■ くば小児科クリニック 院内報 2005年12月・2006年1月合併号


院内版感染症情報 2006年第04週(1/23〜1/29)


   2005-2006年 第40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 01 02 03 04
インフルエンザ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  2  2  1  1  3  4 13
咽頭結膜熱        0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
A群溶連菌咽頭炎  0  0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  0  0  2  0  1  0  
感染性胃腸炎      5  6 11 12  3  9 13 22 16 27 20 10  5 14  4  9 10
水痘              0  0  0  0  0  0  3  1  2  0  2  5 10  4  7  2  1
手足口病          1  1  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  2  0  0  0  0  2  0
突発性発疹        2  0  1  0  0  0  0  2  0  0  1  0  0  0  0  0  0
風疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    1  0  1  0  0  0  0  0  0  0  1  0  1  0  2  0  1

☆ 八戸でもインフルエンザが流行期に

 今年のインフルエンザは、八戸地域では11月下旬に初めて検出され、当院では12月中旬より散見されはじめていましたが、年が明けて新学期が始まってから週毎に患者数が倍々に増加していき、第4週には流行開始の目安となる「定点医療機関あたり10名」を突破しました。(当院も感染症流行サーベイランスの定点に指定されていて毎週県に報告しています)

 例年の傾向から推測すると、2月中旬がピークとなり、3月初めまでは流行が残るものと思われます。現在流行中のウイルスはA型がメインです。

 その他には、11月頃から続いているウイルス性胃腸炎が依然として流行しています。2〜3月にかけて、より重症となるロタウイルスによる嘔吐下痢症が増えてくるはずです。

 年末から、水ぼうそうが保育園を中心に流行していて、おたふくかぜも局地的な流行が残っているようです。例年この時期に多くなる溶連菌感染症は、今シーズンは少なめの印象です。麻疹・風疹はゼロが続いています。


● インフルエンザの診断、治療、合併症、登園・登校

症状 年長児や大人で典型的な場合は、突然の高熱と頭痛、関節痛などから始まり、全身の倦怠感が強く、咳は熱のピークが過ぎてからも日を追って強くなります。いったん下がりかけた熱が4〜5日目にかけて再び高くなるのが特徴です(二峰性発熱)。

合併症 気管支炎・肺炎、中耳炎、熱性けいれん、脳炎・脳症などがあり、流行状況やウイルスのタイプによっては、脳炎・脳症で亡くなる子が全国で多発することもあります。インフルエンザではうわごとや譫妄(せんもう)状態などの精神・神経症状を起こすことがあり、熱性けいれんも持続時間が長くなりやすく、いずれも脳炎・脳症の初期症状との区別がつきにくいため救急外来(23時までは急病診療所、それ以降は輪番病院=消防案内参照)を受診した方が無難です。発熱などの主な症状だけのときには、夜間に救急外来を受診しなくても、翌朝一番にみせてもらえば大丈夫です。

診断 典型的な症状・経過で、周囲の流行もはっきりしていれば、全ての人に検査する必要はありません。また、乳幼児では症状や経過で判断するのが難しい場合もあります。インフルエンザの迅速検査は、流行の初期やピークを過ぎた後、症状・経過だけから他の風邪との区別がつきにくい場合などに行いますが、検査結果で100%全てがわかるわけではありません。

 1)検査で陽性(+)→インフルエンザの診断はほぼ間違いない
 2)検査で陰性(−)→インフルエンザの可能性を否定できない

 熱が上がってからの時間が短いときや、鼻水がまだあまり出ていないようなとき、綿棒で鼻の奥の方までちゃんとこすれなかったときなどには、本当はインフルエンザなのに検出されない場合があります。そういうわけで、検査の時には鼻の奥が少し痛くなる程度に3回くらいこすり取ることになりますが、必要な手技ですのでご容赦下さい。

 なお、昨年、一部の学校でA型とB型を区別するために検査結果を報告するように言われたケースがありましたが、医師会から教育委員会に申し入れて、全員にそのような検査をする必要はないことを確認してあります。

治療 抗インフルエンザ薬である「タミフル」が中心になります。漢方薬の「麻黄湯」もタミフルに劣らず発熱の期間を短縮することがわかってきており、特にタミフルが使いにくい乳児には用いられます。合併症として気管支炎を起こしているような場合には、抗生物質も処方します。(タミフルは最初の3日までで、耐性ウイルスの出現を考えてそれ以上長くは使いません)

 タミフルを使うと、通常3−4日続く最初の高熱が1日半から2日間ぐらいに短縮されて軽くすむことが多いのですが、すぐに下がった場合でも、二峰性の発熱がみられたり、咳がひどくなったり、疲れやすかったり、症状がぶりかえしたりすることがありますので甘く見てはいけません。

副作用報道について 一部の新聞でタミフルを服用したインフルエンザの子が錯乱症状を伴って死亡したことがタミフルの副作用として報道されましたが、厚生労働省や日本小児科学会の見解でも、タミフルとの因果関係ははっきりしない(否定も肯定もしない)とされています。

 元々、上記のようにインフルエンザでは精神・神経症状をともないやすい上に、3年ほど前から日本国内ではインフルエンザの患者さんに対してかなりの高い割合でタミフルが投与されています。この場合、タミフルが原因なのか、インフルエンザそのものの合併症なのかを区別するためには、タミフルを服用した群と服用しない群で統計学的に比較する必要がありますが、現状では困難です。

 よって、いずれの場合でも精神・神経症状の出現に注意をする必要はありますが、特にタミフルの使い方についてこれまで以上に慎重を期する必要はないというのが現段階での見解です。(ただし、このように高い割合で検査してタミフルが投与されている国は世界中で日本だけだということも留意しておく必要はあるでしょう)

 なお、タミフルは1歳未満の乳児には安全性が確立していないため慎重投与となっていますが、全国の小児科医が参加した調査でも、それまで乳児に投与した例で特別の副作用が多いという結果はみられておらず、兄弟での発症例や、1歳近い子で重症感のある場合など、必要に応じて相談の上でタミフルを使うこともあり得ます。それ以外は麻黄湯で対処してみましょう。

登園・登校 インフルエンザの出席停止期間は、熱が下がってから最低2日以上とされていますが、タミフルですぐに下がった場合でも、上記のように諸症状が続くことが多いので、目安としては症状の出始めから5日〜1週間は休んで、咳や食欲、体力が回復したのを確認してから登園・登校させた方がいいでしょう。インフルエンザは、日常的に子どもがかかる感染症の中では別格に「強い感染症」であり、急性期が1週間、回復期が1週間、あわせて2週間かかる病気と考えて、なるべく長く休ませるようにして下さい。

 「○日に大事な○○に出る必要がある」のであれば、なおのことしっかりと長く休ませることです。あせって早めに行かせると、かえって長引かせたりぶり返させたりして、「大事な○○」に参加できなくなってしまいます。


● おたふくかぜで難聴になることをご存じですか

 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の合併症としては髄膜炎の頻度が高いことが知られていますが、これは軽い場合は自然に治り、検査したり入院が必要な場合でも通常は後遺症は残しません。成人の精巣炎による不妊は、実は非常に稀なものです。

 しかし、従来おたふくかぜ患者の2万人に1人程度と考えられていた難聴が、最近の調査では数百人に1人という報告もあり、小児科医の中でも難聴を防ぐためにおたふくかぜを積極的に予防しなくてはいけないという認識が高まっています。

 おたふくかぜによる難聴は重症で、多くは片側(まれに両側)の聴力が完全に失われてしまいます。残念ながら、現在のところ有効な治療法もありません。もしおたふくかぜに罹ったら、耳もとで指を軽くこすり合わせてみて、聞こえ方に違いがないかどうか家庭でチェックしてみて下さい。

 諸外国ではMMRワクチン(麻疹・風疹・おたふくかぜ)の2回接種を行っている国が多く、おたふくかぜは過去の病気になりつつあるのですが、わが国では来年からMRワクチンが導入されるものの、おたふくワクチンは任意接種(全額自費)のままで接種率が低いため、保育園などを中心に常に流行が繰り返されています。

 厚生労働省の予防接種検討委員会でも、次に定期接種(無料)に組み込むべきワクチンとして検討はしていますが、すぐに実現するものでもなさそうです。ある程度お金のかかるワクチンではありますが、できるだけ接種していただきたいと考えています。


● 麻疹は2月中旬〜下旬まで、風疹は3月末までに接種を!

 前号(10月・11月合併号)に書いたことの続きですが、八戸市からおかしな通知が行っているようですので、以下のことを確認して下さい。

 4月から制度がかわって、麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を1歳と小学校入学前の5〜6歳(幼稚園年長相当)の2回接種することになりますが、4月以降は公費で麻疹ワクチン、風疹ワクチンを単独で接種することができなくなります。(←国の間違った政策その1)

 しかし、1歳になったらすぐに麻疹ワクチンを接種する必要があることはこれまでもこれからも変わりありません。よって、

1)H17年2月生まれの子は、2月中旬までは誕生日が来たらすぐに麻疹接種。2月末生まれの子は、4月から保育園に入る場合はすぐに接種して、4週間後の3月末までに風疹を接種した方がいいでしょう。(もしできなかった場合には、4月以降に自費で接種することになってしまいますが)

2)H17年2月下旬生まれで保育園に入る予定のない子と、H17年3月生まれの子は、仕方がないので4月まで麻疹接種を見合わせて、4月になったらすぐにMRワクチンを接種するようにして下さい。

3)これまで麻疹ワクチンは接種したけれども風疹は未接種の場合は、3月末までに必ず風疹ワクチンを接種するようにして下さい。

 なお、新しい制度で「2歳〜5歳」の子はMRワクチンを公費で接種することができなくなりますので、必ず1歳代に1回すませるようにして下さい(その2)。また、現在出ている施行令では、MRワクチンの2回目を接種できるのはMR1回目を接種した子だけで、これまで麻疹と風疹の単独ワクチンを接種した子には接種することができません。(その3)

 しかし、この点については厚労省も、委員会の委員を務めている予防接種専門家も、近いうちに必ず見直すと明言しているため、現在1歳になっている子はそれを理由に4月まで待つ必要はありません。


○ 1〜2月の診療日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定

 1月は4日から通常通りの診療で、2月まで臨時休診はありません。2月7日午後に1時間半ほど診療を中断します。急病診療所当番は1月8日(日) 昼、29日(日) 昼、2月は11日(祝) 昼、25日(土) 夜の各2回です。

 赤ちゃん教室は1月21日(土)、その次は3月18日(土)。「育児相談・子どもの心相談」「禁煙・卒煙外来」は、水曜・土曜午後、平日夕方なども可能です(初回のみ無料−禁煙外来で薬を処方する場合は実費=別紙案内参照)。

 メール予約システムをご利用下さい。(yoyaku@kuba.gr.jp 宛)


発行 2006年1月30日 通巻第117・118号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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