■ くば小児科クリニック 院内報 2001年3月号


院内版感染症情報 2001年第11週(3/11-3/17)
☆ インフルエンザ流行中です ☆


        2000年 第49 50 51 52 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11週
インフルエンザ    2  4  2  3  1  6  9  6  5  2  6 18 24 50 39
感染性胃腸炎     16 21 17 16  5 10 19 34 21 23 24 26 32 24 17
溶連菌感染症      2  1  1  0  0  2  0  0  1  2  0  1  2  1  3
突発性発疹        5  0  1  4  1  0  2  1  3  5  1  1  0  5  2
手足口病          0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  0  1  2  0  1
ウイルス性発疹症  0  1  0  0  0  0  1  0  1  0  0  0  1  0  1
伝染性紅斑        0  0  0  1  0  0  2  0  0  1  0  0  0  0  1
水痘              2  5  5  5  3  4  7  6  6  8  1  4  2  3  0
流行性耳下腺炎    0  0  0  0  1  0  0  0  2  0  0  0  1  1  0

◎ここ4シーズンのインフルエンザ患者数の比較(当院)

        第51 52 01 02 03 04  05  06 07 08 09 10 11週
1997-1998  0  0  0  0  5 42 146 131 53 20  0  0  0
1998-1999  0  0  0 22 37 41  52  28 15 12 20 18 36
1999-2000  8  5  8 14 16 51 125  88 36 27 11  5  2
2000-2001  2  3  1  6  9  6   5   2  6 18 24 50 39 
 ご覧のように、1月から2月にかけて不気味な静けさを保っていたインフルエンザが、2月後半から毎週増え続けて3月の中旬にかけてピークを迎えつつあります。今年は初めて検出された時期は早かったものの、例年になく遅い流行の立ち上がりになりましたが、ここ2−3年流行の主役だったA香港型に対する免疫を持っている人が増えたのに伴い、今年はAソ連型とB型の混合流行のためにこのような形になったものと推測されます。症状は、発熱、頭痛、咽頭痛ではじまって関節痛、咳や鼻汁などを伴うのは例年通りですが、長引く子はいても重症化する子は少ないようです。腹痛や嘔吐などの腹部症状で始まるインフルエンザもあって、1月以来流行していたロタウイルスによるウイルス性胃腸炎との区別がつきにくい場合もあります。予防接種をしたのにインフルエンザに罹っている子も何人かいるようです。ワクチンには上記の3型が含まれていたのですが、効果が十分でなかったかウイルスのタイプが違ったのか、いずれにせよインフルエンザについては予防接種したのに罹ってしまう場合があることはご了承いただければと思います。

 ウイルス性胃腸炎はピークを過ぎたものと思われます。溶連菌感染症と水ぼうそうは主に保育園で小さな流行が続いているようです。


● 21世紀の医療は?

 手元にある医療関係の雑誌に「21世紀の医療」と題した特集記事がありますが、目次のタイトルだけを列挙してみると、「QOL・患者中心の医療」「心のケア」「プライマリ・ケア」「医療連携」「医療とネットワーク」「情報開示」「医療のリスクマネジメント」「ゲノム・遺伝子診断/治療」「医療と社会の関わり」「介護」「在宅医療」「電子カルテ」「EBM」「脳死と臓器移植」「クリニカル・パス」「マネージド・ケア」といった具合に並んでいます。専門用語も含まれていますが、ここでは詳しい説明は省略します。

 これらは21世紀にならないと始まらないのではなく、すでに何年も前から言われ続けて実際に行われつつあることばかりですが、この世紀の医療の中心となるのは「患者中心の医療」であることは間違いありません。もちろん、医療というのは患者さんを診察して治療をするのが目的なのですから、これまでも患者中心の医療であったはずで、医療関係者に「患者中心の医療」をしているかと聞けば、多くの人はイエスと答えるでしょう。「まだ満足してもらえていないが、そうなるように心掛けている」と答える人もいるかもしれません。

 しかしながら、医療事故や医療経済を巡る報道にみられるように、医療を取りまく環境はより厳しさを増しております。患者さんと医療関係者の間の溝を広げるかのごとき現在の状況には、多くの医療関係者が危機感を抱いており、患者さんや(マスコミを含む)一般の方との交流と理解を深めていきたいと考えています。

 日本小児科学会で発行している「すこやか通信」にも、「子どもを大切にしない国に明るい未来はない」という記事の中で、小児科を巡る問題として、病院小児科の不採算問題、予防接種、小児救急、特に一次救急と二次・三次救急との連携、心の問題、しつけ、思春期、虐待の予防といった項目があげられています。また紙面が尽きたので来月以降に...


● 犯人さがしはほどほどに…

 どうしても何かいつもと違うことがおこると、その原因を考えたくなるのが人情というものです。子どもたちも名探偵コナンが大好き。そういうわけで、風邪をひいて熱が出たら、お風呂に入ったせいか、部活のせいか、発表会のせいかなどと、診察室では諸説紛々入り乱れます。

 でも、ちょっと考えていただければわかると思いますが、子どもは毎日お風呂に入っているし、中学生は毎日のように部活をしています。クラスに40人子どもがいれば、卒業式の準備のうちに一人か二人風邪をひいてもおかしくありません。  熱が出たり具合が悪くなるのも夕方から夜にかけてが多いので、夜になって熱が出るのがお風呂の前なら部活のせい、お風呂のあとならお風呂のせいということになるのかな。。。

 風邪は、他の人からうつされたウイルスか細菌に感染することが原因であって、お風呂に入ったから風邪をひくわけではありません。ですから、犯人捜しにやっきになる必要は最初からないんです。

 現在ホームページにおける健康相談は中止していますが、かつて「鼻水の薬が出されて飲んだらその日から咳が出てきたが薬のせいか?」という相談があったことがあり正直言って閉口しました。もちろん、薬のせいではなく風邪の症状そのものです。どうしてそうやって犯人捜しをしたがるのかな。「ああ風邪をひいたんだね、まずはゆっくり休んで良くならなかったら小児科に連れて行こうか」と普通に受けとめてもらえば良いのですが。。

 もちろん、同じウイルスに感染しても、症状が強く出る場合とちょっとノドがイガイガする程度で治ってしまう場合があり、これはウイルスや細菌自体の強さと本人の抵抗力とのバランスで決まってきます。ですから、風邪の初期に無理をすると悪くなることはありますので、そういう意味では「養生」ということが最も大切なのです。「養生」という古めかしい言葉については、後日またここで紹介したいと思います。

【まとめ】診察の時には、まずそれまでの症状を順番にお話しいただいた上で、思い当たる節があれば付け加えていただくようお願いします。


○ iモード対応ページ開設 http://www.kuba.gr.jp/i/


発行 2001年3月25日 通巻第60号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
webmaster@kuba.gr.jp
http://www.kuba.gr.jp/


前号 次号 院内報トップ くば小児科ホームページ