平成15(2003)年11月1日

「青森県はしかゼロプロジェクト」についての提案

青森県知事     三村 申吾 殿
青森県健康福祉部長 山中 朋子 殿

青森県小児科医会会長 縄田 與幸

提案の背景

 全世界で麻疹(はしか)の根絶に向けてWHOや各国保健関係者の懸命の努力が続く中で、日本では麻疹対策が遅々として進まず、年間10〜20万人の麻疹患者が発生し、数十人の子どもが亡くなっているものと推計されています。その日本の中で、青森県は2002年春にはワースト1の流行県となり、2003年の上半期も全国15位の発生数であるのみならず、全国各地で展開されている「はしかゼロ運動」や「予防接種の全県広域化」においても取り組みが大きく遅れ、このままでは麻疹対策後進国である日本の中で更に最下位を争うような事態になりかねません。青森県の子どもたちの健康を守るために、麻疹制圧・根絶への取り組みは喫緊の課題となっています。
 私たち小児科医はこれまでも麻疹対策の重要性を訴え続け、県や各市町村もある程度の対策をとってこられたことは承知しておりますが、その延長線上で麻疹をゼロにすることができないのは誰の目にも明らかです。今度こそ「はしかゼロの青森県」を実現する最後の機会であるという認識の下に、行政まかせにせず私たち自身も最大限の努力で取り組んでいくことを決意しましたが、この問題は医療、行政、保健関係者のみならず社会全体が一体となり、明確な政治・社会的意思(political will)をもって取り組まなければ実現することはできません。
 よって、ここに官民一体の協働事業である「青森県はしかゼロプロジェクト」を提案いたします。この事業で必要とされる予算に比べて、成果が達成されたときに県民が受けるメリットは非常に大きく、「安心して子どもを育てられる青森県」を実現するための大きな一歩になることは間違いありません。来年度からの事業の実現に向けて、県民の健康を預かる最高責任者である三村知事には最大限の配慮をもってご支援ご決断下さいますようお願いいたします。

目標

  1. プロジェクト開始後5年間(〜2009年3月)で1歳児の麻疹接種率を全市町村で95%以上にして、県内の麻疹患者発生をゼロにする(単発の輸入例をのぞく)
  2. 全国の運動と連携しつつ県内全市町村の接種率95%以上を維持し、10年間(〜2014年3月)で国内の患者発生がほぼなくなった排除 (elimination) 期に到達することを目標とする

プロジェクトの概要

  1. 県小児科医会や県医師会が主体となり、医療、行政、保健、保育、教育、マスメディアなど各種団体の代表者からなる組織をつくり、互いの立場で役割を果たしつつ官民一体となった協働事業を進め、その成果を毎年評価し、結果として「はしかゼロ」という明らかな成果をあげる
  2. 麻疹の予防接種率向上の障害となっている要因を取り除くために (1) 接種率調査と患者全数把握 (2) 未接種者への接種勧奨 (3) 教育・広報活動などの様々な活動を展開するが、その中でも (4) 青森県に生まれた全ての子どもが、どこの市町村に住んでいても、いつでも安心してかかりつけ医で接種できる「予防接種の全県広域化」が早期に実施されなければ目標を達成することはできない
  3. そのためには、このプロジェクトの実施にあたって、
    • 県は熱意をもって市町村に対して指導的役割を果たし、諸要因を調整し、全体をコーディネートする
    • 市町村は住民が接種しやすい環境を主体的に整備し、接種率の調査や未接種者への勧奨などを漏れなく行う
    • 小児科医会はプロジェクトの立案に際して主導的役割を果たし、接種率や流行状況などの情報を統合・評価し、保育・教育関係者やマスメディアなどと協働して広く県民全体に麻疹制圧への理解を深めさせ、責任を持ってプロジェクトを推進していく

具体的活動と年次目標(案)

  1. はしかゼロプロジェクトを結成して具体的計画を検討し(2003年度)、本格的に始動(2004年4月)
    • プロジェクト検討委員会(本部・青森)および各地域に実際の活動を行うためのプロジェクトチームを設置する
  2. 日本小児科医会で新設する「予防接種週間」におけるキャンペーンの実施と休日接種の試行(2004年3月第1週)
  3. 全市町村で1歳半健診と3歳健診における予防接種率を算定し(2004年4月)、毎年データを公表する
  4. 市町村の台帳や保育園・幼稚園入園・就学時健診などを用いた未接種者のチェックと接種勧奨システムを整備する(2004年4月)
  5. 麻疹患者全数調査を開始し(2004年4月) 、同時に患者発生時の連絡情報システムを整備する
  6. 全県で予防接種の広域化開始(2005年4月)  具体的な方法は今後検討されるべきですが、望ましい方式としては、
    • 依頼書は不要(全ての市町村で相互乗り入れ)
    • 接種料金は統一するか、できなければ居住地の料金で
    • 契約は県医師会長と市町村長で
    • 請求・支払い事務は郡市医師会を通じて、または医療機関から市町村へ
    • 予診票は統一する
    • ワクチンは医療機関で購入(ワクチン代込みの料金)
    • 広域化する予防接種の種類は三種混合、二種混合、麻疹、風疹、日本脳炎、BCG、インフルエンザの7つ
    • 個別接種を原則とするが、地域によって暫定的に集団接種を残す場合は個別接種の料金を新たに設定する
  7. 一般・保護者向けおよび医療・保健関係者向けのシンポジウムや研修会を開催して、麻疹や予防接種一般、副反応などについての知識・認識を共有させる
    • 一般・保護者向けの予防接種シンポジウムの開催(2004年度中に青森市で1回)
    • 保健・保育・教育関係者向けの研修会を実施(2004年度中に青森市以外の3会場で各1回)
    • 教育・保育施設用および医療施設用「麻疹対応マニュアル」の作成(2004年度)
  8. 県や市町村、マスメディア、協賛企業などともタイアップした継続性のあるキャンペーンの実施
  9. 一般向けのホームページやプロジェクト関係者用のメーリングリストを設置し、情報公開および情報交換に活用する

資料(別紙)

連絡先

  • 青森県小児科医会事務局
    〒031-0804青森県八戸市青葉2-17-4八戸市医師会内
    TEL 0178-43-3954 FAX 0178-45-6837
    担当理事(文責) 久芳康朗(E-mail : ykuba@hachinohe.aomori.med.or.jp

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