■ くば小児科クリニック 院内報 1997年11月号


● インフルエンザを予防するには

 いよいよ本格的な冬がやってきます.昨年のインフルエンザの流行で老人の死亡例が増加して社会的問題になったことはまだ記憶に新しいところだと思いますが,小児でもインフルエンザの流行に一致して脳炎や脳症で亡くなった方や肺炎などで入院した方は増加していました.

 インフルエンザの予防は,普通の風邪と同様で,人混みに出ない,帰ったら手洗いとうがい(紅茶うがいが有効),疲れをためずにゆっくりと休む,普段から体を鍛えて抵抗力を高めておく,などですが,いずれもそれだけで防ぎきれると言うほどではありません.

 インフルエンザワクチンは,発症を阻止する力は弱いのですが,かかっても重症化することを防ぐことはできます.副反応の頻度は他の不活性化ワクチン(三種混合や日本脳炎など)と同等で特別リスクが高いわけではありません.現在,任意接種(希望者のみ)となっておりますので全員にお勧めするわけではありませんが,インフルエンザに罹ると悪くなるような基礎疾患(喘息やその他の慢性疾患)を持っているような方や,受験生,医療関係者や保育・学校関係者などは接種しておくことが勧められます.また,当院では大人の診察や予防接種は通常は行っていないのですが,インフルエンザの予防接種を施行している医療機関は多くないと思いますので,患者さんのご家族に限り当院でも接種を行うことにします.

 なお,鼻に噴霧するタイプの新しいインフルエンザワクチンが現在治験中で,ここ数年の間には実用化される見込みです.そうなれば今のワクチンよりも効果が高くかつ注射の痛みを伴わないですむことになるわけで,期待が高まります.ただし,それまでの間は次善の策として現在のワクチンを接種していきますので,しばらくガマンして下さいね.

 ワクチンは1〜4週の間隔をあけて2回接種します.11月から接種を開始しますので,できれば12月中に2回終わらせておくようにしましょう.ワクチンは毎年の流行の予想にあわせて変化しており,昨年受けた方も今年の流行には効果はありませんので,必要なら受け直すことになります.

予防接種のページ


● 余談ですが,O脚のお話し...

 先日,急病診療所で医学雑誌をパラパラとめくっていたらこんな記事が目につきました.曰く,O脚は乳児を早く歩かせようとする習慣がある日本と中南米に多く,歩行器を使って無理に歩かせることはO脚を助長するだけである.また,テレビを見るときなどに特に女の子で足を外に出して座るいわゆる「女の子座り」を長い時間続けるとO脚が助長してみえることになるのだそうです.歩行器は転んでケガをすることも多く百害あって一利なしですね.ちなみに,乳児は生理的にO脚で,その後4歳頃にかけてむしろX脚の傾向が強くなり,5−6歳でほぼ成人と同じ程度(ごく軽度にX脚)になります.強度のO脚の治療(矯正)は2−6歳までが限度で,この時期を過ぎると手術が必要になるそうです.


● お肌はもう冬に突入!

 このところ寒くなって乾燥してきたら,とたんに乾燥肌の子のお肌のザラザラが目立つようになりました.夏のあいだは保湿剤もいらなかった子も,1年中そう上手くはいかないみたいです.特に八戸は冬の乾燥がキツイので,これからの季節は手を抜かずに,最低でも朝晩2回の保湿剤のスキンケアを欠かさないようにしましょう.朝は時間がなくてとおっしゃる方も,お母さんのお化粧にかける時間の半分の時間で十分だと思いますので,お子さんのお肌も可愛がって下さいね.


● インフォメーション

○ 二種混合その後

 太田市の死亡例については経過を詳しく検討した方の話も聞きましたが,やはり医学的には因果関係は非常に低いけれども,接種後3日と時間的に離れていないため可能性として否定はできず,疑わしきは救済して患者の利益にという方向で決まったということでした(先月号でお伝えしたとおりです).11月いっぱいは接種を行っておりますので,小学6年生の子は忘れずに接種するようにしましょう.

予防接種のページ

院内版感染症情報:第26週(6/22-6/28)〜第44週(10/26-11/1)


        1997年   26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44
流行性耳下腺炎    2  0  2  3  1  2  6  2  2  2  1  1  2  3  2  6  3  7 10
感染性胃腸炎      1  7  6  5  3  2 11  5  4  6  2  5  3  6  5  2  7  7  5
溶連菌感染症      1  2  1  4  0  3  3  0  0  0  0  0  1  1  0  0  1  0  3
水痘              3  2  0  1  0  0  0  0  0  1  1  0  2  0  2  1  4  1  2
乳児嘔吐下痢症                                                       2  1
突発性発疹        3  3  3  3  0  3  3  2  4  4  6  1  2  0  5  3  0  1  1
異型肺炎          0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  1  2  0  0  0  0  1  0  1
ウイルス性発疹症  2  1  1  1  1  1  1  0  2  1  1  1  0  1  0  2  3  2  0
手足口病          2  5  9  8  3  3  4  1  4  0  2  0  0  0  0  0  2  1  0
ヘルパンギーナ    8 13 14  8  5  6  4  0  1  2  1  0  0  0  0  0  0  1  0
咽頭結膜熱        0  0  0  1  0  2  0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹(様疾患)    0  0  0  3  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0

  先月までだらだら流行が続いていたおたふくかぜが,ここ1か月でかなり増加してきています.ほとんどが保育園か幼稚園の子たちです.今年は全国的にみても1989年以降最大の発生になっているようです.MMRワクチンにより一時低下していたおたふくかぜの発生は,1991年以降増加に転じており,入学前の子たちはほとんど免疫がない状態にありますので格好の流行の場となっているようです.秋から冬にかけて流行ってくる感染性胃腸炎(乳児嘔吐下痢症)もこのところの寒さで増えてきました.溶連菌感染症も冬場に多くなりますが10月最終週にその兆しがみえてきました.水痘も増加傾向にありこれから先も要注意です.この統計には出てきませんが,一般的な咳とハナの風邪もやや増加傾向でしょうか.

○ 待合室の新しい本

 「不思議の国のアリス」

○ 喘息教室無事終了

 第3回は先月末に開催されました.ピークフローのモニタリングなどのちょっと進んだ管理のお話しでしたが,1回だけの開催のためちょっと詰め込みになりました.本年度はこれで終了の予定ですが,来年も未受講の患者さんが増えてきたら開催したいと思いますのでお待ち下さい.

気管支喘息


発行 1997年11月1日 通巻第20号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
kuba@qa2.so-net.or.jp
http://www02.so-net.or.jp/~kuba/


前号 次号 院内報トップ くば小児科ホームページ