■ くば小児科クリニック 院内報 1998年9月号


● 赤ちゃんの鼻づまり

 「咳と鼻みず」というパンフレットにも書いたことですが,赤ちゃんはちょっとした鼻水でも呼吸が苦しくなり,哺乳力が落ちたり眠れなくなったりします.飲み薬だけで症状の改善が不十分な場合は,家庭で鼻を吸い取ってあげると楽に過ごせるようになります.鼻の入口にあてて大人が吸い込むチューブ式の吸引器(商品名ズルズル)を以前から紹介しています.途中に容器のついたタイプも他にありますが,ズルズルでも口元まで鼻汁が上がってくることはありませんので大丈夫です.
 上気道の感染症をくり返して抗生物質をその都度飲んでいるような子に,家庭で鼻の吸引を行うようにすると薬の使用頻度が減少したという報告も最近出ています.鼻が吸い取りにくいような場合は,蒸しタオルをあてたり入浴中・入浴後に吸引すると効率的のようです.
 大人が吸うと耳に圧がかかって良くないのではないか,と聞かれたことがありましたが,鼻の吸引は耳鼻科で普通に行われる処置ですから,よっぽど強い圧で吸い込まない限り大丈夫です.
 ただし,いびきや睡眠時の無呼吸,くさい臭いのする鼻汁が続くような場合は,耳鼻科でみてもらった方が良いかと思いますのでご相談下さい.


● 現代っ子の耐性と幼児期の子育て

 いじめやナイフによる刺傷事件など,子どもの問題行動が深刻化していますが,その大きな原因の一つとして耐性の未発達が考えられています.これは「放任・過干渉共存型過保護」とも呼ばれる幼児期の子育てに原因があるようです.例えば「決めてあることでも子どもが嫌がれば許してやることがあるか」という問いに対して,

低耐性児群の母親 高耐性児群の母親
よくある 5.2 0
ときどきある 63.2 25.0
ほとんどない 28.1 59.0
全くない 3.5 15.9


(%)

というように,子どもが自分ですべきことまで手を出し,何でも要求のままに応じ,叱るべきときに叱らず,我慢させるべきときにも我慢させないような子育てが,子どもの耐性の発達を妨げていると指摘しています.
 また,昔のガキ大将を中心とした遊び集団が昭和30〜40年代を境に崩壊し,遊びの中で耐性がつちかわれるという体験がなくなってきたという点も指摘されています.
 子どもは皆,心のたくましい子になろうとしていますが,その心が育つためには幼いときから豊かな愛情と同時に適度の挫折・困難体験や欠乏体験,欲求阻止の体験が必要なのです.
(福岡教育大学横山正幸先生の講演−日本外来小児科学研究会,福岡,1998年8月−より)


育児相談 の時間を診療時間外に設けることにします(無料)

 普通の診察の時には十分対応できないような,育児上の悩みやトラブル,その他さまざまな問題に答えられるような機会を持ちたいと思っていました.通常の乳幼児健診の時間は1人10分位で長めにしているつもりなのですが,それでも通り一遍の話しかできていなかったと思います.
 また,年長児や思春期の悩みなどにも対応してみたいと考えています.
 時間は,水曜午後または土曜夕方に30分程度,週に1〜2人を考えています.私と久芳裕子(助産婦・看護婦)が一緒にお話を聞きます.これは専門的なカウンセリングなどとは違い,また,お話を聞いてすぐに悩みが解決するわけではないことをお断りしておきますが,できる範囲内で一緒に考えていきたいと思っています.お薬は出せませんので,何らかの治療が必要と考えられる場合は普通の診察時間に受診するようにして下さい.


● インフォメーション

○ ぜんそく教室

 第1回は8月末に終了しました.第2回は環境対策や日常生活のことが中心です.喘息の患者さんは是非ご出席下さい(内容は昨年までとほぼ同じです).

院内版感染症情報 〜1998年第35週(8/30-9/5)


        1998年 第18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35週
感染性胃腸炎      6  4 15  9  9 31 18 12  7  2  6  2  4  2  3  9  8 11
手足口病          0  0  0  0  0  0  4  4 11 20 28 25 17 18 10  5  4  5
突発性発疹        1  3  3  1  3  4  2  0  0  1  3  2  3  1  3  7  3  4
ウイルス性発疹症  0  1  0  1  2  2  1  1  1  4  1  1  1  4  1  4  3  2
ヘルパンギーナ    0  1  0  0  1  4  1  9  7  5  3  4  0  1  1  3  1  2
水痘              1  0  0  1  2  2  4  2  2  3  2  1  2  0  1  0  0  1
流行性耳下腺炎    3  2  1  0  0  2  1  3  1  0  1  0  2  0  0  0  2  0
伝染性紅斑        0  0  0  0  0  0  1  2  1  0  0  0  0  1  2  0  0  0
溶連菌感染症      1  3  3  6  6  5  1  4  4  0  2  1  1  0  0  0  0  0
異型肺炎          0  0  0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0
咽頭結膜熱        0  0  0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0
乳児嘔吐下痢症    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0

 夏かぜの代表選手の手足口病とヘルパンギーナは,8月に入ってかなり下火になりましたが,まだ少しずつ来院されています(某新聞に流行のことが書かれていましたが,あれは古い情報です).8月後半から再び感染性胃腸炎が増加傾向にあり,突発性発疹が多めに推移している以外は特に目立った動きはありません.
 今年ははっきりしない天気のまま夏が過ぎてしまい,8月最終週に天気が崩れてから喘息発作で来院される方が目立つようになってきました.これから10月頃にかけてコントロールの乱れがちな時期にあたります.

○ 待合室の新しい本

 「トム・ソーヤーの冒険」「フランダースの犬」

○ 二種混合の予防接種

 小学6年生の二種混合の予防接種が9月〜11月30日までの期間で実施されています.土曜午後など受診しやすい時間帯で申し込んでいただいて結構ですので,早めにすませてしまいましょう.期間が限定されているのはお互いに不便だと思いますが,八戸市小児科医会では一年中接種できるように市に繰り返し要望しているところです.インフルエンザの予防接種は11月からの予定.


発行 1998年9月6日 通巻第30号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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