予防接種と感染症に関する最近の動き

日医インターネットニュース 1998.12 - より   last update at

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1998年 (平成10年) 12月11日金曜日
日医インターネットニュース 930号

■ 「推奨接種」は国の責任による任意の接種
                    ― 小池常任理事 ―

 小池常任理事は8日会見し、日医・公衆衛生委員会中間答申に沿って予防接種法改
正に関する日医の見解を述べた。中間答申が、インフルエンザワクチンの接種手法と
して提案した「推奨接種」について、「国の責任を全面に押し出して任意で接種する」
との概念を説明。予防接種を受ける判断は個人に委ねる任意接種の枠組みを残しなが
ら、接種費用(全額公費負担)、健康被害対策に関しては、国が全面的に責任を負う
制度であることを強調した。

 推奨接種の創設は、高齢者や基礎疾患を持つハイリスク集団のインフルエンザ予防
接種を促すことが狙いだが、実効をあげるため国が健康被害の対応策を講じる必要性
を指摘。現行の学童を対象にしたものとは別に、成人・高齢者を対象にした健康被害
救済制度の新設と、健康被害が生じた時に予防接種医自身が民事訴訟の対象とならな
いよう、予防接種医の身分保障制度を確立することを提案した。 [TOP]


■ インフルエンザワクチンの「推奨接種」を提案
           ― 公衆衛生委員会答申 ―

日本医師会の公衆衛生委員会(委員長=菊池辰夫・福島県医師会常任理事)は3日、
予防接種法の見直しに関する中間答申をまとめ、坪井会長に提出した。答申は、予防
接種方式の見直しから、接種率を向上させるための方策、予防接種医が安心して業務
に従事できる体制の整備など多岐にわたって提言している。インフルエンザワクチン
の接種方法では、「推奨接種」という新たな制度創設を提案した。

 公衆衛生委員会はインフルエンザ接種方法を「推奨接種」とし、個人が接種するか
どうかを決める枠組みを残しながら、接種費用を国、自治体が負担する新制度の創設
を提唱した。現行制度では、インフルエンザワクチンによる健康被害は救済制度の対
象外だが、インフルエンザが推奨接種に移行することで、高齢者や基礎疾患を持つ者
が接種対象者となる頻度が高くなるため、成人と高齢者を対象にした健康被害救済制
度の創設も提案した。また、予防接種医が安心して業務に従事できる体制を整備する
必要性を指摘。健康被害の発生は医師に「大きな精神的苦痛と経済的負担を強いてき
た」と指摘、高齢者へのインフルエンザ予防接種実施に際して「身分保障制度の確立
は不可欠」とした。 [TOP]


●2次医療圏に最低1施設の接種センター整備も提案

 予防接種率を向上させる方策では、勧奨接種対象の風しん、日本脳炎などが「定期
接種になっているにもかかわらず、学童、生徒の予防接種率は激減している」と問題
提起し、「予防接種の重要性の教育または啓発活動を展開して欲しい」と要望した。
保育園、幼稚園、学校での集団発生を未然に防止するため、入所および入学時に予防
接種が確実に実施されているかどうかをチェックするシステムの必要性も指摘した。

 さらに重大な疾病やアレルギーを持ち、一般のかかりつけ医では予防接種を行うこ
とが困難な子供のために、小児科またはアレルギー科専門の医師が対応できる医療機
関や、予防接種センターを2次医療圏に最低1施設整備することも提案した。 [TOP]


1998年 (平成10年) 12月22日火曜日 日医インターネットニュース 933号 ■ ポリオワクチン追加接種で呼びかけ   厚生省HP  厚生省保健医療局結核感染症課は、ポリオの抗体保有率の低い昭和50年〜52年生ま れの年齢層に対し、予防接種を受けるよう厚生省のホームページ(http://www.mhw. go.jp/)に掲載している。ホームページでは、抗体保有率が低いことで生じる感染の 可能性などを指摘、免疫効果や副反応などを説明した上で、ポリオの予防接種を受け るよう呼びかけている。  同課が一番問題にしているのは、50年〜52年生まれ(21〜23歳)の年齢層が出産期 を迎えていること。生まれた子どもが生ワクチンの接種を受けた場合、抗体をもって いない両親に感染する恐れがあるという。また、インド、パキスタン、バングラディ シュ、アフリカ地域などを中心としたポリオ発生率の高い国に渡航した際に感染する 可能性も否定できない。 [TOP]
1999年(平成11年)  2月 2日火曜日 日医インターネットニュース 943号 ■ 老健、特養のインフルエンザ予防対策を指示  厚生省  厚生省老人保健福祉局は1月27日、老健施設と特別養護老人ホームに対するインフ ルエンザ予防対策の徹底を指導するよう、都道府県などに通知。施設に入所している 高齢者へのインフルエンザワクチン接種など、予防対策に万全を期すよう促した。  通知では、手洗い・うがいのほか、とくに、インフルエンザによる重症化を防止す るため、入所者が希望する場合には予防接種が受けられるように老健、特養に対して 指導するよう求めた。65歳以上の高齢者は、インフルエンザにかかりやすいとして、 厚生省の予防接種問題検討小委員会でも、予防接種の必要性などが議論になっている。 これまでに死亡が報告された入所者は予防接種を受けていなかった。また、特養など に対しては、昨年1月にインフルエンザ予防対策マニュアルを配布しており、マニュ アルを参考に再度予防対策を徹底するよう呼びかけている。 【コメント】  一部市民団体の反対と、マスコミの拙速報道から、厚生省が予防接種義務を取り止 めた責任は重大である。(T.Y) [TOP]
1999年(平成11年)  3月23日火曜日 日医インターネットニュース 957号 ■ インフルエンザ予防接種の"勧奨"導入で意見二分               ― 厚生省・検討小委 ―  厚生省の予防接種問題検討小委員会(神谷齊委員長)は16日、インフルエンザワク チンの取り扱いについて議論した。この日は、ワクチンの有効性が証明されていない として制度対象への復活に反対する意見と、一定の予防効果などを評価して推進する 意見が対立。反対派は「勧奨を導入する根拠がない」と指摘、議論を重ねた上での慎 重な対応を求めた。  一方、推進派は「個人防衛としての予防効果」「海外文献での有効性評価」「ワク チンによる重症化防止、罹患危険度の低下」などを強調。インフルエンザが原因と考 えられる高齢者死亡や小児の脳炎・脳症の問題もあげ、早急な対応が必要と主張した。 [TOP]
1999年(平成11年)  4月 2日金曜日 日医インターネットニュース 960号 ■ 応急入院勧告、サーベイランスは医師の届出で運用             −感染症新法が施行−  「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では、1類〜4類ま での感染症の類型、重篤度などに応じて医師が保健所に届出を行う期限や届出事項を 定めている。同法は医師による届出が、都道府県知事や国が行う措置の起点となるよ うに設計されているといっても過言ではなく、1、2類感染症患者などに対する都道 府県知事の応急入院勧告や、サーベイランス事業は全て医師の届出に基づいて運用さ れる。 [TOP] ●インフルエンザ、STDなど28疾患を定点把握  一方、定点把握の対象はインフルエンザ、STDなどを含む4類感染症の28疾患。 これら疾患についてはサーベイランスの定点として都道府県知事の指定を受けた「指 定届出機関」だけが届出を行う。 [TOP]  →参考:感染症新法リンク
1999年(平成11年)  4月 6日火曜日 日医インターネットニュース 961号 ■ 感染症診断・治療マニュアル作成を計画                           ― 小池常任理事 ―  小池常任理事は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感 染症新法)の4月1日施行を受け、同法が定める保健所への届出手続きなどについて 会員への周知を図るため、5月初旬までに「感染症危機管理対策協議会」(都道府県 医師会感染症危機管理担当理事連絡協議会)を開催する意向を明らかにした。厚生省 と共同で感染症診断・治療マニュアルの作成も進める。  小池常任理事は感染症新法を「(未知の感染症である)新感染症について規定した 法律は何処にもなく、非常に緻密に出来ている」とし、「余程のパンデミックや新感 染症の脅威にさらされない限り順当にいくだろう」と見通した。個別項目では、患者 の人権に十分配慮している点や、既知の感染症を重篤度や感染力に応じて1類から4 類に類型化した点を高く評価し、「ハコが出来たので中身をどう運営していくかが( 新法を)定着させる上での課題」と指摘した。 [TOP]
1999年(平成11年)  5月14日金曜日 日医インターネットニュース 970号 ■ 10月目途に感染症診断・治療マニュアル完成             −小池常任理事が明かす−  厚生省と日本医師会は今年10月を目途に、感染症新法に対応した感染症の診断・治 療マニュアルを完成させる。感染症患者への良質かつ適切な医療の提供の観点から、 患者・感染者が最初に受診する可能性のある一般医療機関でも適切な対応ができるよ うガイドラインを作成する。5月8日に宮崎県内で行われた「感染症新法に関する研 修会」で小池常任理事が明かにした。  マニュアルでは「一般の医療機関が自分のところで扱う疾患かどうかが分かるよう に」(小池常任理事)としており、適切な治療につなげるための診断方法などが示さ れる模様。 [TOP]
1999年(平成11年)  5月18日火曜日 日医インターネットニュース 971号 ■ 特定感染症指定施設に大阪府の市立泉佐野病院  関西国際空港に近い大阪府の泉佐野市立泉佐野病院は4月22日付で、感染症新法施 行に伴う「特定感染症指定医療機関」に指定された。米国CDCの協力を得るととも に、検疫所、保健所とのネットワークを構築、感染症に対する疫学的な検討も行う。 また病原体の検査機能の向上、院内感染の防止、針刺しなどの医療事故対策などの強 化も図る。  未知のウイルスなどにより、これから起こり得る重篤な感染症である「新感染症」 患者の入院先となる「特定感染症指定医療機関」は、東京、大阪の2か所程度でスタ ートすると見られていたが、1か所でのスタートとなった。 [TOP]
1999年(平成11年)  5月25日火曜日 日医インターネットニュース 973号 ■ インフルエンザ予防指針の作成に着手  公衛審・小委  厚生省の公衆衛生審議会感染症部会「インフルエンザに関する特定感染症予防指針 作成小委員会」は、5月19日に初会合を開いた。今年4月に施行された感染症新法で、 とくに総合的な予防施策を推進する必要がある感染症として、インフルエンザ、後天 性免疫不全症候群、性感染症が定められたことから、インフルエンザの予防指針を作 成する。インフルエンザシーズンが到来する前の9月末を目途に指針を作成する予定。  事務局が初会合で提示した「インフルエンザ特定感染症予防指針構成(案)」によ ると、指針の柱は@情報の収集と提供・公開A発生の予防B蔓延の防止C研究・開発 D国際協力E新型インフルエンザ対策――で、死亡者数の把握や予防接種のモニタリ ング、院内感染防止対策、医療提供体制、ワクチン・治療薬の開発などについて検討 する。感染症発生動向調査では、これまで小児科だけだったインフルエンザ定点調査 を内科にも拡大し、成人や高齢者の発生動向も調査する。 [TOP]
1999年(平成11年)  5月28日金曜日 日医インターネットニュース 974号 ■ インフルエンザ予防接種の法定化を要望   坪井会長  日本医師会は5月25日、坪井会長名で、インフルエンザの予防接種を予防接種法に 位置付けることなどを求める要望書を宮下厚相に提出した。今冬の流行シーズンに向 け、@予防接種対象に新たに高齢者など加え、予防接種法に位置付けるAワクチンの 確保、製造、供給体制を整備するB必要な財源を確保するC国民、医療関係者に正確 な情報を迅速に提供する――の4点を要望。とくに@では、接種費用を公費負担(国、 地方公共団体)とし市町村を実施主体とすることや、健康被害が生じた場合に国が責 任を負うことを求めた。 [TOP] ■ 地域医師会中心に感染症新法への協力体制を                ― 小池常任理事 ―  小池常任理事は、近医連「感染症対策」分科会で、感染症新法に対応した「感染症 マニュアル」を、遅くとも11月中旬までには刊行することを約した。  感染症新法のポイントを解説した中で小池常任理事は、とくに地域医療を担う診療 所などは、「大流行時の対応を想定して、新法は指定医療機関以外でも入院できると しており、都道府県が定める予防計画の中でも一般医療機関の対応を盛り込む必要が ある」として、地域医師会などを中心に協力体制を作ることを求めた。 [TOP]
1999年(平成11年)  6月 1日火曜日 日医インターネットニュース 975号 ■ 初回接種の徹底を前提に再接種見直し盛り込む        ― 厚生省・BCG作業班報告書案 ―  厚生省の公衆衛生審議会結核予防部会「BCG問題検討作業班」は5月26日、事務 局が提示した報告書案をもとに議論した。報告書案では、乳幼児期のBCG初回接種 の徹底と接種技術の評価などを行った上での、小学生時期の再接種の見直しを盛り込 んでいる。しかし、再接種見直しについて、小池委員(日医常任理事)が、「小学校 1年生時の再接種をやめるならば、社会を説得する科学的論拠を示すべき」と主張し たため、当初予定していた同日の報告書とりまとめを断念。今後、事務局が報告書案 を修正し、小池委員と調整する。事務局はあす2日の部会への報告書提出を目指す考 え。 [TOP] ●再接種見直しの科学的論拠を問う  小池常任理事  乳幼児期の初回接種の充実に関しては、作業班の意見は一致していた。しかし、小 学生期の再接種の見直しについて、小池委員は平成6年の予防接種法改正でインフル エンザが任意接種となり、大流行シーズンに高齢者の死亡が相次いだ事態を踏まえ、 BCGの再接種見直しについても慎重な論議を要請。見直しに反対ではないとするも のの、BCG接種を担ってきた学校医の観点から、国民が納得する科学論拠を求めた。 [TOP]
1999年(平成11年)  6月15日火曜日 日医インターネットニュース 979号 ■ 予防接種率が国際問題に発展も  予防接種率の低さが日本を孤立させる――。感染症の研究者間では、こんな危惧も 出始めている。  厚生省研究班の発表では、現在WHOが根絶計画を進めている麻しんの接種率は未 だ70%台、20〜30年後に根絶計画の対象となる見込みの風しんは40〜60%。麻しん、 風しんの根絶に積極的なアメリカからは「日本は麻しんの輸出国」などの批判もあり、 先進国中で予防接種対策の遅れている日本が、国際的に孤立する可能性がある。国立 感染症研究所の加藤茂孝研究官は「感染症の問題は、もはや個人の罹患や国内の流行 防止だけではない。国際的な責任問題」としている。 [TOP] ■ 予防接種率は医師会等の取り組みが影響  予防接種の効果的実施と副反応に関する総合的な研究を行っている厚生省の研究班 (井上栄班長)は、全国の予防接種率や取り組み状況をまとめた。対象者と実施者の 実数を調べ、正確な接種率を出したのはこれが初めて。とくに、個別接種の接種率が 低く、個別接種を推進した平成6年の制度改正が影響していることが明らかになって いる。ただ、研究班は「医師会、保健所などが熱心なところは接種率が高い」として おり、地域の意識による差が大きいと指摘している。 [TOP]
1999年(平成11年)  7月 2日金曜日 日医インターネットニュース 984号 ■ 高齢者のインフルエンザ予防接種、公的負担で              ―厚生省・小委員会−  厚生省の感染症予防部会・予防接種問題検討小委員会(神谷齊委員長)は6月29日、 高齢者のインフルエンザ予防接種の公的負担を提言した報告書をまとめた。費用負担、 健康被害の救済方法などについて、部会での早急な審議を求めた。報告書は7月5日 の感染症部会に提出。これを受け部会は、具体的な審議を始める。  学童を対象にしていたインフルエンザワクチンは、平成6年の法改正以来、国が接 種を勧奨せず、費用負担も公的負担から個人負担へ変わった経緯がある。しかし、近 年、高齢者施設などでの集団感染、高齢者死亡などが相次いだことや、高齢者に対す るワクチンの安全性、重症化防止効果などが明らかになってきたため、高齢者を対象 としたインフルエンザ予防接種の復活を決めた。報告書は、個人の発病、重症化予防 を目的とし、高齢者のワクチン接種を公的負担で実施する方向性を打ち出した。法に おける制度的位置付けや費用負担の方法などは、感染症部会で早急に検討するよう求 めている。脳炎・脳症の併発が問題となっている小児については、ワクチンの脳炎・ 脳症防止効果がはっきりしないことから、有効性に関する調査研究をした上で、対応 を検討するよう提言した。 【コメント】  日医の要望が大幅に取り入れられ、高齢者へのインフルエンザ対策が大きく進展し 評価できるが、脳炎・脳症の発生が多い子どもへの展開が今後の重要な課題となった。 (K.K) [TOP] ■ インフルエンザ脳症は217例、うち3割が死亡   厚生省結核感染症課は6月25日、今年1月〜3月末までに、インフルエンザの臨床 経過中に脳炎・脳症を起こした症例が217例あったとの調査結果を発表した。厚生省 は、このシーズンがとくに多いとは言えないとの見方を示しているが、そのうち約3 割が死亡した。調査によると、8割以上が5歳以下だったほか、217例すべてがイン フルエンザワクチンを接種していなかった。厚生省は、今回の調査だけではインフル エンザと脳炎・脳症の直接的な因果関係、ワクチンの有効性などはわからないとして いるが、予防接種問題検討小委員会では、インフルエンザ予防接種を国が勧奨するか が検討課題になっており、議論に影響を与える可能性もある。インフルエンザと脳炎 ・脳症の関係についての調査は初めてで、世界的にも例をみないという。  厚生省 では、217例についてさらに詳しい情報を収集し、回復例と死亡例の違いなどを分析 する。  調査結果によると、インフルエンザに罹っている間に脳炎・脳症を起こした人は、 男性108人、女性109人の計217例。厚生省では、同様の調査結果がないため、「この 数字が多いかは評価できない」としているが、過去10年で最大の流行となった1997〜 1998年のシーズン中は全国で100〜200人との推計もあり、通常推定する範囲内との見 方を示した。 [TOP]

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