■ くば小児科クリニック 院内報 1997年8月号


● 食中毒の知識 ::::: 簡単なまとめ :::::

 食中毒のニュースを毎日のように聞く季節になりましたが,実は8月よりも9月の方が発生は多いということを覚えておいて下さい.今までにも取り上げたことがありましたが,今回は食中毒の一般的な知識をまとめてみました.
 食中毒を主に疑うのは,粘血便を伴う頻回の下痢で,発熱や強い腹痛・嘔吐を伴い,急激に発症しており,家族や同じ食事をとった人がほぼ同時に発症している,といった状況の場合です.ただし,患者さんが1人だけで,症状もさほどひどくないという場合には,便培養を調べてはじめて診断がつくこともあります.  予防法については,「食中毒の予防」のパンフレットをご覧下さい.

○ カンピロバクター

・小児では最も頻度が高い(細菌性腸炎の10〜20%)
・感染経路:汚染した食肉(特に鶏肉)や水
・春から夏が多いが通年性
・潜伏期間:1〜7日(平均3〜5日) …長め
・症状:下痢(水様〜粘血便),発熱,腹痛,悪心,嘔吐
    下痢は2〜10日,発熱は3〜4日持続

○ サルモネラ

・感染経路:食肉,鶏卵,乳製品,汚染された水や生カキ,ペット
・潜伏期:数時間〜48時間
・症状:発熱,悪寒,頭痛,嘔吐,腹痛,下痢(水様〜粘血便)
    発熱は6日以内,下痢は6-10日程度

○ 病原性大腸菌(O157:H7)

・病原性大腸菌はO157だけではありません
・感染経路:加熱不十分の肉,生野菜(?),その他(不明)
・潜伏期間:1〜7日 …長い
・症状:血性下痢,腹痛,嘔吐
    発熱は伴わない場合が多い
    痙攣や溶血性尿毒症症候群(HUS)を伴う場合は予後が悪い

○ 腸炎ビブリオ

・夏期に多発,海水中に存在
・感染経路:海産魚介類の生食により発症
・潜伏期:4〜28時間(多くは12〜15時間)
・症状:下痢(粘血便),発熱,腹痛,嘔吐,ときにショック
    通常2-3日で回復する

  ○ ボツリヌス菌

・毒素型:潜伏期間12〜36時間
・症状:眼筋麻痺などの神経症状
・感染経路:真空パック製品,いずしなど
*乳児ボツリヌス症(食中毒とは違う)→乳児に蜂蜜は与えない

○ ブドウ球菌

・毒素型:潜伏期間2〜7時間 …短い
・感染経路:人・動物の化膿巣,おにぎり,練り製品など


● 水の事故にはくれぐれもご注意を!

 暑い日が続きますね.白浜や蕪島の海水浴場もきれいに整備されて毎日にぎわっているようです.溺水のおこる場所としては,小さい子は浴槽,大きい子は海や川が多く,ある程度泳げるという子の方が実は危ないのです.大平洋は結構波があるから,海では水遊び,泳ぐのはプールと割り切ってしまっても良いかもしれませんね.


● インフォメーション

○ 感染症情報(院内版) −6月から院内の集計を開始しました

 第26週(6/22-6/28)〜31週(7/27-8/2)の順です
  ヘルパンギーナ  8-13-14-8-5-6
  手足口病     2-5-9-8-3-3
  溶連菌感染症   1-2-1-4-0-3
  突発性発     3-3-3-3-0-3
  感染性胃腸炎   1-7-6-5-3-2
  流行性耳下腺炎  2-0-2-3-1-2
  ウイルス性発疹症 2-1-1-1-1-1
  麻疹       0-0-0-3-0-1
  水痘       3-2-0-1-0-0
  咽頭結膜熱    0-0-0-1-0-2
  異型肺炎     0-0-0-1-0-0
  伝染性紅斑    0-1-0-0-0-0

 当院受診患者の速報を毎週ホームページに掲載しておりますので参考にして下さい.現在の流行はヘルパンギーナと手足口病,熱とノドが主体の夏かぜですが,7月後半から減少傾向のようです.いずれも特別な治療はありませんので,安静や水分補給に心がけて下さい.溶連菌感染症も少しずつ続いております.今月はじめて麻疹患者が出ており,今のところ予防接種を済ませている中学生の患者だけですが,注意が必要でしょう.

○ 喘息教室は都合により8/9(土)と8/20(水)に変更になりました.

○ 8月はお盆休みと学会のための休診があります(→予定表)

○ 新しいパンフレット
  「肥満(確実にやせるための5カ条とその解説)」

○ お願い:診察中は携帯電話の電源をお切り下さい.たまごっちも禁.


発行 1997年8月1日 通巻第17号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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