2003年9月

青森県における「はしかゼロプロジェクト」アクションプラン

関係各位

青森県小児科医会理事 久芳 康朗(八戸市)

はじめに

 麻疹(はしか)は子どもだけでなく成人にとっても重要な感染症であり、有効なワクチンが存在するにもかかわらず接種率は80%前後と低迷し、全国で毎年のように流行が繰り返され、死亡例も少なからずみられています。その中で、新潟県の予防接種全県広域化(1995)、沖縄県と北海道のはしかゼロプロジェクト(2001)、はしかゼロ対策小児科医協議会の設立(2003)など現場の小児科医から強い意志を持って行政や保育関係者、マスコミなど社会全体を巻き込んで麻疹を撲滅しようという動きが全国に広がっています。今回、日本外来小児科学会(2003 仙台)において予防接種広域化ワークショップとはしかゼロ対策小児科医協議会に出席しましたので、はしかゼロ・メーリングリストにおける情報も含めてこれまでの全国の状況と対策について概要をまとめ、すでに先進地域から大きく後れをとっている青森県のはしかゼロ対策を軌道に乗せるための方策も検討してみました。
 項目の羅列に終わっていてわかりにくい部分もあるかもしれませんが、できるだけ直接説明したり議論したりする機会を持ちたいと思います。その中で、小児科医会や医師会、行政、保育関係者などのご意見をこのプランに反映し、現実の動きに繋げていきたいと考えています。
  1. 日本および青森県における麻疹流行と対策の現状 − 関係者が正しい認識の共有を

    1. 日本の麻疹流行と対策の現状:日本は麻疹の輸出国
      1. 「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」(国立感染症研究所・感染症情報センター 2002年10月)
        • 現在日本は、中国、インドその他の途上国とともに、第一段階である制圧 (control) 期に含まれている
        • オーストラリアなどのオセアニア諸国の多くは第二段階の集団発生予防 (outbreak prevention) 期に、またアメリカ大陸、ヨーロッパ、南アフリカや中近東の一部は、すでに排除 (elimination) 期としての対策が進んでいる
        • 日本の所属する西太平洋地域では、1996(平成8)年に策定された麻疹対策の地域計画を2001(平成13)年に改訂し、すべての国における麻疹伝播の阻止を目標としている
      2. WHOが区分している麻疹排除に向かう段階
        • 第一段階:制圧 (control) 期;麻疹は恒常的に発生しており、頻回〜時に流行が起こる状態、麻疹患者の発生、死亡の減少を目指す時期
        • 第二段階:集団発生予防 (outbreak prevention) 期;全体の発生を低く抑えつつ集団発生を防ぐことを目指す時期
        • 最終段階:排除 (elimination) 期;国内伝播はほぼなくなり、根絶 (eradication) に近い状態
      3. 国内の麻疹罹患者数
        • 麻疹罹患者数は10〜20万人(推定)、死亡は報告例だけで年間十数名以上、約80人という推定も
        • 全数調査がなされていないため、正確な発生数も死亡者数もわからない
      4. 麻疹ワクチンとは
        • 麻疹に対する特異的な治療法は存在しない
        • 麻疹流行の、そして麻疹ウイルスの感染・発病に対する確実で有効な予防手段は麻疹ワクチンのみ
        • 麻疹は天然痘やポリオと同様の根絶可能な疾患と考えられている
          1) ヒトを唯一の宿主とすること
          2) 効果の高いワクチンが開発されたこと
        • 麻疹患者数を非常に低いレベルに維持するには、新規ワクチン対象者の接種率を95%以上に保つべき
      5. 麻疹対策が徹底されず、流行が繰り返されている要因
        • 大阪府堺市における麻疹予防接種意識 (KAP: Knowledge Attitude Practice) 調査より
          1) 保育園通園児や母が若年である児の麻疹罹患率が高く、接種率が低かった
          2) 児の生誕順では早く生誕した児ほど早期に接種されていた
          3) 未接種の理由は「必要だが風邪などで遅れた」「単純にまだ受けていないだけ」が大半でワクチン否定派は全体の0.2%
        • 「日本の予防接種行政を考える」(五味晴美・日医総研客員研究員 2003年8月)
          1) 世界のスタンダードになっているワクチンの一部が未施行
          2) ワクチンの安全性、副反応に関する、迅速かつ適切な情報還元体制と救済制度が未整備
          3) 国民と医療従事者を対象にした、積極的かつ効果的な広報・教育活動が未実施
        • 「麻疹ワクチン接種指針」(高山直秀・平成14 年度厚生科学研究)
          国内外から関連はないと指摘されているにも関わらず、卵アレルギーと麻疹ワクチン接種後のアレルギー反応の関係を懸念する声もまだ根強く残っている
          このことが、地域での麻疹ワクチン未接種者の蓄積の一因となっている可能性がある
          卵アレルギーであっても殆ど全ての児は麻疹ワクチンを問題なく接種できる

    2. 青森県の流行状況とワクチン接種率
      1. 流行状況
      2. 麻疹ワクチン接種率(接種率に関する問題については後述)
        • 青森県 72.6%(H12年度):最低 26.4%(東北町)、最高 100%(百石町・平舘村)、全国 81.4%
        • 八戸市の累積接種率(2002年のサンプル調査):1歳半 76.7%、3歳 86.8%、接種完遂率 47.5%
        • むつ保健所管内の累積接種率(2002年全数調査):1歳半 49%(4〜55%)、3歳 87%(66〜95%)→市町村別の累積接種率グラフ

    3. 全国に広がるはしかゼロプロジェクト
      1. 沖縄県(2001)、北海道(2001)、宮崎県(2002)、石川県(2002)、大分県などで道・県小児科医会を中心にはしかゼロプロジェクトが展開されている
      2. はしかゼロ対策小児科医協議会設立(2003年4月) 代表:富樫武弘先生(市立札幌病院)
        • はしかゼロプロジェクト アピール 2003 in 仙台(2003年8月)
          1) 私たちは日本国内で、はしかの発生ゼロをめざす
          2) 私たちは1歳児のはしかワクチン接種率95%以上を目標にして、あらゆる活動をする
          3) 国および各都道府県は日本からはしかを排除するという強い意志を示して、有効な対策を推進していただきたい
        • 組織づくり:各県各地域に KEY PERSON をおく … 実際に動ける人を
        • 麻疹患者発生数全数調査(外来・入院)を開始する
        • 麻疹ワクチン接種率を調査する
        • 麻疹ワクチンを1歳で接種するように運動を展開する(できるだけ一つに絞って運動を展開し、軌道に乗ってきたら2回接種についても働きかける=異論はあるかと思うが)
        • メーリングリスト(hashika-0-project)を活用して全国の流行状況や対策について情報交換(管理者:沖縄県・町田孝先生)
      3. 日本医師会「麻疹の抜本的対策への提言」(五味晴美・日医総研ワーキングペーパー 2003年9月)
        • 先進国の多くが麻疹の制圧を達成しているなか、日本は数年おきに流行が起こり、世界的には「麻疹の輸出国」とみなされている
        • 事態を改善するには、(1) 麻疹ワクチン接種費用の完全無料化 (2) 接種機会を増加する方策の実施−などを通じて、諸外国に比べてきわめて低いワクチン接種率の向上を図ることが不可欠である
        • 麻疹制圧にむけての目標:「麻疹の現状と今後の麻疹対策について」の目標に年数を追加
           麻疹ワクチン接種率麻疹発生数死亡者数 
          短期的目標(5年以内)>95%5,0005発生・死亡者数を現在の5%以下に
          長期的目標(10年以内)>95%1000流行的発生をなくす elimination

      4. 厚生労働省「今後のポリオおよび麻しんの予防接種に関する提言」(2003年3月)
        • 現在、標準的な接種期間として生後12〜24か月とされているが、これを生後12〜15か月とし、保護者、関係者に広く周知をはかる
        • 実施主体である市区町村は、1歳6か月健診、3歳健診において接種もれ者のチェックを行い、もれ者へは関係者より保護者へ定期接種をつよく勧奨する
        • 入園(幼稚園、保育園)・就学時健診を利用した接種もれ者のチェックを行い、もれ者へは関係者より保護者へ定期接種をつよく勧奨する
        • より接種しやすいあらゆる環境づくりに努力すべきである。具体的には、接種漏れ者に対し、休日接種、もしくは予防接種週間の設定をするなど、予防接種機会の増大を図る
        • 麻しん対策の重要性について広く啓発活動をおこなう
      5. 日本小児科医会:2005年を目標に麻疹制圧運動を展開している(公衆衛生部)
        • 重症麻疹患者全国調査(2003):入院927名(2002年 2016名)、死亡2名(同 4名)…全数ではない
        • 麻疹撲滅推進ポスター配布、予防接種週間新設(3月第1週)
        • 「健やか親子21」第3部会・平成15年度活動目標『わが国からはしかをなくそう』
      6. 日本小児科学会・日本小児科医会・日本小児保健学会「麻疹の予防接種率向上と麻疹撲滅に関する要望書」(2001年7月)

  2. はしかゼロプロジェクトの実際

    1. 麻疹制圧のための対策のオブション:「麻疹の抜本的対策への提言」(五味晴美・日医総研WP)
      対策のカテゴリー対策
      アクセス・週末のワクチン外来(副反応への対応策の整備も必要)
      ・集団接種キャンペーン(現在の日本では受け入れられにくく現実性が乏しい)
      経済的負担・接種の無料化
      コミュニケーション・明確なリスクコミュニケーション
      ・マスメディアキャンペーン(多大な影響を及ぼすことが可能)
      ・医療従事者の教育キャンペーン
      予防接種救済制度・予防接種健康被害救済制度の適応期間の拡大
      サーベイランスシステム・全数報告制の導入
      ・1歳半、3歳時健診でのワクチン接種の有無のチェック
      ・就学時のワクチン接種の義務化(現在の日本では法的に不可能だが)
      麻疹ワクチン接種の時期と回数・接種時期を12-15か月と明確化
      ・2回接種導入(米国での導入の歴史と疫学データが有効性を証明)

    2. はしか0プロジェクト行動計画(沖縄) 太字は重点項目
      1. 接種勧奨
        • 広報紙活用、封筒等へのスローガン、ポスター・パンフ作成配布、広報番組等マスコミ活用、予防接種週間(はしか0キャンペーン週間)設定、母子手帳キャッチフレーズ、健診時の啓発、医療機関での啓発
      2. 未接種児対策
        • 1歳半健診等でチェック、保育所でのチェック、電話・文書での勧奨、母子(保健)推進員による訪問、入学前のチェック(県教育長へ協力依頼要請)
      3. 体制整備
        • 県内どこでも受けられる広域化(乗り入れ)、自己負担をなくす、流行時の0歳児への接種(2001年に3,755人に公費任意接種を実施)、いつでも実施できる体制、休日接種、患者発生時対応ガイドライン作成
      4. 研修
        • 医師の研修、市町村担当者等の研修、母子(保健)推進員の研修、保育士の研修、ワクチン取扱業者
      5. 調査
        • 保護者等実態把握調査、保育園・学校、各市町村の取り組み
      6. 情報ネットワークの構築
        • 有効なサーベイランスシステム(全例報告制度)、予防接種情報収集提供、学会等での情報提供
      7. その他
        • 優良市町村の表彰、知事・市町村長等要請、医師会予防接種委員会、担当者連絡会議、保育所入所診断書工夫

    3. 組織
      1. 県小児保健協会、小児科医会、小児科学会地方会、県医師会の四者が実施主体(沖縄)
      2. 小児の医療、保健、行政、保育所、母子保健、保護者、マスコミ等の関係者が結集(沖縄)
    4. 目標
      1. 2005年までに1歳児の麻疹接種率を95%以上にして、県内のはしか患者発生をゼロにする(沖縄)
    5. 予防接種率の把握
      1. 現在の方法は自治体により分母の設定がまちまちで比較調査の基礎資料にできない
      2. 重要なのは累積接種率曲線の立ち上がりの急峻さと完遂率(崎山:小児内科32:1444, 2000)
      3. 同年に出生した集団(birth cohort)ごとに接種率の算定を行うことは、ワクチン接種率を正確に把握するための第一歩(五味)
    6. 麻疹全数調査(外来・入院) …沖縄県、大分県、愛媛県、石川県、千葉市など
      1. 麻疹制圧には、その実態把握が不可欠
      2. 医療従事者の麻疹への認識を高める効果も
      3. 簡潔 simple で、感受性が高く sensitive、時期を逃さず timely、受け入れられる acceptable 方法を
        • FAXとE-mail (ML) の併用など
      4. 小児科のみならず、内科や皮膚科、耳鼻科など他科の参加が不可欠:小児科医会ではなく医師会全体で
      5. 全数調査の問題点
        • 疑い例が多い(沖縄)→事後確認、診断基準の作成、検査はIgMのみ
    7. 未接種者のチェック
      1. 1歳半・3歳健診、保育園・幼稚園入園、就学時健診におけるチェックと接種漏れ者への積極的勧奨
        • 1歳半・3歳健診における接種率調査:1歳半で83.4%(北海道)、87.4%(札幌市)、3歳で93.6%(北海道)、96.0%(札幌市)
      2. 予防接種台帳と健診台帳が一元化されたデータベースを用いた未接種児へのアプローチ(姫路市)
      3. 就学時健診については平成14年度(2002年)から調査票に予防接種歴を記入し「予防接種を受けていない者には予防接種を受けるように指導」することが明記された。(日本学校保健会発行のマニュアル p.48)
    8. 各々の医療機関における麻疹ワクチン接種のチェック(山口県)
      1. 麻疹(予防・罹患)というハンコをカルテの表紙に押す
      2. 未接種児をリストアップして接種勧奨して麻疹ワクチンの予約をし、3か月毎に再確認する、など
    9. 麻疹予防接種に自己負担がある自治体(全国67市町村)の無料化(2003年7月30日現在)
      • 宮城(11/69)、山形(14/44)、静岡(2/74)、滋賀(12/50)、山梨(1/64)、滋賀(12/50)、島根(3/59)、徳島(1/59)、香川(17/39)、熊本(1/94)、鹿児島(4/96)
    10. 教育・研修体制
      1. 教育・保育施設用および医療施設用「麻疹対応マニュアル」の作成(石川県)
      2. 関係者向け講演会・研修会の開催など
    11. 接種勧奨・広報戦略
      1. 上記沖縄県の例を参照(予算の範囲内でPR効果の高いものを−マスメディアの積極的利用)
      2. カレンダーのお誕生日に貼る「はしかワクチンシール」の配布(札幌市)
      3. ホームページなどを使った「1歳のお誕生日に麻疹ワクチンを!」キャンペーン
    12. 予防接種の個別化と広域化

  3. 予防接種の広域化

    1. 県域での広域的予防接種の現況(日本外来小児科学会WS資料より) ※下線は2003年より実施 (7)
      1. すでに実施しているところ (16)
        岩手、群馬埼玉新潟、石川、静岡、三重、奈良、兵庫、岡山、広島、山口香川高知、大分、宮崎
      2. 実施予定 (1)
        茨城
      3. 検討しているところ (20)
        秋田、千葉、東京、神奈川、山梨、長野、富山、福井、和歌山、京都、大阪、鳥取、徳島、愛媛、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、沖縄
      4. 予定なし (10)
        北海道、青森、山形、宮城、福島、栃木、愛知、岐阜、滋賀、島根

    2. 広域化の目的
      1. 「予防接種はかかりつけ医による個別接種を基本とする」(改正予防接種法)
        • しかし、現実には個別へ移行したところと集団のままのところに二極分化している
        • 個別化しても、接種が1年中可能なところとそうでないところがある
      2. これらを解決するためには
        • 集団接種を個別接種に
        • 個別接種を年中可能に、だけでは不十分で、
        • すべての人がかかりつけ医かあるいは基礎疾患の主治医により、安心して予防接種を受けられるようにするためには「予防接種の広域化」が必要
      3. 広域化の結果として
        • 接種機会の飛躍的な増加をもたらす
        • 予防接種率と質の向上につながる
        • はしかゼロ実現にむけて1歳半で接種率95%以上を達成するためには広域化が必須
      4. 広域化の必要性と都道府県の役割については、昭和51年と平成6年の厚生省通知に明記されている

    3. 広域化実現までのハードル
      1. 県医師会・県当局から市町村へのトップダウンで上手くいった(大分)
        • 個別に市町村と交渉しても、近隣での乗り入れはできても広域化にはつながらない
      2. システムは良くできているが県主導で参加市町村が頭打ちになった(広島)
      3. 県と市町村で押し付け合い
        • 定期接種のすべてを実施主体の各市町村まかせにするのではなく、県が積極的に市町村間の調整の役目を果たすよう働きかけていかねばならない(及川 馨・島根県)
      4. 大都市、政令指定都市とその他の地域で壁がある(東京、兵庫など)
      5. 医師会や小児科医会のトップの無理解、意識のギャップ
      6. 集団接種の方が接種率を維持できるという主張

    4. 実施上の問題点
      1. 依頼書が必要か?
        • 必要なし (11) >必要 (4)
      2. 接種料金は?
        • 居住地の料金 (11) >料金を統一 (3) >接種地の料金
      3. 契約は?
        • 県医師会長と市町村長 (11) >県医師会長と県知事>医療機関と市町村長>郡市医師会長と市町村長
      4. 請求・支払い事務は?
        • 医療機関から市町村 (7) >郡市医師会>県医師会>その他(国保連合会、予防接種情報センターなど)
      5. 予診票は?
        • 統一していない (10) >統一の予定 (4) >統一している (2)
      6. ワクチンの購入は?
        • 医療機関で購入 (14) >市町村で購入
      7. 広域化する予防接種の種類
        • DPT、麻疹、風疹、日脳(I期)+DT、日脳(II・III期)、BCG、インフルエンザ(高齢者)も
      8. 集団接種は?
        • 地域によって残すことが多い(個別の料金を新たに設定)

  4. 風疹の接種率低下と先天性風疹症候群(CRS)の懸念

    1. 2003年9月30日で延長された経過措置期間は終了し、再延長される見込みは今のところない
      1. 該当年齢:1979年4月2日から1987年10月1日の間に生まれた者(男女)=2003年9月現在15歳〜24歳
      2. 現在は幼児への接種により大きな流行は押さえられているが、この世代を中心とした未接種者の蓄積により、近い将来全国規模の風疹流行が危惧されている
      3. 2002年〜2003年に岡山県で風疹が流行し、先天性風疹症候群(CRS)の発生も確認されている
    2. 単純な経過措置期間の再延長では抗体保有率の大幅な上昇は見込めないため、高校・大学・専門学校・事業所などを通じた何らかの強力な勧奨手段が求められる
      1. はしかゼロ対策と並行して、全国の動きに歩調を合わせた風疹対策を地域でも行っていく必要がある
    3. 資料(国立感染症研究所・感染症情報センター)
      1. 風疹予防接種キャンペーン「風疹の予防接種を受けましょう」
      2. 風疹の現状と今後の流行対策について

  5. 青森県におけるはしかゼロ対策と予防接種広域化への道のり(案)

    1. 少子化対策、子育て支援としての予防接種
      1. どの都道府県、どの市町村に生まれても、子どもは等しく健康に育つ権利を持っている
        • 青森県の麻疹対策は、途上国並みかそれ以下である日本の中で、さらに最下位レベルにある
      2. 市町村の財政問題について
        • 国からの地方交付税算定の基準に予防接種は含まれているはず
        • 単純に医療費と予防接種の予算を比べても費用対効果は高く、もし一人後遺症を残したりや死亡したりすればお金の問題では済まされない
    2. 県小児科医会が中心となり、2つのプロジェクトを表裏一体のものとして取り組むことを確認
      1. はしかゼロプロジェクトをまず立ち上げて
      2. その中で予防接種広域化の実現への取り組みを
        • 「はしかゼロ」を実現するためには予防接種の広域化が絶対に必要であり、予防接種の広域化を進めるためには「はしかゼロ」を前面に押し立てていく必要がある
      3. できれば沖縄と同様に、県小児保健協会、小児科学会地方会(弘前大学)、県医師会の四者共同事業に
      4. 「はしかゼロ対策小児科医協議会」の KEY PERSONと、各地区の代表、各団体の代表などで構成される実務的な検討委員会の発足
    3. 小児科医会、医師会における意思統一と県や市町村への働きかけ(実際のルートや順序は各県ケースバイケース)
      1. 各地区小児科医会長→郡市医師会担当理事・会長
      2. 県小児科医会長→県医師会担当理事・会長
      3. 県小児科医会長、県医師会長→県健康福祉部長・知事
      4. 県→市町村予防接種行政担当者
      5. 郡市医師会担当理事・会長→市町村予防接種行政担当者
      6. 実務者レベルでの小児科医、行政担当者の情報交換、意思統一
    4. キャンペーン費用や研修会の開催、広域化準備などの予算を来年度から確保することを目指す(たとえ少額でも)
    5. プロジェクトへの保育、教育、保護者、マスコミ関係者などの参加と活動の展開
      1. 各地域におけるワーキンググループの立ち上げとPR
      2. マスメディアを利用したキャンペーンを
      3. 活動の継続と情報公開:接種率や患者数などを積極的に公表し、成果を競い合う
      4. ホームページの公開(青森県小児科医会HP内)
      5. その他詳細については、実際の検討作業にゆだねる
    6. 市町村合併への対応を
      1. 2005年1月〜3月を目標に県内市町村の合併準備が加速する
      2. システムが大きく変わるこの機会を逃したら全県広域化の実現は遠のく
        • 電算システムの改変などには予算が必要
      3. 情報収集・交換と実務レベルでの対策が急務(すでに各市町村担当者間の検討は進んでいるはず)
      4. 乳児BCGダイレクト接種への移行(2004年の予定)にあわせてBCGの個別接種化も検討・実施
      5. 同時に、北東北3県広域行政の流れの中で、県境付近での相互乗り入れも検討

    7. 活動目標の設定と達成度の評価
      1. 青森県における目標を年次毎に設定し達成度を評価
        • はしかゼロプロジェクトを結成し事業を検討(2003年度)、本格始動(2004年4月)
        • 予防接種週間におけるキャンペーンの実施と休日接種の試行(2004年3月)
        • 全市町村で1歳半健診と3歳健診における予防接種率の算定(2004年4月)
        • 麻疹患者全数調査の開始(2004年4月)
        • 一般・保護者向けの予防接種シンポジウムの開催(2004年度中に青森市で1回)
        • 保健・保育関係者向けの研修会を実施(2004年度中に青森市以外の3会場で各1回)
        • 全県で依頼書なしの広域化開始(2005年4月)
        • プロジェクト開始後5年間(〜2009年3月)で1歳児の麻疹接種率を95%以上にして、県内のはしか患者発生をゼロにする
      2. 達成すべき項目には含めないが継続的な取り組みと訴えが必要な項目(全国レベルでの取り組みが主体)
        • 麻疹流行時の乳児への公費任意接種の施行
        • 麻疹の2回接種およびMR(麻疹・風疹)ワクチンの導入
        • 麻疹ワクチン接種開始年齢の引き下げ(9か月)
      3. 2004年秋の東北北海道小児科医会連合会(八戸市)のメインテーマは「予防接種」
        • 北海道・岩手・新潟と比べて取り組みが遅れていた東北各県の今後1年間の成果を

  6. いま、求められることは ...

    1. 県民の意識を変える:21世紀になっても、 麻疹患者が発生するということは、 全く異常であると認識する。今まで麻疹を根絶することは困難だと思っていた小児科医が多かった。小児科医自身の意識を変えなければならない。(沖縄県・知念正雄)
    2. 日本国内の麻疹制圧にもっとも重要なことは、政治的、社会的意思であり、国民、医療従事者、政策決定者などの認識が高まることである。政治的、社会的意思を促すには、麻疹ワクチンの接種によるベネフィット(便益)とリスク(副作用など)を明確に国民に伝えることが必須である。また、地球上の麻疹を根絶 elimination、さらに撲滅 eradication しようと CDC や WHO が全力を傾けていることを、国内の政策決定者が認識する必要がある。(五味晴美・日医総研WP)
      →五味先生のインタビュー(JMA PRESS NETWORK)
    3. 日本のおける麻疹対策の現状について多くの小児科医は危機感を表明し続けてきましたが、ただ要請だけしても何も変わらなかったというのがこれまでの現実でした。しかし、現場の小児科医から自然発生的に生まれてきたここ2-3年の一連の動きを概括し、今回のはしかゼロ対策小児科医協議会やはしかゼロメーリングリストにおける熱気を帯びた議論を目の当たりにして、確実に「山は動いた」と感じました。麻疹を撲滅することは一つの地域や自治体だけでは不可能で、日本全国すべての地域であらゆる対策を同時に進めていく必要があり、青森県だけが取り残されることは許されません。やるべきことはすでに先進地域の実践例や専門家の提言に示されているので、これらを参考にしながら現実の動きに繋げて結果を出していくことが求められています。(久芳)

※このページは随時追加・更新しておりますので、ご意見・ご要望などがありましたらメールでお知らせ下さい。

戻る