■ くば小児科クリニック 院内報 2002年1月号


◎ 2002年(平成14年)年頭にあたって

 「目出度さも ちう位也(中くらいなり) おらが春」小林一茶。

 年が明けてだいぶ経ってしまいましたが、本年もよろしくお願いいたします。昨年は国内外ともに大変な1年になりました。年末には今年度の小泉「医療改革」の大枠が決まったようですが、国民(患者さん)にとって負担増となる上に、現在でも何かと問題の多い「医療の質」を向上させるのではなく医療機関を叩いて質を低下させる方向になるのではないかと危惧されます。この厳しい状況の中で、国民にとってより望ましい医療を実現するために、現状や今後の方向性についての認識を共有していきながら一緒に考えていただければと希望します。


院内版感染症情報 〜2002年第03週(1/14-1/20)


	  2001年 第41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 01 02 03週
インフルエンザ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
A群溶連菌咽頭炎  1  0  0  0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  1  1
感染性胃腸炎      5  6  9  4  6 29 39 33 29 18 14  6  7  6 13
水痘              0  0  0  0  1  0  2  1  3  0  3  0  2  5  4
手足口病          0  3  0  4  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        0  0  1  1  1  3  2  0  1  3  1  1  0  0  2
突発性発疹        1  1  3  2  5  3  4  1  1  1  3  3  0  4  0
百日咳様疾患      0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
風疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  3  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    1  0  1  0  5  1  1  5  1  5  3  1  1  4  0
 1月に入って全国的にインフルエンザ流行の兆しがみえてきており、八戸市内でも患者さんが発生しております。このペースだと2月上旬から中旬に流行するものと思われますが、小規模の流行で終わるものと予想されます。しかし、流行が小規模だからといってかかったときに軽くすむとは限らないので注意して下さい(患者数と重症度は別)。

 年末まで流行していた咳がひどくなるタイプの風邪は年明けで一段落したようですが、例年インフルエンザと同時期に乳幼児で気管支炎・肺炎をおこすタイプのウイルスが流行するのでまだ要注意です。ウイルス性胃腸炎も1月に入って下火ですが、厳寒期にピークになるロタウイルスは重症化することが多く2月にかけて流行するものと思われます。

 年末から水ぼうそう(水痘)の流行しており、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)やリンゴ病(伝染性紅斑)も保育園を中心にしてまだ流行が続いているようです。


● 戦争から平和の年に

 世紀が変わるときに「戦争の世紀から平和の世紀へ」と盛んに言われましたが、そうはならないことが最初の年で明らかになりました。

 世の中の全ての戦争は、正義を守るために行われてきました。十字軍や太平洋戦争も当時の人々にとっては正義の戦いでした。そして、現在でも戦争はなくならないという現実から目をそらすこともできません。「戦争には反対」と言うと、すぐに「ではテロリストは放置しても良いのか」と言い返す人がいますが、それは議論のすり替えです。私たちは政治家とは違った次元で、自分の言葉で話をしても良いのです。国民全員がブッシュ・小泉と同じことを言い出したらどうなるでしょう。

 人の命に関わる医療者の端くれとして、あるいは皆さんと同じように子どもをもつ親として、テロにせよ正義のための戦いにせよ、どのような種類の戦争であれ人を殺すことで問題解決の手段とするやり方に賛成することはできません。もしそれが現実の選択肢としてやむを得ないものだとしても、頭でそう認識することと、自分の子どもが殺されたり逆に人を殺したりするのは絶対に嫌だという気持ちとは、二者択一でどちらかを選ばなければいけないというものではないはずです。

 また、今回の戦争でどのような兵器がどのような目的で使われ、その結果がどうなったのか、真相はまだ隠されたままです。湾岸戦争でイラク人の大量殺害が行われたという事実を私たちが知ったのも、つい最近のことでした。空爆というと上からの視点になりますが、地上にいる人からみればそれは「空襲」です。タリバンがカブールから撤退したら「誤爆」のニュースがきかれなくなったのは何故でしょうか。メディアに流されることなく、視点をあちこちに移しながら複眼的に世の中をみていく必要があるようです。

 人は放っておくと仲間を作り国を作り、互いに対立して戦争をする生き物なのかもしれません。そして、それを抑止するために法律がつくられ民主主義や近代国家が生まれ、国際社会が形成されてきました。アフガン復興会議では「平和を愛する諸国民の公正と信義(日本国憲法前文)」が未だ失われていないことを気づかせてくれたように思います。

 ジョン・レノンの『イマジン』には "You may say I'm a dreamer" というフレーズがありますが、政治家こそ「理想」を自らの言葉で語るべきです。それをすることのない現在の為政者(国内外を問わず)のもとで、子どもも大人も希望を失い、将来の夢を持てなくなっているのではないでしょうか。(坂本龍一編集『非戦』もご覧下さい)


★ 「小泉医療改革」の虚実(その1)

 お伝えしたいことは山ほどあるのですが、紙面が足りなくなったので来月号にまわします。少し長くなりますが、下記の記事をぜひお読み下さい。政府やマスコミが伝えていることと実態がいかにかけ離れているかがおわかりいただけるかと思います。私たちは、医療の無駄を省き質を高めて患者さんの信頼を得るように努力しながら、必要な医療が誰でも平等にうけられるような社会を目指すべきと考えています。

「日本の医療の実情−持続可能な医療体制のために−」 (連載中)
 石原 謙(日医総研研究部長、愛媛大学医学部医療情報部教授)
 http://www.med.or.jp/etc/ishihara.html

「理念なき医療『改革』を憂える」
(第1回 日本の医療費は過剰か? 第2回 またもや先送りされた高齢者医療保険制度の改革 以下連載中)
 李 啓充(マサチューセッツ総合病院・ハーバード大学助教授)
 http://www.so-net.ne.jp/medipro/igak/04nws/news/n2002dir/n2469dir/n2469_03.htm


○ 1〜2月の休診日、急病診療所、各種教室の予定

 1〜2月は暦通りの診療で休診はありません。急病診療所の当番は、1/13 (日) 昼、2/12 (火) 、2/23 (土) です。次の赤ちゃん教室は3/16 (土) です。

☆駐車場が滑りやすくなっておりますのでご注意下さい☆


発行 2002年1月25日 通巻第70号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
webmaster@kuba.gr.jp
http://www.kuba.gr.jp/


前号 次号 院内報トップ くば小児科ホームページ