■ くば小児科クリニック 院内報 2006年4月・5月号


● 院内版感染症情報 〜2006年第19週(5/8〜5/14)


        2006年 第03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
インフルエンザ    4 13 15  8 17  8  0  2  1  0  0  0  1  2  5  2  2
咽頭結膜熱        0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
A群溶連菌咽頭炎  1  0  1  0  0  1  1  0  1  3  0  0  2  1  1  0  0
感染性胃腸炎      9 10  6  5  8 19 16 20 14 11  3  7  8 11  5  3  6
水痘              2  1  1  0  4  0  1  3  1  5  0  0  2  0  1  1  4
手足口病          0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        2  0  0  1  0  2  2  1  1  0  0  0  0  1  1  1  1
突発性発疹        0  0  2  1  2  2  1  0  1  0  0  0  2  2  0  0  0
風疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    0  1  0  0  0  0  1  1  1  0  1  1  1  0  0  0  0
 3月中にほぼ終息したインフルエンザが、4月下旬にかけて一部の園や学校で小流行を引き起こしていました。これも5月中旬には再び終息する見込みです。
 4月まで多めで推移したロタウイルスを中心としたウイルス性胃腸炎も、GWをはさんで暖かくなるにつれ減少してきています。新学期と共に水ぼうそうの小さな流行がみられています。その他には、咳が多くなるタイプの風邪が流行の中心です。
 6月にかけて、高熱が続き結膜炎を合併するアデノウイルスや、手足口病・ヘルパンギーナなどの夏かぜタイプが増えてくる季節に入ります。
 行事が続く時期ですが、普段から十分な睡眠で疲れをとり、具合が悪いときにはしっかりと休ませるようにしましょう。無理して登校・登園させると、かえって長く休まなくてはいけなくなります。


● 禁煙お遍路、マークさんと一緒に歩こう(6/18)

 前号でお知らせした、お遍路さん装束で日本列島縦断ウォークを続けているマーク・ギブンズさん夫妻が、5月上旬には京阪神まで到着し、各地で支援・PRのイベントが開催されています。
 6月18日(日)に八戸で講演会と市内禁煙ミニウォークを開催しますので、皆さんのご参加をお待ちしております(詳しくは別紙案内をご覧下さい)。翌19日朝には青潮小5年生との交流会も予定されています。
 なお、前日の17日(土)は午後休診となります。午後1時から20kmほど一緒に歩く予定ですが、こちらも一緒に歩きたい方はご連絡下さい。


● 路上喫煙禁止条例制定の署名にご協力下さい

 2002年の東京都千代田区に始まった路上喫煙禁止条例制定の波は、すでに全国多数の自治体に拡がっています。静岡市では一人の中学生の請願を受けて条例制定に乗り出しましたが、青森県内では太平の眠りについたまま何の動きもありません。
 路上喫煙が非常に危険で健康を害する行為であることは、何も大都会に限った問題ではありません。狭い歩道で、夏祭りの人混みで、通学路で、住宅街で、バス停で、我が物顔でタバコを吸ってポイ捨てしていく姿を見かけない日はありません。本来であれば国が法制化して禁止すべき問題なのですが、それを待っていることはできません。

 まず、今年の重点目標として青森・弘前・八戸の3市で署名を集めて2006年6月議会の前に請願書を提出し、その他の全ての市町村にも同じ内容の陳情書を提出します。同時に、中心街、町内会、教育・保育関係、PTA、街づくり団体や各種市民団体など、幅広い方面の方々が賛同して一緒に取り組んでくれることを期待しています。
 受診した患者さんに署名をお願いしておりますが、もし可能でしたら用紙をお持ち帰りいただき、家族・親戚、お友だち、職場の方などにも署名をお願いできましたら幸いです。全部埋めなくても、何名でも結構ですので集まり次第お持ち下さい。(FAXも可)

 請願項目の意味がわかりにくいかもしれませんが、1番目は罰則のない「努力義務」で、2番目は千代田区などと同じように禁止区域で違反者から過料を徴収することを意味しています。全国で制定されている条例の標準的な内容です。
 第一次集計分として5月下旬までに届いたものを請願署名として提出しますが、その後も署名運動は継続していく予定です。ご協力の程よろしくお願いします。
 青森県タバコ問題懇談会のホームページから署名用紙をダウンロードすることもできます。また、ネットアンケート「あなたは路上喫煙禁止条例に賛成?反対?」も実施しておりますので、のぞいてみて下さい。(http://aaa.umin.jp/


● IT時代と子どもの人格形成
      柳田 邦男(ノンフィクション作家・評論家)

 1990年代後半から、動機の理解に苦しむ残虐な少年犯罪が顕在化している。岡田尊司氏(京都医療少年院精神科医)の『脳内汚染』と、その中で引用されている寝屋川市教育委員会調査結果によると、長時間ゲームやネットに耽る子どもは、否定的な自己像と現実的課題の回避、対人関係における消極性、傷つきや復讐へのとらわれ、抑圧傾向と攻撃性、共感性や状況判断力の不足、無気力・無関心な傾向などがみられたという。

 佐世保の事件の加害女児の人格特性として、1)自分を見つめ言語化することが苦手、2)基本的な安心感が希薄で他者への愛着が形成されにくい、3)文脈をとらえて理解する力が未熟、4)表現回避か攻撃への両極端に走る傾向がある、という4つが精神鑑定の結果概要の中で述べられていて、寝屋川調査とぴったり一致する。

 この女児は、幼少期から母親の無関心により基本的な愛着が形成されず感情が抑圧され、テレビ漬け育児からゲームやメールへと移っていく中で感情の分化が育たず、普段はおとなしいが怒ったら怖い、キレやすい子どもに育っていった。これらの特徴は今の子どもに普遍的にみられるものだが、それが重大な事件に連鎖的につながっていったことを重視すべきで、短絡的な原因論ではなく、それら一つ一つを丁寧につぶしていくような対策を取らなければならない。

 罪を犯した少年の精神発達は6−8歳の状態で止まっていて、自己中心的で、物事を白黒でしか判断できず、迷うことがない。某国の大統領にも似ている。

 メディア、特にゲームの影響は、麻薬の習慣性、依存性と同じであり、より強い刺激を求めるようになっていく。岡田氏は「子どもに笑顔や夢を与えようと買った玩具が子どもの脳を燃え尽きさせ、凶悪な犯罪者にまで仕立て上げてしまうこともある」と警鐘を鳴らしている。

 いま早急になすべきこととして、日本小児科医会の提唱するノーテレビデーの取り組みや、渡辺久子氏のアタッチメント形成理論などが紹介され、政府が進めている小中学校への情報教育をやめさせ、人格形成、ものを考える力、言語力、きめ細やかな感情を育てる教育の必要性が強調された。


● 書評:走る哲人
『走る人!鹿児島−青森30日間2300キロ激走日誌』を読んで

 2005年早春、卒業を間近に控えた一人の大学生が鹿児島から青森まで約2300キロを30日で走破した。1日平均80キロ弱を休みなく走り続けるという無謀とも言える挑戦を有言実行で成し遂げ、その克明な記録を自ら書き記した「熱血感動もの」との予想のもとに、感動と活力を少し分けてもらおうという安易な動機から読み始めてみた。しかし、その期待は良い意味で裏切られることになる。

 自身がクレイジーチャレンジと命名するこの挑戦は、前半で早くも壁にぶちあたる。広島を前にして、膝の上が大きく腫れ上がり、歩く程度の速さでしか進めなくなる。その後も深夜に及ぶ行程、危険なトンネル、心の緩みなどと戦いながらひたすら前に進み続ける。

 なぜそこまでして走るのかという誰もが抱く疑問に対し「自然と戦って人間の意志の強さ、肉体の強さを証明したかったから」だと明言する。この段階ではしかし十分に納得が得られたとは言えない。

 さらに、良いイメージを描くことの大切さを繰り返し強調する。人はイメージした以上のことを達成することはできない。そして、大きな目標を達成するために、小さな約束、毎日のノルマを守ることを自分に課していく。

 毎日ひたすら走り、休み、超人的に食べ、そして眠る日々の中で、回復力が疲労を上回る「超回復」を示し、疲労がピークに達しているはずの東北に入ってから、どんどん元気になり快走を重ねていくのだ。24日目には「人間の限界は自分で思っているよりずっと奥にある」とまで言えるようになる。  そして、青森県に入ってから2つの小さな奇跡が起きるのだが、それは偶然ではなく自身で呼び寄せたものとしか考えられない。

 この挑戦は決してクレイジーでも無謀でもない。やり残したことは何もないと言い切る大学生活の豊かな経験の中で育まれたコミュニケーション能力、徹底した自己管理、イメージトレーニング、そして広がり続ける支援の人の輪。その中で活力をもらい、逆に与え続けながら、読者を巻き込みつつゴールを迎える。

 人はイメージ以上のことをやり遂げることができたのだ。

 これだけのチャレンジを常人はとても真似することはできない。しかし、月並みな表現だが、私たちは人生というゴールの見えない自分との戦いの中で、何度も壁にぶつかり、希望を失い、将来のポジティブなイメージを描くことができないまま疲弊を重ねている。

 その中で安易に癒しを求めるのではなく、自らへの限界に挑戦して打ち勝つことで、自分自身にも周囲の人にも新たな刺激を与え続けているこの若き「走る哲人」の生き方に、率直に学ぶべきところが大きいのである。
(インターネット新聞JANJAN掲載)


○ 5〜6月の診療日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定

 4月から5月にかけてすべて暦通りの診療で、臨時休診はありません。6月17日(土) は午後休診になります。急病診療所当番は5月4日(祝) 夜、21日(日) 昼で、6月の当番は未定です。
 赤ちゃん教室は5月20日(土)。「育児相談・子どもの心相談」は水曜・土曜午後、平日夕方なども可能です(初回のみ無料)。喘息教室は未定。  「禁煙・卒煙外来」については先月号記事をご覧ください。
 メール予約システムをご利用下さい。(ホームページのメニューから入るか、yoyaku@kuba.gr.jp 宛まで)

☆ NEWS:ニコチンパッチが早ければ6月から保険適用になる見込み


発行 2006年5月16日 通巻第121号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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☆ 当院は「敷地内禁煙」です


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