公衆衛生委員会中間答申

 

 

平成10年12月

日本医師会公衆衛生委員会

 


平成10年12月

日本医師会長

   坪 井  栄 孝  殿

公衆衛生委員会       

委員長 菊 池 辰 夫

 

 本委員会では、平成10年7月22日に開催された第1回委員会において、貴職から諮問のありました「予防接種法の見直しについて」について、3回の委員会を開催して鋭意検討を重ねてまいりました。

 本委員会の現在までの審議結果をとりまとめましたので、ここに中間答申として提出いたします。

 


公衆衛生委員会

委 員 長菊池  辰夫(福島県医師会常任理事)
副委員長多田羅 浩三(大阪大学医学部教授)
委  員相澤  好治(北里大学医学部教授)
  〃  榎   光義(大阪府医師会理事)
  〃  角田   均(三重県医師会常任理事)
  〃  堺   春美(東海大学医学部助教授)
  〃  羽鳥  雅之(埼玉県医師会理事)
  〃  村上  作之(静岡県医師会理事)
  〃  村山  博良(高知県医師会副会長)
  〃  八木  剛志(熊本県医師会理事)
  〃  柳内   統(北海道医師会常任理事)
  〃  湯藤   進(東京都医師会理事)
  〃  吉田  勝美(聖マリアンナ医科大学教授)
    
  (五十音順)

 


目    次

予防接種法の見直しについて

1.はじめに

2.予防接種法の見直しの主要な事項について

  (1)インフルエンザ対策と新たな予防接種制度の創設

  (2)新しく定期予防接種に組み入れられるべき予防接種

  (3)予防接種の啓発と接種率向上の対策

1)予防接種体制の一層の充実と整備
2)予防接種の意義と重要性の教育
3)予防接種チェックシステムの創設
4)予防接種センターの設置

  (4)予防接種医が安心して業務に従事できる体制の整備

1)成人・高齢者の健康被害救済制度の創設
2)予防接種医に対する身分保障制度の確立
3)バックアップ体制の整備

  (5)保護者及び予防接種対象者への正しい情報提供と啓発活動

1)正しい情報の迅速な伝達
2)「予防接種ガイドライン」と「予防接種と子どもの健康」の改訂
3)保護者同伴の問題について

  (6)その他

参考資料
   都道府県医師会 予防接種に関するアンケート調査結果(概要版)

 


予防接種法の見直しについて

1.はじめに

 本委員会は、坪井会長より諮問のありました予防接種法の見直しについて、都道府県医師会にアンケ−ト調査を実施する等、検討を行い、予防接種法の見直しの主要な事項について、以下のとおりとりまとめました。

 なお、予防接種の実施に当たって、改善すべき細部の事項については、予防接種法の見直しの概要が決まった段階で、さらに検討する必要があると考えます。

 


2.予防接種法の見直しの主要な事項について

(1)インフルエンザ対策と新たな予防接種制度の創設

 毎年くりかえし流行が見られるインフルエンザについては、保育所、幼稚園、学校で集団生活をする子ども達、また高齢者特に疾病を持って施設で生活している高齢者にとっては、その流行が大きな問題となっております。

 平成6年度の予防接種法改正によりインフルエンザ予防接種が定期接種から任意接種に変更された結果として、現在、インフルエンザ予防接種の接種率は著しい減少をもたらし、接種率の高い諸外国に比べわが国の現状は特異的な現象と言わざるをえない状態であります。

 予防接種法改正の趣旨である、個人の理解と自らの意思によって接種を受けるという理念に基づき、新しい予防接種概念を提唱するものであります。それは義務から勧奨へという概念の定期接種と個人自らの責任で接種する任意接種という枠組みに、新たに推奨接種という制度の創設であります。

 即ち、インフルエンザ予防接種を受けるかどうかは個人自らが決めることでありますが、接種費用を公費負担(国、地方自治体)とし、健康被害発生には国が責任を負うというものであります。高齢者特に老人ホ−ム等での集団生活をしている高齢者、種々の疾病を持って生活している高齢者への配慮が最も重要であります。

 そのためには、予防接種を受託する医療機関また接種担当医師が、安心してインフルエンザ予防接種業務に従事できる体制の整備が不可欠であります。従ってこうした接種対象者の健康被害発生に対応するため、成人・高齢者を対象とした健康被害救済制度の創設を提唱致します。

 

(2)新しく定期予防接種に組み入れられるべき予防接種

 現在の少子社会また母親の就業率の高まりの中で、伝染性疾患罹患児を集団生活から隔離するということは、保護者特に母親の就業継続を著しく妨げるという社会問題を引き起こしてきております。

 特に流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は髄膜炎、難聴等の合併症の頻度が高いという問題があり、諸外国ではMMR(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹)が一般であり、我が国だけが流行性耳下腺炎の予防接種が任意接種という極めて特異な状態にあります。

 水痘についても、罹患すると集団生活からの隔離期間が長くなること、またネフロ−ゼ症候群、白血病、その他副腎皮質ホルモン等の免疫抑制剤を使用している子ども達の感染は致命的となりうることから、全ての子どもから水痘を未然に防ぐことが求められております。

 以上の理由から、流行性耳下腺炎と水痘の予防接種を、定期接種に組み入れることを強く求めるものであります。

 

(3)予防接種の啓発と接種率向上の対策

1)予防接種体制の一層の充実と整備

 予防接種法の改正による義務から勧奨への変更は、国から市町村へとその接種主体の変更をもたらしました。従って全国の各市町村はそれぞれ独自の方法で接種体制(その方法、時期、費用等)を決めているのが実情であります。

 例えば、里帰りしている子ども、里帰り出産に付き添って移動する子ども、市町村で決められた期間内に接種できなかった子ども、疾病をもっていて居住町村と離れた都市部の医療機関で接種を受けざるをえない子ども達の予防接種をどうするのか等、様々な問題が起こってきております。

 従って、国は、全国の市町村に対して、各市町村間での予防接種相互乗り入れ方式を積極的に指導することが大きな責務であると考えます。

 具体的には、予防接種依頼書等の積極的活用方式であり、費用の償還払い等の問題も含めて、何時でも何処でも接種できる予防接種体制を整備するよう強く提案致します。

2)予防接種の意義と重要性の教育

 小学校ではジフテリア・破傷風の二種混合と日本脳炎、中学校では日本脳炎と風疹の予防接種対象者がおります。定期接種になっているにもかかわらず、予防接種法の改正による集団接種から個別接種への流れの中で、それらの学童、生徒の予防接種率は激減しているのが実情であります。特に風疹の予防接種率の著しい低下は、将来の風疹流行下における先天性風疹症候群の出生増加が危惧される現状であります。

 特に現在の少子時代、将来の父親、母親となる子ども達における風疹予防接種率の低下は大きな問題であり、国、都道府県、実施主体となる各市町村の責任は非常に大きいものと考えます。一方、子ども達の教育現場を監督する各都道府県また各市町村教育委員会においても、保健教育活動の大きな課題として取り上げるべき問題でもあり、予防接種の重要性を、教育や啓発活動により展開して欲しいものであると考えます。

3)予防接種チェックシステムの創設

 女性の高い就業率に伴い、乳児早期から保育所への入所が多くなってきており、更には保育所では学童保育が実施される等さまざまな養育形態が実施されております。

 従って、保育所、幼稚園、学校等への入所、入園、入学の時には、予防接種が確実に実施されているかどうかのチェックシステムが必要であります。特に集団で子どもを預かる所長、園長、校長等の責任者には、疾病の集団発生を未然に防ぐ努力が強く求められております。

4)予防接種センタ−の設置

 重大な疾病或いはアレルギ−を持っていて、一般のかかりつけ医では予防接種を受けることが困難な子ども達のために、小児科或いはアレルギ−科等を専門とする医師が対応できる医療機関の整備、ないしは予防接種センターの設置が必要であります。

 これは健康被害をできるだけ少なくするということと併せて、保護者が安心して予防接種を受けられる体制の整備として重要であります。なお、こうした医療施設は住民が利用しやすいという観点から、2次医療圏に少なくとも1か所は必要であると考えます。

 

(4)予防接種医が安心して業務に従事できる体制の整備

1)成人・高齢者の健康被害救済制度の創設

 特にインフルエンザ予防接種を高齢者へ積極的に実施するためには、その実施体制の整備が最重要課題であります。インフルエンザ予防接種は、何等かの疾病を持つ高齢者がその対象者となる頻度が高くなることが予想され、従って従来の子ども達を中心とした健康被害救済制度とは全く違った観点で、前述したように成人・高齢者の予防接種による健康被害救済制度を新しく創設することが必要であります。

2)予防接種医に対する身分保障制度の確立

 健康被害は被害者ばかりではなく、接種した医師にとっても大きな精神的苦痛と経済的負担を強いてきたのが実態であります。このような実態を踏まえ、予防接種医が安心して予防接種業務に従事できる、予防接種医のための身分保障制度の確立が必要であります。現行の予防接種に従事する担当医に対して早急な対策が求められており、新たに高齢者へのインフルエンザ予防接種が導入されるに当たっては、この予防接種医に対する身分保障制度の確立は不可欠であります。

3)バックアップ体制の整備

 予防接種という特殊な医療に伴う救急医療を考える時、身近な地域における後方病院での小児科医、救急医療担当医を中心としたバックアップ体制の整備が必要であります。各市町村での救急搬送システムを利用すると共に、予防接種に関連する情報の提供、収集等の専門的対応が求められるからであります。

 

(5)保護者及び予防接種対象者への正しい情報提供と啓発活動

1)正しい情報の迅速な伝達

 国、都道府県そして実施主体となる市町村は、予防接種の意義或いは副反応情報等を正しくかつ十分に保護者に啓発する必要があります。特にマスコミの情報は正しく行われることが最も重要で、その情報を提供する側にある行政の責任は重大であります。現在のややもすると興味本意な報道姿勢或いはマスコミ優先を感じざるをえない行政の姿勢は、保護者に本来の予防接種の意義を疑問視させかねず、またその業務に真摯に取り組む担当医の熱意を減じかねないことでもあります。

2)「予防接種ガイドライン」と「予防接種と子どもの健康」の改訂

 「予防接種ガイドライン」また「予防接種と子どもの健康」については、もっと理解しやすいように改訂する必要があります。例えば、「予防接種と子どもの健康」については、三種混合の接種間隔等についても記載する必要があると考えます。

3)保護者同伴の問題について

 予防接種時における保護者同伴は最も重要な問題であります。共働き家庭の増加を考慮に入れ、保護者が予防接種を理解し接種に同意をしたかの確認をどうするかの問題であり、ただ単に接種率の向上、またそのための集団接種を容認するということで解決する問題ではないと考えます。しかし、特に中学校生徒の予防接種率を向上させるにはどのような方法が好ましいのか、予防接種法の趣旨を十分に取り入れた方法を国、また実施主体であるそれぞれの市町村で考えることが必要であります。

 

(6)その他

1)日本脳炎予防接種について

 (1)接種年齢については15歳以下を全て対象年齢に改める必要があると考えます。

 (2)青森、北海道からの転入生及び帰国子女等への対応として、年齢の枠を含めてもっと柔軟な方法をとってほしいと考えます。

2)定期予防接種対象年齢枠の柔軟な対応

 定期接種については、上記(2)、また種々の疾病等でその時期に受けられなかった子ども達への救済措置を考え、現行の固定された対象年齢枠をより柔軟に応用できる方法が必要であります。

3)インフルエンザ噴霧ワクチンの開発

 安全なインフルエンザ予防接種ワクチンの開発は緊急の課題であります。特に乳幼児、種々の慢性疾患患者及び高齢者がインフルエンザに罹患した場合は重症化するだけに、その予防対策として有効性また安全性の高いといわれる噴霧ワクチンの一層の開発と実用化を要望するものであります。

4)即時性及び遅延性アレルギー反応を誘発する添加剤の除去

 予防接種に伴い、ごく稀に発生するアナフィラキシーショックまた遅延性アレルギー反応をでき得る限り避けるため、即時性及び遅延性アレルギー反応を誘発する添加剤が除去されたワクチンの速やかな開発が望まれます。

5)安全なMMRワクチンの導入と再開

 現在、国際的にはMMRワクチンが接種されていますが、我が国ではそれぞれの疾患について予防接種をするという制度であり、特に流行性耳下腺炎の予防接種は任意接種という繁雑さは、将来的には解消していくことが望ましいと考えます。

6)厚生省、医師会、市町村、医療機関の連携強化

 接種対象者が自ら進んで予防接種を受けるというのが本来の予防接種の理想であり、そのためには地域住民に予防接種の趣旨を十分に理解してもらうことが重要で、国、都道府県、市町村、医師会、また医療機関との連携体制の強化が必要であると考えます。特に地域医師会とそれに対応する市町村との連携が最も重要であります。

7)インフルエンザ・サ−ベイランスシステムの強化

 新型インフルエンザの流行が危惧されている現在、従来の結核・感染症サ−ベイランス事業の中でも、特にインフルエンザだけを別に取り扱い、現状よりもっと緻密なサ−ベイランス監視体制が望まれます。

8)接種率算定の明確化

 接種率の実態が明確になるよう、同一基準で接種率の算定を行うことが必要と考えます。

9)国際化への対応

 我が国から海外へ、海外から我が国へと非常に多くの人が移動或いは移住する現在にあっては、我が国だけにしか通用しない予防接種行政では問題であり、国際的にも十分に通用しうる体制の整備をしていくことが重要であります。

 


都道府県医師会
予防接種に関するアンケート調査結果

(概要版)

 

I.平成6年の予防接種法改正後の改善すべき点

 

1 新しく定期接種とすべきワクチン

・水痘

・おたふくかぜ

・インフルエンザ(臨時接種)

・B型肝炎

 

2.個別接種、集団接種の問題

・地域特性による対応

・集団接種にすべき(接種率の向上、最大限の予防効果、アナフィラキシー・ショックなどに対する治療の必要性)

 

3.接種率の向上対策

・集団生活への参加要件としての予防接種の義務化(入園、入学・進学時に接種すべき予防接種が実施されているかをチェックするシステムの構築)

・学校における未接種者把握と接種勧告の体制づくり(学校へ接種報告)

・国の啓発活動

 

4.国内のどこの医療機関においても無料で接種が受けられるような体制整備(県が異なる近隣の市町村間での相互乗り入れに対する国の積極的なイニシアチブ)

 

5.健康被害について

・任意接種による場合も法律による定期接種の場合と同様の救済措置

・成人、高齢者の健康被害に対する保障制度を創設

・予防接種医の身分保障(医師も被害者、医師が安心して予防接種できる制度の構築)

・軽微な副反応を呈した場合も公費負担とする

・迅速に支払いができる体制の確立

 

6.情報提供(副反応情報等)体制の整備

・マスコミ優先の現状の改善

 

7.各都道府県に予防接種センターを設置(ハイリスク対策)

 

8.日本脳炎について

・15歳以下すべてを接種対象年齢にする

・東北、北海道からの転入生及び帰国子女への対応

・ゼラチン含有ワクチンの問題  等

 

9.麻疹について

・複数回数接種を取り入れるべきである

・定期接種の時期を1歳児時期に強化すべきである(2歳以下の罹患が60%以上を占めている現状)また、10歳時あたりに第2期接種期を設けるべきである

・保育園の通園者には1〜2ヶ月前からの接種ができるようにする(流行期には1歳前の罹患が多い)  等

 

10.風疹について

・中学生女子の風疹ワクチン接種率の低下が極めて問題

・幼児期の接種の一本化

・複数回接種

・中学生に対する接種の存続など追加接種の機会の検討(90ヶ月を過ぎた未接種者がかなりの数で残ることが予想される)

・集団接種での実施  等

 

11.ポリオについて

・不活化ワクチンの接種に切り換える(副作用の低減と個別接種化が計れる)

・一人用か少人数用の包装。

・ポリオ個別接種の整備された実施体制の条件のうち「同一地域内の接種がほぼ1ヶ月で完了できること」は実体に合わない。2−3ヶ月あるいは2ヶ月程度とする

・回数を3回とする  等

 

12.DPT、DTについて

・接種年齢の問題(10歳以下にするべき)

・一期3回接種を2回にする  等

 

13.ツベルクリン、BCGについて

・BCGの4歳までという制限の解除

・BCGについて老人に対しても実施すべきではないか(ツ反応を行って) 等

 

14.保護者同伴の問題

・現実に子供の予防注射のために会社等を休むことができず、このために風疹等の接種率も低下している。例えば問診票の設問を「医師の診察で問題がなければ接種しますか」(はい・見合わせる)のように変える

 

15.全ての予防接種に関し、やむを得ぬ事情でその時期を逃したケースも、医師の裁量のもとで救済(公費負担を適用)できるようにする

 

16.予防接種ガイドラインの改訂

・現在のガイドラインを一般の医療機関にも分かりやすくする

・「医師1人当り1時間20人」の問題

・安全な接種部位、方法の具体的明示

・個別接種の際の規制条件等の緩和(一般外来とは時間と場所を分けて行うこと)

・ワクチンの保存方法

・「テスト液」を入手できる体制の整備

・熱性痙攣の問題

・アレルギー、アトピー患児への対応について検査方法、接種方法等の解説

   等

 

17.予防接種と子どもの健康の改訂

・三種混合の一期3回について、3〜8週間隔ということの明示

・21頁の色枠「接種間隔」は「異なった種類のワクチンを受けるときの接種間隔」とする

 

18.その他

・定期接種の対象年齢の柔軟な対応。各種ワクチンについて年齢幅の引き上げ

・安全なMMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹)ワクチンの導入と再開

・ワクチン接種委託料の増額及び統一

・学童生徒の接種は年齢でなく学年とする 

・国際化に対応した予防接種法

・インフルエンザ噴霧型ワクチンの開発

・厚生省、医師会、実施主体(市町村)、医療機関の連携の強化

・接種料金、マンパワーの確保等、国がもっと市町村に協力すべき

・副反応にどのように対応したらよいかのマニュアルの作成

・アナフィラキシーショック他予防接種による副反応発生時における地域基幹病院の対応義務の明文化

・法が遵守されているかの再点検が重要

 ・実施主体が自治体にあること、任意接種であること等の国民への十分な説明。

 ・接種後30分間の経過観察が確実になされているか、等

・『勧奨接種』という言葉の変更。保護者は、『任意接種』と思っている。国民として努力義務のあることを強調すべき

・『標準接種年齢』を『最適接種年齢』などに変更、早期接種の重要性の強調

・海外渡航者への対策

・ワクチンを一バイアル単位で購入できるよう指導すべき

・インフルエンザ・サーベイランスシステムの強化

 

II.幼児(集団生活を営んでいる者)、学童に対するインフルエンザの予防接種についてどうあるべきか、下記の質問にお答え下さい。

(1)集団接種、個別接種について下記から1つ選択して下さい。

 回答数比率
1.集団接種612.8 %
2.個別接種3676.6 %
3.その他12.1 %
同数回答(1と2)48.5 %
合計47100.0 %

 

(2)方式、費用について下記から1つ選択して下さい。

 回答数比率
1.任意接種で自己負担00.0 %
2.任意接種で公費負担3574.5 %
3.定期接種(公費負担)714.9 %
4.臨時接種(公費負担)24.3 %
5.その他00.0 %
同数回答(2と3)36.4 %
合計47100.0 %

 

III.高齢者に対するインフルエンザの予防接種についてどうあるべきか、下記の質問にお答え下さい。

(1)在宅の老人に対する方式、費用について下記から1つ選択して下さい。

 回答数比率
1.任意接種で自己負担24.3 %
2.任意接種で公費負担3574.5 %
3.定期接種(公費負担)510.6 %
4.臨時接種(公費負担)36.4 %
5.その他00.0 %
同数回答(2と3)24.3 %
合計47100.0 %

 

(2)施設に入所している老人に対する方式、費用について下記から1つ選択して下さい。

 回答数比率
1.任意接種で自己負担12.1 %
2.任意接種で公費負担2348.9 %
3.定期接種(公費負担)1429.8 %
4.臨時接種(公費負担)510.6 %
5.その他00.0 %
同数回答(2と3)48.5 %
合計47100.0 %

 

IV.基礎疾患を有するもの(妊婦、脳卒中後遺症、慢性肺疾患患者、心疾患患者等)に対するインフルエンザの予防接種に関し、その方式、費用についてどうあるべきか、下記から1つ選択して下さい。

 回答数比率
1.任意接種で自己負担510.6 %
2.任意接種で公費負担3574.5 %
3.定期接種(公費負担)48.5 %
4.臨時接種(公費負担)24.3 %
5.その他00.0 %
同数回答(2と3)12.1 %
合計47100.0 %

 

※郡市区医師会の回答数を記入した都道府県医師会は一番多いものをその都道府県医師会の回答とし、数が同じ場合は同数回答とした。

 

V.インフルエンザの予防接種に関わる接種事故、あるいは接種後の紛れ込み事故(疾病)に対する対応のあり方についてご意見等がありましたらご記入下さい。

1.責任の所在

・事故の際の責任の所在を明確にすべきである。

・接種担当者に重大な過失がない場合は行政、国、市町村、自治体の首長等が責任をもつべきである。

・接種担当関係者に重大な過失がない場合は接種医師、医療機関の責任は問われないようにすべきである。

・市町村と契約書を作成し、契約を結ぶべきである。

・予防接種事故の場合は、刑事民事問わず、訴訟対象から免責になるよう、法律を整備すべきである。

・各自治体に接種する医師が常勤すればよい。

・接種は保健所での対応が望ましい。

・医師の責任において対処すべきであるが、国、行政のフォローが必要である。

・被接種者(および保護者)に責任をかぶせてはいけない。

 

2.対応

・アメリカ等を参考にして公費負担による任意接種とする。

・インフルエンザの接種を任意から勧奨接種にする。

・インフルエンザの予防接種も予防接種法に入れ、公費負担とすべきである。

・施設入所高齢者に対する接種は公費で定期接種とする。

・幼児は集団で定期に実施する。

・集団接種の方が接種事故が発生した時には対処しやすい。

・任意接種も薬害保障でなく予防接種と同様に、予防接種健康被害救済制度を適応すべきである。

・予防接種法による救済措置及び医薬品副作用被害救済制度を一層充実させ、利用しやすいものにすべきである。

・任意接種で実施しても公的医療機関等で公費負担で治療、補償等事後処理すべきである。

・任意接種による事故も行政で対処すべきである。

・医師会、地方自治体等による予防接種健康被害調査委員会を設置し迅速な対応をすべきである。

・接種後の事故については速やかに対応できるシステムを確立をすべきである。

・事故に関する情報提供を増やし、医療機関、市町村、薬品問屋、メーカー等との連絡網を整備する。

・予防接種による事故に対応する医療機関(センター)を設け、集約して治療・研究に当たってほしい。

・副反応発生時の受け入れ病院等支援体制を充実させ、的確な対策がとれるようにする。

・ハイリスク者に対するバックアップ体制を充実させるべきである。

・予防接種による事故についてはかかりつけ医を中心にフォローする。

・接種事故発生時の対応マニュアルの作成。

・幼児・学童は、予防接種健康被害救済制度で救済給付し、高齢者は、医薬品副作用被害救済制度を利用する。

・事故に関する全国的な情報提供システムの確立を望む。

・予防接種小委員会はホームページを作成していただきたい。

・予防接種に関するネットワーク上の情報システムが欲しい。

・現在行われている副反応調査を何年間か計画的に行うべきである。

・明確な因果関係が確実に特定されなくても疑わしいものは救済を行うほうがよい。

・有効性の証明がはっきりできない事故を保証するのは税の無駄遣いである。

・医学的によく検討して、明らかな紛れ込みは保障の対象とすべきでない。

・老人に接種した場合の事故は、医学的因果関係が明確なものだけを健康被害の対象にすべき。

・予防接種との因果関係の証明が難しいため、その対応に統一性が欠けることが問題である。

・発生した場合の疫学的、病理的に分析をきちっと行える体制を作り、公平な判断がされるべきである。

・民間保険会社とタイアップして、接種料金に少額上乗せするだけの予防接種保険はできないか。

・現在の方法を充実させる。

 

3.有効性の立証

・ワクチンの有用性に関する明確な見解を国として公表したほうがよい。

・ワクチンの有効性に疑問がある。

・予防接種を受けた者に対する有効性の調査をしてほしい。

 

4.手法・研究

・診断する医師の知識を高めるため、接種従事者教育を実施する。

・かかりつけ医で接種する。

・問診・予診の一層の充実が必要である。

・ワクチンの効果・副作用等について接種前によく説明することが必要である。

・少しでも疑問のある場合は接種を中止する。

・卵アレルギー及びゼラチンアレルギーについての問診を十分に行うべきである。

・接種医における注意事項の遵守。

・ショック等のアレルギーが疑わしい人に対する皮内テストを実施する。

・インフルエンザ流行前(11月)に予防接種を行うことにより、紛れ込み事故が減少するのではないか。

・インフルエンザが流行している地域の接種は控える。

・インフルエンザの1回投与になれば事故が減るのではないか。

・一般診療と部屋、時間帯を分ける。

・自家用車で来院した場合は、接種後すみやかに自分の車内で経過観察をする。

・接種時に保護者の付き添いを義務化する。

・任意接種で接種事故時の責任が個人の為、予防的対応として予診票を作り、予診票に自宅周囲での流行している感染症を記入するようにして紛れ込み事故を少しでも防げる様にしたい。

・学生に対する予防接種は必要ない。老人、幼児等に対する接種が課題である。

・施設入所者以外は個別接種にする。

・接種直後のアナフィラキシーショックについては、接種後20〜30分の観察時間を設定する。

・アナフィラキシーショックなどに対しては、個別接種の方が救急薬品の保管場所が決められており対応しやすい。

・副反応の出た際は、軽微なものでも必ず医療機関への受診が必要である。

・有症状となったら、ペア血清をとっておく。

・保健所・幼稚園・学校等の集団において、接種計画を策定してほしい。

・予診票を統一してほしい。

・ワクチンのラベルの色と問診表の色を統一し、問診表もA5かA4に拡大してほしい。

・インフルエンザ用の予診票を作成してほしい。

・高齢者に予防接種すると発熱することが多い。一般状態をよく見てから接種する必要がある。

・接種後24時〜48時間に髄膜炎に似た激しい頭痛、嘔吐を訴え治療したケースが数例あった。

・副反応は接種後の発赤、硬結等の局所反応が主である。

・基礎疾患を有するもの等への接種を検討してほしい。

・中枢神経系の合併症について研究を進めてほしい。

・37.5℃以上は接種を見合わせる指示が出ているが、37.0℃以上で接種し、事故があった時は、医師の過失ありとの判例がでている。明確な指示が必要である。

・使用するワクチンは、財団法人製(化血研、阪大微研、北里研、千葉血清)のを使用し、使い捨て注射器も20年前から実施している。

・インフルエンザに関しては、個別・任意・自己負担となれば、接種後の事故と関しては、医師と患者との間で、問題解決しなければならない。一般外来の医師と患者との関係と同様である。

 

5.ワクチンの改良

・ゼラチン等を含まないできるだけ副作用の少ないワクチンの開発・製造をメーカーに望む。

・インフルエンザワクチンを注射液から点鼻式(経鼻・鼻腔内噴霧型)ワクチンに変更すれば副反応が減少するのではないか。

・有効で副作用の少ないワクチンの開発に大きな予算を付けるべきである。

・ワクチン力価(弱毒化)を数段のレベルに分けた供給が必要である。投与量による調節の外にワクチン種類として低力価値副作用のものと一般力価と2種以上あれば、事故率も違うのではないか。

・幼児・学童に対しては、応急薬等の投与量(主に注射)が大人の何分の1等でなく、必要量(必要単位)のアンプルの製品化が必要。

・卵アレルギーを持っているものに対し、組織培養細胞を用いたワクチンを使用できるようにしてほしい。

・インフルエンザの流行型に対応したワクチンが製造できるかが課題である。

・十分な量のワクチンを用意すべきである。

・アマンタジンの病名も追加が検討されているが、予防効果が期待できるのではないか。

・現在のワクチンは副作用は極めて少ない。

・三混、二混、日本脳炎は1人分用のワクチンを作っていただきたい。

・BCGは現在5人分で1セットになっているが、1人分用も販売していただきたい。

 

6.広報

・マスコミが及ぼす影響は大きいのでは中立・的確な報道をすべきである。

・マスコミより先に医療機関へ周知すべきである。

・マスコミへの対応を早く確実にすること。

・インフルエンザワクチンの副反応・インフルエンザワクチンの予防効果を説得力のあるデータでマスコミなどを通じ国民に啓発すべきである。

・インフルエンザ予防接種の効果には疑問という一般的先入観が確定してしまい、正しい評価がされていない。

・健康被害に対する啓発をすべきである。

・予防接種の事故、副反応、健康被害等を混同しがちである。

・紛れ込み事故において、病状とワクチンとの因果関係が明確に区別できる世論作りが大切である。

・医薬品副作用被害救済制度の対応について周知徹底する必要がある。

・インフルエンザ発生動向を迅速正確に情報提供していただきたい。

・インフルエンザワクチンによる健康被害の実態を正確に示していただきたい。

・インフルエンザと「かぜ症候群」とは別個の疾患であることを徹底(一般国民と診療担当者に対しても、両者を区別して考えることの重要性について)する広報活動。

・任意接種時やアレルギー等に対する接種医向けのマニュアルを作製してほしい。

・被接種者に対するわかりやすい教育ポスター、冊子を作成してほしい。

・ウイルス分離が日常の検査になるよう検査単価を下げて、検査法についても広く一般に広報してほしい。

・予診をとっても避けることが不可能な副反応がでることを周知させる。

 

7.問題なし、必要なし

・現在の対応で問題はない。

・インフルエンザの予防接種は必ずしも必要なものではない。

・任意接種の場合は自己負担が妥当である。

・インフルエンザは十分な情報提供による同意を原則とした任意接種が望ましい。

・現法によれば任意の予防接種であるので、医薬品副作用被害救済基金法に基づくこともやむを得ない。

・不可抗力的な場合が多いので仕方がない。

・個々のケースによって対応が異なるので画一的な対応は不可能である。

・大きな副作用が発生していない。

 

8.その他

・インフルエンザ予防接種を受けない自由があると同様に受けたい人の自由をもっと尊重させるべきである。

・インフルエンザ予防接種率が低下すると爆発的流行が心配である。

・副反応については、十分、慎重にすべきだが、医師が萎縮してはいけない。

・脳炎・脳症等の中枢神経合併症や肺炎による死亡例やインフルエンザの世界的大流行が予想されていることを考えると、乳幼児及び老人へのインフルエンザワクチン接種は国策として推進すべきである。

・副作用のおそれのある数人のために全体の接種を止めると言うのは問題である。

・インフルエンザ接種に、かかわりたくない医師は、施設にワクチンを置かないことで、対処可能である。

・インフルエンザワクチンの予防効果を検討する場合には、必ず臨床症状が記録され、かつウイルス分離により感染ウイルスが(厳密な条件下で)証明できた成績以外はインフルエンザとして取り上げない。