■ くば小児科クリニック 院内報 2001年9月号


院内版感染症情報 〜2001年第37週(9/10-9/16)


        2001年 第23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37週
A群溶連菌咽頭炎  0  1  1  2  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  1
感染性胃腸炎      7  7 14  3  5  4  4  2  4  8  2  9  7  3  5
水痘              6  8  2  3  3  3  2  1  2  1  0  0  0  0  0
手足口病          4  1  2  2  3  1  4  0  3  1  0  1  1  1  1
伝染性紅斑        1  1  1  0  3  2  0  0  2  0  0  0  0  1  0
突発性発疹        2  1  4  2  1  2  2  1  3  2  1  7  1  1  2
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  1  2  2  0  7  2  3  4  0  1
麻疹              0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    2  0  0  0  0  1  0  0  1  1  2  1  1  1  7
 毎日診察室に閉じこもった生活をしていても、受診する患者さんで季節の変化を感じることが出来ます。8月末までは熱だけの夏かぜが主だったのですが、9月の声を聞くと咳と鼻水と熱の「一般的なかぜ」が目につくようになってきました。そして、秋風と共に喘息の発作が始まっています。これらはいずれも上記の統計には出てきておりません。

 9月中旬にかけて、保育園でおたふく風邪(流行性耳下腺炎)が流行してきているようです。予防接種は1歳以上であればいつでもできますのでご希望の方はお申し込みください。手足口病やヘルパンギーナも、そろそろ下火と言っていいでしょう。嘔吐・下痢などのウイルス性胃腸炎も少しずつみられていますが、症状は長く続かないようです。


● 「保険証 知らない間に 紙切れに」「これからは 自分で病院 選べない」「悲しいな 保険が使えぬ この病気」

 先月は「ちょっと待って小泉さん」というチラシを配布しましたが、今度は別のチラシです。ただし、何も言わずに渡すと誤解されたりわけがわからなかったりするかもしれないので、若干補足しておきます。

 すでに高齢者負担増、健保本人3割負担など、これまでお伝えしていた自己負担増プランが実行に移されようとしています(3歳未満は2割負担に軽減)。ここにあげた3つの川柳は、それに加えて保険がこれまで通りに使えなくなる可能性が高いですよ、ということを警告しているのです。保険証が全く意味のない紙切れになることはないにせよ、公的保険が縮小され、特定の治療は民間の保険に加入しないとできない、それもその会社が指定する病院でしか使えないという事態になるかもしれません。風邪などの軽い病気は保険が使えなくなり全額自費になったり、漢方薬も保険で処方できなくなる可能性もあります。保険に入っていても、手持ちのお金によって治療に違いが出てくる、それも、重い病気のときほど差がはっきりしてくるということになりかねません。

 竹中大臣は「医療に競争原理を持ち込むと医療の質が上がって医療費は下がる」と本気で信じているようですが、経済学者の机上の空論に過ぎず、医療関係者でそんなことを考えている人はほとんどいません。ちょっと考えればわかりますよね。日本の病院はどこも経営に余裕はなく、大病院ほど赤字です(市民病院もそうですね)。もし牛丼屋のようなディスカウント合戦になれば、真っ先に手がつけられるのは人件費でしょう。そうなれば、現在の質を維持することは不可能になります。

 現在、日本は世界一長寿で赤ちゃんの死亡率も低い国で、しかも医療費は対GDP比では先進国の中では低い部類に入ります。また、医療費というのは「医者が儲けているお金」では決してなく、医療機関に勤める人たちの雇用や医療関係の企業活動、医療の進歩や近代化などに貢献し、結果的に社会の経済活動を高めているのです。税金を無駄に食い潰しているわけではありません。これから高齢化社会に向けて、介護関係の雇用など更に需要が高まる医療・福祉の分野を、不動産による借金財政のために無理矢理縮小させようとしているように見受けられます。

 先行して市場原理がとりいれられたアメリカにおける医療の問題点として、「弱者の排除」(有病者の保険加入が困難になり無保険者が増加した)、「負担の逆進性」(大企業に就職できない有病者ほど保険料も増えれば自己負担も増える)、「バンパイア効果」(医療機関は質を犠牲にしてもコストを下げないと生き残れない)、「医療費が下がるという保証がない」(アメリカでは薬剤価格は自由経済の下で製薬会社の言い値で毎年20%近く上昇を続けている)、「アクセスや質が損なわれる危険がある」といったことがあげられています。(講演「米国マネジドケアの失敗から何を学ぶか」李啓充 ・ハーバード大学医学部助教授)

 もう少し講演から引用します。ボストン大学の教授に「日本でマネジドケアがいい、市場原理やマネジドケアが医療のグローバル・スタンダードだと言う人がいて困ったものです」と話したところ、「えっ」と絶句し、「何でアメリカの医療の最悪の部分を取り入れようとするのか。医療のグローバル・スタンダードは市場原理でもないしマネジドケアでもない。Transparency(透明性)とAccountability(説明責任)が医療のグローバル・スタンダードだ」と喝破されたということです。

 いかがですか。政府やマスコミの言うことと、ここに紹介した内容との違いに驚かれるかもしれません。「改革」という言葉に惑わされていると、その先にある姿がみえてきません。真実がどこにあるのか、自分の目で確かめる必要がありそうです。

 小泉さんに反対すると何でもかんでも「抵抗勢力」と一括りにしてしまうマスコミ。そしてそれを上手く利用している小泉流世論操作。税金の無駄遣いをなくすための特殊法人改革と、国民の健康を守るための医療改革とを同じ俎上に乗せて議論するのは最初から無理があります。

 日本医師会も、医師の利益を守るために抵抗している国民の敵の圧力団体というイメージがマスコミによって出来上がっていますが、皆さんが受けている乳幼児健診も予防接種も各種健康教室も急病診療所の運営も、医師会が自治体から委託されて行っているものです。皆さんがいつも受診している内科や耳鼻科や眼科の先生もみんな医師会員で地域医療のために日夜貢献されています。患者さんと医療側と保険側とは、本来対立関係にあるべきものではありません。患者さんにとってより良い医療が行われなければ、それは医療側にとっても不幸なことなのです。私たちは患者さんと共通の認識を深めていきたいと考えているのに、その間を意図的に分断しようとするマスコミの定見のない姿勢には、憤りを覚えることもしばしばです。


● インフルエンザ情報(その2)…今月は情報を掲載できませんでした。予防接種の予約受付中です。

○ 9〜10月の休診日、急病診療所、各種教室の予定

 9月7日(金)pmと8日(土)は学会(宇部)で休診しました。10月13日(土)午後も休診。赤ちゃん教室は9月22日 (土) 。喘息教室は9月1日 (土)で今年の分はおわりになります。急病診療所は、9/15(土)夜、9/28(金)夜、10/7(日)昼、10/15(月)夜、10/31(水)夜です。


発行 2001年9月19日 通巻第66号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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