■ くば小児科クリニック 院内報 1997年6月号


● 喘息の吸入薬について(続報)

 先月号では吸入の薬すべてが危険なのではないこと,抗炎症薬の基礎治療が大切であることなどを書きましたが,若干書き足りなかったようです.いま問題になっているベロテックという気管支拡張薬は,それだけですっきりとしてしまうほど効きが良い反面,心臓に対する副作用が他の薬よりも多く,1日2〜3回程度なら大丈夫なのですが,発作のときに使ってみたけど良くならないという時に,「おかしい,いつもなら効くはずなのに」と思ってつい何回も使ってしまう.この構図が喘息死の一つの原因となっていたことは十分に考えられます.現在よく使われているメプチンやサルタノールという新しい世代の薬は,このような依存傾向を起こしにくく,心臓に対する作用はかなり小さくなっておりますが,基礎的治療を怠って過度にβ刺激薬を使いすぎれば絶対安全とは言いきれません.ベロテックについては,使用上の注意が改訂されて使用中の患者さんには改めて注意を呼びかけていますが,他に代替薬がある薬ですから近いうちに使われなくなるものと思われます(当院では現在も処方しておりません).

 全国的にみれば,喘息の患者教育を積極的に行っている医療機関はさほど多くなく,発作が治まればそれで良いという考えでいる患者さんも多いのです.今回問題になったのは,薬の安全性のチェック体制ももちろんですが,治療の考え方や薬の正しい使い方をちゃんと患者さんに伝えていたかどうか,あるいは患者の側で正しい知識を持っ喘息をコントロールしようという姿勢を持っていたかどうか,その辺にあるのかもしれません.難しいですね.

 と,ちょっと反省したところで,昨年以来中断していた「喘息教室」を今年も開催することにします.入門編全2回×2回ずつ(水・土).7月頃にかけて予定を立てたいと思います.もう1回は昨年2回受講した人も含めて,少し進んだ話を(時期未定).詳しくは別に案内を出します.

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● 抗生物質の飲み方

 「今のところ普通のかぜですが念のため抗生物質を出しておきます」「気管支炎になってきていますから抗生物質を変えますね」あるいは「このノドの所見は細菌性だと思いますので抗生物質を出します」,それぞれニュアンスは違いますが抗生物質(抗生剤とも言います)は小児科では最もよく使われる薬のひとつで,多くの種類の薬が発売されています.

 抗生物質は簡単に言うと細菌を殺す薬です.その他にマイコプラズマやクラミジアといった細菌よりも小さい微生物にも効くタイプもありますが,ウイルスには全く効きません.かぜの多くはウイルス性ですので,実際は薬と関係なく治っていくことが多いわけです.ただし,痰がからんで気管支炎ぎみのときには細菌感染を合併していることが多く,また,ノドのかぜでも溶連菌感染症のような場合がありますので,はっきりウイルス性だと診断がつく場合を除くと,当初は抗生物質を飲みながら様子をみることが多いのです.
 ところで,たまに「調子が良いから昼の分を抜いて2回ずつのんだ」とか「1回で全部飲めないから半分ずつ時間をあけてのんだ」といった話をききますが,抗生物質の場合は,飲むならば決められた期間決められた回数でちゃんと飲むことが大切です.相手は細菌という生きているものですから,1回の薬で全部が死ぬわけではありません.例えば,1回飲んで6割の細菌が死んだとしても,残りの4割が時間がくるとまた増えてくる.次の薬でそのまた6割が死んで4割はまた増えて,これを繰り返しながら段々と治っていくというわけです.ですから,中途半端な飲み方では効くはずの薬が効かなかったりすることもあり得るわけです.もちろん,ここでは単純化してお話ししており,実際には体の免疫などがお互いに作用しあって治っていくものと考えられます.
 ですから,効いていても効果が目に見えてくるまで2-3日かかる場合が多いのです(...最初に書いたようにその頃にかけて自然に治る場合ももちろんありますが).薬を出して翌日にまだ熱が下がらないからといった場合,熱そのものだけでなく他の咳などの症状がどうなのか,また,熱が続いていると思っても,グラフにつけてみると下がってくる傾向が読みとれる場合がありますので,いろんなことを総合的にみながら看病してもらえれば思います(...判断がつかず心配な場合は受診して下さい).


● インフォメーション

○ 感染症情報

 5月は溶連菌感染症と水痘が幼稚園や保育園を中心に少しみられていました.おたふくかぜは新聞では流行注意となっていましたが実際にはさほど増えずこのままで下火でしょうか.そろそろ,ヘルパンギーナや手足口病のような夏かぜタイプと思われる子がみられる時期になってきました.

○ 食中毒の季節がまたやってきました

 今年も既にO-157の患者が全国で252人,症状のない人が107人,入院137,死亡1人に達しています(5/23現在).厚生省で出した「家庭でできる食中毒予防」というファイルを印刷しておいておきますのでお役立て下さい.食中毒の予防原則はO-157に限らず全て同じです.

○ 予防接種(月・木 14時〜)

 6-8月は集団接種(ポリオ・BCG)を受ける子が多いため,人数に余裕があると思います.この機会にやりそびれていたものがある方はどうぞ.
 なお,「かぜをひいたあとどれくらいたったら受けても良いのか」という質問が多いのですが,きっちりとした決まりがあるわけではありません.軽いかぜなら大体治ったかなという頃から1〜2週間後,ちょっとこじれたり体力の消耗があった場合や,風疹・突発性発疹・その他名前のついたそれなりの感染症の場合は1か月くらいあけた方が良いと思います.

予防接種のページ

○ 極秘情報(?)

 最近は予約時間の5分前来院が定着してきて,診療の流れもスムースになっております(かぜの患者さんが減ったためもありますが).そのため,予約時間よりもやや早めに診察が進んでいることが多くなってきました.5分前よりも更に少しだけ早く来てもほとんど待ち時間なし診察できる場合があります(...保証はできませんけど).お試し下さい.

○ アトピー性皮膚炎のはなし(第3回)がまた掲載できませんでしたので,直接パンフレットにまとめて発行することにします(6月中?).


発行 1997年6月1日 通巻第15号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031 八戸市湊高台1丁目12-26
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