■ くば小児科クリニック 院内報 1998年2月号


● 現在流行中のインフルエンザの症状はenburi

 3か月つづけてインフルエンザの話題ですが,1月中旬から今年の流行は始まっています.ほとんどの子は咽頭痛と頭痛で発症して全身倦怠感,咳,発熱と続き,この時期に腹痛や嘔吐を伴う場合もあります.高熱が丸2日ほど続いて,3日目には下がってくることが多いようです.熱のピークが過ぎてから,痰がからんだ咳がひどくなり,気管支炎に進展していく子が目立ってきました.乳児が感染すると時として重症になることがありますので注意が必要です.インフルエンザは熱性けいれんを引き起こしやすいので,以前におこしたことがある場合はけいれん予防の坐薬で予防した方が良いかもしれません.

 出される薬は対症療法でしかありませんので,まずはじっくり休んで少しずつ水分補給と栄養をとりながら,ゆっくり治ってくるのを待ちましょう.今のところこじれて入院するような子はほとんどありませんが,それでも良くなるまでに大体1週間はかかります.ウイルスの型はA香港型(H3N2)で,もちろん「新型インフルエンザ」ではありません.

 まだかかっていない人は,帰宅時の手洗いと紅茶や緑茶のうがいを励行しましょう.体調を整えて無理をせず,十分な睡眠と休養をとるようにしましょう.ワクチンの在庫はまだ少し残っています.大人や大きな子,昨年予防接種をした子などは,体の免疫が残っていますので,緊急の1回接種でもある程度の効果が期待できると言われています.


● ポケモン問題はどうなった?

 このごろ毎日のようにこどもをめぐる事件が起こっており,昨年末におきたTVアニメ「ポケットモンスター」による被害に関する報道は最近全くきかれなくなりました.レンタルビデオも再開になるようですが放送の方は自粛したままで,おそらく英国にならった規制がつくられてから再開になるものと思われます.八戸では週遅れの放映だったのが幸いしてほとんど被害はなかったのですが,一件落着となる前に一応押さえるべきところは押さえておきましょう.

 まず光そのものは刺激です.個人差がありますが「てんかん」でなくても激しく点滅する光刺激で嫌悪を催すことはあります.こどもの場合まだ脳の発達段階にあるため,光過敏性がより症状にあらわれやすいものと考えられます.

 光感受性発作は,画面のちらつき,図形の変化,反復する閃光などの刺激によって誘発される発作で,全身のけいれん発作などの症状を呈します.1981年にイギリスでTVゲームてんかん(space invader epilepsy)として報告されて以来注目されてきましたが,それ以前にも水てんかん(湖面に反射する太陽のキラキラする光)や火てんかん(たき火のぱちぱちと弾ける火)などの現象が知られていました.

 閃光刺激周波数は15〜20Hz(1秒間に15〜20回)で,今回のアニメもこれに合致しています.発生頻度は4000人に1人で,女性の方が多く,幼児・学童期が好発年齢ということで,まさにポケモン世代を狙った事件と言うことができます.

 この光感受性発作の他に,閃光刺激,素速く動く色模様,強烈な図形反転などの映像を長時間にわたって凝視していると,めまい,嘔気,冷汗,動悸などの徴候を自覚することがありますが,これらの症状が数分の間に消褪するのであれば,必ずしもてんかん発作とは言えません.

 診断のためには脳波検査が必要です.予防としては,テレビ画面から十分な距離をとる,部屋を明るくするなどの方法があり,発作を繰り返す場合は抗けいれん薬(デパケンなど)の服用が有効です.

 ポケモンは現代の子どもたちにとっての「アトム」や「ウルトラマン」なのです.子どもだけの視聴率は50%以上だったいうのですから,この問題の影響は無視できません.もちろんピカチュウが悪者なわけはなく,アニメの内容も優れたものだと思います.しかし,ポケモンに限らず最近のアニメが閃光などの刺激的な映像表現を多用するものになっていたことは問われなくてはいけないでしょう.ブームを作り出し煽り立てておいて,被害がでたから中止しますでは大人社会が子どもに対して無責任と言われても仕方がありません.早い時期に適切な結論が出ることが望まれます.


● インフォメーション

院内版感染症情報 〜1998年第04週(1/25-1/31)


               第41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 01 02 03 04週
インフルエンザ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  5 42
感染性胃腸炎      2  7  7  5  6  6  7 11  8 20 13 23  3 18 14 13 16
水痘              1  4  1  2  2  2  1  4  7  3  3  6  2  4  5  4  4
流行性耳下腺炎    6  3  7 10  7 13  8 10  5  6  7  5  7 11  0  3  4
突発性発疹        3  0  1  2  1  4  1  0  4  6  4  5  2  3  3  2  3
乳児嘔吐下痢症    0  0  2  1  1  1  2  1  2  2  1  1  1  4  1  0  2
手足口病          0  2  1  0  0  0  0  0  1  1  2  2  0  0  1  0  1
溶連菌感染症      0  1  0  3  0  1  2  4  3  3  7  3  0  0  0  2  0
ウイルス性発疹症  2  3  2  0  1  1  2  0  1  0  0  0  0  0  0  1  0
異型肺炎          0  1  0  1  1  0  0  0  0  1  0  1  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0

 今年は予想通り3学期が始まったらインフルエンザが流行しだし,1月末の時点でかなり蔓延してきています.このペースだと2月いっぱいはある程度の流行が続くものと思われます.ご注意下さい.そのほかには大きな変動はありませんが,2月に入って同じウイルス性胃腸炎でもロタウイルスによる下痢が続くタイプも増加が見込まれます.おたふくはこのまま下火でしょう.水痘・溶連菌感染症も相変わらず散見されています.

○ 予防接種情報

 小学校1年生の風疹の予防接種は7歳6か月(生後90か月)までとなっております.中学3年で未接種の方は3月までに受けるようにしましょう。

○ 待合室の新しい本

 「アルプスの少女ハイジ」「子連れDE Skip Vol.4 (1997)」

○ 先月も同じ事を書きましたが,9時台の予約の方が遅れて来院されますと,その後の方全てに影響してきます.早い時間の予約の方は遅れないように早めに家を出て受診されますようお願い致します.


発行 1998年2月4日 通巻第23号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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