■ くば小児科クリニック 院内報 1997年3月号


● アトピー性皮膚炎のはなし(第1回)

 アトピー性皮膚炎(以下ADと略します)や冬場の乾燥肌などで,小児科にかかっていても皮膚の症状があって軟膏を出している子は多いのですが,ADについてのパンフレットができておらず気にかかってました.そこで今回から不定期でADの話を連載することにして,大体おわったらまとめなおしてパンフレットをつくる,という安易な計画を立てました.前置きが長くなった.今回はADとは何ぞやという話.

○ アトピーとは 「奇妙な」という意味の言葉が元なのですが,今では全く珍しくない現代病となりました.

○ 症状:慢性に経過する湿疹とかゆみが主症状です.赤ちゃんのときは顔,そして体に.年長児では手足(肘や膝),成人では顔や首・肩といったように症状の移り変わりがあるのも特徴です.

○ 乾燥肌(ドライスキン)・保湿作用とバリアー機能の低下 ADの子は湿疹のない部分でもかさかさしています.皮膚の細胞の間をつなぎとめるセラミドという脂質が不足しており,皮膚の水分を保持することができず,更に外からアレルゲンや細菌などが侵入しやすくなっています.

○ 敏感肌・かゆみ AD患者の肌は普通の人の何十倍も敏感で,ちょっとしたことで痒みが強くなります.かゆくて引っかくと更にバリアー機能は低下し,症状が悪化すると痒みも強くなるという悪循環におちいります.

○ アレルギーとアトピー素因 本人や家族にAD・気管支喘息などのアレルギー性疾患があったり,血液検査でダニや食べ物などに対してアレルギー反応を引き起こすIgE抗体ができやすい場合,アトピー素因があると言います.AD患者の多くはアトピー素因を持ちますが,中にはアトピー素因のない子もいます.

○ 皮膚の炎症 IgE抗体を介する蕁麻疹のようなアレルギー反応だけでなく,皮膚の中でリンパ球や肥満細胞などの様々な炎症細胞が炎症性物質を放出してアレルギー性炎症を持続させていることが知られています.

○ 増悪因子 乾燥(冬季),汚れ・汗,細菌(ブドウ球菌)や真菌(カビ)感染,掻破(かきむしること),ダニなどのアレルゲン,脂肪や辛くて刺激の強い食べ物,衣類(柔軟剤や洗剤,化繊やごわごわした衣類),物理的刺激(こすれるところ),ストレスなどが増悪因子となります.
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● 体と生活のチェックをここらでいかが?

 えんぶりも終わり春を思わせるような暖かい日が続いています.そして,3月といえば進学・進級といった節目の季節ですね.この機会に体と生活のチェックをしてみませんか.

○ 低身長 小さめでも成長曲線に沿ったかたちで大きくなっていれば心配ありません.小学校に入るときに100cm(=4歳児程度)がひとつの目安で,それに満たない場合は検査を考慮します.

○ 肥満 3歳(健診)あるいは6歳(入学)の時に指摘された肥満の子の多くは思春期あるいは成人まで肥満をひきずっていき成人病の予備群となっていくと言われています.最近,成人病は生活習慣病と呼ばれるようになりましたが,肥満はまさに生活習慣からきているもの.おやつのダラダラ食い,飲物はジュースやポカリばかり,早食い大食い偏食,運動不足(TVゲーム),おばあちゃん子,美食・外食・脂肪の取りすぎ(ケンタッキーなど).いくつあてはまりますか? 食習慣の変化はアトピーやアレルギーが増加した原因のひとつとも考えられています.昔ながらの和食を中心に,蛋白質や脂肪も魚やイカなどからとるようにし,食べ足りない分は野菜や海草・こんにゃくなどで補うようにしましょう.おやつは決まった量で決まった時間に.添加物にも注目を(ADの増悪因子).

○ 虫歯 虫歯は予防が第一.毎日の歯磨きはちゃんとやってると思いますが,虫歯をつくらないためには,まず甘いものをいつも食べる習慣をつくらない.食べたものが口に残らないように飲物(麦茶など)を一緒に飲む.そして歯磨き.この3つが大切です.フッ素を塗って進行を防ぐこともできますので,早めに歯医者さんと相談しましょう.


● インフォメーション

○ 感染症情報

インフルエンザの流行は下火となっておりますが,この時期になるとB型の流行が重ならないかどうか(まだ検出されたとの報告はありません).B型の場合嘔吐などの腹部症状がみられることが多いようです.

ウイルス性嘔吐下痢症:1月下旬よりかなり流行していましたが,脱水になるほどひどくなる子は稀のようです.もう少しつづく見込み.

溶連菌感染症・水痘・おたふくかぜ:まだ散見されます

ウイルス性の咳がひどくなるカゼ:1歳前の乳児で咳が数日でひどくなり喘息のようにゼーゼーしたりするタイプがかなり流行しています.RSウイルスによるものと考えられますが,かなり重症になることがありますので注意が必要です.

○ 急病診療所の体制(追加情報)

 先月お知らせしたことに若干の変更があり,3月から土曜・日曜・祝日のみ内科系2人体制(内科医と小児科医)となり,他の日は内科医(ときに小児科医)が内科と小児科の両方を診察するということになりました.週末に関してはサービスアップです.平日に小児科医にみてもらえないではないかとの批判が聞こえてきそうですが,マンパワーの問題からこれが限界でしょう(今までも小児科医は週末を中心に出ていたのですが協力して出動回数を増やして対応することにしたのです).
 それまで同じ症状で通院していて具合が悪くなった場合は別ですが,新しい症状でかかりたい場合,週末は主に急病診療所の利用をお願いすることになると思います.ただし,先月も書いたように熱だけの場合などはわざわざ根城まで行かなくてもお母さんの看護+坐薬などでしのいでもらって結構だと思います.
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○ 診療時間の変更(予告)

 4月から,次のように診療時間が変わる予定です.

予防接種(月木)14:00〜15:30一般15:30〜17:30
乳幼児健診(火金)14:00〜15:30一般15:30〜17:30
水曜日午前9:00〜12:00 (午後休診)

 予防接種と健診の申し込みが多くなったため30分延長し,水曜12:00〜12:30はいつも1人来るかこないか程度なので30分短縮することにしました.ご協力の程よろしくお願いいたします.水曜昼に受診すると都合が良かった方は配慮しますのでご相談下さい.


発行 1997年3月1日 通巻第12号
編集・発行責任者 久芳 康朗
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