただいたことをおことわりします -

ひと・十字路  語る
「喫煙マナーの向上を」
愛煙家で組織する「青森ユートリーの会」副会長
H. R.さん(50)

 会発足は二〇〇一年九月。「今、タバコを吸う人間は肩身が狭い。しかし、喫煙はそれほど悪なのでしょうか。個々人の嗜好品であるタバコを他人に迷惑を掛けずに、心行くまで楽しむために、何ができるのかを模索する仲間たちが集まった」。名前はユートリーの会。「節度ある喫煙、ゆとりある喫煙を目指して、この名前にした。タバコは気持ちを落ち着けるとともに、気分をリフレッシュさせる」と話す。

 それだけに喫煙マナーには気を遣っている。「吸ってはいけない所、小さな子どもがいる所、灰皿がない所などでは、常識で考えれば分かるはず。吸い殻のポイ捨ても見ていて腹が立つ。また、隣の人が煙を嫌がったら、すぐタバコの火を消すべき」と強調する。

 青森市内の大型ショッピングセンター内の酒・タバコ店の副店長を務めていたが、昨年から同市新町にあるコンビニエンスストアの副店長。「タバコは二十三歳ころから吸い始めた。ただ、惰性では吸わない。本当に吸いたい時に吸うことにしている。もう一つ、仕事中は吸わない」と決めている。

 同会の活動を広く知ってもらい、意義のあるものにするため、NPO(民間非営利団体)の承認を求めている。本年度は、ポイ捨て防止呼び掛け運動、街の清掃、携帯灰皿の配布、未成年者喫煙防止活動などの事業を展開する。「愛煙家の権利擁護と、喫煙者のマナー向上へ草の根運動をしていきたい」 (青森市緑一丁目)

◎ 東奥日報への抗議メール(2002/7/17)

Subject: 12日夕刊の喫煙マナーの記事について
Date: Wed, 17 Jul 2002 12:13:29 +0900

東奥日報編集部長殿
記者の皆様

前略

 貴紙を毎日愛読している者で、小児科医の久芳(くば)と申します。最近、八戸の担当記者さんともおつきあいさせていただいており、5月には県保険医協会との懇談会、6月には八戸で開催された喫煙問題を考える会にもご出席いただき、紙面でも大きく取り上げていただき感謝しております。また、以前社会部・行方知代記者の書かれた職場分煙の記事について間接的に意見を述べさせていただいた際に、お聞き届けいただいたと伺っております。そのような中で、喫煙の害に対する認識と、禁煙・分煙をすすめていく際に是非とも必要な報道機関のご理解ご協力をいただけていると感じておりました。

 しかしながら、12日夕刊の「喫煙マナーの向上を」と題する下記の記事を読んだ時に、心の中に暗雲が生じ貴社編集部としての見識について疑念を抱かざるを得ませんでした(取材した記者さん個人の問題ではないと思われます=この記者さんは問題意識を持たずにそのまま書いたのだろうと推測します)。

 このH氏の、個人としての活動についてとやかく言うつもりはありません。もちろん、それは個人としてではなく「タバコ販売業者」としてのものであることに疑いはありませんが。

 しかし、ここで問題にしているのは、このような活動について何の疑いも抱かずに言われたことをそのまま記事にして、あたかもタバコ業界のイメージアップ戦略の片棒を担いでいる貴紙のジャーナリズムとしての役割、あるいは社会的責任についてであります。

 もちろん、この活動の目的は、マナーアップ運動(実際のマナーアップではなく、運動そのもの)によってタバコのイメージ低下を防ぎ、その結果として『タバコの販売を減らさないこと』にあり、人々の健康を守ることでも子どもの喫煙を防ぐことでもありません。現実に我が国で毎年9万5000人(試算)もの人がタバコによる病で命を落としていることについての何らかの責任意識もありません。「未成年者喫煙防止活動」などと仰っていますが、現実に屋外タバコ自販機で子どもがタバコを購入している問題について、この方たちが実質的に販売の低下につながるような活動をしてくれるわけでもありません。なぜなら、大人になってからタバコを吸い始める人はごくごくわずかであり、未成年が一切タバコを吸わなくなれば業界が成り立たなくなるのは明白な事実だからです。

 ちなみに、このH氏の言っていることは2〜3行に一つくらい医学的な間違いを指摘することができ、その構図はタバコ業界が主張していることをそのまま口移しで言っているに過ぎません。例を挙げればきりがないのですが、例えば「タバコは気持ちを落ち着けるとともに、気分をリフレッシュさせる」という部分で(この主張は一般人に広く流布している大きな誤解であり二度とこのようなことを紙面に書いて欲しくないのですが)、これはニコチンが切れてその禁断症状が出てイライラしたりしているものが、喫煙により急速にニコチンが血中に吸収されて禁断症状がとれるためにそのように感じるに過ぎません。その証拠に、非喫煙者がタバコを吸ってもストレス解消になるどころか、気持ち悪くなったり頭痛がしたりすることからも明らかです。

 あるいは、灰皿のない所で吸ってはいけないと言っておきながら、一方で携帯灰皿を配布するなど、矛盾に満ちたものです。「隣の人が煙を嫌がったら、すぐタバコの火を消すべき」というのも、嫌がらなければ非喫煙者の隣りでも吸っても構わないのかということに繋がりますが、実際には会社の上司などに対してあからさまにタバコをやめてくれと言えないのが日本の社会です。正解はもちろん「正しい方法で分煙されて喫煙所であることが明示されている場所以外では、たとえ相手が喫煙者であっても、他の人のいる所ではタバコを吸ってはいけない」です。喫煙者であっても他人の喫煙を不快に感じるのが通常です。

 今回の記事は個人的にも大変残念に思いますが、全国紙でこのようにタバコ販売業者を擁護するような恥ずべき記事が紙面に載ることはまずありません(これは、皆さんが自分の目で確かめていただければわかることです)。地元のオピニオンリーダーである貴紙に対する期待は今後ますます一層高まりこそすれ減ずるものではありませんが、是非とも◆社内全体で◆喫煙の害やタバコ業界の戦略と報道機関の置かれている立場についての意識を共有していただき、疑わしきは行方さんのような専門の記者に確かめたり、専門家である私たちを使ってもらっても構いませんので、相手の言っていることをタレ流しするようなことだけは避けていただきたいと希望します。

 苦言を呈するばかりで申し訳ありませんが、今後ともよろしくお願いいたします。なお、記者さんの中にも喫煙されている方は多いかと思います。以前、東奥春秋で「哀煙家」さんの書かれた記事も拝見しましたが、私たちの目的は今回の記事に「肩身が狭い」と書かれているような喫煙者を非難しようとするものではなく(個々のマナー違反に対して指摘することは当然ありますが)、禁煙したいけれどやめられないという人たちに対し、まずは真実に気づいてもらい、禁煙の取り組みに対して手助けしてあげることにあります。結果として、一人でも多くの方に健康的な生活を送ってもらい、タバコのない社会をめざすのが目標となります(タバコ農家などの問題はここでは取り上げませんが別に論じる必要はあります)。新聞記者という社会的な意識の高い方々の中にも、それまでの個人個人の関わりの中で誤解や感情的なしこりがみられる場合があるかもしれませんが、ご理解をいただきご協力をよろしくお願いいたします。

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久芳 康朗 くば小児科クリニック
031-0823 青森県八戸市湊高台1-12-26
http://www.kuba.gr.jp/
空気のおいしい八戸のお店〜禁煙・分煙施設情報
http://www.kuba.gr.jp/care/muen/kinen_shisetsu.html
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◎ 東奥日報から社としての返事が来ましたが、下記のような簡単なものだけで記事の内容に関する見解もなく、もちろん紙面上での訂正も何らかの対応もありませんでした。(空白部分について興味のある方は何らかの方法でお読み下さい ^^;)
 つまり、社会的に問題のある記事は書きっぱなしのままで放置し、読者からの真摯な問いかけに対して「対応した」という形だけはとったものの、それ以上の誠意の感じられない返事でした。ということを皆さまに示すためにここに掲載して記録とし、後世の評価を待ちたいと思います。(2002/7/17、2003/1/7追記)

 久芳康朗様へ

 「12日夕刊の喫煙マナーの記事について」と題する長文のメールを拝受いたしました。
 当センターは読者・県民の皆様から寄せられたご意見やご要望、クレーム等を組織内で共有できるような手段を講じることも役目の一つとしております。
 この度の久芳様のご意見は、当社編集部門各部署および各記者に伝わるべく早速、措置を講じました。

 ご意見ありがとうございます。

           2002年7月17日

東奥日報社読者センター

◎ 追記(2002/12/26、2003/1/7)

 このページに関して興味ある進展(?)があったのですが、私としては自らに対する気持ちを含めてちょっと情けない思いにかられて真剣に対応する気力が失せております。ご理解いただけない部分もあったかと思われますので、誤解のないように一部に注を加えておきました。また、ネットにおける様々な問題については東奥日報の多くの方よりも熟知しているつもりであることを付け加えさせていただき、この問題については残念ながら終わりとせざるを得ません(←つまり、今までは終わりにはしていなかったのですが、それもご理解いただけなかったようです)。このページについて、もし東奥日報に対する敵対行動としかとられなかったのだとしたら、自らの不徳の致すところとしか言いようがありません。どこをどう読んでも、東奥日報頑張ってという激励文にしか読めないと思ったんだけど…(笑)。

 それにしてもまあ、クレームがついたときの対応でその会社の本当の実力が出るんでしょうけどね、このページで記事を全文引用しなければコンテンツとして成り立たないということも、記事に対する抗議文の部分がメインであることも誰の目にも明らかなわけであり、また、抗議文を掲載するのにその社の許可を得る馬鹿もいないわけで、もし東奥日報の一部の人が、著作権を盾にして圧力をかければこのページ自体を抹消することができると考えたのだとしたら、そのような会社に勤める社員の皆さんに同情せざるを得ないですね。言論の問題について誰よりも敏感でなくてはいけない新聞社がこういうことをするんだから。

 東奥日報も社会の動きの中で変わっていかざるを得ないものと思われますが、数年後に心ある方がこのページをみて、さらにこのページに対してとった行動とその態度についてどのように評価されるのか、その時に教えいただければ幸いです。

 なお、最近の手のひらを返したような冬季アジア大会翼賛報道にもうんざりしてきたところで丁度良い機会でしたので、東奥日報の購読を止めさせていただいたことを付け加えておきます。今後とも医療問題などを通じて良好なおつき合いを続けていきたいと希望し、また、東奥日報の果たすべき役割とそれに対する期待をいささかも減ずるものではありませんが、購読中止の件ついては一読者の行使できる権利として当然のこととご理解いただけるものと存じます。当面、貴社に対して何らかの形でコミットすることは避けたいと思いますが、もしまた何かの機会がありましたら、この次はもう少し建設的な議論ができるようになることを期待しております。

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