■ くば小児科クリニック 院内報 2002年4月号

院内版感染症情報 〜2002年第17週(4/22-4/28)


   2001-2002年 第03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17週
インフルエンザ    0  0  3 54 62 86 52 25  7  4  1  1  1  1  0
A群溶連菌咽頭炎  1  2  1  2  0  0  2  0  0  5  1  4  3  4  2
感染性胃腸炎     13 14  9 16 13 23 18 17 17 14 14  9 13 13  8
水痘              4  0  0  1  0  3  0  2  1  0  0  0  0  0  1
手足口病          0  2  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        2  7  3  1  0  1  1  1  3  3  1  3  1  2  0
突発性発疹        0  2  6  1  1  0  1  1  1  1  2  0  1  2  0
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  3  1
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  2  1  1
流行性耳下腺炎    0  3  0  0  0  2  1  2  1  2  2  3  2  0  2
麻疹(はしか)の流行発生! 麻疹注意報発令中です(4/8〜)

 残念ながら、先月号の警告が現実のものとなってしまいました。

 院内報でお知らせするのが遅くなりましたが、市内湊・白銀地区で麻疹が流行しています。また、県内各地でも流行がみられるようで、終息までまだ時間がかかりそうです。当院では4月8日に最初の患者さんが受診し、4月末の時点でまだ途切れていません。対策は予防接種しかなく、本来、流行してからあわてて接種したのでは流行を阻止する効果はほとんど期待できないのですが、運が良ければ個人の防衛にはなります。また、年長児(小学校中学年以上)では幼児期に予防接種をしたのに罹っている場合もみられています。

 特に保育園児は、必ず接種をすませておくことが必要です。園側でも入園・通園の必要条件にするなどの対策が望まれます。1歳未満の場合でも、流行時には9か月頃から任意接種ですませておき、1歳過ぎてから定期接種で再度接種しなおすやり方が全国的になされています。

 4月下旬から、ヘルパンギーナやウイルス性の不定の発疹症など、夏かぜのタイプが流行りだしています。今年の春は駆け足で過ぎ去ってしまいましたが、感染症でもすでに初夏に入り始めているようです。

 冬から流行していたインフルエンザはほぼ終息しましたが、中学校では新学期に入ってからインフルエンザB型の流行がみられており、腹部症状と発熱や頭痛を伴う場合は疑われます。ロタウイルスによる胃腸炎は下火になり、溶連菌は小学校低学年を中心に流行が続いています。


● ポリオとBCG:「中止」報道の真相

1)ポリオ

 ポリオに関しては、まず次の文章をお読み下さい。

 2002年4月19日の読売新聞朝刊で『ポリオ生ワクチン中止−「不活化」接種に転換』の見出しで将来の不活化ポリオワクチンへの転換の報道がありました。同記事には『(転換には)少なくとも1年の準備期間が必要とみられる』とあり、1年後には不活化ポリオワクチンへの転換が行われるような印象を受ける事が出来ます。

 実際には、殆ど全ての欧米の先進国は既に不活化ポリオワクチンを使用しており、我が国も不活化ポリオワクチンへの転換が必要と考えられます。しかし、厚生労働省からは具体的に何時、どのように転換が行われるかの正式な発表は未だされておりません。

 世界には未だポリオの流行地がありますので、現行の接種制度に従い、生後3〜18ヶ月の間に経口生ポリオワクチンの接種を受けて免疫を付けることをお勧めします。 (日本ポリオ研究所)
 ポリオの生ワクチンについては、2年前に一時中止して再開するときにも不活性化ワクチンへの切替の可能性も含めて院内報で解説したことがありました。その時と比べて新たな状況が生まれたわけではないのですが、一つには20世紀中から2005年に目標を遅らせていたポリオの根絶が、内戦やテロ・制裁戦争、資金不足などの影響もあり更に遅れそうだということも影響しているのでしょう。

 日本を含む西太平洋地区では自然感染がゼロであるにもかかわらず、生ワクチンによって数百万人に1例とはいえ麻痺例がありうる現状では、不活性化ワクチンへの切替は妥当な判断だと思いますが、上記のコメントにあるように来年からすぐ切替になるかどうかは未定であり、読売新聞が“薬害ポリオ”なる誰も使っていない用語を作り出してまでこのような断定的な報道をしたのは、親御さんや小児科の現場への影響を考えない無神経な報道と言えます(が、実は官僚からのリークで審議会の審議前に政策を誘導しておこうという魂胆だろうと推測されます)。

 世界中でポリオが根絶されれば接種は中止できますが、それまでは最後の手を抜けない状況にあります。不活性化ワクチンへの転換が来年になるかどうかまだわかりませんが(これから審議会の審議を経て法案作成、国会審議・可決、施行という手間がかかります)、現行の制度に従ったかたちで接種をすすめるようにしましょう。

2)BCG

小中学生のBCG接種についても以前から議論があり、3年前にも中止報道があってその解説を書いたことがありました。

 BCGは1回目(乳幼児期)の接種については効果が認められているものの、2回目以降の接種は「それほど抵抗力が増えない」「ツベルクリン反応で結核感染の有無を判断しにくくなる」といったデメリットが指摘されており、今回、WHOがBCGの複数回接種をしている国に見直しを促す勧告をまとめたのを受けて、3月に「厚生労働省は小中学校で実施されているBCGの再接種を廃止する方針を固めた」と報道されました。ポリオと同様に、法律の改正が必要ですから早くても来年度以降です。

 問題点としては、乳幼児期の接種もれや接種したのに免疫が得られていない場合などがあり、接種医の手技のバラツキにも問題が残ります。小1のツ反陽性率が低い現状では、結核の免疫を持たないまま自然感染にさらされる子ども(若者)が増えていかないか、懸念が残ります。

 繰り返しますが、乳幼児のBCGには特に重症化の予防などの効果が認められており、小中学校で中止するためには乳幼児期にきちんと接種を受けていることが必須となります。同時に、BCGの跡が少なかったりほとんどないような子どもの追加検査と早い時期での再接種が制度化されることを望みます。


○ 4〜5月の休診日、急病診療所、各種教室の予定

 連休は暦通りの診療・休診で、4日の午後には急病診療所に出動しています。14日と28日の夜も急病診療所。次回の赤ちゃん教室は5月18日 (土) です。今年のぜんそく教室は6月から3回開催する予定です。


発行 2002年4月30日 通巻第73号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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