■ くば小児科クリニック 院内報 1997年10月号


● おねしょは何歳から心配すればいいの

 夜尿症(おねしょ)についてときどき相談されることがありますので,別にパンフレットをつくってまとめておきました(詳しくはそちらをご覧下さい).基本的に,入学前のおねしょはまだ心配いりません.その段階でおねしょをしない日が少しでもあれば,まず確実に治っていくと予想されます.毎日続いている場合は,おねしょをする時間を観察します.夜中早い時間におねしょをしてしまう場合は,治るまでにまだ月日がかかります.夜明けに近くなるほど,もうすぐ治っていきますよというサインです.おねしょの子をみていく上での三原則は「あせらず,おこらず,起こさず」です.小学校以上で,おねしょが毎晩1〜2回以上で時刻が早く,本人も心理的負担を感じている場合は治療を考慮しても良いでしょう.その場合,最初に夜間のオシッコの量や浸透圧(濃縮の度合い)などを測ってどういったタイプかをまず判断します.大きくわけて,夜間の尿量が多く浸透圧が低いタイプ,膀胱が小さいタイプ,両者の混合型にわかれます.薬の治療の前に,夕方からの水分を制限したり,昼間排尿をガマンして膀胱を大きくする訓練などを開始します.年長児では心理的要因が加わって治りにくくなっている場合がありますので少し注意が必要です.


● どうしたら泣かないで診察できるかな? 
 ・・・診察のしかた(確認編・その2)・・・

 先月号は,小さい子の場合お母さんが直接安心させるように働きかけたり診察や押さえに協力してもらえると上手く行くかも,という話でした.

○ 3−4歳を過ぎて口を開けるのを極端に嫌がる場合

 基本的に医者にかかるとこわいことをされるという先入観が固まってしまっていることが多いようです.何度か通ってこわいところではないことを身を持って体験してもらうのが一番なのですが,その場合,家に帰ってから機嫌のいいときに「今日は大丈夫だったね」と再確認して,次も痛いことをしないから泣かないようにお約束してみましょう.最初のうちはちょっとしたご褒美も良いかもしれません.

 以前に無理矢理舌を押さえつけられて吐きそうになったり苦しくなったことがあるのかもしれません.このくらいの年を過ぎると,上手くやれば舌を押さえないでものどを見ることができるようになってきます.私の方でも,舌圧子を使わないと本人に約束して嫌がることはしないようにしますので,必ずお家で鏡を見ながら(できればのどの奥をライトで照らしながら),「アー」と声を出してどうすればのどがちゃんとみえるのか練習してくるようにして下さい.

○ おさえ方の注意

 ダラダラと長く抑えられたり,中途半端な力で押さえて肝心なときに体が下にずれたりして何回もやり直しになったりするより,その瞬間だけきっちり押さえて良く見えるように協力してもらえれば,結局本人も嫌な思いをするのが短い時間ですむのです.可哀想だからと手加減すると,かえって何度も苦しい思いをすることになります.

○ふだんからこんな心がけをお願いします

 子どもに対してネガティブな発想を植えつけるような言動には気をつけて下さいね.警察は「悪いことをしたら捕まるところ」ではなく「悪い人を捕まえてくれるところ」,病院は「病気のときに痛い思いをするところ」ではなく「病気のときにみてもらったり病気にならないようにしてくれるところ」といったように,同じことであってもポジティブな側面から子どもに話してあげて下さい.「待合室におもちゃがいっぱいあって遊べるところ」でも構いませんので.


● インフォメーション

○ 二種混合の事故報道について

 9月24日付の新聞で,5月に群馬県で2歳の女の子が二種混合を接種した3日後にけいれんによる呼吸不全で死亡し,調査によって予防接種との因果関係が「否定できない」という報告が出たことが報道されました.これを受けて26日より該当の武田の"H034"というロットのワクチンが自主回収されましたが,これは製品に特に問題はみつからなかったものの念のための処置という説明でした.当院や他の市内の医療機関では9月から始まった二種混合の接種で"H033"というロットが使われておりましたが,既に接種された方は今から心配する必要はありません.しかし,これから接種される方で心配される親御さんもいるかと考えられ,それまで入っていた情報から総合的に判断して,9月29日は接種を見合わせて10月より他のメーカーに変更して接種を再開することにしました.予防接種とこういった事故との因果関係がはっきりと証明できることは多くないのですが,少しでも可能性があれば「疑わしきは救済,回収」という事になります.その辺をご理解いただいた上で,動揺せずに接種をすすめるように判断していただければと思います.この件についてのより詳しい経緯と判断についてはホームページに掲載しておきました.

予防接種のページ

院内版感染症情報:第26週(6/22-6/28)〜第39週(9/21-9/27)


	        1997年 第26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39週
	感染性胃腸炎      1  7  6  5  3  2 11  5  4  6  2  5  3  6
	流行性耳下腺炎    2  0  2  3  1  2  6  2  2  2  1  1  2  3
	溶連菌感染症      1  2  1  4  0  3  3  0  0  0  0  0  1  1
	ウイルス性発疹症  2  1  1  1  1  1  1  0  2  1  1  1  0  1
	突発性発疹        3  3  3  3  0  3  3  2  4  4  6  1  2  0
	水痘              3  2  0  1  0  0  0  0  0  1  1  0  2  0
	異型肺炎          0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  1  2  0  0
	手足口病          2  5  9  8  3  3  4  1  4  0  2  0  0  0
	ヘルパンギーナ    8 13 14  8  5  6  4  0  1  2  1  0  0  0
	咽頭結膜熱        0  0  0  1  0  2  0  0  0  1  0  0  0  0
	麻疹(様疾患)    0  0  0  3  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0
	伝染性紅斑        0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
 9月は咳の風邪,ノドと熱の風邪が少しずつ流行りだしてきました.咳の風邪の中には年長児のマイコプラズマも含まれていると予想されます.おたふくかぜの流行は相変わらずだらだらと続いておりまだ注意が必要のようです.水痘も散見されるようになりました.

○ 新しいパンフレット:「夜尿症(おねしょ)」

○ 待合室の新しい本:世界の名作「ピーターパン」(毎月入荷予定)


発行 1997年10月1日 通巻第19号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031 八戸市湊高台1丁目12-26
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