■ くば小児科クリニック 院内報 2001年6月号


院内版感染症情報 〜2001年第24週(6/10-6/16)


	  2001年 第10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24週
水痘              3  0  2  5  0  4  3  5  2  5  5  2  6  6  8
感染性胃腸炎     24 17 12  7 13 10 19 22  3 10 22 23  4  7  7
手足口病          0  1  1  1  2  0  4  0  0  0  1  1  3  4  1
突発性発疹        5  2  7  2  1  2  3  2  1  2  3  2  2  2  1
ウイルス性発疹症  0  1  0  0  1  0  1  0  0  0  0  0  1  2  1
伝染性紅斑        0  1  1  0  1  2  0  0  0  1  0  1  2  1  1
溶連菌感染症      1  3  1  0  0  3  0  0  3  1  0  1  2  0  1
流行性耳下腺炎    1  0  0  0  0  0  0  2  1  0  2  1  1  2  0
インフルエンザ   50 39 43 27  8  3 11  2  1  0  1  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
 4月から「咳と鼻汁と発熱」という一般的な症状の風邪が流行していて、5月下旬にかけて更に増加して6月に入ってからも持続していましたが中旬にかけて減少傾向です。ウイルス性胃腸炎は5月中旬に再度増加して驚かされました。この時に、市内の小学校で修学旅行における胃腸炎症状が多発して報道されましたが、冬場から流行していたロタウイルスが原因で食中毒ではないことが判明しました。また、白銀地域の保育園で麻疹患者が発生したという情報が伝えられました。6月に入って、手足口病が増加傾向にあります。水痘の流行も高いレベルで続いています。この集計には出てこない「発疹のでる夏かぜ」がちらほらと目につくようになり、ヘルパンギーナも要注意ですがまだゼロです。


● 県内でも麻疹(はしか)が流行してきました

 八戸にいるとほとんど意識しないですむのですが、日本は麻疹の汚染国で、全国のあちこちで常に流行が続いています。先進国の中だけでなく世界的にみても問題になっており、対策の徹底が求められています。

 今年は、西日本や北海道などで流行がみられて全国的に高いレベルで推移していましたが、東北地方では福島県で中学生1名の死亡者が出ており、県内でも5月中旬から弘前市で急増し、その後黒石、十和田と流行がみられています。八戸でも5月に他地域からの流入と思われる患者発生がみられましたが、幸いまだ流行にはつながっていないようです。

 麻疹は通常の経過でも高熱が続いて非常に重篤感があり、気管支炎や中耳炎などの合併症も多く、肺炎や脳炎などで亡くなることもある病気です。麻疹のやっかいなところは、発疹がでて診断がつくまでは普通の風邪と区別がつきにくいことで、そのために一人患者が発生すると保育園や医療機関などで流行が続いてしまい、1歳前の子が罹って重症化するというパターンをとることです。特に保育園や託児所に行っている子は、1歳すぎたらできるだけ早く予防接種を受けるようにしましょう。

 麻疹に罹った子のお母さんは「こんなに重い病気だと思わなかった、もっと早く予防接種を受けさせておけば良かった」とおっしゃいます。子どもは自分で判断することができませんから、必要と考えられることを適切な時期にしてあげるのはご両親の努めだと思います。予防接種は「勧奨接種」に変わって「義務」ではなくなったのだから、接種するしないは親の自由だという考えを一部で耳にすることがありますが、これは「自由」を取り違えた意見だと思います。中には、水ぼうそうは予防接種をしないで、我が子をわざと水ぼうそうに罹った子どもと一緒にして感染させるという話を耳にします。にわかには信じがたいのですが...


● ホクナリンテープは咳止めではありません

 お薬といえば、シロップ・粉ぐすり・錠剤などの飲み薬や坐薬などを思い浮かべますが、テープになっていて皮膚に貼って吸収される薬があります。ホクナリンテープという商品名ですが、喘息や気管支炎などで用いられているメプチンという薬と同じ作用の気管支を拡げる薬です。

 この薬のメリットは二つあります。一つめは、飲み薬ではなく皮膚から吸収される薬なので、咳き込んで吐きやすくなっているようなときにも確実な効果がのぞめること。二つめは、他の飲み薬は夜飲むと朝方にかけて一番効きが悪くなるのに対して、テープだと皮膚からゆっくり吸収されていくために、夜から朝方にかけてだんだんと効いてくるという点です。夜間・早朝の咳き込みや喘鳴(ゼーゼー)が強い場合に、飲み薬からテープに替えたら眠れたという話はよく耳にします。

 デメリットは、皮膚が弱い子だとはがしたあとが赤くなったりかゆくなることがあることと、汗や動きではがれやすくなったり、小さい子で手の届くところだと自分ではがしてしまうことがある点です。

 この薬は、本来は喘息で朝方の症状が持続するような場合を目的に作られたのですが、特に喘息でも気管支炎でもないのに、他の医療機関で「咳止め」として処方されたからということで咳がでたらテープを貼ってくる患者さんを見かけることがあります。喘息や気管支炎で咳き込んだりゼーゼーするときに、このテープを貼ったら結果的に咳が楽になったからといって、全ての咳に効果があるわけではなく、もちろん元から治すという薬ではありません。

 お薬を常備してもらい症状に応じて使うようにお話しすることはあり、テープは保存性や携帯性に優れるのでその目的に適しているのですが、薬の効果と目的を理解して使い分けてもらうことが大切ですね。


○ 恐ろしい事件とともに...  大阪の池田市で、とんでもない事件が起こってしまいました。被害にあったお子さんや親御さんのことを思うと何と書いていいのか言葉に詰まります。心からご冥福をお祈りするばかりです。実は、私は小学校5・6年の2年間、事件のあった小学校の近くに住んでたのです。その後20数年訪れないままになっていたのですが、こんな形で再びその地の名を耳にするとは思いませんでした。

 弘前の放火殺傷事件も未解決のままですが、こういうときに皆の神経を逆撫でするように出現するのが、模倣犯です。今回も、包丁男が全国で、そして県内でも出現したというニュースが流れています。元の事件の犯人はもちろんですが、模倣犯はその浅はかさと無神経さが更に人々の怒りをさそいます。

 地下鉄サリン、神戸小学生殺傷事件など、痛ましい事件とともにその年の記憶が思い起こされるのは歓迎せざるべきことなのですが、このような事件を全国のどこでも、もちろんこの八戸でも決して起こさないようにするとともに、やはりこの社会が崩れて人の心がおかしくなってきている事態を直視しないといけないでしょう。

○ 喘息教室は6月23日 (土)、赤ちゃん教室は7月14日 (土) の予定です


発行 2001年5月17日 通巻第63号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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