■ くば小児科クリニック 院内報 2000年6月号


● 6月のポリオ予防接種延期のニュースについて

 新聞やテレビなどでご存じの通り、福岡県でポリオの予防接種のあとに1歳の男児が右足麻痺をきたし、3歳の女児も劇症型脳症で死亡したことがわかり、全国的にポリオの予防接種は見合わせになっています。

 このうち、麻痺をおこした子の方はポリオの予防接種との因果関係が疑われますが、ポリオワクチン接種者における麻痺患者の発生率は440万人に1人とされています。全国で年間に延べ240万人の子が接種を受けています。

 死亡した子の経過をみると、ポリオの予防接種との因果関係は薄いものと推測されますが、調査結果を待つまで念のため接種を見合わせたという判断のようです。

 10月の接種は予定通り行われるはずです。国内ではポリオの自然感染はなくなっていますので、半年遅れることによるデメリットはほとんどありませんから、その間に三種混合や麻疹などの個別接種を進めるようにしましょう。

 なお、全世界でポリオの根絶まであと数年というところまで漕ぎ着けていますが、それまでの間に、アメリカのように生ワクチンから不活性化ワクチンに切り替える国も出てきています。不活性化ワクチンは麻痺のような副反応は無いのですが、4回も注射しなくてはいけないなどの面もあり、日本ですぐに採用される可能性は薄いだろうと思います。ポリオは30ほど前までは日本でも大流行がみられた病気で、現在の生ワクチンによって世界的に流行が抑えられてきたという歴史があります。今回の一件によって、10月の再開に向けてポリオワクチン不要論のような極論が飛び出すことも予想され、若干の危惧を抱かざるを得ません。できればその時にその後の経緯も含めて取り上げたいと思います。


● 赤ちゃん教室のお知らせ

 4月号でお知らせした赤ちゃん教室(生後0〜2か月頃の両親・祖父母を対象)を3日(土)に開催します。今回が初めての試みですが、今後も定期的に開催する予定です(次回は8月か9月)。その時には、院内報・掲示・パンフレットなどでお知らせするつもりですのでご希望の方はどうぞ(当院に受診したことのない方でも構いません)。


● 熱さまし/ロキソニン副作用のニュースについて

 熱さましは熱が出たらすぐ使わなくてはいけないというものではなく、病気を治す薬ではない、ということは従来よりお伝えしてきました。また、インフルエンザ脳症に関してポンタールとボルタレンが因果関係があるかもしれないという情報は2月号に書きました。

 今回、リウマチなどの痛み止めとして大人で広く使われているロキソニンという薬による劇症肝炎の副作用が報告されています。これと似た薬でイブプロフェン(商品名ユニプロンなど)という薬は小児の解熱鎮痛剤としても使われることがあり、アメリカではアセトアミノフェン(商品名アンヒバ、カロナールなど)に次いで小児に安全に使われる薬として位置づけられております。イブプロフェンは当院では使っておりませんが、今回のロキソニンの副作用報告によって位置づけが変わるものではありません。

 しかしながら、最も安全な薬として世界中で使われているアセトアミノフェンも、短期間の頓用であれば心配ありませんが、例の保険金殺人事件のように大量かつ長期間にわたって使えば死につながることもあるわけです。

 今後も、解熱鎮痛剤については使いすぎに注意して安全かつ適切な使用に心がけるようにしましょう。


● 子育て支援BBS(臨時)と乳幼児医療費助成について

 医師会・歯科医師会・薬剤師会と市で構成する八戸健康医療情報ネットワーク上に、子育て支援の情報交換のページがつくられることになったのですが、現在その準備のために「はちのへ子育て支援BBS」を個人的に臨時で開設しております。是非一度アクセスしていただき、ご意見などをお寄せ下さい。

 乳幼児の医療費助成が入院では3歳から6歳まで拡大されましたが、外来でも6歳までに適用されるようにする運動が始まっております。この件については、現在でも所得制限が中途半端なラインで引かれていてその前後での較差が目立っておりますので、所得制限を緩和または撤廃するのを優先すべきという意見もあるかもしれません。率直なご意見をお聞かせ下さい。

 なお、以前お知らせした、八戸の話題に関する市民向け掲示板「八戸Talkも人数はさほどではありませんがご利用いただいております。興味のある方は是非ご参加下さい。

 いずれも、当院のホームページ http://www.kuba.gr.jp/ からどうぞ。


院内版感染症情報 〜2000年第21週(5/21-5/27)


        2000年 第06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21
感染性胃腸炎     16 17 17 18 18 29 12 17 24 22 25  8  8  8 12  9
溶連菌感染症      0  0  1  3  0  2  3  3  2  1  3  0  3  0  3  5
流行性耳下腺炎    4  1  0  0  1  0  0  1  2  1  0  1  1  0  0  1
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  0  1
水痘              2  2  2  2  1  2  0  0  0  0  2  0  0  2  2  0
突発性発疹        1  1  1  5  0  7  5  1  0  4  4  0  4  1  1  0
伝染性紅斑        0  1  0  0  0  0  0  1  0  1  0  0  0  0  1  0
ウイルス性発疹症  0  0  0  0  0  0  0  1  0  1  2  0  0  0  0  0
インフルエンザ   88 36 27 11  5  2  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0
 4〜5月にかけて溶連菌感染症が再び増加傾向を示しました。4月には咳がひどくなるタイプが流行しましたが、5月はやや下火でしょうか。かわって、熱が主でのどやお腹の症状を伴ういわゆる「夏かぜ」タイプが増え始めたようです。手足口病やヘルパンギーナなどの典型的なものは、例年6〜7月にかけて流行します。これらの夏かぜは最初の1−2日は熱が高くなりますが、その他の症状がひどくなければ熱だけで慌てる必要はありません。口の中にできものが出来て食欲が落ちることがありますが、水分摂取に心がけてもらえば大丈夫です。まれに熱性けいれんや髄膜炎などの合併症を伴う場合があります。


発行 2000年6月4日 通巻第51号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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