■ くば小児科クリニック 院内報 1999年1月号
あけましておめでとうございます.今年は1999年.私たちが子どもの頃,1999年には地球が破滅するのでそれまでやりたいことをやって最後はお金を全部使って遊ぼうなどと冗談で言っていたのですが,世の中はそれほど単純ではありませんでした.医療改革や人々の心の問題など私たちを取り巻く状況は大きな転換点を迎えており,当院でも社会との関わりを考えながら診療に当たっていかなくてはいけません.春には当院も3周年を迎えます.特に目新しいことでなくても,何かしら少しずつ良い方向に持っていきたいと考えておりますので今後ともよろしくお願いいたします.It's getting better all the time...(The Beatles "Getting Better") てな感じでね.
-- 今月号は感染症情報が中心です --
● 院内版感染症情報 〜1999年第01週(1/3-1/9)
1998年 第36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 01週 感染性胃腸炎 2 1 3 7 8 10 11 9 5 10 10 6 8 15 18 9 7 13 水痘 0 0 0 0 0 0 2 0 0 0 2 5 2 4 1 5 5 7 伝染性紅斑 1 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 1 0 3 4 1 3 5 乳児嘔吐下痢症 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 2 突発性発疹 6 5 1 1 2 0 1 2 2 2 2 3 4 5 4 2 1 1 麻疹 4 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 ウイルス性発疹症 2 3 1 4 2 3 3 2 1 2 0 1 0 0 0 4 0 1 溶連菌感染症 1 1 0 1 1 0 0 0 0 0 4 0 4 1 2 1 0 0 手足口病 8 1 1 3 0 2 1 0 0 2 0 1 2 0 0 1 0 0 ヘルパンギーナ 3 2 1 2 0 0 0 0 0 0 1 0 0 2 0 0 0 0 異型肺炎 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 1 0 0 0 0 流行性耳下腺炎 0 0 0 0 1 0 1 0 2 0 2 0 1 0 0 0 0 0 咽頭結膜熱 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 012月は普通の風邪(咳と鼻と熱),ウイルス性胃腸炎(嘔吐と下痢)のオンパレードで,例年通り水痘と溶連菌感染症もこの時期多めです.伝染性紅斑(リンゴ病)が流行中.インフルエンザはまだ明かではありません.そんな中で,麻疹患者が発生し始めており注意が必要です.
● インフルエンザそろそろ注意
いよいよインフルエンザのシーズンです.インフルエンザが特に恐れられているのは,感染力が強く毎年のように集団感染をおこし,急激に発症して全身症状も強く,肺炎や脳炎などの合併症を起こすことがあるからです.ここ数年,小児や老人の死亡例のニュースもありやっとその危険性が認知されはじめてきたようです.
インフルエンザの場合発熱は4−5日続いてもおかしくありません.何回も書いていることですが,熱そのものよりも,その他の症状はどうか,水分はとれているか(「飲んでくれない」ではなくて,少しずつでもとらせるようにしているか)といったことで判断する必要があります.
「中年のサラリーマンは風邪でも会社を休まない人が多い」というニュースがありましたが,そのように無理をすることによって更に他の人へ感染を拡げ,自分も治りにくくしているということに気がつかなくてはいけません.風邪には「早めの○○○○」ではなく(市販の風邪薬に風邪の期間を短縮するような効果はなく,一般的な風邪薬のCMには問題があります),徹底してひたすら休むことが大切です.そして,水分・栄養・保温などの一般的な看護.薬はあくまで補助的なものです.
治療薬の面では,「アマンタジン」という薬が今年からインフルエンザに使えるようになったと報道されていますが(アメリカでは20年も前から使われている),その条件としてA型のインフルエンザであるという診断が必要であることや副作用の問題などもあり,単純にインフルエンザらしき患者さん全員に飲ませるようなことはできません.実際問題としては,老人施設などにおける限定的な使用になる見込みで,当院では処方する予定は今のところありません.
年長児で薬が飲める子には漢方薬が良いかもしれません.その場合でも,他の薬と併用することになるでしょう.一般的に風邪の初期には抗生物質は無効で発熱の期間には影響しないことが多いのですが,熱や咳などの症状が強い場合は二次感染を併発していることが多く,特に小さい子ほど抗生物質を使う機会が多くなります.いずれにせよ,冬場の風邪は比較的こじれやすいので,注意が必要です.
● 吐き下しの風邪(主にロタウイルス性腸炎)
11〜12月に流行したウイルス性胃腸炎(主にSRSV)と入れ替わるように,1〜2月は主にロタウイルスによる胃腸炎が流行だします.既にお正月前後からその兆しはみえてきております.ロタの場合,嘔吐も下痢もより症状が強く,小さい子ほど脱水に進展しやすいので注意が必要です.吐き気の強い最初の半日〜1日を,絶食とごく少量ずつ(ひどいときはスプーン1杯ずつ)の水分補給で乗り切れるかどうかがポイントで,中途半端に飲ませて吐くことを繰り返すと急速に脱水は進行してしまいます.
● 麻疹(はしか)とリンゴ病
12月頃より市内北部で麻疹患者が発生しているとの情報がありましたが,上に書いたように年末から当地区にも広がってきているようです.1歳を過ぎてまだ麻疹の予防接種をすませていない方は,できるだけ早く受けるようにしましょう.麻疹は大病です.後悔先に立たず.
リンゴ病は小学校低学年を中心に流行中です.パンフレットにも書きましたが,発疹が出た時期にはすでに感染性はなくなっておりますので,隔離や登校停止などの処置は不要です.
● インフォメーション
○ スキンケアクリーム・ローション
アトピー・乾燥肌の子の保湿剤は,これまで医薬品の中では主に「ヒルドイド」という薬を処方しており,その他には市販のローションやクリーム類を使ってみても構いませんとお話ししてきましたが,今月から新たに「セラミド」という成分の含まれた保湿剤を院内で取り扱いすることにいたしました.詳しくは別にパンフレットを用意しましたのでそちらをご覧下さい.なお,医薬薬ではないので購入していただくことになります.
○ 4月から日本脳炎の個別予防接種が始まります 以前「近い将来できることになりそう」と書いた日本脳炎の予防接種が,やっと来年度から青森県でも定期接種でできることになりました.詳しくは3月号あたりに掲載したいと思います.
発行 1999年1月10日 通巻第34号
編集・発行責任者 久芳 康朗
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