■ くば小児科クリニック 院内報 2000年3月号


● 院内報の目的と診療情報の開示

 当院もこの4月で4周年、院内報も5順目に入りますが、発行が毎回遅れていて恐縮の限りです。院内報を発行し始めた目的は、診察室で不足しがちなコミュニケーションを少しでも補うことであり、これは現在でも変わるものではありません。少子化とはいえ赤ちゃんは毎年生まれ続けていますから、説教調にならないように注意しながらも、同じようなことを繰り返して書くかもしれませんが、そういった場合は重要なところなんだなと古くからの読者の方はご理解下さい。

 インターネットのホームページに誰でも書き込める掲示板を設置してあり、メールアドレスも公開しています。更に、八戸の話題についての会議室(参加者募集中)や、子育て支援についてのオープンの掲示板(新設)も設けております。これらも、同じようにコミュニケーションを補うことを目的としておりますので、積極的にご参加下さい。

 今年から日本医師会で診療録(カルテ)を含む診療情報の開示を行っております。当院でも従来より処方箋の控えを渡すなどの情報提供を行っており、今回も指針に従って公開は可能です。ただし、これまでのカルテは他の人に読めるようなものではなかったので、情報公開を前提とした改良を今年1年を目安にして行っていきたいと思います。

 これらは、いずれも医療情報を公開して共有することによって、診察や家庭での看護をスムースに進め、結果的に患者さんにとって良い環境で病気の時を過ごすことができるようになることを目的としております。診察も患者と医療者側との人間関係が基本になっていますので、そこが上手くいかないと診療も上手くいかず、苦い思いをしたことが何度かありました。診察のときに上手く協力してくれない子に、親が何も注意してくれなかったり、毎回のように言っても受診が途切れて悪化を繰り返すような場合には、それに合わせた程度の診察や説明になってしまうのは小児科医なら誰でも経験していることです。そういったことを少なくして、より良い関係を続けながら通ってもらうことを目的として情報開示を進めておりますので、スムースに診察が進められるようにご家庭でも一緒にご協力下さいますようお願いします。


● 幻の病?「自家中毒」

 「うちの子は自家中毒を繰り返すんです」とおっしゃる方が受診されることがありますが、自家中毒(周期性嘔吐症、アセトン血性嘔吐症)というのは何だかよくわからないけど都合の良さそうな診断名で、確かにある種のストレスなどを契機に嘔吐を繰り返す子というのはいることはいますが、最近は激減しており、当院ではこの病名を使うことは殆どありません。また、この病名がつけられていた中に先天代謝異常や消化器疾患などが隠れていることがあるので注意が必要です。「幻の?」と書いたのは、実はもう何年も前から欧米の小児科の教科書からこの病名が消えてしまっているからです。もちろん、ウイルス性の胃腸炎などで嘔吐を繰り返して、尿にケトン体が出るということは子どもでは普通にみられることですから、自家中毒とは関係ありません。


● お腹を温める食事で治す便秘・下痢

 下痢の時に食事療法が大切であるということは、受診したときにもお話ししたり最初にお渡しするパンフレットにも書いていますが、慢性の便秘も食生活や生活リズムに問題がある場合が多く、薬や浣腸に頼る前に食生活の改善を試みてみましょう。よく「この子は便が固いから」と牛乳やジュースなどを大量に飲ませたりする方がいますが、これはかえってお腹を冷やして働きを悪くしたり、便を固くしたりすることになります。単純に食物繊維が多いものを食べさせるだけでなく、お腹を冷やさない、お腹を温めるような食生活に心がけてみましょう。イメージとしては、昔ながらの和食を思い浮かべてもらえば良いでしょう。便秘だけでなく、お腹が痛くなりやすい子なども大体同じです。腹部症状を中心にしてよく使われる小建中湯や柴胡桂枝湯という漢方薬はお腹を温めたり消化管の機能を高める働きがあり、そういった子には効いてくれることが多く、二次的な効果で便秘の改善も期待できます。

 下痢の話に戻りますが、この子はジュースしか「飲んでくれない」と言って、下痢のときに甘い乳酸菌飲料を続けて飲ませていた方もいましたが、好きなものを飲ませるのが親の役目ではありません。下痢のときに限らず、幼児期についた食習慣は、大きくなってから直そうとしてもなかなか直るものではなく、いわゆる生活習慣病につながっていくものですので、離乳食から普通食へ移行していく1歳の頃の食習慣を含む生活習慣の大切さや、その際の親や祖父母の役割があらためて見直されています。


●爪を切って歩こうよ

 全然語呂合わせになって無くてゴメンナサイ。これ、赤ちゃんでなくて、お母さん。診察の時にアブナイので、よろしくお願いしますね。でも、オシリ拭くときに爪の間にウンチが入ったりして大変じゃない?


院内版感染症情報 〜2000年第12週(3/19-3/25)

 発行が遅くなったので3月の感染症情報は省略しますが、先月も掲載したインフルエンザの流行状況の比較を掲載しておきます。


        第49 50 51 52 01 02 03 04  05  06 07 08 09 10 11 12週
1997-1998 *0  0  0  0  0  0  5 42 146 131 53 20  0  0  0  0
1998-1999  0  0  0  0  0 22 37 41  52  28 15 12 20 18 36 11
1999-2000  0  2  8  5  8 14 16 51 125  88 36 27 11  5  2  1

 今年は昨年よりも小児の患者は増加しましたが一昨年よりは少なく、またここ2年間流行したA香港型よりも軽く住む子が多く、Aソ連型が主体でこれにA香港型が加わった流行だったことを反映していると思われます。今年は脳炎・脳症の心配をする声を多く聞きましたが、これについては2月号に書いたとおりで、ワクチンの効果かどうかはわかりませんが今年は昨年よりも脳炎・脳症の患者数はずっと少なくて済んだようです(正確な人数はまだ出ていません)。ただし、多い少ないという比較は実際に罹った方にとっては意味がないのも事実です。


発行 2000年4月17日 通巻第48号
編集・発行責任者 久芳 康朗
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