■ くば小児科クリニック 院内報 2005年10・11月合併号


院内版感染症情報 〜2005年第47週(11/21〜11/27)


        2005年 第31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47
インフルエンザ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
咽頭結膜熱        0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
A群溶連菌咽頭炎  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  1
感染性胃腸炎      2  4  3  1  4  3  4  2  3  5  6 11 12  3  9 13 22
水痘              1  2  0  1  1  0  0  0  2  0  0  0  0  0  0  3  1
手足口病          3  2  2  2  0  1  3  0  1  1  1  1  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
突発性発疹        1  4  0  1  0  1  0  1  1  2  0  1  0  0  0  0  2
風疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  0  0  0
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    0  3  2  4  0  2  0  1  1  1  0  1  0  0  0  0  0

 9月から10月にかけて咳がひどくなるタイプの風邪がメインになり、現在も続いています。10月下旬から、これも毎年11月頃に流行するウイルス性胃腸炎(嘔吐・下痢・発熱)が増加してきています。この時期のウイルス性胃腸炎は真冬に流行して重症化しやすいロタウイルスではなく、比較的軽症で済むノロウイルスが主体です。嘔吐は大体最初の一晩でおさまります。吐いているときには何も飲ませずに数時間から一晩待って、吐き気がおさまってから水分を再開するようにしましょう。点滴は通常必要ありません。

 流行耳下腺炎(おたふくかぜ)と水痘(みずぼうそう)小流行が保育園などで残っています。10月初旬にかけて喘息発作が一番多い時期を迎えましたが、その峠も過ぎて、発作時の治療からコントロールのための治療に移りつつあります。ダニやホコリなどの環境対策も一緒に続けていきましょう。

 インフルエンザは八戸でも発生が報告され、例年より早めの流行が危惧されます。全国的にも流行や脳炎・脳症の発症例も報告されています。


● 風疹ワクチンは3月までに

 次号以降でもう一回お伝えしたいと思いますが、来年の4月から麻疹・風疹(MR)混合ワクチンの2回接種(1歳と入学前)がはじまり、麻疹や風疹単独のワクチンは公費ではできなくなります。麻疹だけ済ませて風疹がまだの方がいらっしゃるかと思います。八戸市内の方には通知が行くはずですが、3月までに必ず接種を済ませるようにしましょう。また、2月に1歳の誕生日をむかえる子は、2月に麻疹、3月末までに風疹を済ませるようにするか、4月まで麻疹も待ってもらうかのどちらかになります。3月に1歳になる子は、その前後で麻疹の流行がない場合は4月まで待ってもらうことになります。そうでなければ、風疹は自費の任意接種になってしまうのです。

 このような「移行措置」を設定せずにシステムを変更する国のやり方に対しては、小児科学会や小児科医会でも繰り返し申し入れをしていたのですが、全くもって「現場の混乱を考慮していない官僚の考えたやり方」には腹が立ちます。いい加減にしてほしいものです。


● インフルエンザの予防接種がはじまっています

 今年も例年通り10月中旬から接種が始まっています。接種を希望する方は、なるべく年内に2回目まで終わるように予定を立てましょう。

 なお、現在接種しているワクチンは今年度の流行予測株に対するものであり、報道などで問題になっている鳥インフルエンザが、もし人から人へと伝播する「新型インフルエンザ」に変異して大流行が始まった場合には、新たにワクチンを生産して接種しなおす必要があります。(これは仮定の話ですが、今シーズンに限った問題ではありません)

 抗インフルエンザ薬のタミフルは、いずれのタイプにも同等の効果があり、緊急事態にそなえた国家備蓄も始まっていますが、今のところ目標には程遠い量しか集まっていないようです。それとは別に今年の流行に対する量は確保されているようです。


● 母親が吸うと子どもも吸う、喫煙の世代間連鎖を断ち切ろう

 前号の続きです、八戸市の4中学校におけるアンケート調査を解析してみてわかったことについてお伝えします。この結果については、11月に札幌で開催される東北北海道小児科医会と、20日に開催される八戸医学会で概要を発表しました。

1)家族の喫煙、特に母親の喫煙の影響

 前号で、中学生の1割弱に喫煙経験があったこと、家族の喫煙者は65.4%で、その内訳は、父51.4%、母22.4%であり、父の喫煙よりも母の喫煙の方が子どもがタバコを吸い始める率が高いことなどをお伝えしましたが、父母の喫煙と子どもの喫煙について、更に検討を加えてみました。

(表1)
 喫煙家族あり父が喫煙母が喫煙
喫煙経験のある男子76.653.232.5
喫煙経験のある女子90.254.962.7
喫煙経験なし(男女)63.851.220.3
数字はいずれも%

(表2)
喫煙経験率男子女子
父のみ喫煙10.23.9
母のみ喫煙22.221.4
両親とも喫煙12.515.9
両親喫煙なし7.92.7

 女子の喫煙経験者の9割は家族内に喫煙者がいて、母の喫煙が6割にも達していて父よりも高くなっています(表1)。更に興味深いことに、両親共に喫煙者であるよりも、父が吸わないで母が吸う場合の方が子どもの喫煙率は最も高くなり、しかも男女差がほとんどみられないほど女子の喫煙率が上がるということです(表2)。同じような傾向は下北地区(むつ保健所)の調査でも明らかになっています。

 母親の喫煙は、妊娠中の「胎児の喫煙」、授乳による母乳への移行、子育てにおける受動喫煙のいずれにおいても父親の喫煙よりも影響が深刻であるだけでなく、子どもが吸い始める「喫煙の世代間連鎖」においても父親より格段に影響力が大きく、特に娘の喫煙につながり、更に悪循環が続くのです。(父親は吸ってもいいという意味ではありませんよ、念のため)

2)喫煙開始の低年齢化と家族にすすめられて喫煙を開始している実態

 はじめてタバコを吸った年齢は、小6までに7割、小4までに4割で、さらに驚くべきことに、小1〜小2で9%、小学校入学前が11%、あわせて2割の子が小2までという小さい時期にタバコを吸っていることです。

 そして、タバコを吸ったきっかけをたずねてみると、「好奇心」と「なんとなく」がそれぞれ3割前後(複数回答可)なのですが、その中で、親からすすめられた子が13.3%、兄姉からが3.9%もいたということです。

3)友人の喫煙の影響

 喫煙する友人がいる生徒は約7%でしたが、喫煙経験率を比較すると、

 喫煙経験率
喫煙友人あり37.0
喫煙友人なし6.4

と約6倍も高くなっていたのです。これをみると、多くの親御さんは「うちの子は中学に入って悪い友達とつきあい始めたから…」と言いたくなるようですが、おそらくその友達の親も同じことを言っているのではないでしょうか。要するに、どちらが悪いということではなく、特定の仲間集団で吸い始めているということが示されているのです。

4)朝ごはんと子どもの喫煙

 中学生の13%は週に1日以上朝食を抜いていて、2%の子は全然食べていません。そして、週1日以上朝食抜きの子と毎日食べる子を比較してみると、

 喫煙経験率
週1日以上朝食抜き17.7
毎日食べる7.2

と、ここでも2倍以上の明らかな差がみられました。さらに、両群で母親の喫煙率を調べてみると、38.2%対20.1%と、これも倍近い差があることがわかりました。要するに、「朝ごはんと母親の喫煙と子どもの喫煙」の三者は、お互いに相関関係があることが示唆されました。これに対して、父親の喫煙率は52.2%対51.5%でほとんど差がみられませんでした。

まとめ
・八戸市の中学生の喫煙経験率は1割弱と全国平均よりも低かった。
・家庭内の喫煙率は65%と深刻で、家族の喫煙、特に母親の喫煙が子ども(特に娘)の喫煙開始に大きな影響を与えていた。
・喫煙経験者の2割は小2までに喫煙していた。
・喫煙する友人がいると、いない子の6倍も喫煙を経験していた。
・朝食抜きと子どもの喫煙経験率、母親の喫煙に関連がみられた。
・子どもの喫煙は子どもが悪いのではなく、家庭や大人社会の責任!

禁煙治療のススメ
 別紙コピー(新聞記事)にもあるように、いま日本人のうち3000万人は喫煙者ですが、そのうちの7割以上(2000万人以上)はニコチン依存症という病気だと、やっと国でも認めました。(実はタバコ病裁判で国はこのことを否定し続けているのです)

 要するに、禁煙したくてもやめられないのは意志が弱いからではなく、麻薬中毒と同じ「治療が必要な病気」だからなのです。

 また、喫煙者だけでなく非喫煙者にもしつこくはびこっている「迷信(ウソ)」の最大のものは、喫煙は「ストレスを解消する」というものですが、これはニコチン切れの禁断症状が一時的に緩和されたことをそう信じ込んでいるだけです。麻薬中毒患者が麻薬を注射して気持ちよくなるのを称して「ストレス解消」だとは言いませんね。それと全く同じことです。タバコはストレスを解消するのではなく、実は「ストレスを増加させている」のだということを知れば、タバコに対する幻想は一気に消滅します。

 いま、ニコチンパッチという薬を貼るだけで、ほとんどの人は簡単に禁煙を開始することができるようになっています。親の喫煙は、子どものかぜ、中耳炎、喘息、アレルギーなど数多くの病気の原因になったり悪化要因になっています。屋外で喫煙していても、影響は大きいのです。

 「私はやめられない」などと思いこまずに、子どもと家族の健康、そしてご自身の健康と美容のためにも、禁煙への道を踏み出してみましょう。


○ 11〜12月の診療日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定

 10〜11月は臨時休診はなく、暦通りの診療となります。年末は、12月30日の午前まで診療し、午後から休診。年明けの4日から通常通りの診療になります。急病診療所当番は11月3日(祝) 昼、12日(土) 夜、22日(火) 夜の3回、12月は10日(土) 夜と大晦日の31日(土) 夜の2回です。

 赤ちゃん教室は11月26日(土)、その次は1月21日(土)、本年度のぜんそく教室は10月で終了しました。「育児相談・子どもの心相談」「禁煙・卒煙外来」は、水曜・土曜午後、平日夕方なども可能です(初回のみ無料−禁煙外来で薬を処方する場合は実費)。

 メール予約システムをご利用下さい。(yoyaku@kuba.gr.jp 宛)


発行 2005年12月1日 通巻第115・116号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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☆ 当院は「敷地内禁煙」です


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