■ くば小児科クリニック 院内報 1998年3月号


● 春はあけぼの

 今年の雪にはずいぶん悩まされましたが,もう3月,春がすぐそこまで来ていますね.春といえば花粉症の季節ですが,スギ花粉は県内では例年3月中旬から飛散がはじまり,4月上旬にピークに達するようです.花粉症の患者さんの場合,基本的には外出を避けたりマスクや眼鏡を使用する,外から帰ったら髪や上着をよくはたくなどの予防策が重要になりますが,毎年のように症状がひどくなる子の場合,飛散予想時期の2週間くらい前から抗アレルギー薬を服用するとある程度の効果が望めるようです.


● 熱が出たら...

 1年以上前にも同じタイトルで書いたことがあり,最初にお渡ししているパンフレットにも詳しく書いていますから,簡単にしておきます.今年もインフルエンザなどで熱が出たとか熱が下がらないというお電話をいただきましたが,ほとんどの方には翌日まで様子を見てもらって診察時間内に受診していただいてます.

 で,本題.熱が出たらどうするか.まず「熱が出たからどうしようか?」と思ってはいけません.熱が出たら「あっ熱が出たな」と思うこと.まずはそれで一段落.次は一般的な看病など(パンフレット参照).「熱が下がらない」「続いている」という場合,渡された熱のグラフをちゃんとつけてみて下さい.上がったり下がったりしているようでも,ピークを過ぎてきていれば一目でわかります.インフルエンザのように2回熱がでる場合もありますから,熱の出方だけが判断基準ではありません.「坐薬を使ってもすぐに上がってくる」というのは薬が切れただけで本質的な意味はありません.

 問題は経過が思わしくない(と思われる)場合の判断ですが,普通に看病したり処方された薬を飲んでいても症状が続く場合には,目安としては薬がなくなる日(悪いときはその前でも)に受診してみて下さい.処方日数は大体の経過を予測して決めています.具合の悪い場合は短めに,順調な場合は長めにしたり「なくなったらやめても良い」と言ってますのでそれを目安にして下さい.3か月未満の発熱など要注意の場合もあります.


● マーフィの法則(小児科診療編)

 全国の小児科医が作っている院内報をお互いに交換し合うネットワークがあるのですが,堺市の西垣正憲先生が書いた「マーフィの法則(小児科診療編)」が面白かったので,その一部を引用させてもらいます.

もう少し早く受診しての法則
 点滴や検査が必要で,時間がかかる患者は診察終了5分前に受診する

# これは本当にどの小児科医も実感としてわかりますね.うちでも具合が悪いときや検査したりする必要があるときには早めに受診するように言ってるつもりなのですが,11時55分になって予約なしで受診してそれから病院に電話して紹介したり...あるいは病院の方でもその時間になってから紹介されるということでお互いに大変だしこどもにとっても良いことはない.で,今まで何してたのと聞くと「朝まで苦しくて眠れなかったのがやっと寝てくれて今起きたところだったので...」とのお返事でガックリ.

良薬は口に苦しの法則
 飲みやすくなったといって新発売される薬は苦い
 飲み方を説明したパンフがついている薬は苦い
 そういう薬は,なめたときは甘いが,あとでだんだん苦くなる

# ハハハハハ…(と力のない笑い) まあ,そのとおりですね
  で,タイトル通り,こういう薬の方が良く効いてくれるわけで...

飲まない薬は効かないの法則
 ぜひ飲んでほしい薬のある子は,薬がきらいである
 薬を出す必要のない子は,薬が大好きである

# でもね,「薬を飲んでくれない子」というのはみんながみんな「薬が飲めない子」ではないんですよ....それに,飲めないときには誰に強制されても難しいでしょうけど,もし飲ませられる人がいるとすれば,それはお母さんしかいないのですから.


● インフォメーション

院内版感染症情報 〜1998年第08週(2/22-2/28)


               第45 46 47 48 49 50 51 52 53 01 02 03 04  05  06 07 08週
インフルエンザ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  5 42 146 131 53 20
感染性胃腸炎      6  6  7 11  8 20 13 23  3 18 14 13 16  15   7 12 13
水痘              2  2  1  4  7  3  3  6  2  4  5  4  4   5   8  6 12
突発性発疹        1  4  1  0  4  6  4  5  2  3  3  2  3   1   3  3  2
流行性耳下腺炎    7 13  8 10  5  6  7  5  7 11  0  3  4   2   2  1  2
乳児嘔吐下痢症    1  1  2  1  2  2  1  1  1  4  1  0  2   7   3  1  1
溶連菌感染症      0  1  2  4  3  3  7  3  0  0  0  2  0   2   0  0  0
手足口病          0  0  0  0  1  1  2  2  0  0  1  0  1   1   0  0  0
ウイルス性発疹症  1  1  2  0  1  0  0  0  0  0  0  1  0   0   0  0  0
異型肺炎          1  0  0  0  0  1  0  1  0  0  0  0  0   0   0  0  0

 インフルエンザA香港型が2月上旬に猛威をふるいましたが,中旬から下火となり,2月末にはほぼ終息したと考えられます.ここ数年シーズンの終わり頃にインフルエンザB型の流行がみられる年が続いていましたので,今年も注意が必要でしょう.今年は乳幼児や老人だけでなく,県内でも小学生の死亡例がみられました.来年以降もインフルエンザを決してあなどることのないよう,こういった苦い教訓は忘れないようにしましょう.
 その他にはごく一般的な風邪が少し.水痘の流行がまたぶり返してきたようです.おたふくかぜはごくわずか.ウイルス性胃腸炎はもう少し暖かくなったらおさまってくるでしょう.

○ 以前母乳とダイオキシンの話の中で環境ホルモン(内分泌撹乱物質)のことを少しとりあげましたが,環境ホルモンは他にも多数の物質が知られており,胎児期から生殖能力などに影響を及ぼしていることが知られています.「奪われし未来」(翔泳社)という本が一般向けとしてはよくまとめられていてお勧めできます.読み終わったら待合室に置いておくことにしますね.


発行 1998年3月4日 通巻第24号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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