■ くば小児科クリニック 院内報 2004年4月・5月合併号
● 院内版感染症情報 〜2004年第19週(5/2-5/9)
2004年 第03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 インフルエンザ 9 20 26 27 18 4 6 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 咽頭結膜熱 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 A群溶連菌咽頭炎 4 4 3 5 3 3 5 1 3 3 1 4 2 3 3 2 1 感染性胃腸炎 7 7 9 18 17 17 18 16 11 9 12 10 4 13 6 4 5 水痘 0 0 0 3 0 2 2 1 2 2 2 1 2 1 0 0 2 手足口病 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 伝染性紅斑 2 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 突発性発疹 0 2 2 3 0 0 3 2 0 0 0 0 0 1 1 0 2 百日咳様疾患 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ヘルパンギーナ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 麻疹 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 流行性耳下腺炎 0 0 1 1 0 1 1 1 1 4 1 0 3 1 1 2 0
☆ ロタウイルス性胃腸炎と溶連菌感染症が残り、咳が主体の風邪が増加中
冬場から続いていたロタウイルスによる胃腸炎と小学校を中心にした溶連菌感染症はまだみられていますが下火となっています。保育園・幼稚園では水痘とおたふくかぜの小流行も残っています。
4月中旬から5月にかけて目立ってきたのは、咳、鼻汁、熱といった一般的な症状の風邪ですが、中に咳がひどくなって気管支炎に進展している子が増えています。そして、例年あたたかくなって5月から6月にかけては発熱が中心の夏かぜが増えてくる季節で、その中には手足口病やヘルパンギーナ(のどにブツブツが多発して高い熱が2−3日)、アデノウイルスによる咽頭結膜熱なども含まれます。
近隣地域でインフルエンザのB型がみられているという報告がありますが当院では確認していません。風疹の流行については次の記事をご覧下さい。
● 風疹が流行のきざし − 未接種の女性は急いで接種を!
すでに新聞報道でもご存じかと思いますが、今年になって関東や九州など一部の地域で風疹患者の報告が増加していたところで、青森県内でも4月に入って患者の発生がみられ、8年ぶりの流行が懸念されています。
風疹の予防接種については、先月号や昨年の9月号にも書いたように、高校生から20代の接種率が非常に低く流行に対して無防備な状態にあり、特に妊婦への感染で先天性風疹症候群や妊娠中絶の増加が懸念されます。予防接種の特例期間は昨年9月で終わってしまいましたので全額自費の接種になりますが、流行が拡がってから、あるいは妊娠に気づいてからでは遅すぎます。風疹の予防接種歴が不明だったり、「小さいころかかった」というあやふやな記憶(そのうちの数割は記憶違いか他の感染症)の場合は、急いで接種を済ませるようにして下さい。成人でも当院で接種できます。
今回の情報は、いつもの接種呼びかけよりもレベルが上の、流行が差し迫った時期における接種勧奨であり、例えば国内にいて感染するおそれがほとんどないSARSや鳥インフルエンザやBSEなどよりもはるかに感染の可能性が高く、その影響も心配される緊急の情報であるとご理解下さい。
● 赤ちゃんのお風呂上がりに、イオン飲料は必要ありません
先月号までにテレビやTVゲームといったメディアと子どもの発達についての警告を掲載しましたが、これも従来から指摘されていた「イオン飲料とむし歯」に関する考え方が小児科学会と小児歯科学会の共同で発表されましたので、概要をお知らせします。
子どものむし歯は、親のむし歯予防に対する関心が高まった結果、過去20年にわたって減少し続けています。しかし、ここにきて新たな傾向として、むし歯のないグループとむし歯だらけのグループに大きく分かれるようになり、悪い方のグループでは本来むし歯になりにくい下の前歯がむし歯になってしまっており、これは乳幼児だけでなく学童の永久歯でもみられ、その大きな原因がイオン飲料の飲み方に関係していると考えられています。
その背景として、コマーシャルなどにより多くの母親はイオン飲料が身体によいと考えていて、入浴後やノドが渇いた時に積極的に与える傾向があること、学童でも運動したり汗をかいたりした時だけでなく、ペットボトルを持ち歩いてイオン飲料をだらだら飲む習慣がついていること加えて、下痢や嘔吐で小児科を受診した時にイオン飲料を勧められたけれども脱水が改善した後はイオン飲料は必要ないという指導を受けていないため、その後も積極的に与え、習慣化してしまうという点が指摘されていました。
この点については、当院でも吐いた後の水分再開は湯冷ましから始めて、脱水気味の時には電解質補給のためイオン飲料(一般のスポーツドリンクよりもアクアライトなど電解質濃度が濃いもの)を利用できますが、嘔吐がなくなって水分がとれるようになればイオン飲料は必要なくお粥やスープなどに戻していくように指導していたつもりですが、あまり伝わっていなかったり不十分だった点があるかもしれません。
また、タイトルにあるように、赤ちゃんの入浴後に宣伝されているようなイオン飲料を使う必要は全くなく、育児書に書かれているような湯冷ましも必要ありません。身体には水分と塩分の調節機構がありますので、よほど汗をかいて脱水状態にあるのではない限り、生後数か月までは水分は母乳またはミルクだけでちょうどバランスがとれるようになっているのです。
さらに、イオン飲料を大量に飲ませることは肥満の原因になるだけでなく、食欲不振や栄養の偏りなど全身に悪影響を与えるおそれもあります。
両学会が共同で発表した具体的な対策は以下の通りです。
■ ご家族のための『禁煙外来』と 子どものための『卒煙外来』
タバコは吸っている本人だけでなくお子さんやご家族にとっても「百害あって一利なし」と言うと、中には「そんなことは百も承知、自分の責任で吸っているのだから自由でしょ」と反論される方もいらっしゃいます。
しかし、実際には喫煙者の6割以上はタバコをやめたいと思っていて、何度か禁煙にトライしたのに失敗した経験をお持ちの方も多いはずです。
タバコが簡単にやめられないのは、「ニコチン依存(身体的依存)」と「心理的依存」という2つの依存症(中毒)のためであり、意志の強さとは関係ありません。
2つの依存症に対して、「ニコチン代替療法」と「行動療法」を組み合わせることにより、苦しまずに楽に禁煙することが可能になっています。
また、未成年の喫煙率は深刻な問題で、特に若い女性の喫煙率は上昇し続けています。タバコは吸い始めた年齢が低いほど早期にニコチン依存に陥り、肺がんの死亡率も高くなります。しかし、気づいた時に適切な対処をすれば、間違ってついた有害な習慣から一生逃れることも可能です。繰り返す喫煙には、厳しい叱責や謹慎処分ではなく、医学的な支援が必要なのです。
タバコは、家族や周囲の人をも巻き込む 致死率50%のロシアンルーレット であり、毎年国内で10万人、世界中で500万人がタバコによって命を落としています。一人でも多くの方がタバコと無縁(無煙)の健康で明るい生活を取り戻されるために、少しでもそのお手伝いができればと希望します。
<対象年齢> 子ども(中高生)〜ご両親〜おじいちゃんおばあちゃんまで、どなたでも受診できます。ただし、子どもの卒煙外来の場合は、タバコを吸われるご家族全員が一緒に禁煙しないと効果は期待できません。大人の方で慢性の病気をお持ちの場合は、あらかじめ主治医の先生にご相談下さい。
<曜日・時間> 診療時間内なら、いつでも受診できます(要予約)。お仕事などで受診しにくい場合は、平日夕方や土曜午後などに予約することも可能ですのでご相談下さい。初回の相談は20〜30分位かかります。
<料金> 禁煙支援は健康保険の適応ではないので、自費診療になります。相談だけの場合は初回のみ無料で、薬の処方がある場合は診察料800円、ニコチン貼付薬が1枚400円弱×必要な日数分となります。
<治療期間・回数> ニコチン依存の程度や年齢によって異なりますが、最低でも2回、標準的なスケジュールでは2か月間で6回程度の受診が目安となります。中高生の場合は比較的短期間で禁煙できることが多いようです。再喫煙を防ぐために、禁煙成功1か月後、1年後の受診もお勧めします。
くば小児科クリニック(八戸市湊高台1丁目 TEL 0178-32-1198)
◎ タバコの害の真実 − それでもまだ吸い続けますか?
○ お子さんやご家族には…
1) 乳幼児突然死症候群 (SIDS) の原因になる
2) 気管支喘息、気管支炎、慢性副鼻腔炎、中耳炎などの原因になる
3) 身長の伸びが悪くなり、知能の発達が劣る
4) キレやすく、落ち着きのない子になりやすい
5) 受動喫煙により将来の発がんを増やす
6) 妊婦のタバコにより、流産・早産・未熟児になりやすい
7) 家族に喫煙者がいると、子どもがタバコを吸い始める率が高い
8) 将来、犯罪者になりやすく、女児は不妊になりやすい
○ 喫煙者ご本人の健康には…
1) 喉頭がん (32倍)、肺がん (4.5倍) のみならず、多くのがんを増加させる
2) 心筋梗塞・狭心症、脳卒中、胃・十二指腸潰瘍などを増やす
3) 肺気腫(死因第8位)など、慢性閉塞性肺疾患の主要な原因はタバコ
4) 歯周病になりやすく、治りにくいため、早期に歯を失う
5) 平均寿命は7年、健康寿命は12年も短く、有病期間は5年も長くなる
・喫煙者 健康寿命 56.5歳 平均寿命 69.5歳 有病期間 13年
・非喫煙者 68.7歳 76.7歳 有病期間 8年(デンマーク)
○ 美容や生活面では…
1) 皮膚の深いシワが増え(※)、しわがれ声になり、若くして老化が進む ※ smoker's face
2) ED(勃起障害)の大きな原因になる
3) 口臭や衣服のタバコ臭により、他の人から敬遠されがち
4) 男女とも結婚相手には非喫煙者を望む人が大多数
○ 経済・社会的には…
1) 毎日2箱吸うと、1年で20万円、50年間で1000万円もの損失になる
2) 税収などの約2兆円に対して、医療費その他のコストは約7兆円、差し引きで毎年5兆円の損失を社会に与え、10万人もの命が失われている
3) 喫煙者は、判断力や自己決定力に劣る人物とみなされがち
4) 喫煙者は、人の迷惑をかえりみないマナーの悪い人物とみなされがち
○ 環境面では…
1) タバコの葉を乾燥するために毎年長野県2つ分の森林が失われている
2) タバコの吸い殻のポイ捨ては、屋外のゴミの主な要因
● 青森県タバコ問題懇談会、再スタートして会員募集中!
4月10日に、県や保健所の担当者をはじめとした15名の参加を得て県タバコ問題懇談会という民間のネットワークの準備会が青森市で開催され、新たに多くの方に参加を呼びかけて、今後の活動を一緒に行っていくことなどが話し合われました。以下は関係者向けの案内ですが、当院受診の患者さんにも教育関係者や医療関係者、そのほか様々な立場で禁煙活動に携わっている方や、逆にタバコ農家や販売業など禁煙活動を苦々しく感じている方もいらっしゃるかと思います。こちらに入会案内を一部抜粋して掲載させていただきますので、入会ご希望の方やご意見などございましたらお寄せ下さい。
青森県タバコ問題懇談会(旧・青森県喫煙問題懇談会)は、タバコの害から県民の健康を守るために、医療、教育関係者、保健・行政関係者など様々な分野の有志が参加して1998年に発足しました。
2003年5月には健康増進法が施行され、健康あおもり21 には未成年者と妊婦の喫煙率 0%という目標も掲げられ、多くの学校で敷地内禁煙が実施されるなど、タバコ問題をめぐる社会の空気はここにきて大きく変わってきました。しかし、県民の喫煙率は依然として高く、中高生や妊婦の喫煙も深刻な問題で、短命県日本一から抜け出すためにもタバコ対策は急務と言えます。また、タバコ農家対策など解決の難しい問題も横たわっています。
タバコ問題に関心がある、あるいはこれから取り組んでみたいという多くの方が、それぞれの立場で互いに協力し連携しながら、緩やかなネットワークのもとで幅広い活動を進めていくことにより、一人では、あるいは一つの団体だけではなかなか動かせないタバコ問題という大きな壁を、少しずつ突き崩していけるのではないかと期待しています。特に学校現場と医療との連携を重視しながら、協力して『明るく楽しい禁煙活動』を一緒に展開していきたいと思いますので、皆さまのご参加を心よりお待ちしております。
○ 活動目標(案)
目標 無煙社会の実現に向けて、未成年・妊婦の喫煙率0%(健康あおもり21)を目標に様々な取り組みを行う
活動 県全体の活動としては、講演会・シンポジウム・指導者講習会・街頭キャンペーン等を年に1〜2回程度開催する
支部 県内の各地域で支部を結成し、地域において連携・協力しながら日常的な禁煙活動を展開していく
教育 様々な機会において、喫煙者・非喫煙者・未成年(特に小中学生)・妊婦などへの啓発・教育活動を行う
医療 禁煙支援・禁煙外来を実施する医療機関を増やし、全医療機関の完全禁煙化を目指す
広報 学校関係者、一般の方やマスコミなどに対する窓口となり、講師派遣や情報提供などを行う
情報 ホームページ(http://aaa.umin.jp/)を開設し、タバコ問題について積極的に情報発信していく
連絡 メーリングリストを開設し、会員間の情報交換や会の活動についての連絡などを行う
○ 役員
会 長 木村 茂(社会福祉法人やすらぎ苑・三沢)
世話人 金田一成子(あけぼの薬局・青森)、久芳康朗(くば小児科クリニック・八戸)、坂野晶司(弘前大学医学部公衆衛生学・弘前)、中里紘一(中里歯科医院・青森)、中畑範彦(中畑歯科医院・弘前)、鳴海 晃(ナルミ医院・弘前)、蓮尾 豊(弘前レディスクリニックはすお・弘前)、三津谷恵(青森県立保健大学・青森)、山崎照光(八甲病院・青森)
○ 入会案内
医療・福祉、教育・保育・PTA、保健・行政、マスコミ、禁煙団体や一般の市民の方など、タバコ問題に関心がある方ならどなたでも参加できます。ただし、タバコ業界関係者の場合は、懇談会の活動目標を理解し賛同していただける方に限ります。会費は無料です。
お申込みは、氏名、職種、勤務先、所属団体、メール、住所、電話、FAX を明記の上、メールで webmaster@kuba.gr.jp までお送り下さい。
○ 4〜5月の休診日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定
4月〜5月も暦通りの診療で臨時休診はありません。急病診療所当番は5月4日(祝) 昼、23日(日) 夜の2回です。赤ちゃん教室は5月15日(土) 午後3時からです。「育児相談・子どもの心相談」、「禁煙外来」(記事参照)、いずれも水曜午後、土曜午後、平日夕方など時間をとって話せるときに相談可能です。(初回のみ無料で予約制)
発行 2004年5月9日 通巻第97・98号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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