■ くば小児科クリニック 院内報 2006年2月・3月合併号


● 院内版感染症情報 〜2006年第13週(3/27〜4/2)


   2005-2006年 第49 50 51 52 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
インフルエンザ    0  2  2  1  1  3  4 13 15  8 17  8  0  2  1  0  0
咽頭結膜熱        0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
A群溶連菌咽頭炎  0  0  0  0  2  0  1  0  1  0  0  1  1  0  1  3  0
感染性胃腸炎     27 20 10  5 14  4  9 10  6  5  8 19 16 20 14 11  3
水痘              0  2  5 10  4  7  2  1  1  0  4  0  1  3  1  5  0
手足口病          0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        0  2  0  0  0  0  2  0  0  1  0  2  2  1  1  0  0
突発性発疹        0  1  0  0  0  0  0  0  2  1  2  2  1  0  1  0  0
風疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    0  1  0  1  0  2  0  1  0  0  0  0  1  1  1  0  1
☆ 3月にかけてロタウイルス、RSウイルス、溶連菌が流行

 今年のインフルエンザは、2月中旬がピークで3月初めまで流行が残りましたが、その後ほぼ終息しています。
 2〜3月にかけて、嘔吐と下痢、発熱が主症状となるロタウイルス性胃腸炎が流行しました。例年春先まで流行が残ります。
 同じ厳冬期から春先にかけて毎年流行るRSウイルスによる気管支炎・細気管支炎では、特に乳児で通常の治療では改善せずに入院加療を要する場合もみられました。似たような経過で咳がひどくなるマイコプラズマ感染症は、マクロライド系の抗生物質(クラリスなど)が効きますので、咳が多く急速な進展が懸念される場合に主に使われます。
 水ぼうそう、おたふくかぜの局地的な流行が残っています。溶連菌感染症は、前号で少な目の印象とお伝えしましたが、その後増加傾向にあります。


● 青森県内の「広域予防接種」が始まります

 2003年秋に青森県小児科医会から県に「はしかゼロプロジェクト」の提言書を出し、私もその作成に関わってきました。その中で、県内市町村の壁を超えて予防接種ができるようになる「広域化」を強く提言しました。実は、その時点で青森県は広域化が実現あるいは検討されていない数少ない県の一つだったのです。

 それから2年半が経過してしまいましたが、一昨年から広域化への検討が軌道に乗り、やっとこの4月から実現の運びとなりました。当初懸念された参加自治体も、全市町村が加わることで形としては整いました。これまでよりも市町村の垣根を越えた接種がしやすくなり、また一歩前進できたものと考えています。
 しかしながら、当初考えていたよりも制限が加えられてしまいました。今後、事業が軌道に乗ってきたところで、再度検討して制限が緩和されるように期待したと思います。

 対象者は、
 1)やむを得ない事情により接種機会を逃した者
 2)里帰り出産等のため実家などで予防接種を希望する者
 3)接種要注意者(基礎疾患を有する者等)でかかりつけ医がいるなど
   住所地市町村外での予防接種を希望する者 等
で、「市町村の判断により、かかりつけ医が住所地市町村外にいる者等も対象者とすることができる」とのただし書きがついています。

 予防接種の種類は、BCG、三種混合、麻疹・風疹(MRワクチン)、二種混合、日本脳炎(現在休止中なので再開後)で、定期接種の中でもポリオとインフルエンザ(高齢者)は広域化の対象にはなっていません。

 接種を希望する方は必ず市町村に問い合わせて許可をもらってから医療機関に申し込まなくてはいけません。各市町村では、対象者の判断について、なるべく弾力的に運用してもらうよう申し合わせしており、1回許可が出れば2回目以降は問い合わせ不要のところが大半ですが、A市のように2回目以降も必ず許可をもらうようにという厳しいところもあります。逆に、最初から届け出不要という本来の趣旨に沿った自治体もあり、こういうところが増えてくるように今後働きかけていく必要がありそうです。

 当院は地理的には八戸市と階上町の方が大半で、階上町は八戸と同じ個別接種で八戸市医師会(市内の医療機関)と契約していますので、これまで通りの接種となります。それ以外の県内の市町村の方で、接種機会を逃した方、里帰りの方、住民票は残したまま一時的に八戸に住んでいる方などはご利用ください。逆に、八戸の方で県内の他の市町村に行かれる場合に、同じように利用することもできます。

 なお、県外の方でも市町村の発行する「依頼書」をもらってくれば、どこの市町村でも接種は可能ですので、各自治体にお問い合わせください。


● 1歳になったらMRワクチンを!

 これまで、「1歳になったら麻疹ワクチンを!」を合い言葉に、全国の小児科医や小児保健関係者が接種率の向上と早期接種に努力を重ねてきた結果、この3年間で全国の麻疹患者報告数は激減しています。
 しかし、ここで油断して接種もれの子が増えてくると、再び大きな流行が繰り返されるかもしれません。

 何度もお伝えしていた麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)の2回接種が、4月から始まります。それに加えて上記の広域化の効果も出てくれば、麻疹制圧の光も見えてくるかもしれません。ここが正念場です。
 これからは新たに「1歳になったらMRワクチンを!」に切り替えて、早期にできる限り多くの子が接種を済ませるよう、引き続き働きかけていくことになります。

 MRワクチンについては、いくつか注意があります。
 5〜6歳(幼稚園年長相当)に実施されるMRの2回目ができるのは、当面、MRの1回目をこれから接種する子だけです。(近い将来、麻疹(M)と風疹(R)の単独ワクチンを受けた子にも拡大される予定です)

 ただし、今までMもRも接種していない5〜6歳児は、1回目の接種として4月から接種することができます。その場合、2回目はありません。

◎ 1歳児で麻疹または風疹のどちらかしか接種していない場合、あるいは片方に罹患してもう片方は接種していない場合

 このような場合は3月末までに接種を済ませるように市からも通知がいき、この院内報でもお伝えしてきましたが、それでも接種しびれてしまった方に対して、4月から新たな措置として、MまたはRの単独ワクチンを「法律によらない任意接種」として市が公費を負担して無料で接種できることになりました。
 2歳以上の子には適用にはならず自費の任意接種になります。

→ここまで書いて、どんでん返しのニュースが飛び込んできました。(3/31)

 厚生労働省では、このような場合の方のために、数か月以内にMとRの単独ワクチンを定期接種に戻す予定だということです。それ以上の詳しい情報は出てきていません。これは、前号にも書いたように、今回の改正に対して全国の小児科医が半年間強く主張し続けていたことであり、年度末の最後の日になってやっと改めることにしたという行政の不手際と言え、またまた呆れ返っているところです。(もちろん何もしないよりましではありますが)

 それまでに数か月の間、1歳児については八戸市の公費(任意接種)で接種することになりますが、2歳以上の子については、待ってもらうのか、自費で接種するのか、復活した場合にこれまでと同じように90か月までできるのかなどという問題も、今のところ何とも言えません。追加の情報は報道や広報、当院のブログなどをご覧ください。


● 4月から禁煙治療が保険適用になります

 これまで、禁煙治療には健康保険が使えず診察代も薬代も全額自費になっていましたが、すでに報道でも伝えられているように、4月から「一部で」保険が適用されることになりました。
 しかし、肝心のポイントがきちんと報道されていないので、これまでの3割の負担で、どこの医療機関でも受診できると誤解されている方がいらっしゃるかもしれません。

 一番大きいのは、禁煙治療の負担で主な部分を占める薬代(ニコチンパッチ代)には保険が適用されなかったため、これまで通り全額自費になってしまうことです。(この点については引き続き保険適用になるよう強く働きかけているところで、近いうちに進展があるかもしれません)

 また、診察料として通常の初診料・再診料に加えて新たに「ニコチン依存症管理料」が設けられることになります。当院ではこれまで、禁煙に踏み切りやすいように自由診療の診察料を低く設定してきたこともあり、保険適用によって自己負担が下がるというメリットはほとんどありません。
 そのため、「管理料」を加算しない一般診療で「ニコチン依存症」の治療を行うことも検討しましたが、これは認められないことになり、熟慮を重ねた結果、次のような理由から新たに決められた方式に従って禁煙治療を行うことにしました。

・国内に三千万人以上いる喫煙者の大半は「ニコチン依存症」という病気であり、自力で禁煙することは容易ではなく、医学的な治療と支援が必要であると医学界だけでなく国も初めて認めたこと。(諸外国ではすでに常識となっていることですが)
・ただし、今回の保険適用には「喫煙者に禁煙してほしくない」タバコ業界から猛烈な圧力がかかり、その実現が最終段階まで危惧されたこと。
・そのため、治療の対象者や治療方法の手順、医療施設の基準などに厳しい制限がかかり、始められる医療機関は県内でも少ないのではないかと予想されること。
・当院では、これまでの禁煙治療の経験などもあり、呼気一酸化炭素測定器を新たに導入すれば、治療を開始することが可能なこと。
・今回の保険適用化にあたり、全国の医療機関から禁煙の成功率などを報告して集計することになっており、その実績が認められれば、更に次回・2年後の改定でより多くの人に少ない負担で治療を提供できるようになること。
・そのためには、青森県内でも高い禁煙成功率の実績をつくっていくことが必要であり、県内の禁煙活動の旗振り役の一人として社会への働きかけを続けてきた当院にもその責務があると考えられること。

 保険による治療の対象となる「ニコチン依存症」の条件は次の4つ。
 1)直ちに禁煙しようと考えていること
 2)ニコチン依存症スクリーニングテストで基準以上の点数
 3)1日の喫煙本数×喫煙年数≧200
 4)禁煙治療を受けることに文書で同意していること

 もちろん、これに該当しない人は禁煙しなくてもいいということではなく、ニコチン依存度の強弱にかかわらず全ての喫煙者は禁煙に踏み切ってほしいし、自力で禁煙できない方には、少し費用はかかりますが自由診療で標準的治療に準じた治療を行うこともできます。むしろ、ニコチン依存度が低く、吸い始めて間もない段階で治療して禁煙することにより、自分だけでなく家族の健康被害も最小限に食い止められ、将来の保険財政上のメリットも大きくなるので、本来この制限はナンセンスなのです。

 禁煙治療の詳細はここで触れられませんが、約8週間の投薬と、12週間まで全5回の受診スケジュールとなります。日程など若干の調節は可能ですが、全国共通の標準的治療に準拠したかたちになります。

 なお、禁煙外来の案内(ホームページおよびパンフレット)は全面的に改定する予定ですが、4月以降にずれ込むことになり、それまで混乱される方がいらっしゃるかもしれません。この文面と、お問い合わせの時や診察時の説明で対応させていただきますので、少々お待ちください。


● おかげさまで、開院10周年

 通院していただいている患者さんやご家族には、あるいはご迷惑をおかけしたり、至らない点も多々あったかと思います。10周年の節目に際して、診療報酬改定や院内のコンピュータシステムの入れ替え、禁煙外来や講演の準備などが重なって、特別なことができないまま月日が過ぎ去ってしまいました。今後とも、少しずつ改善を加えながら、一歩一歩あゆみを重ねていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。気がついたことや、わからないことなどがありましたら、いつでもご指摘、ご質問ください。


○ 4〜5月の診療日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定

 4月から5月にかけてすべて暦通りの診療で、臨時休診はありません。急病診療所当番は4月9日(日) 昼、22日(土) 夜、5月4日(祝) 夜の予定で、その後の5月分については決まっていません。6月17日(土) は午後休診になる予定です。
 赤ちゃん教室は5月20日(土)。「育児相談・子どもの心相談」は水曜・土曜午後、平日夕方なども可能です(初回のみ無料)。
 「禁煙・卒煙外来」については本文記事をご覧ください。
 メール予約システムをご利用下さい。(ホームページのメニューから入るか、yoyaku@kuba.gr.jp 宛まで)

☆ 号外ニュース

 禁煙を訴えて鹿児島から北海道まで徒歩で縦断するマーク・ギブンズさんが6月18日に八戸にやってきます。路上喫煙禁止条例制定を訴えて八戸市内のミニウォークを計画中ですので、マークさんと一緒に歩きませんか。
 詳しくは次号で → http://www.walkabout-tobacco.org/


発行 2006年4月1日 通巻第119・120号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
webmaster@kuba.gr.jp
http://www.kuba.gr.jp/

☆ 当院は「敷地内禁煙」です


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