■ くば小児科クリニック 院内報 2002年5・6月合併号


院内版感染症情報 〜2002年第23週(6/3-6/9)


	  2002年 第09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23週
インフルエンザ   52 25  7  4  1  1  1  1  0  8 20 32 12  3  1
A群溶連菌咽頭炎  2  0  0  5  1  4  3  4  2  1  4  1  0  0  0
感染性胃腸炎     18 17 17 14 14  9 13 13  8  2  6  3  5  8  8
水痘              0  2  1  0  0  0  0  0  1  0  0  1  1  2  2
手足口病          0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        1  1  3  3  1  3  1  2  0  0  0  1  1  2  2
突発性発疹        1  1  1  1  2  0  1  2  0  1  1  2  1  1  0
風疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  3  1  0  0  1  0  2  2
麻疹              0  0  0  0  0  0  2  1  1  0  2  4  1  2  0
流行性耳下腺炎    1  2  1  2  2  3  2  0  2  1  1  1  0  1  1

☆ インフルエンザB型が流行、麻疹(はしか)はピーク過ぎるも要注意

 先月号でお知らせした麻疹の流行は5月中もまだ継続しており、青森県は全国最悪の流行県になってしまいました。それと共に、インフルエンザのB型が4月下旬より中学校を皮切りに小学校、そして幼稚園・保育園へと流行の中心が移ってきているようです。2−3月に流行したA型に比べて脳炎・脳症などの合併症を起こすことは少ないとはいえ、発熱が数日つづき、咳や痰は1週間以上残ります。運動会や修学旅行などで無理をして悪くなり、修学旅行から帰されてきた子もみられている状況です。まずはしっかりお休みすることが一番で、無理は禁物です。

 4月の陽気で増えていたヘルパンギーナなどの夏かぜは、インフルエンザにおされたのか5月中は目立ちませんでしたが、6−7月は本来の流行シーズンです。手足口病もこれからでしょう。


goku.gif ● 第1回ぜんそく教室のお知らせ

 今年もぜんそく教室を開催することにしました。

 喘息の治療のためには、患者さん(お母さん方)自身が病気のことを知り、薬のことを知り、対処法を理解した上で長期にわたって取り組んでいくことが必要になります。一般の喘息患者さん向けに全2回、更に必要な方むけに1回を予定しております。内容は昨年までとほぼ同じですので、参加できなかった回がある方はその回だけ参加していただいても結構です。今年はそれぞれ1回ずつ開催の予定ですが、参加希望の方や都合の悪い方が多い場合には追加を考えたいと思います。

 なお、スペースが限られていますので、できれば予約確認の上ご出席下さい。

 第1回 喘息の基礎知識(一般コース) -- 6月22日(土)

  気管支喘息とは?  喘息の症状  治療の目標
  発作のときの対処  治療につかう薬の知識
  発作のないときの管理

 第2回 喘息児の日常生活 -- 8月
 第3回 喘息のセルフ・ケア -- 9月


● どうして麻疹がなくならないのか !?

 2か月前に書いたことの繰り返しになりますが、この流行を目の前にして何度書いても強調しすぎることはありません。

 麻疹は、根絶できるはずなのです。なのに何故流行が繰り返されているのか。なぜ青森県は全国最悪なのか。なぜ日本は先進国最悪の麻疹汚染国なのか。その理由はただ一つ。

 予防接種をしない人(子どもじゃなくて、親)がいるからです。

 それも、一人二人ではなく、全国どこにいっても、いっぱい。

 昨年大流行があり、子どもが何人も亡くなった沖縄では、小児科医有志を中心に「はしかゼロプロジェクト」が始まっています。対策は、あらゆる手段を用いて予防接種のもれを徹底的になくすことです。

 アメリカは2億以上の人口で、年間の患者数が100人以下(それも多くは他国からの輸入例)です。日本はその半分の人口ですが、患者数は10万人以上と言われています。その差は、予防接種です。

 なお、今回の流行でも予防接種をしたのにかかった子がいましたが、その多くは免疫はあったのに何年もたって弱くなっていたためと推測されます(その場合はあまり重症化しません)。これをなくすためには、諸外国のような2回接種を取り入れることと、麻疹を根絶させることしかないのですが、現在のような状況だと残念ながら防げないのです。

 八戸市では6月から10月までポリオ、ツ反・BCGの集団接種が入っていて他を組み込みにくいのですが(以前から改善を申し入れています)、何とかギリギリ4週間以上空いたところで麻疹を接種するようにして、接種が遅れないようにしましょう。保育園に通っている1歳以上の子は、麻疹を先にやってポリオは秋にまわした方が良いと思います。


● ツ反・BCGの報道について(第3報)

 先月号でも取り上げたのですが、その後も断片的な報道があって混乱されている方もいらっしゃるかもしれません。

 まず確認しておきますが、いま伝えられているのは、早くても1年後の話で、今年すぐに変わるわけではありません。また、現行の方法で副反応などの問題があるから変えるといっているわけではありません。

 というわけで、今回は記事の一部を引用しておきます。これらの情報は、私たちも報道以外では知らされておらず、メーリングリストなどで確認しあっているのが現状です。下記は検討段階での報道ですので、詳細は決まり次第お知らせします。

 結核予防対策として行われているツベルクリン反応検査やBCG接種を大幅に見直す方向が固まったことを受け、厚生労働省は五日、結核予防法と感染症予防法の改正に向けた作業に着手した。(中略)
 結核対策をめぐっては、乳幼児期と小学一年、中学一年時に行われているツベルクリン検査を原則として廃止。生後六カ月までにツベルクリンなしで直接、BCGを接種し、再接種もしないなどを内容とする報告書がまとまっている。(後略)


● 蒸し暑い季節のスキンケア

 毎年同じようなことを書いているので簡単にします。冬のスキンケアは乾燥対策が主。夏場に悪くなるお肌の症状は、主に汗と汚れ、そしてそれらが残った肌着などが悪化因子になっています。

 その対策は、必要に応じて1日2回のシャワーや入浴、肌着の交換、寝室の風通しや掛け物の調節などで、必要に応じてクーラーを使用することも構いません。そして、あせもや湿疹が悪化しているときには、外用薬も使われます。

 まずはスキンケアが第一で、それだけで改善することが多いのです。


● 妊婦の3割が喫煙(うち4割は継続)、7割が受動喫煙

 先日、「子どもと女性をタバコの害から守るために」という講演会を企画・開催しました。見出しは、その少し前に八戸市の調査結果としてデーリー東北に掲載された記事からのもので、0.3×0.4=1割以上の妊婦が妊娠・出産後もタバコを吸い続け、出産後に再度吸い始めてしまう人も多いのが実態です。(県内の他地域からも同様のデータあり)

 女性や子どもがタバコの害を知り、吸い始めるのを防ぐために熱心な議論が展開されましたが、詳細についてはホームページをご覧下さい。
 http://www.kuba.gr.jp/care/muen/20020608.html

☆2002年の「ワースト・スモーカー」(禁煙ジャーナルより)

(1) 宮崎 駿 (2) 明石家さんま (3) ビートたけし (4) L'Arc en Ciel (5) 木村拓哉 (6) 松本人志 (7) 古舘伊知郎 (8) 青木幹雄(参院・自民) (9) 志村けん (10) 大仁田 厚(参院・自民)


● 『新・医者にかかる10箇条』〜医療安全文化推進大会より

 5月26日に青森市で開催された「第1回医療安全文化推進大会」に出席してきました。当日の模様はTVや新聞でも報道されましたが、その一部をご紹介します。

 ささえあい医療人権センターCOML(コムル)のことは以前から知っており、ここに掲載する「10箇条」についても、こういった声に応えられる診療をしていきたいという気持ちは持っていました(が、実現できていません)。自戒を込めて引用しておきますので参考にして下さい。

 特に、内科などで慢性の病気や重い病気の時に、こういった「賢い患者さん」になってより良い関係を築くことができれば、患者さんやご家族にとって病気に立ち向かっていくための大きな心のよりどころとなるのではないでしょうか。

▼ 私たち患者が自分の望む医療を選択して治療を受けるには、まずは「いのちの主人公」「からだの責任者」としての自覚が大切です。患者が主人公になって医療に参加するための心構えが、この冊子に盛り込まれています。(中略)小冊子は、10箇条をイラストでわかりやすく紹介。お子さんやお年寄りにもわかりやすいように、大きな文字でルビをふってあります。巻末には、実践編として、検査・治療・くすり・入院など具体的な質問内容33項目を収載。ぜひ、皆さんも、受診のときにお持ちいただき、心構えにご利用ください。
 http://www.coml.gr.jp/

◎ 医者にかかる10箇条 あなたが"いのちの主人公・からだの責任者"

 1.伝えたいことはメモして準備
 2.対話の始まりはあいさつから
 3.よりよい関係づくりはあなたにも責任が
 4.自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
 5.これからの見通しを聞きましょう
 6.その後の変化も伝える努力を
 7.大事なことはメモをとって確認
 8.納得できないときは何度でも質問を
 9.医療にも不確実なことや限界がある
 10.治療方法を決めるのはあなたです


とめよう再処理 ● 六ヶ所の核燃再処理問題をもう一度考えてみませんか?
 〜このまま稼働させてしまって大丈夫?〜

「♪…そしたら原子力くんが …よかったね♪」 って、なにが?

 最初におことわりしておきますが、この記事には政治的なバックグラウンドも特定のグループの影響もありません。ただ、一人の小児科医として、一市民として、疑問に感じたことをお伝えしたいだけです。

 私たちの暮らす青森県は国の原子力政策を積極的に受け入れることで生計を立てていこうとしているようです。そして、報道によると、1年後には再処理工場のウラン試験を前倒しして開始する意向のようです。

 本当の豊かさとは何でしょうか。一時的な経済効果を求めて、他の地域では絶対に受け入れられない危険な核関連施設をひたすら誘致して集積させて、この青森の海と空気と緑を放射能で汚染させ、放射性廃棄物を大量にため込むことが、私たちの求める豊かさなのでしょうか。

 本当は嫌なのにあきらめてしまっている人が多いようですが、今ならまだ間に合います。子どもたちのために安全で健康に暮らせる八戸の環境を守ることが、私たち大人に課せられた義務ではないでしょうか。

 私自身は、詳細なデータを基に皆さんを説得することはできそうにありませんが、参考資料として、八戸の海がどのように汚染されるのかを図示したリーフレットと署名用紙を一緒にお渡しします。もし署名運動に協力していただける場合は、当院でとりまとめしますのでお持ち下さい(各自で発送していただいても結構です)。「核の再処理はイラナイ・八戸の会」も、従来の反核燃団体とは別に、一般市民として危険性を訴えていく女性を中心とした会だということです。

【転載】再処理工場のゆくえ… (青森県保険医新聞より)

 六ヶ所再処理工場の本格運転は2005年7月の計画だが、試運転段階で今後、化学試験やウラン試験、そして実際の使用済み核燃料を使った試験が行われる事になっている。

 4月30日に開かれた「原子力政策青森賢人会議」の席上、前日本原燃社長の竹内哲夫氏は、六ヶ所再処理工場の操業はプルサーマルというプルトニウムの使い道が具体的であることが条件だとする委員会側の考えを表明した。プルトニウムを使う高速増殖炉「もんじゅ」は事故で止まり、プルサーマル計画はデータ捏造や新潟県刈羽村の住民投票による反対、そして福島の佐藤栄佐久知事の反対などで頓挫した今、内部でもそのような考えが出て当然である。そして、当初8,400億円の建設費は2兆1,400億円に膨れ上がり、盛んにマスコミにリークして「総事業費10兆円」だのと書きたてさせている。日本原燃サービスの初代社長豊田正敏氏でさえも、「旧式で採算が取れない工場」と指摘し、再処理工場の稼働中止を求めているし、推進してきた学者や電気事業者、政府の内部でも実は再処理を止めたいのではないだろうか。

 しかし、一方では業界紙によると、原子力委員会は「経産省を呼んで計画通り進めるよう念押しした」と書いていた。日本原燃と電力会社と経産省と原子力委員会の中で誰が運転開始を急ぎ、誰が操業にブレーキをかけようとしているのか。すでに完成した使用済み核燃料貯蔵プールでは水漏れや停電、ウラン濃縮工場もトラブル続きでなんら機能していない。浜岡原発では事故後半年間の自主点検を終え、運転2日目に緊急炉心冷却装置からの水漏れ。エネルギーを原子力に大きく依存する「国策」に私たちは命を託し、電力業界からのバック・マージンを得たいが為に原子力を推進し、「後は野となれ山となれ」で福祉日本一を唱えているトップを選んでしまった県民。大量の高レベル放射性廃棄物の最終処分地も決まっていない。再処理を止めるのは私たち次第です。

【自ら判断していくための資料】

・再処理工場の危険性(核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団)
 http://www5a.biglobe.ne.jp/~genkoku/reprocess/reprocess-risk-1.htm

・六ヶ所再処理工場(美浜の会)
 http://www.jca.apc.org/mihama/reprocess/reprocess_room.htm

・原子力情報資料室
 http://www.cnic.or.jp/index.htm

 原子力資料情報室 第47回公開研究会
 「どうする?六ヶ所再処理工場−何のため?誰のため?運転を急ぐのか」
  6月23日(日)午後1〜4時
  青森市:ハートピアローフク
  青森県六ケ所村に日本原燃が建設中の六ヶ所再処理工場は、事業者・電力会社、青森県、六ヶ所村、そして誰よりも私たち市民にとって、何の利益もない最悪の工場です。工場では2005年7月の操業をめざして、機能試験が急ピッチで進められています。しかし日本各地でのプルサーマル計画の破綻によって、プルトニウムは益々余剰状態になっています。危険性も高く、必要もない、不経済な工場の運転開始をなぜ急ぐのか、そこにはどんな問題があるのかを考えます。


● 地方主権全国フォーラム in 八戸 II のご案内

 と き 平成14年7月6日(土) 午後12時30分〜午後6時
 ところ 天聖寺ホール (十六日町…安藤昌益思想発祥の地)
 http://homepage1.nifty.com/ykuba/forum2002/

 詳しくはチラシか上記のページをご覧下さい。世の中のさまざまな問題に対して、不満や疑問を抱いたり、思うところがある方もいると思いますが、最近の ITER 誘致にみられるような従来型の「お上」頼みの姿勢から一歩進んで、一人一人の市民が自立して考え、行動し、自分たちの住むまちや自治のあり方を変えていく、そういった取り組みの先進例を直に見聞きし、一緒に考えてみる良い機会だと思います。もちろん、どなたでも参加できます。


● 待合室の新しい絵本

「どんどこ ももんちゃん」「ももんちゃん どすこーい」 (^o^)v


○ 6月の休診日、急病診療所、各種教室の予定

 5〜6月は暦通りの診療・休診ですが、7月6日(土)の受付は午後1時半までとします。急病診療所の当番は予定表をご覧下さい。ぜんそく教室は6月22日(土)(別記事)、次回の赤ちゃん教室は7月13日(土) です。


発行 2002年6月10日 通巻第74・75号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
webmaster@kuba.gr.jp
http://www.kuba.gr.jp/


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