■ くば小児科クリニック 院内報 2003年10月号
● 院内版感染症情報 〜2003年第41週(10/6-10/12)
2003年 第27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41週 インフルエンザ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 咽頭結膜熱 0 0 0 0 0 0 0 0 2 2 0 1 0 1 1 A群溶連菌咽頭炎 1 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 感染性胃腸炎 10 7 9 8 4 4 2 2 3 3 1 2 5 6 2 水痘 0 2 2 2 1 4 1 1 1 1 0 1 0 0 2 手足口病 3 2 3 2 6 3 2 2 2 3 5 4 5 4 1 伝染性紅斑 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 突発性発疹 2 1 0 1 0 1 1 0 2 1 1 0 0 0 1 風疹 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ヘルパンギーナ 0 2 0 2 0 2 1 0 0 1 1 0 1 0 0 麻疹 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 流行性耳下腺炎 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1☆ ウイルス性胃腸炎が増えてくる季節です
<ワンポイント・メモ〜RS ウイルスとは>
秋から冬にかけて流行る「咳が多くなる風邪」の原因には多くの病原体があり、年長児のマイコプラズマ、乳幼児の RS ウイルスによる細気管支炎など特徴的なものも含まれています。RS ウイルスは例年秋から冬にかけて流行りますが、その他の季節にもみられる重要なウイルスで、未熟児で肺に障害が残った子などのハイリスク児が罹ると重症化することがあり、そうでない子でも入院するほど悪くなったり、その後ゼーゼーしやすく喘息に進展することもあります。予防接種はありません(開発中止)。近年、診断キットや予防薬も開発されましたが、入院になった場合やハイリスク児に限って用いられます。外来では、咳や痰、気管支の薬に加えて、吸入などの一般的な治療を行いながら重症化してこないか注意深く見守っていきます。特に6か月未満の児の場合は、短い間隔でチェックしていかなくてはいけません。
● インフルエンザの予防接種が始まっています
接種は10月第2週から始まっており、今年は兄弟姉妹の二人以上同時接種割引も設けました。詳しくは別紙案内をご覧下さい。
○ どうしてSARS対策にインフルエンザの予防接種?
もちろん、インフルエンザの予防接種でSARSを防ぐことはできません。
まず、「この冬にSARSの再流行はあるのか?」という疑問に対する答えは、誰にもわかりません。しかし、人畜共通のウイルス(インフルエンザや日本脳炎など)で、これだけ大きな流行を起こした後に、全く消えてなくなるということはあり得ないというのはウイルス感染症の常識であり、WHOや各国政府も再流行に備えて対策をとっています。7月の終息宣言も、感染症対策の勝利という面だけでなく自然終息という色彩が強く、根絶は困難と考えられています。また、その後の調査で「ハクビシン」以外の動物の関与も示唆されており、いつ突発的な流行が起きても不思議ではありません。
一つだけ言えることは、再流行の初発地は日本ではない(おそらく中国かその周辺)ということです。しかし、流行がはっきりする前に日本にウイルスが持ち込まれる事態はあり得るでしょう。現在とられている対策は、国際的なウイルス監視網と迅速な情報伝達システム(構築済み)、感度と特異性の高い診断キットの開発普及(近日中)、治療薬の開発(未)、ワクチンの開発(数年はかかる)などです。WHOや厚生労働省が推奨し、私たちが唯一実行できることは、インフルエンザとの混合流行で予想される大混乱を避けるために、できるだけ多くの方にインフルエンザの予防接種をしていただくことなのです。
もちろん、インフルエンザの予防接種の第一の目的はインフルエンザの発症や重症化を防ぐことにあります。
● どうして混合診療に反対なのか? −医療や社会保障を今度こそきちんと考えてみましょう
「改革」という名の元に市場経済原理主義者たちは、医療の分野にも「株式会社の参入」「混合診療の導入」「医薬品のコンビニ販売」などの「規制緩和」を強硬に実現しようとしています。これに反対している医師会は、あたかも「患者さんのことを考えずに自分たちの利益を守ろうとしている抵抗勢力の権化」のように報道されていますが、本当にそうなのでしょうか。もしこれらが実行に移されたら国民が受ける医療はどうなるのでしょうか。
その答えは、「国民皆保険」が事実上崩壊し、お金持に余裕のある人だけが自費や任意保険で「追加オプション」の医療を受けられる社会になり、しかも公的な保険は確実に縮小されることになります。また、その「任意保険」も、本当にそれを必要とする慢性の病気を抱えている人は加入できなかったり高い保険料が課されることになり、実質的に「命の沙汰も金次第」の社会になっていくことになります。これは世界で唯一医療に市場経済を導入したアメリカの実態(失敗)をみれば、すぐにわかることなのです。
説明が不十分かもしれませんが、詳しくはこちらをご覧下さい。
「混合診療ってなに?〜混合診療の意味するものと危険性〜」
http://www.med.or.jp/nichikara/kongouqa/index.html
● はしかゼロの青森県へ、一歩前進
これまでの世界や国内での対策などを元に、はしか対策後進県・青森における「はしかゼロプロジェクト」発足に向けて私がまとめた提案が八戸市小児科医会において大筋で承認され、今後、県小児科医会、県医師会、そして県当局とも交渉し、来年からのスタートを目指して動き出します。
○ 10〜11月の休診日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定
10月は休診はなく暦通りの診療となります。急病診療所当番は10月13日 (祝) 昼、25日 (土) 夜の2回で、11月の当番は未定です。11月1日 (土) は午後2時15分まで、8日 (土) は午後休診となりますのでご了承下さい。次回の赤ちゃん教室は11月15日 (土) です。
「育児相談・子どもの心相談」(初回無料)、「禁煙外来」(ご家族だけでなく本人の喫煙についての相談も可)、いずれも水曜午後、土曜午後、平日夕方など時間をとって話せるときに相談可能です。(予約制)
発行 2003年10月13日 通巻第91号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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