■ くば小児科クリニック 院内報 1996年8月号
●病原大腸菌 O157が日本全国に蔓延 !!

 先月号で食中毒の予防を呼びかけましたが,今の日本の状況は更に深刻になっています.大腸菌O157による堺の集団食中毒のことは皆さんニュースでご存知かと思いますが,それだけではなく,あちこちの県から1人また1人と患者が発生しており,菌の汚染経路がまだはっきりしないだけに人々の不安をかき立てるような状況になっています.誰にでも感染の可能性があるという点ではエイズより怖いと言っても間違いではありません.八戸では患者が1人だけ発生したものの二次感染にはいたらず,情報によると牛刺しを食べたということでそれが疑われたようですが既に確認はできなかったようです.

 マスコミの情報は同じ事のくり返しで不十分だったので,インターネットで情報を探してみたのですが,びっくりするくらい多くの情報がリアルタイムに発信されていました.ちょうど阪神大震災のときパソコン通信が大きな威力を発揮したのが思い出されますが,今回は圧倒的にインターネットの方に情報が集まっています.ただし,あちこち探してまわらなければいけないのがつらいところで....そんなわけで,その一端を皆さんにもお見せしたいと思い,待合室のマックに入っているくば小児科ホームページから大阪市大などの一部のサイトの情報をみられるようにしておきます.7月末の時点での情報ですが,是非ご覧になって下さい.「おばあちゃんとぼくと」で遊んでばかりじゃなくって,たまにはお役に立てて下さいな.

 そして,パニックにならないように簡単におさらいすると,大腸菌O157は菌自体はただの大腸菌で加熱や消毒には弱いし抗生物質も効きます.ただし,羊の皮をかぶった狼のように,少量でも感染して増殖し,赤痢菌が産生するのとほぼ同じ毒素を産生するために出血性腸炎から溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発し,乳幼児では死亡に至ることもあるというのはご存じの通り.感染経路は不明といわれていますが,過去の外国での例からも食肉や加熱していない生の牛乳などが疑わしいことは明かで,水やその他の原因は二次的な汚染によるものと考えるのが普通でしょう.だって大腸菌なんだから,大腸にいるのが自然でしょ.こんなに全国で散発的に発生しているのだから,強制的に畜産業者から食肉流通業者まで一斉に調査をしなくてはいけないのに,政府はいったい何をしているんだろう,もしかして変な圧力があって調査できないのか,などと書いていたところでやっと食品流通経路の調査をはじめるというニュースが入ってきました.

 最初に邑久町のニュースを聞いてこれは今年だけではすまないかもと感じたのが本当にならなければいいのですが,この菌をすっかり日本からいなくすることはもしかしたら不可能かもしれません.浦和の幼稚園での事件以来,もっと注意を払わなければいけなかったのにと反省させられますが,こうなったら汚染経路を断ち切って予防監視態勢を強めてもらうと同時に,夏だけではなく1年中食品衛生に気をつけて暮らしていくことが必要になってきます.日本は衛生的な国だと思わされていましたが,考えてみれば毎年多くの食中毒が発生し死亡例も珍しくなかったのです.
 ついでながら,薬局で消毒薬が売れているようですが,変に消毒薬に頼るのは危険かもしれません.誰も言ってくれないのでここに書いておきます.


健康小児科だより 〜 麻疹と風疹の予防接種はすんでいますか?

 「痘瘡(=天然痘)は見目定め,麻疹(はしか)は命定め」という諺にもあるように,はしかは昔から乳幼児の命をも奪う病気としておそれられていました.ところが,はしかの予防接種が行われるようになってから,はしかが大変な病気であることの認識が薄れつつあるように思われます.八戸は乳幼児保健が行き届いているためか,このところはっきりとした流行はみられていないようですが,東京のような大都市では常時ある程度の流行が持続しており,今の接種率の低さ(80%にもならない)からすると日本全国いつどこで流行がおこってもおかしくない状態です.そして,流行がおこると重症になるのは決まって1歳になるかならないかという乳幼児なのです.そんなわけで,予防接種のスケジュールを考えるときには「1歳を過ぎたらできるだけ早くはしかを済ませて」とくり返し言っているというわけです.当院に予防接種で来院される方の中ではしかの予防接種が少ないように感じられるのが杞憂なら良いのですが,もしこれを読んでまだ済ませていないことに気付いた方は早めに接種するようにしましょう.ただし,6月〜8月と10月には八戸市のポリオとBCGの集団接種があり,それに合わせて他の接種のスケジュールを組むようにいつもお話ししていますので,そのへんは多少前後しても構わないかと思います.

 ついでに,小学校1年生と中学生(男の子もだよ)で風疹の接種が未だの方はなるべく夏休み中にすませてしまいましょう.昨年の改正でやり方が変わってから風疹に関してはちょっと混乱があるようで,ここ数年の中学生女子で接種率が低下してしまわないか,10年後を考えると心配になってきます.風疹は流行が野放しに近い状態ですので,接種するか,接種せずに子どものうちに罹るか,大人になってから罹って特に妊婦で深刻な状況になるか,きちんと判断してもらえればと思います.

 なお,これは前にも書きましたが,麻疹も風疹もゼラチンにアレルギーがあると重い副反応が出る場合がありますのでご注意下さい.
予防接種のページ


喘息・アレルギーひとくちメモ 〜 アトランタ五輪とぜんそく

 この院内報が発行される頃にはアトランタ五輪も終盤に入っていますが,競泳の男子100m平泳ぎに出場した宮崎義伸選手をご覧になりましたでしょうか.福岡・直方高校3年の宮崎選手は小さい頃から喘息で,治療に役立てたいというお父さんの思いから,1歳のときから水泳に親しんできました.中学・高校総体と優勝を重ね,日本選手権では日本記録保持者の林享選手を破って代表の座をつかみとったのです.五輪の本番では残念ながら予選落ちでしたが,まだ若いのでこれからに注目しましょう.喘息児には水泳が良いということはよく知られていますが,ロス五輪で金メダルを3個も獲得したアメリカのナンシー・ホグスヘッド選手も喘息がきっかけで水泳選手になり頂点まで登りつめています.

 水泳以外のスポーツでも,リレハンメル五輪でフィギュアスケート女子シングルで十八位だった井上選手は同じように喘息で体を鍛えるために3歳のときにスケートを始めました.喘息かどうかは知りませんが,フィギュアではあのハーディング選手も喘息用の気管支拡張剤のエアロゾルを使用している姿が映し出されていましたね.

 先日(7/24),やっと公約の第1回ぜんそく教室を開催することができました.運動と喘息に関しては第2回の中で触れる予定なのですが,ここにちょっとだけホットな話題を提供しておきました.なお8月10日(土)にも第1回ぜんそく教室を同じ内容で開く予定にしています(15:00〜).まだ人数に若干の余裕がありますのでご希望の方はお申し出下さい.第2回は9月〜10月頃になるでしょうか,まだわかりませんが院内に掲示してお知らせしますのでチェックしておいて下さい.
気管支喘息のページへ


●スタッフからのメッセージ (第4回)

 皆さんこんにちは,事務の横道さゆりです.私は高校を卒業して以来,市内のホテルのフロントで6年ほど勤務していました.以前から子どもにかかわる仕事をしてみたいと思っており,高校生の頃は保育園でアルバイトをしたこともありました.そして,現在こうして毎日子どもたちに会えるのを楽しみに出勤しております.
 さて,3歳までのお子さんがいて八戸市の乳幼児受給者証をお持ちの方は,期限が切れる1週間前頃から更新の手続きができますので,乳幼児受給者証,保険証,印鑑をお持ちの上,早めに手続きをするようにしましょう.なお,所得や扶養人数などによって制限がありますので詳しいことは市役所の保健課までご確認下さい.
 では,今後ともよろしくお願いいたします.


●8月の診察と休診の予定
    今月はお盆休みと学会のための休診がありますのでご注意下さい
○ 休診日
午前午後備考
8/13(火)診療休診
8/14(水)休診休診
8/15(木)休診休診
8/16(金)診療診療乳幼児健診あり
8/17(土)診療休診日本小児科学会青森地方会のため
8/23(金)診療休診午前も11:30まで
8/24(土)休診休診日本外来小児科学研究会〜8/25

○ 休診時間 :下記の時間は院外の健診・予防接種のため不在です

8/6(火)13:30〜15時頃1歳半健診
8/9(金)13:30〜15時頃3歳児健診
8/27(火)13:30〜15時頃ツ反(白銀公民館)

○ 休日夜間急病診療所の当番
8/10(土)19:00〜23:00TEL 0178-**-****
(この日は時間外の受付・電話応対はいたしません)


●その他のインフォメーション

○感染症は風疹,水痘,夏かぜも夏休みに入ってすっかり下火.ヘルパンギーナは何人かみましたが,手足口病にいたっては今年はまだゼロ.そういえば,以前はオリンピックの年に流行るといわれたマイコプラズマですが,最近はその傾向も薄れてきているようです.

○夏休み真っ盛りですが,外で活動するときには水分補給を十分にとって,熱射病・日射病,日焼けのしすぎ,水の事故 もご注意を.

○学会で姫路まで行って来ますので,23日〜25日は不在です.いろいろと情報を仕入れてきて,ここで報告したり診療に役立てたいと思いますのでヨロシク.


発行 1996年7月31日 通巻第5号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
kuba@qa2.so-net.or.jp
http://www02.so-net.or.jp/~kuba/


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