■ くば小児科クリニック 院内報 1998年1月号


● 新年あけましておめでとうございます

 21世紀も目前になりました.昔はバラ色の未来に思われた21世紀も,最近は灰色と答える人が多いとききます.医療をとりまく環境も厳しさを増している中で,当院も春には2周年を迎えます.昨年は滞りなく診療できて喘息教室などの取り組みもあったものの,その他にはパッとした成果もなく終わった感があります.今年は3年目にむけて僅かながら新たな取り組みも始めていきたいと思っております(..まだここには書けませんが).

 最近,カルテやレセプト(診療報酬請求書)開示の話題がマスコミにのることが多くなってきました.当院でも開院当初よりその方向性を考えており,院内報やパンフレットによる情報提供もその一つと考えているのですが,小児科の場合,急性疾患が多くて症状や処方もその都度変化するため,慢性の定期処方が多いところと同じようにはいかないという面もあります.また,カルテを見せろと言われても,時間がなくて走り書きしているのでそのままでは読めないという問題もあります.そのへんがクリアできれば次に進めるのですが,当面はパンフレットと院内報を補助的に使いながら情報提供をしていくつもりです.ただし,薬の情報だけでもあれば違うと思いますので,今年から試しに処方箋を2枚お渡ししてみることにします.1枚はハンコを押していないので使えませんから,保存しておくようにしてみて下さい.しばらくの間実験的にやってみるつもりです.

○ 冬場を迎えてのお願い

 9時台の予約の方が遅れて来院されますと,その後の全ての方に影響してくることになります.早い時間の予約の方は遅れないように早めに家を出て受診されますようお願い致します.


● 冬に食中毒をおこすウイルス…小型球形ウイルス(SRSV)

 先日新聞に市内の飲食店でおきたカキが原因と思われる食中毒の記事が載っていました.それがこのSRSVです.食中毒といえば夏場に多く細菌性のものと考えがちですが,最近冬場に発生する食中毒の中にSRSVが原因の場合が多いとわかり,厚生省でも独立して分類するようになりました.

 実はこのSRSVは,晩秋から冬期にかけて保育園などの施設内や家族間で流行するウイルス性嘔吐下痢症の主な原因の一つで,1995年には大人も含めてかなりの流行を示しました.今冬も11月頃からある程度の流行がみられており,確かめられていませんがSRSVと考えています.

 潜伏期は1〜2日で,症状は嘔吐と下痢が主で発熱を伴うこともあり,多くは3日以内に回復して予後は良好なのですが,発症当日の症状が激しいのが特徴です.家庭でのケアは「下痢と嘔吐」に書いたとおりです.

 このウイルスが生ガキなどの生鮮食品を介して集団食中毒様下痢症を起こすこともある,というわけなのです.ウイルスはカキの体内で増殖するのではなく,大量の海水を取り込むことにより河川・海水中にあるウイルスが濃縮されるためと考えられています.

 それでは新鮮なカキを選べば大丈夫なのか知りたいだろうと思いますが,その点についての情報はほとんどなく,まだよくわかっていないようです.濃縮が原因ならば新鮮かどうかは関係ないと解釈できるのですが.加熱すればもちろん大丈夫ですけど.


● ワンポイントメモ「鼻血」

 鼻血は入学前くらいの子ではよく見られるものです.風邪でハナが出ている状況では普段より出やすくなっても不思議ではありません.また,風邪と関係なくても一度鼻血がでると同じ所から繰り返すことはよくあります.いずれも心配したり慌てたりせずにご家庭で対処して下さい.鼻血がでたら,まず前かがみになって坐らせて(横になるのは×),出ている方の小鼻を5分以上指でおさえます.殆どの鼻血はこれで止まるはずです.

 繰り返す鼻血で心配しなくてはいけないのは,歯茎や体の他の部位からも出血して止まりにくい場合や,通常の方法で止血できない動脈性の大量出血の場合などですが,いずれも非常に稀です.

 話がずれますが,手足や口の傷などで「血が止まらない」といって電話されてくる方がいますが,止まらないときは止まるまで押さえることが原則です.その後で傷を見て深いか浅いか確認して下さい.最初から深くて止まりそうにないときには,止血しながら直接外科系の医療機関を受診してください.


● インフォメーション

院内版感染症情報:第35週(8/24-8/30)〜第52週(12/22-12/27)


        1997年 第35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52週
感染性胃腸炎      6  2  5  3  6  5  2  7  7  5  6  6  7 11  8 20 13 23
水痘              1  1  0  2  0  2  1  4  1  2  2  2  1  4  7  3  3  6
流行性耳下腺炎    2  1  1  2  3  2  6  3  7 10  7 13  8 10  5  6  7  5
溶連菌感染症      0  0  0  1  1  0  0  1  0  3  0  1  2  4  3  3  7  3
突発性発疹        4  6  1  2  0  5  3  0  1  2  1  4  1  0  4  6  4  5
手足口病          0  2  0  0  0  0  0  2  1  0  0  0  0  0  1  1  2  2
乳児嘔吐下痢症    0  0  0  0  0  0  0  0  2  1  1  1  2  1  2  2  1  1
異型肺炎          0  1  2  0  0  0  0  1  0  1  1  0  0  0  0  1  0  1
ウイルス性発疹症  1  1  1  0  1  0  2  3  2  0  1  1  2  0  1  0  0  0
ヘルパンギーナ    2  1  0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0
咽頭結膜熱        1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹(様疾患)    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0

 12月末にかけてウイルス性胃腸炎が増加.一般的な風邪も増加傾向で,インフルエンザらしきものも散見され,新学期が始まったら要注意と思われます.水痘と溶連菌感染症も例年通りこの時期多めに推移しています.おたふくは冬休みを挟んでそろそろ下火になってほしいところです.

新型インフルエンザ情報の現時点でのまとめ

 香港で発生した新型インフルエンザ(A H5N1)のことは報道でご存じかと思いますが,12月末の情報をまとめると,鳥からの感染が主で人から人への感染性は非常に低いものと考えられます.鶏肉や卵を食べて感染することは考えられません.新型インフルエンザのワクチンはまだつくられていません.ひきつづき新しい情報があればお伝えすることにします.

○ 予防接種情報

 おたふくかぜは予約待ちの状況が続いており,12月にはかなり入荷しましたがまだ予約解消まで至ってません.インフルエンザの在庫は僅少.

○ 待合室の新しい本 「オズの魔法使い」


発行 1998年1月3日 通巻第22号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031 八戸市湊高台1丁目12-26
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