■ くば小児科クリニック 院内報 1999年5月号


院内版感染症情報 〜1999年第17週(4/25-5/1)


        1999年 第02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
感染性胃腸炎     11 14 13 15 14 21 21 20 10 13 13 10 14 21 17 19
伝染性紅斑        4  5  7  4  1  5  8  7  6  2  6  2  3  4  0  4
インフルエンザ   22 37 41 52 28 15 12 20 18 36 11  7  2  2  3  2
水痘              6  5  4  2  2  4  1  4  2  2  3  3  5  4  2  2
溶連菌感染症      1  1  2  0  1  2  0  2  0  3  0  1  0  0  2  1
ウイルス性発疹症  0  1  0  0  0  0  0  1  1  1  1  1  0  1  1  1
突発性発疹        1  2  1  1  3  3  5  7  1  2  1  1  0  8  0  1
乳児嘔吐下痢症    0  2  2  2  1  2  0  0  0  3  0  0  2  0  0  0
麻疹        0  0  0  1  0  0  0  0  2  2  2  2  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    1  0  0  0  1  0  1  0  0  0  1  0  0  0  0  0
異型肺炎          0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
手足口病          2  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
 4月中旬からロタウイルスと考えられるウイルス性胃腸炎(嘔吐・腹痛・下痢)が再び増加し,インフルエンザもまだ散見されるなど冬からの流行の続きが目立ちました.全国的に問題になっているイカ乾燥食品によるサルモネラ食中毒は,当院でも患者さんが受診しましたが現在は快復しております.今月号の記事と共に,ホームページにリンク集を設けておきましたので参考にして下さい.

 伝染性紅斑は昨年からの流行がまだ残っているようです.4月は麻疹の発生はゼロでした.そろそろ下火になって欲しいところです.5月はそろそろ手足口病などの夏かぜのタイプが出てくるのではないかと予想されます.


● サルモネラによる食中毒

 ここ数年大腸菌O-157が注目されてきましたが,サルモネラによる食中毒も増加しており,平成8年には1万6千人もの患者が発生し,報告数で1〜2位を占めるようになっています.

 今回八戸のイカ乾燥食品で問題になったのは「サルモネラ・オラニエンブルグ」という菌で,ここ数年増加していた「サルモネラ・エンテリティディス」という卵や鶏肉で感染するタイプとは異なり,しかもイカが原因とは盲点をつかれた形でした.

 サルモネラは,鶏,豚,牛,ペットなどほとんどの動物が持っており,この菌が付着した卵や肉を原材料として使用した食品(特に生卵,自家製マヨネーズ,カスタードクリーム,溶き卵など)により食中毒をおこします.卵や生肉から調理器具や手指を介して他の食品が汚染を受けたり,時にはサルモネラの保菌者がとなって食中毒を引きおこすこともあります.

 潜伏時間は約8時間から48時間で,腹痛,下痢,発熱(38℃-40℃) ,嘔吐,頭痛などが主症状です.治療は対症療法のみで,入院が必要な場合もあります.下痢止めや抗生物質の使用は保菌期間を長引かせる場合もあり注意が必要です.

 その他,今回の食中毒やサルモネラ全般に関する情報は,http://www.kuba.gr.jp/care/salmonella.html にまとめてあります.

<家庭における卵の衛生的な取り扱いについて>

 平成11年11月1日から食品衛生法が改正され,「生で食べられるのか」,あるいは「生で食べられるのはいつまでか」等について,表示が義務付けされることになりました.

 卵はきれいで,ひび割れのない新鮮なものを購入し,すぐに冷蔵庫に保存しましょう.卵の保管は,10℃以下が目安です.卵の保存中は温度変化があると品質に悪影響を与えます.

 卵は使う直前に割り,すぐに調理しましょう.そのまま放置すると,細菌が増殖しやすくなり危険です.ゆで卵にするときは沸騰水で5分間以上加熱し,目玉焼きにするときには70℃1分以上の加熱が必要です.

 生で食べる場合は,ひび割れのない新鮮な卵を使い,食べる直前に殻を割るようにしましょう.十分に加熱しない卵料理は,調理開始後2時間以内に食べましょう.残った食品は時間がたったら捨てましょう.

 以下の方は生卵(ウズラの卵も含む)は食べないようにしましょう.

 ・2歳以下の乳幼児
 ・高齢者
 ・妊娠中の人
 ・免疫機能が低下している人


● 「寝る時間が遅く朝食を食べずに登校」などに問題

 このところ「学級崩壊」なる現象が急速に拡がっていると報道されています.聞いた限りでは八戸ではそこまでハッキリした例はないようですが,小児科医として,あるいは親の一人として気になるところです.

 昨年,東京都立教育研究所が小中学生に行った調査によると,「イライラしやすい子」は夜更かし型の生活が多く,「寝る時間が12時を過ぎる」という子供が52%を占め,「イライラしにくい子」の倍以上だった.また、イライラしにくい子の9割が「朝食を食べて学校に行く」と答えたのに対し,しやすい子は半数以下だった.さらに,イライラしやすい子の4割が「家庭でけんかがよくある」と答え,しにくい子の6倍にもなっている.こうした調査結果を基に,報告書は、イライラしやすい子の心理について「不安や抑うつ感が強く、自分の思い通りにしたい意識が高い」と分析している.(毎日新聞 1999年4月15日 より要約)

 こういった調査結果をみると,我が家もそうだと感じられる方もいると思います(...私自身もそうで本当はこうやって書くのもイヤなのですが).もちろんこれだけが原因ということではないでしょうが,乳幼児期からの食生活や睡眠などの基本的な生活習慣と,それを守らせるためのしつけが大きなファクターであることは間違いないところでしょう.


● インフォメーション

○ 耳で測る体温計

 既に家庭用としてもここ1-2年急速に普及してきていますが,鼓膜温を赤外線センサーで測る体温計を導入してみることにします.当面は従来の体温計と併用しながら使い勝手や患者さんの感想などを確認してみたいと思います.これまで体温を測り終えずに不自然な姿勢のまま診察することがありましたが,そのような不便はなくなるものと期待されます.新しい方式なので小さなお子さんは嫌がる場合もあるかと思いますが,わきの下に挟んでじっとしているよりも,泣いても1秒で終わるので慣れてしまえばこちらの方が好まれるのではないかと思います.


発行 1999年5月5日 通巻第38号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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