■ くば小児科クリニック 院内報 2004年3月号


院内版感染症情報 〜2004年第11週(3/8-3/14)


   2003-2004年 第47 48 49 50 51 52 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11週
インフルエンザ    0  0  0  1  0  0  4  4  9 20 26 27 18  4  6  2  0
咽頭結膜熱        0  0  0  0  1  0  2  0  1  1  1  0  0  0  0  0  0
A群溶連菌咽頭炎  1  0  1  2  1  0  2  1  4  4  3  5  3  3  5  1  3
感染性胃腸炎     12 13 11 13 14 12  1  8  7  7  9 18 17 17 18 16 11 
水痘              0  1  4  0  4  3  1  0  0  0  0  3  0  2  2  1  2
手足口病          0  3  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        0  0  0  0  0  0  0  1  2  0  1  0  0  0  0  0  0
突発性発疹        3  0  3  0  0  0  0  1  0  2  2  3  0  0  3  2  0
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    0  0  0  1  0  2  0  1  0  0  1  1  0  1  1  1  1
ウイルス性発疹症  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  0  0  0

☆ ロタウイルスによる胃腸炎が流行中、インフルエンザは終息へ

 インフルエンザは2月上旬をピークとして減少傾向にあり、現在は2月下旬からロタウイルスによる胃腸炎が流行中です。毎回お伝えしているとおり、嘔吐が続く最初の半日の看病がポイントで、吐いたら最低3時間以上は水分もとらせないで待つことが大切です。飲みたがるから飲ませて吐くことを繰り返すと、かえって脱水が進んでしまうのです。

 その他には、小学校を中心に溶連菌が目立ち、保育園・幼稚園で水痘とおたふくかぜの流行がみられています。


● 入園・入学を前に 〜 大事な予防接種を忘れていませんか?

 予防接種って本当に全部必要なの? うっかり忘れたまま大きくなってしまったけどそのままでも大丈夫? などなど、予防接種に関する疑問は多々あろうかと思いますが、全ての質問に答えるには紙面が全然足りません。しかし、予防接種はどれも同じようなものでは決してなく、重要性も受ける年齢の意味合いも全て異なっているのです。今回は、入園・入学を前に、年齢毎に必要な予防接種とその意義についておさらいしておきます。副反応など詳しい情報は「予防接種と子どもの健康」をご覧下さい。下記の数字は、優先させたい順番です。また、生ワクチン(☆印)の後は4週間、それ以外のものの後なら1週間後には次の予防接種ができます。予定の組み方がわかりにくいときにはご相談下さい。※印は任意接種で全額自費になります。

▼ 1歳までに

1)BCG(結核)☆ 日本は先進国の中で突出して結核の多い国です。乳幼児の結核は減りましたが、いったん感染すると髄膜炎など重症化することが多く予後も良くありません。できれば3か月を過ぎたら1番に接種を始めたいのですが、八戸市は年1回の集団接種というシステムでお誕生日によって受ける月齢に大きな差があるのが現状です。平成17年度からツベルクリン反応なしで直接接種するシステムに変わる際には八戸市のシステムも変更になるはずですが、今年度は夏の接種を逃さずに済ませるようにして下さい。階上は個別接種ですから、3か月になったらBCGから始めましょう。

2)三種混合×3 三混は回数が多いのが難点ですが、接種率が下がったために百日咳(日本)やジフテリア(ロシア)が大流行して死亡者が急増した過去の歴史がその重要性を物語っています。1歳を過ぎると毎回の接種で「注射嫌い・医者嫌い」の原因になりますので、できるだけ赤ちゃんのうちに済ませてしまいましょう。

3)ポリオ×2☆ ポリオは日本にいる限り罹ることのない病気ですが、戦争などの影響で世界中での根絶が延び延びになっているため、まだ接種をやめることはできません。唯一の経口接種で痛くありませんから、春秋の接種は逃さずに済ませるようにしましょう。お誕生月によっては、2回目が1歳を過ぎることがありますが問題ありません。数年後には不活性化ワクチン(注射)への切替が予定されていますが、まだ目途がついていません。

▼ 1歳を過ぎたら

1)麻疹(はしか)☆ 何度もお伝えしているように、お誕生日になったらすぐに受けてほしい最も重要な予防接種です。当院に受診されている方にはほとんど接種もれはみつからなくなっていますが、お友だちにもぜひお伝え下さい。保育園などで流行すると、接種していない1歳以上の子から、まだ接種年齢前の乳児が感染し、毎年全国で数十人が亡くなっているのです。1歳前に入園する場合には、9か月頃から自費で接種して1歳過ぎてからもう1回定期接種で受けるという方法があり大都市などでは推奨されています。

2)風疹☆ 風疹は最近大きな流行がありませんが、未接種者の累積により大流行が懸念されています。麻疹の後に順番に受けるようにしましょう。

3)三種混合I期追加接種 I期3回のあと1年経ったら受けて下さい。少し遅れても大丈夫ですが、決められた回数はできるだけ守りましょう。

▼ 保育園や幼稚園に入る前に

1)水痘(みずぼうそう)☆※ 水痘は感染力が強く、発疹が出る前の日から感染性があるので、保育園などで毎年流行がみられ、未接種・未感染の子は大きくなるまでにたいてい感染してしまいます。合併症は多くないのですが、感染すると1週間はお休みしなくてはいけません(兄弟だと2週間)。また、ときどき「あばた」が残ることがあります。

2)おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)☆※ おたふくかぜも毎年必ず流行しています。おたふくは髄膜炎などの合併症が多く、特に難聴はみつかったときには治す手段がありませんので予防接種で防いであげたいものです。水痘とおたふくは任意接種で全額自費なので接種率は低いのですが、保育園児などでは風疹や三混追加を後回しにしてこの2つを優先させても構いません。

▼ 3歳になったら

1)日本脳炎×2 日本脳炎は一生青森県から一歩も出ないという方には必要ありませんが、中国や南アジアでは依然として死亡率の高い危険なウイルス感染症で、西日本でもわずかに残っています。これも接種回数が多いのですが、間隔が開いたりしても必要な回数は済ませておきたいものです。

2)日本脳炎I期追加接種(1年後に1回) 通常は4歳で1回。

▼ いずれの年齢でも

1)インフルエンザ(毎年秋に2回)※ 来シーズンも10月から接種開始の予定ですが、夏頃にまたご案内します。ご家族の接種も当院で可能です。

▼ 小学校入学までに済ませているはずの予防接種は

 順調に接種していけば「BCG、三種混合×4、ポリオ×2、麻疹、風疹、日本脳炎×3」合計12回の定期接種が終わっているはずですので、入学前にもう一度お確かめ下さい。その上で、任意接種も済ませておくと安心です。

▼ 小学校から中学校まで 〜 かなりの人が接種を忘れています!

1)日本脳炎 9歳で1回、14歳でもう1回追加接種があります。

2)二種混合 小学校6年生で接種。八戸・階上では秋の数か月に期間が限定されています。期間を過ぎると有料になってしまうのでご注意を。

▼ 若い人の間で流行が危惧されるもの

1)風疹☆※ 昨年秋で15歳以上の未接種者に対する「特例の接種期間」は終わってしまったのですが、高校生から20代の若者の接種率は非常に低く、いったん流行が起こると妊婦への感染で先天性風疹症候群や妊娠中絶の増加が懸念されています。ご家族や親戚で接種を忘れている方には、全額自費になりますが接種を勧めてあげて下さい。大人でも当院で接種できます。


● 2歳までは子どもにテレビやビデオをみせないで!

「子どもとメディア」の問題に対する提言    (社)日本小児科医会

 わが国でテレビ放送が開始されてから50 年が経過しました。メディアの各種機器とシステムは、急速な勢いで発達し普及しています。今や国民の6割がパソコンや携帯電話を使い、わが国も本格的なネット社会に突入しました。今後、デジタル技術の進歩はこのネット社会をますます複雑化し、人類はこの中で生活を営む時代に進みつつあります。これからもメディアは発達し多様化して、そのメディアとの長時間に及ぶ接触はいまだかつて人類が経験したことのないものとなり、心身の発達過程にある子どもへの影響が懸念されています。日本小児科医会の子どもとメディア対策委員会では、子どもに関係するすべての人々に、現代の子どもとメディアの問題を提起します。

 ここで述べるメディアとはテレビ、ビデオ、テレビゲーム、携帯用ゲーム、インターネット、携帯電話などを意味します。特に、乳児や幼児期ではテレビやビデオ、学童期ではそれに加えてテレビゲームや携帯用ゲーム、思春期以降ではインターネットや携帯電話が問題となります。

提言

 影響の一つめは、テレビ、ビデオ視聴を含むメディア接触の低年齢化、長時間化です。乳幼児期の子どもは、身近な人とのかかわりあい、そして遊びなどの実体験を重ねることによって、人間関係を築き、心と身体を成長させます。ところが乳児期からのメディア漬けの生活では、外遊びの機会を奪い、人とのかかわり体験の不足を招きます。実際、運動不足、睡眠不足そしてコミュニケーション能力の低下などを生じさせ、その結果、心身の発達の遅れや歪みが生じた事例が臨床の場から報告されています。このようなメディアの弊害は、ごく一部の影響を受けやすい個々の子どもの問題としてではなく、メディアが子ども全体に及ぼす影響の甚大さの警鐘と私たちはとらえています。特に象徴機能が未熟な2 歳以下の子どもや、発達に問題のある子どものテレビ画面への早期接触や長時間化は、親子が顔をあわせ一緒に遊ぶ時間を奪い、言葉や心の発達を妨げます。

 影響の二つめメディアの内容です。メディアで流される情報は成長期の子どもに直接的な影響をもたらします。幼児期からの暴力映像への長時間接触が、後年の暴力的行動や事件に関係していることは、すでに明らかにされている事実です。メディアによって与えられる情報の質、その影響を問う必要があります。その一方でメディアを活用し、批判的な見方を含めて読み解く力(メディアリテラシー)を育てることが重要です。

 私たち小児科医は、メディアによる子どもへの影響の重要性を認識し、メディア接触が日本の子どもたちの成長に及ぼす影響に配慮することの緊急性、必要性を強く社会にアピールします。そして子どもとメディアのより良い関係を作り出すために、子どもとメディアに関する以下の具体的提言を呈示します。

具体的提言

1) 2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう
2) 授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴は止めましょう。
3) すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。1日2時間までを目安と考えます。テレビゲームは1日30分までを目安と考えます。
4) 子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パーソナルコンピューターを置かないようにしましょう。
5) 保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールをつくりましょう


○ 3〜4月の休診日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定

 3月〜4月も暦通りの診療で臨時休診はありません。急病診療所当番は3月3日(水) 夜、21日(日) 昼と31日(水) 夜の3回で、4月の予定は未定です。赤ちゃん教室は3月13日(土)、その次は5月15日(土) になります。

 「育児相談・子どもの心相談」、「禁煙外来」(ご家族だけでなく本人や兄弟の喫煙についての相談も可)、いずれも水曜午後、土曜午後、平日夕方など時間をとって話せるときに相談可能です。(初回のみ無料で予約制)


発行 2004年3月15日 通巻第96号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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