■ くば小児科クリニック 院内報 1998年7月号


● 今年の手足口病は要注意?

 感染症情報にも書いたように,6月後半からヘルパンギーナや手足口病といった夏かぜが流行してきています.手足口病はエンテロウイルス(EV)71型,コクサッキーウイルスA16型,A10型を原因とする乳幼児・小児に流行する軽症の感染症で,発熱などがなければ休園の必要もなく(というよりも流行予防の観点からはほとんど意味がなく),髄膜炎の合併症が知られていますが,その場合でも一週間程度の入院で軽快し後遺症は残さないのが普通です.ウイルスは唾液や糞便などを介して保育園や幼稚園を中心に6〜7月にかけて流行します.(→パンフレット参照)

 ところが,台湾で今年の5月から流行しているEV71によって多くの小児が亡くなっており,6月末までに死亡者は51名に達しているというニュースが流れてきています.実は,同じウイルスが昨年はマレーシアで流行して31人の乳幼児が亡くなり,大阪で亡くなった3名の乳幼児の1人から検出されていました.これらの報告を読むと,症状は急激に進行して肺水腫,髄膜炎,脳炎となり比較的短期間で死亡するということのようです.今年は国内ではこの型による重症例の報告はまだありません.重症化するタイプは遺伝子の型が異なっており,神経に対する毒性がより強くなっているためだと考えられています.

 昨年末の香港の新型インフルエンザの時にも同じようなことを書きましたが,現時点では,マスコミや口コミなどの中途半端な情報に踊らされて,普通の手足口病自体を不必要におそれたり隔離したりする必要はないと思われます.流行期には手洗いを十分にするなどの一般的な対策は行っても良いでしょう.念のために手足口病の経過中は,熱が下がったあとも変わった様子がないかどうか観察するようにしてみて下さい.今後の台湾および国内の流行状況には引き続き注意が必要です.

 最新の情報は感染症情報センターのホームページにも随時掲載されています.


● 椅子にまっすぐ座れるかな

 診察の時に丸い椅子に座ってもらいますが,どうも最近まっすぐ座れない子が多くなったような気がします.浅く座って背中を丸めて老人のようになってしまう子,左右どちらかに偏って座り,それを直そうとするとくねくねとタコのように反対側に偏ってしまう子もいます.背中を真っ直ぐにするように言うと,今度はお腹を突き出して背中をそっくり返らせてしまう子.お母さんに抱っこされた小さな子をみると,今度はお母さんが椅子に浅く座って子どもを滑り落としてしまいそう.そんなこんなで診察の時に手間取るので,毎回「椅子に深く座って下さい」と言うようにしていますが,どうもこれもしつこいような気もします.

 細かいことを言うようですが,真っ直ぐ座らないと何で困るかというと,例えばお母さんが浅く座っていると胸を聴診しようとしても身体が前屈みになってお腹と首が近くなり,聴診できるところが少なくなります.ノドを見ようとして舌を軽く押し下げようとしても,身体がずり落ちてしまって見ることができません.小さい子は1回で決めないと泣いて更に見にくくなります.また,聴診器は皆さんが思っているほど何でも良く聞こえるわけではありませんので,変に身体が曲がっていると,呼吸音がちゃんと聞こえなかったり左右差がわからなくなったりして,結果的には所見を見逃して間違った判断につながりかねません.

 診察の時には椅子の真ん中に真っ直ぐ座り,聴診の時には横を見たり話をしたりしないで「普通に大きく」息をして,口を見るときには自分で声を出すようにして大きく開けることなどを,お家でちゃんと話してお約束してから来るようにしてみましょう.

 でも,急病診療所の当番で診察していると,うちに来ている患者さんはやりやすいなとつくづく感じますね.これはホントに.

 関係ないけど,「坐薬」(「座薬」と書いても良いみたい)の読み方は「ざやく」だけど,耳で聞いて覚えたのか,「ざいやく」とか「ざいあく(罪悪?)」と言う方も時々みかけます.坐薬を入れることは決して罪悪ではありませんので,必要に応じて使う使わないは判断していただいて結構ですよ.


● インフォメーション

院内版感染症情報 〜1998年第25週(6/21-6/27)


        1998年 第08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25週
感染性胃腸炎     13 10 11 15  6  2  9 14  5  8  6  4 15  9  9 31 18 12
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  1  0  1  0  0  1  4  1  9
手足口病          0  0  0  0  0  0  0  0  1  0  0  0  0  0  0  0  4  4
溶連菌感染症      0  2  3  3  3  1  0  0  5  0  1  3  3  6  6  5  1  4
流行性耳下腺炎    2  5  6  3  2  5  3  2  1  2  3  2  1  0  0  2  1  3
水痘             12  3  2  1  4  0  2  0  1  0  1  0  0  1  2  2  4  2
伝染性紅斑        0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  1  2
ウイルス性発疹症  0  1  2  1  1  0  0  3  0  2  0  1  0  1  2  2  1  1
突発性発疹        2  1  1  1  0  1  4  4  1  1  1  3  3  1  3  4  2  0
乳児嘔吐下痢症    1  3  6  2  3  1  3  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0

 6月末にかけて手足口病やヘルパンギーナ,ウイルス性胃腸炎などいずれも「夏かぜ」と呼ばれるタイプが流行してきており,7月も同様の傾向が続くものと予想されます.溶連菌感染症は小学校低学年が中心で,初登場の伝染性紅斑(リンゴ病)は今のところある保育園に限定した流行のようです.食中毒のニュースが多くなっており相変わらず要注意.

○ 今年も喘息教室を開催する予定です

 夏がくれば思い出すのが喘息教室.内容は昨年までとほぼ同じですので,出席したことがない方が対象となります.7月末〜8月初めにかけて第1回を開くつもりですが,日程などは院内に掲示し,該当の方には直接お誘いしたいと思います.

○ 石けん導入記(その2)

 いよいよ我が家でも石けんを使いはじめました.洗濯,食器洗い,身体や髪も全部石けんです.今回は詳しく書けませんが,ちょっとした手間は必要ですけれど,使い心地はまずまず良好.今のところ頭が少し痒い感じがしますが,使い初めだからかもしれません.また,先月号の記事を読んで,既に石けんを使っていると教えてくれた患者さんが何人かいました.やはりアトピー気味の方が多いのですが,使っていると痒みが少なくなったという声が多いようです.新聞には八戸のある地区で海を守るために石けんを使う運動をしているという記事も載っていましたね.


発行 1998年7月1日 通巻第28号
編集・発行責任者 久芳 康朗
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