■ くば小児科クリニック 院内報 1999年11月号


● 子どもの虐待を考える

 子どもを巡る虐待,いじめ,誘拐,殺人などのニュースが絶えることなく流れ,中でも虐待が世間の注目を集めています.今年は私も日本小児科医会の「子どもの心相談医」研修会に参加して,これまで積極的に関わっていなかったこの分野に足を踏み入れるようになりました.青森県でもこれまで連絡協議会の結成や子育てメイトなどの施策をとってきましたが,今回更に2つの取り組みがスタートしました.

1)子ども虐待ホットライン(以下,県民だよりより引用)

 県では,各児童相談所に,虐待に関する通告および通報に対応するフリーダイヤルの「子ども虐待ホットライン」を設置しました.
 子どもの様子などで多くの不自然さを感じるなど,虐待と思われるような時はご連絡下さい.連絡いただいた方の秘密は守ります.
 0120-74-6552 八戸市・十和田市・三沢市・上北郡・三戸郡

2)保健所「子ども虐待・いじめ相談」開設

 子どもへの虐待・いじめに悩む両親や,虐待・いじめなどで悩んでいる子どもたちが気軽に相談できるよう,毎月1回,各保険所に小児科医師等専門相談員による「子ども虐待・いじめ相談」を開設しました.
 開設日は各保険所によって異なりますので,相談をご希望の場合は,右記のところにご連絡下さい.
 八戸保健所 0178-27-3336

 この2つめの小児科相談医に私も任命されました.1か月に1回の相談だけではどの程度利用されるのかわかりませんが,市内の子どもたちのために少しは役に立てればと考えています.もちろん,かかりつけの方の場合は,診察の時や相談日(水・土)にいつでもご相談下さい.

 この事業の一環として,地域の保健所の保健婦さんなどを対象に講演会が開かれ,講演を行ってきました.その時の話の中から,皆さんにもお伝えしたいポイントだけを書き出しておきます.

 1998年度に児童相談所に寄せられた児童虐待に関する相談件数は6,932件で,調査を開始した1990年度に比べ6倍以上に増加しています.虐待は,

(1) 身体的暴行(Physical abuse)
(2) 養育の放棄または怠慢(Neglect)
(3) 心理的虐待(Psycolosical abuse)
(4) 性的暴行(Sexual abuse)

の4つに分類されますが,(3)(4) は発見するのが非常に難しいのが現状です.虐待された子どもたちはPTSDと呼ばれる状態が続き,治療は長期間を要します.

 虐待の原因や虐待を起こす家庭のパターンは一つではなく,ニュースで伝えられるような折り紙つきの社会病質的な人格障害をもつ父親(あるいは継父)と,その虐待からわが子を守ろうとしない母親というパターンばかりではありません.未熟な親,育児の方法を知らない親,手の掛かる赤ちゃんによるストレス,強迫観念(非現実的な期待をもつ完璧主義者),独善的で過度のしつけなど,程度によっては誰に起こってもおかしくない場合もあります.

 過度のしつけ,ついカッとなって抑えが効かなくなり子どもに手をあげてしまう,心理的虐待(お前はダメだ,どうしてできないのといった言葉による虐待)などはボーダーラインと考えられるケースは身近にあふれているものと考えられ,新聞の投書欄にあるような「可愛いわが子を虐待するなんて考えられない,人間とは思えない」といった一方的な非難では何も解決しないということがおわかりいただけると思います.

 虐待は,通報を奨励するだけでは解決にはなりません.いろいろと考えていくと,結局は虐待の対策と限定せずにハイリスクと考えられる両親を中心にいわゆる子育て支援を更に進め,そのネットワーク化による地域連携を進めるしかないという当たり前の答えに辿り着きます.また,インターネットを使った相談の仕組みも作りたいと考えていますが,個人の力では限界がありネットワークづくりを模索中です.

(行数が足りなくなったので,つづく)


● 育児名言集(「アメリカンインディアンの教え」より)

・批判ばかり受けて育った子は,避難ばかりします.
・敵意に満ちた中で育った子は,だれとでも戦います.
・ひやかしを受けて育った子は,はにかみ屋になります.
・ねたみを受けて育った子は,いつも悪いことをしているような気持ちになります.
・心が寛大な人の中で育った子は,我慢強くなります.
・はげましを受けて育った子は,自信を持てます.
・ほめられる中で育った子は,いつも感謝することを知ります.
・公明正大な中で育った子は,正義心を持てます.
・思いやりの中で育った子は,信頼心を持てます.
・人に認めてもらえる中で育った子は,自分を大切にします.
・仲間の愛の中で育った子は,世界に愛を見つけます.

 子どもが大きくなって様々な問題に直面したときに,ただの反抗だけではなく援助交際や少年犯罪などの問題行動に走るかどうかは,自分を大切にできるかどうかによって決まってくると言われています.

 子どもたちは必ずしも立派でなくても尊敬できる身近な大人を求めており,そういう人の言葉には耳を傾けているようです.ここに引用した名言集は,誰もがそう育てたいと思うことを簡潔明瞭に言い表していますが,100点満点の育児というのはありませんので,その人なりに子どもに対して真剣に向き合っているということを日常生活の中で伝えていくことが大切なのだろうと思います.


★ 市民・患者向けのインターネットの新しい会議室を開設

 患者や一般向けのフリートーク会議室と,八戸の話題を自由に語り合う会議室の2つです.詳しくはホームページ上に案内を掲載してありますのでそちらをご覧下さい.皆さんのご参加をお待ちしております.


● インフルエンザの予防接種実施中 →10月号をご覧下さい

○ ぜんそく教室の3回目 は開催できず,来春に開催予定.


発行 1999年12月5日(大変遅くなりました) 通巻第44号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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