■ くば小児科クリニック 院内報 1997年5月号


● 吸入の薬を使うと喘息で死ぬって本当??

 3月にNHKでベロテックという吸入薬の副作用で亡くなった患者さんがいるというニュースが流れたようです.私は見てないので詳しく書けないのですが,その後何人かの患者さんから尋ねられて一般論でお答えしていました.他にも誤解している方がいるかもしれませんのでここで簡単に触れておきます.ただし,この問題を詳しく書き出すとここには載せきれませんので,要点だけにとどめておきます.

・日本では毎年5000人以上の方が喘息で亡くなっており,今回ベロテックと関連して報道された10数人だけが問題なのではありません.
・吸入薬にも気管支拡張薬(問題のβ刺激薬)と抗炎症薬(インタールやステロイド)の2つがあり,使い方も目的も全く異なります.
・インタールは全く副作用がなく,ステロイドも安全に使えます.
・β刺激薬は,抗炎症薬の基礎的な治療がなされている患者が発作の時に症状を抑える目的で使われます.これを使うことにより,喘息児とその家族は発作の夜でも自宅で眠れるようになりました.
・ベロテックは大人でよく使われる薬の一つで,少し古い薬に属しますが切れ味は良いようです.当院では心臓に対する作用が少なく比較的新しいメプチンという薬をもっぱら使っておりますが,一晩に3回程度の吸入を恐れることはありません.
・喘息で亡くなった方の背景因子として,家庭や仕事の環境,重症度,治療薬,特に抗炎症薬と気管支拡張薬の使用,怠薬や問題のある受診の仕方,ピークフローモニタリングの有無など様々なファクターが検討されています.そのうちの一つだけを取り出して,あたかもβ刺激薬を使うと副作用で死ぬという誤解を招くような報道の仕方は非常に問題があり,適切な治療を受けている患者を惑わせるものと言えます.
・抗炎症薬を使った適切な治療を行わずにβ刺激薬の一時的効果だけを求めて発作時にあやまった薬の使い方をしたことが結果的に喘息死につながったのではないかと考えられています.
・最近の薬害報道の中で,いかに適切な知識を伝えていくかが課題となってきました.同時に,患者の側も見る目を養ってほしいと思います.あのニュース見たか→じゃあこれ使うのやめたでは困ります.

○ オススメのネブライザーは

 その吸入療法のことで,「喘息の子には吸入器を持ってもらい自宅で治療することを勧めています」と書いたのはちょうど1年前のことでした.もちろん抗炎症薬の継続使用が目的ですが,上に書いたように発作時に気管支拡張薬を併用することも行ってもらっています.現在主におすすめしているのはオムロンのNE-U03という機種ですが,これには一つだけ大きな欠点があり,メッシュの部分がちょっとしたことで壊れたりつまったりして霧が出なくなってしまうことが多いのです.こちらでもそのことはわかっていて,おことわりした上で買ってもらっているのですが,人によっては何回も壊して買いなおしているのが実情のようです.それでもこれをオススメしているのは,従来型に比べて小さくて軽くて静かで2電源対応で大震災でも大丈夫(冗談でなく)ということだけでなく,インタールがどれくらい吸収されるか比べた論文で一番成績が良かったというデータも出ているからなのです.
 ただし,2〜3才くらいでなかなか言うことを聞いてくれずに壊しやすい子や,私はそそっかしいから毎日丁寧に扱うのは向かないという方には,現在当院で使っているネブライザー(パリボーイ)またはその携帯型(パリ・ウォークボーイ:新発売)も紹介できますのでご相談下さい.

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● 予防接種の予定のたてかた

 6月にポリオ,7〜8月にBCGと集団接種が続きます.生まれた月によっては三種混合とぶつかってスケジュールが立てにくい場合もあります.

・原則として,集団接種を優先しましょう.ポリオは自然感染はないのだから後回しにしても良いという言い方をされることがあるようですが(...保健婦さんから),集団接種はその時を逃すと半年〜1年待たなくてはいけない上,その時に全く健康という保障はないわけですから,機会を逃さずに受けるようにしましょう.
・集団接種の場合,1か月の間市内の各会場で接種を行っていますが,なるべく最初の方の日程で予定を組むようにしましょう(一番近いところでなくても構いません).最後の方は必ず混む上に,始めの頃ならやりそびれても後の日程で組み直すこともできますが,最後の方で風邪をひくと後がないので結局その年はあきらめることになってしまいます.
・三種混合はその合間に.例えば,5月に三種混合を3週あけて2回接種し,その後1週以上あけて6月にポリオをうけ,7月に三種混合の3回目をやり,その後また1週間以上あけてBCGを受ける,といったことは可能です.ただし,あまりギリギリに組むとその時の健康状態によって受けそびれて間がかなりあいてしまう場合もありますので,無理せずに9月から三種混合を組んでも良いでしょう.
・間隔は,ポリオやBCGなどの生ワクチンをやった後は4週間,三種混合などの不活性化ワクチンをやった後は1週間です.
・とにかく目安として1才までに三種3回とBCGとポリオ1回は終わらせてしまうように考えて下さい.細かい前後関係は問いません.
・詳しい日程は,「健康カレンダー」や「広報はちのへ」をご覧下さい.
・わからない場合は,受診時にご相談下さい.

予防接種のページ


● インフォメーション

○ 感染症情報

 4月に入っても流行の風邪が減らずに続いており,この中にB型のインフルエンザも含まれていたようです.おたふくかぜは微増傾向.その他には目立った流行はありません.昨年流行した風疹はほとんどなし.先月書いたとおりに,喘息発作で調子をくずしてきた人が何人か見られます.

○ 時間外に電話するときには,必ずお子さんの名前と年齢を先に言ってから症状を話すようにして下さい.こんなこと当たり前だと思うでしょ.でも問い返さないと話してくれなかったり親の名前を言われたりするのだから(...冗談でなく),話の中身を聞く前からイヤになってくるのも許してほしいと思うな.グチになるけど.

○ 今回は喘息の話が多かったので,アトピーの第3回は来月号に延期.

○ インターネットのメールとホームページのアドレスが変わりました.


発行 1997年5月1日 通巻第14号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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