■ 「平成13年度 乳幼児保健講習会」報告 八戸市医師会『医師会のうごき○月号』掲載 くば小児科クリニック 久芳康朗
日時 平成14年2月17日 (日) 乳幼児保健講習会は「保育園嘱託医、幼稚園医の組織化を推進し、地域医療の一環として行う乳幼児保健活動を円滑に実践するために必要な知識を修得する」ことを目的に平成6年より開催されており、今回は「子どもが心身ともに健やかに育つための育児支援を考える」をテーマにシンポジウムおよび講演が行われた。その詳細については日医雑誌に掲載される予定だ。 シンポジウム
「産婦人科医・小児科医地域連携事業の普及・発展をめざして−出生前小児保健指導(プレネイタル・ビジット)モデル事業−」 講演 1) 「今の日本の教育を考える 子どもたちに21世紀を託すために」 寺脇 研(文部科学省大臣官房審議官) 学校5日制(週休2日制ではない)の実施を前にして、教育改革の真の狙いについて以下のような説得力のある熱弁をきくことができた。教育内容の3割削減というのは伝え方を誤った。各学校に自由裁量権を3割与えたということであり、習熟度別教育やそれぞれの地域で必要な教育内容を学校や教育委員会の裁量で取り入れることができる。各地域の教育委員には是非とも医療関係者が入って欲しい。学校医もご意見番として学校にもの申していただきたい。 学校5日制はこれまでのゆとり教育とは全く違う。学校は地域のものであり、地域が元のままだと学校は変わらない。学校を変えることにより、地域や家庭が変わるように水を向けている。学校をどうするかをみんなが考えなくてはいけない。日本の親や地域社会に底力はある。あとはやる気だけだ。行政は地域社会が受け皿になるようなインフラの整備には力を入れる。 沖縄は経済的には貧しいが、一番理想に近い。何よりも大事なのは、地域の中で子どもから老人まで健やかに楽しく生きることだ。 女子少年院を見学したところ、日本中のどこの中学校よりも子どもたちの表情が明るい。そこでは全ての大人が自分たちを愛し、育てようとしてくれる。脱走しようとする子はほとんどいない。塀は外から変な大人が入ってくるのを防ぐためにある。これは一体どういうことか。 学力は学校だけでつけるものではない。ゆとり教育で最低レベルの学力は上がる。一部のエリートのことだけを考えていれば良いわけではない。全ての子どもにより良い教育をと考える立場は教育も医療も一緒だ。 今の大学生は社会が求めている力がついていないことに気づき真剣に悩んでいる。大学生の望んでいる3つの力、すなわち子どもたちが21世紀を生きる力とは、 (1) 自分の考えを持つ力 (2) 自分の考えをちゃんと伝えられるコミュニケーション能力 (3) 意見の違いを調整し相容れていく能力 であり、これらを身につけていくのが総合的学習だ。 もう一度家庭と地域と学校とで子どもをみる社会にしていくのか、いま大きな岐路に立たされている。この改革が受け入れられずに何もかも学校に任せるということであれば、学校7日制にして中央集権的教育に戻さなくてはいけない。 2) 「子どもの問題(児童虐待等)に対する日本医師会の取り組み」 雪下國雄(日本医師会常任理事) 虐待の報告件数は、平成12年までの10年間で17倍に増加している。英国でも同様であり、10年で20倍になっている。医療機関から報告されたものは平成11年には約5%だが、何らかの形で医師が関与しているのはその数倍あるはずであり、医師に対する世間の期待も大きい。平成12年に虐待防止法が制定され、医師に早期発見の努力義務が課せられ守秘義務は外された。医療機関報告例は年齢構成が異なり、63%が3歳未満で、0歳児のうち生後半年までが8割を占めた。性差は男児が多く、思春期を過ぎると女児の性的虐待・心理的虐待が多くなる。科別では小児科が60%で、精神科では心理的虐待やネグレクト、脳外科や整形外科では身体的虐待、産婦人科では性的虐待が多かった。主たる虐待者は実母が半分、実父母で8割を占めた。以下、虐待例の詳細な分析が報告された。 関連ページ |
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