■ くば小児科クリニック 院内報 2004年11月号


院内版感染症情報 〜2004年第46週(11/8〜11/14)


        2004年 第30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46
インフルエンザ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
咽頭結膜熱        0  0  0  1  0  2  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
A群溶連菌咽頭炎  0  1  0  5  0  0  0  0  3  0  0  0  2  0  0  1  1
感染性胃腸炎      1  2  9  1  4  2  6  6  3  5  4  7  7  4  4 11  7
水痘              0  1  1  0  0  1  0  1  1  1  0  3  0  0  2  0  3
手足口病          0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  1  0  0
伝染性紅斑        0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
突発性発疹        1  0  2  1  2  0  2  1  0  0  0  2  2  2  1  0  0
風疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    0  0  0  0  1  1  0  0  1  0  0  0  0  0  2  2  1
 先月から流行中の「咳がひどくなる風邪」(その中にマイコプラズマも含む)と共に、予想通りウイルス性胃腸炎(嘔吐と下痢)が増えてきました(次記事参照)。溶連菌感染症水ぼうそうも多めで経過しています。

 風疹は八戸では流行していませんが、全国的に流行がみられ、流行地域では妊娠中絶と「先天性風疹症候群」が増加しています。男女年齢を問わず未接種者や接種していても抗体価の低い女性は予防接種が強く勧められます。

☆ インフルエンザの予防接種は12月末を目標に(→詳細は別紙参照)


● 吐いたらすぐ点滴? それとも痛くない治療で治しますか?

 時は巡りまた冬がきて、ウイルス性胃腸炎が流行しています。この時期のウイルスは主にSRSVまたはノロウイルスと称されるもので、真冬に流行るロタウイルスよりも軽症で済みますが、最初の半日〜1日の嘔吐を乗り切ることが大事なことは同じで、その対策は毎年書き続けています。が、毎年新しく赤ちゃんは生まれご両親も新米デビューするので、今年も書きます。

 ポイントは「吐いたら飲ませるな」。吐いたら脱水になると思って飲ませると、何度も吐く材料を与え続けることになり、何もしないで待つよりもかえって脱水が進みます。最低限、最後に吐いてから3時間は絶飲食。その後に、ごく少量、スプーン1さじの水分(湯冷ましでいい)から再開し、少量ずつ頻回に与え、吐かなければ徐々に量を増やします。

 食べ物は、吐き気がなく水分が半日以上とれているのを確認してからで、水分もとれないのに栄養のことを心配するのは本末転倒です。

 もし吐いたら、最初からやりなおし。

 これに加えて、お薬(五苓散という漢方の特効薬とナウゼリンという吐き気止めの坐薬、あとは整腸剤)を補助的に用いるだけで、当院受診者の99%以上は点滴も入院もせずに治っていってくれます(もちろん、悪くなる場合もありますので、その時には点滴したり入院をすすめることもありますが、年に数人です)。治しているのではなく、典型的な経過をあらかじめ知っておき、現在の症状に対する看病の仕方を知ることで、お子さんの自然治癒力にまかせることができるのです。

 日本の子どもたちは、途上国と違って栄養状態も衛生状態も良いので、上記の経口補液法(元々は点滴が出来ない途上国向きに開発されたもの)のごく簡単なバージョンで、ほとんどの場合十分に対処できるのです。

 点滴は脱水が進みかけた場合に必要になる処置であり、1−2回吐いただけで痛くてつらい治療をする必要はなく、半日後に水分がとれるようになれば、治るまでの期間も変わりません。


● 寒い季節のスキンケアは「保湿」が決め手

 スペースがないので簡単に。暑い季節のスキンケアは汗と汚れ対策で、お風呂やシャワー、軽い冷房などがメインでしたが、寒くなって木枯らしが吹き始めたこの季節のお肌のトラブルは、乾燥対策がメインです。優しくきれいに洗ってあげるのは同じですが、朝晩、あるいはそれ以外にもこまめに保湿作用のあるクリーム類を塗ってお肌の乾燥を抑えましょう(当院紹介のスキンケアクリームはお勧めで、わが家でも使ってます)。「悪くなってから薬で治すのではなく、悪くならないようにスキンケアを」この原則はいずれの季節でも共通です。お母さん方のスキンケアと同じこと。小さいお子さんはお肌が一生のうち一番乾燥する年齢です。お子さんには、倍の手間をかけてあげて下さい。手間をかければかけるほど、良くなります。


● なぜ混合診療はダメなのか?

 皆さまにご協力いただき、多数の署名をいただきました。これは全国の医療機関から日本医師会に集められ、おそらく一千万人レベルの署名になるはずですが、これだけではまだ力不足で、混合診療導入の本当の目的を国民すべてが熟知し、反対の世論をもっと盛り上げなければいけません。

 「混合診療」といっても、かなりわかりにくい話です。誰が儲かって、誰の負担が増えて、誰の負担が減るのかを、箇条書きにしてみます。

1)医療費全体のパイは増える(医療費抑制策にはならない)
2)医療費は保険診療と保険自費外診療にわかれる(=混合診療)
3)保険診療の枠は増えないだけでなく、縮小する(政府と企業の負担減)
4)国民の社会保険料は減らない(減らないだけでなく、必ず増える)
5)結果的に、保険で受けられる医療は限定されるのに、負担は増える
5)国民は自費診療分をまかなうために、民間保険に入る(さらに負担増)
6)民間保険は、加入者ではなく保険会社が必ず儲かる仕組みになっている(保険会社が新たに参入して、医療費のかなりの部分を会社の利益とする)
7)民間保険に入れるのは、家計に余裕のある人だけ(命の沙汰も金次第)
8)病気で治療中だったり先天的な疾患がある人は、民間保険に入れなかったり、保険料が高くなる(弱肉強食)
9)保険外診療は、安全性や有効性の面で問題が大きくなる

 これが「規制緩和」という名のもとに行われようとしてる「コイズミ医療改革」の本当の姿です。しかも、その審議をしている委員会の委員長であるオリックスの宮内氏は、新たに参入しようとしている保険会社の社長であり(我田引水)、こういう重大事(実質大幅増税+皆保険制度の崩壊)が選挙で選ばれた国会議員などと全く関係なく決められようとしているのです。

 医療に株式会社が参入すれば、国民のニーズに合った医療が提供されるようになるなどとおっしゃってますが、最近のプロ野球球団合併・再編成の動きの中で、民意とはかけ離れた前時代的な不透明な動きをしていたオーナー達の張本人が、この委員長本人であったことは記憶に新しいところです。

☆八戸市医師会では下記のような市民公開講座を開催いたします。
 日時:11月21日 16:00〜18:00  場所:八戸市総合健診センター3階
 表題:日本の医療を守りましょう
 内容:1)ビデオ鑑賞 2)講演会 3)討論会 (下記URL参照)
    http://www.orth.or.jp/Isikai/hachinohe/h16/igakukai/index.html


● なぜタバコが問題なのか?

 またまたタバコの話です。どうしてそんなに問題なのか?

 本年度の日本外来小児科学会で行われた米国小児科学会Weizman博士の講演『タバコと子ども:小児科医は多くの子どもの命を救う新しいチャンスがある』から少しだけ引用してみます。

“タバコの問題は米国小児科学会の最優先課題であり、米国の喫煙者の90%は19歳までに吸い始めている。よってタバコは小児疾患である。

 小児科医が毎日30〜40人診察すれば、そのうち2人は成人してタバコによる病気で若くして死ぬことになる。(皆さんのお子さんの将来です)

 親が喫煙者の場合、子どもの喫煙率は2倍になる。成人の肺がん患者全体の17%が小児期における受動喫煙が原因です。母親が喫煙者だと乳児の入院率は40%高くなり、両親が喫煙者だと生後1年以内に肺炎や気管支炎にかかる可能性が2倍以上になる。両親のどちらかが喫煙者だと、5歳未満で中耳炎を繰り返す率が1.5倍になり、母親が喫煙すると乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが2倍以上になる。

 母胎内および出生後の受動喫煙は小児気管支喘息全体の約10%の原因であり、米国の子どもの虫歯全体の3分の1以上は受動喫煙が原因です。

 母親の妊娠中の喫煙により、問題行動、注意欠陥多動障害(ADHD)、知能(IQ)低下の発生率が上昇することが多くの研究で報告されている。

 米国では日本以上に肥満が増加している。タバコと肥満の脅威は類似していて、どちらも親の態度と行動の修正が必要で、市場とメディアが子どもを標的としている。この脅威に対する小児科医の社会的役割は大きい。

 喫煙する親の90%が禁煙を希望している。(以下省略)”

 いかがでしょうか。皆さんの禁煙をお手伝いする準備はできています。また、近いうちに「禁煙したいけれど止められないお父さんお母さんのための禁煙教室」も開催したいと考えています。決まりましたらお知らせします。


○ 11〜12月の休診日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定

 11月〜12月の臨時休診はありません。11月6日(土) は14:30までになります。急病診療所当番は11月3日(祝) 昼、28日(日) 昼の2回で、12月の予定は未定です。年末は12/30午前まで診療で、年明けの1/4から通常どおりの診療になります。次回の赤ちゃん教室は11月20日(土)、その次は1月15日(土)、「育児相談・子どもの心相談」「禁煙・卒煙外来」は、診療時間以外に水曜・土曜午後、平日夕方などにも相談可能です(初回のみ無料)。


発行 2004年11月14日 通巻第104号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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☆ 当院は「敷地内禁煙」です


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