■ くば小児科クリニック 院内報 1999年10月号


● 今年もインフルエンザの予防接種を受けましょう −11月から接種を開始します−

 ここ2-3年,冬になるとインフルエンザの比較的大きな流行が繰り返されており,昨シーズンは過去最悪の死者数を記録するなど高齢者や乳幼児を中心に猛威を振るいました.厚生省の集計によると全国で217人がインフルエンザによる脳炎・脳症を発症し,そのうち5歳までが全体の82.5%と大多数を占めています.死亡は58例で,この217人のうちワクチンを接種していた人は一人もいませんでした.老人で肺炎などの合併症により死亡した例は数千名に上るものとみられています.

 国やマスコミは流行が起こって死亡例が出てから,思い出したように「予防には予防接種が大切だ」と訴えていましたが,当然のことながら流行してからでは遅すぎます.それでも3年も同じような事態が続いて流石に懲りたのか,今年の7月には高齢者の予防接種を公費で行う方向性が意見書が出され,来月頃には国のガイドラインが策定されることになっていますが,今年の公費接種は見送りになりそうです.また,小児の接種は更に調査し早急に検討することが提言されています.

 当院では開院以来,喘息児などのリスクの高い患者さんを中心に毎年インフルエンザの予防接種を進めてきましたが,今年は更に多くの方に接種を呼びかけたいと思います.

 今年は老人施設などを中心に予防接種が大々的に行われる見込みで,ワクチンの今年の製造量は320万人分以上で,昨年の倍以上に達する見通しだとのことですが,ゼラチン(アレルギー反応を起こす可能性がある)が含まれていないワクチンは極端に品薄となっており,当院では昨年よりも多めの本数は確保したもののいつ入荷するかは不透明で,早期に予約しておくことをお薦めします.年が明けてからの接種では効果が期待しにくいことから,年内に接種を終わらせるようにしましょう.ちなみに,96-97年は12月下旬,97-98年は1月下旬,98-99年は1月上旬から流行が始まっています.

 また,治療の面では今年は新薬のリレンザ(吸入薬でAB型両方に有効だが日本国内の認可は近日中の予定)と経口薬のシンメトレル(A型のみに有効)の使用も検討したいと思います.また,抵抗力を高める意味で漢方薬の併用も昨年よりも積極的にすすめるつもりですが,小さい子ではいずれの薬も使いにくい面もあり,やはりワクチンが予防としては最も勧められるというのが現時点での結論だと思います.

 なお,より接種しやすいように,インフルエンザに限って接種料金を昨年よりも値下げをして,1回4200円といたします.


● ふたたび,予約のお願い

 秋も深まり再び外来が混みだす季節になってきました.例年これから更に増加して1〜2月頃にインフルエンザの流行と共にピークに達します.私たちも患者数に応じて予約人数や診療開始時間も適宜調整しながらやっております.当院では予約制が皆さんのご協力により定着しており,比較的スムースに診察できていますが,予約なしで来院される方が増えてくると段々とずれ込んでくることになります.兄弟姉妹のうち一人だけ予約して来院する場合もあるようですが,追加で受診したい場合はご面倒でも再度御連絡下さい.もちろん.急に具合が悪くなった方などはこの限りではありません.また,夕方5時過ぎはどうしても待ち時間が長くなりがちですが,30分ほど早く来れば比較的早く診察できます.お仕事・保育園帰りなどでなければ,少しだけ早めに予約してみてはいかがでしょうか.


● 三段論法のからくり?

 何を言い出すのかと思うかもしれませんが,世の中にはちょっと怪しい三段論法がなんとなくまかり通ってしまうことがあります.これは個人のレベルでも,マスコミなど社会的なレベルでもみられる現象のようです.ある事件が起きて,その少し前に何か変わったことがあると,その2つの間にはっきりした因果関係がなくてもあたかもそれが原因であるとみなされてしまう.松本サリン事件の河野さんが有名で,著書を読んで尊敬の念を抱きましたが,そこまでひどくなくても,あるいは特に悪い事件でなくても,往々にして日常生活の中でそういった判断をしてしまいがちであり,その方が楽だという面も否定できないようです.


院内版感染症情報 〜1999年第39週(9/26-10/2)


        1999年 第24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39
突発性発疹        0  1  1  2  2  3  5  4  1  1  3  1  4  0  2  5
感染性胃腸炎      5  9  5  9  9 11  5  8  7  9  5  9 12 10  4  3
溶連菌感染症      5  4  4  1  0  1  1  0  0  0  0  1  2  0  2  3
ヘルパンギーナ    1  1  1  1  0  3  3  1  2  3  5  4  3 10  3  2
手足口病          0  0  1  1  0  1  0  0  2  1  0  0  0  0  1  1
ウイルス性発疹症  1  2  1  1  0  1  1  1  1  1  0  0  0  0  0  1
流行性耳下腺炎    3  0  1  0  0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  1
水痘              6  6  6  5  6  1  1  2  0  2  0  0  0  0  0  0
咽頭結膜熱        0  0  0  1  0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0
伝染性紅斑        3  2  1  0  1  3  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹        1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
 9月には例年よりも遅いヘルパンギーナの流行がみられましたが秋風と共にほぼ終息し,かわりに咳がひどくなるタイプの風邪と喘息発作が増加してきています.百日咳も一部で流行しているという話ですが,当院ではそれらしい患者さんはいましたが確かめられてはいません.溶連菌感染症も増加傾向で,例年年末にかけて更に増えるパターンを示します.ウイルス性胃腸炎は減少傾向になっていますが,これも年末にかけて増加が見込まれます.現在流行がおさまっていますが,水痘(水ぼうそう)も冬場にかけて増えるものと予想されます.

 東海村では,あってはならない人命に関わる事故が起きてしまいました.安全神話はとっくの昔に崩れ去っており,現実の重大さを認識しなくてはいけないと思います.


○ ぜんそく教室の2回目 は30日(土)に開催します.

○ 育児相談・子どもの心相談(無料):水曜午後,土曜夕方


発行 1999年10月17日 通巻第43号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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