■ くば小児科クリニック 院内報 2003年12月号


院内版感染症情報 〜2003年第50週(12/8-12/14)


        2003年 第36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50週
インフルエンザ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  1
咽頭結膜熱        2  0  1  0  1  1  0  2  2  0  1  0  0  0  0
A群溶連菌咽頭炎  1  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  1  0  1  2
感染性胃腸炎      3  1  2  5  6  2 10  2  5  1 10 12 13 11 13
水痘              1  0  1  0  0  2  0  2  0  0  0  0  1  4  0
手足口病          3  5  4  5  4  1  1  1  0  0  0  0  3  0  0
伝染性紅斑        0  0  0  0  0  1  0  1  0  1  1  0  0  0  0
突発性発疹        1  1  0  0  0  1  0  0  1  2  1  3  0  3  0
風疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    1  1  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    0  0  0  0  0  1  1  0  0  0  0  0  0  0  1

インフルエンザ注意報発令、胃腸炎もまだまだ多め

 先月までと同様にウイルス性胃腸炎が多めで推移しています。青森市の小学校での集団発生も、先月号に書いた“ノロウイルス”によるものでした。今年はまだ目立ちませんが、毎年この時期から水痘(水ぼうそう)と溶連菌感染症も多い時期に入ります。

 そして、11月の最終週より全国的にインフルエンザが報告されており、12月に入って県内でも流行がみられ始めました。冬休みをはさんでその前に流行が本格化するかどうか、いずれにせよここ数年より早めの流行になりそうです。予防接種をこれから始める方はお早めに、2回目の方は遅くとも年明けまでには済ませるようにしましょう。なお、ワクチンの流通在庫が底をついたというニュースが伝えられていますが、当院では例年よりも多く確保してありますので、まだ若干の余裕があり新規の予約も可能です


● 麻疹(はしか)ワクチンの報道を検証する

 またまた麻疹の話になりますが、最近、一部の新聞で麻疹ワクチンに関する話題が報道されていましたので、誤解のないように解説しておきます。

 一つ目は、「麻疹ワクチンの予防接種について、厚生労働省は接種時期の目安を現行の『生後12か月〜24か月』から『生後12か月〜15か月』に短縮するよう市町村へ通知した。早めに接種することで、麻疹に最もかかりやすい1歳児の流行を減らす狙いだ。また、1歳児の接種率が実態を反映していないため、接種率の算定方法を近く改め、年齢別の厳密な調査を導入する。 (中略)1歳代の予防接種率は現在50%程度。(中略)患者数は1歳代が一番多く、平均入院率は40%と高い。予防接種の機会を年間2回などに限定している自治体には、体制を見直してもらう」というものです。この見直しは至極当然のことで、大都市など麻疹蔓延地域では12か月からでは遅く9か月からの定期接種を望む声も大きいのです。

 二つめは、「麻疹ワクチンを接種したのに中高生で麻疹に罹ってしまう」という現象についてです。この記事は、見出しだけをみると「麻疹ワクチンなんて効かないから接種する必要がない」などと解釈されかねないものなので、少し詳しく、順を追って説明します。

 (1) 麻疹ワクチンの効果は95%以上あり有効なワクチンなのですが、十分な抗体が得られない「一次ワクチン不全(primary vaccine failure : PVF)」が数%の子にみられ、周りに感染者がいれば「接種したのに感染した」ケースとなり、流行がなくてそのまま大人になってしまう場合もあります。

 (2) 予防接種によって一旦は十分な抗体が獲得できた場合でも、その効果は一生続くわけではなく、年月と共に弱くなっていきます。ここで、周囲に麻疹の流行が繰り返されている状況では、感染者に接触してウイルスに暴露されても予防接種の効果で感染は防ぐことが出来て、結果的にその時に免疫が増強される効果が知られており、これを「ブースター効果」と言います。

 (3) 日本は今まで (2) のレベルにあったのであまり問題にならなかったのですが、最近、流行が比較的稀になってきたために「ブースター効果」を得る機会がないまま成長し、通常は接種後10年以上たって中高生や大人になったときに感染を防ぐことが出来ずに罹患してしまう場合があります。これを「二次ワクチン不全(secondary vaccine failure : SVF)」と言います。

 中高生などで流行がみられた場合に、1) ワクチンを接種していない、2) 接種したけど感染した、という2つのケースがあり、後者は更に PVF と SVF に分けられ、これらを区別するためには、診断時と数週間後の2回血液検査をする必要があります。最近の流行時の調査から、これまで考えられていた以上に SVF のケースが多いということがわかってきました。

 この SVF という現象は麻疹制圧のレベルが進みつつあるときにみられるもので、その解決策は世界の多くの国で実施されている「2回接種法」しかありません。アメリカでも十数年前まで同じような段階にあり1回では麻疹を根絶できないことが明らかになったため、MMRワクチンを2回接種しないと入学できないという制度に変更したところ、現在は麻疹の流行はなくなり、全米で患者数は毎年数十人(日本は十数万人)、その殆どは日本など流行国からの輸入例で、周囲に流行が波及することはなくなりました。

 以上をまとめると、いま求められている有効な麻疹対策は、ここでも何度も強調している「1歳の誕生日に麻疹ワクチンを」だけでは実は不十分で、2回接種の導入(そのためには法律の改正が必要なのですが、その障碍となっている人たちがいるのも現実です)や、流行地域における乳児へのワクチン接種などが必要になります。また、上記記事にもあるように、郡部の町村では個別接種になっていないために1歳になったらすぐに接種できない地域も多く、予防接種の広域化(相互乗り入れ)が絶対に必要なのです。これらは、いずれも「はしかゼロプロジェクト」として県当局にも提案している段階で、また随時報告したいと思います。


● 抗生物質って何だろう(紙面が尽きたので詳しくは次回に)

かぜ症候群における抗菌薬の適応(日本呼吸器学会ガイドライン)
1.高熱の持続(3日以上)
2.膿性の喀痰、鼻汁
3.扁桃腫大と膿栓・白苔付着
4.中耳炎・副鼻腔炎の合併
5.強い炎症反応(白血球増多、CRP陽性、赤沈値の亢進)
6.ハイリスクの患者 


○ 12〜1月の休診日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定

 年末は12月30日午前まで診療し午後から休診、年明けは1月5日 (月) からとなります。急病診療所当番は12月7日 (日) 昼、21日 (日) 昼、1月1日 (木) 昼の3回で、それ以降は未定です。赤ちゃん教室は1月17日 (土) です。

 「育児相談・子どもの心相談」、「禁煙外来」(ご家族だけでなく本人や兄弟の喫煙についての相談も可)、いずれも水曜午後、土曜午後、平日夕方など時間をとって話せるときに相談可能です。(初回のみ無料で予約制)


発行 2003年12月14日 通巻第93号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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