「青森県の将来を憂える会」の声明(全文)

※以下の文章の全文は、「青森県の将来を憂える会」から許可を得て転載させていただきました。(←現在申請中で、まだ転載許可をいただいておりません)

青森県知事 木村守男 殿
青森県選出国会議員  殿
青森県議会議員    殿

前略

「青森県の将来を憂える会」はさる12月15日開催の第11回例会において、県民の財政負担問題について別紙のような声明を採択いたしました。青森県民を代表される貴職においてご参考にして戴きますようお願い申し上げます。

 平成13年12月21日

「青森県の将来を憂える会」          
代表 対馬 秀雄(医師、元青森県医師会長)
同  品川 信良(医師、弘前大学名誉教授)
同  石橋 忠雄(弁護士)        


青森県の財政負担問題について県幹部の責任体制を問う(声明)

 本会は、青森県の将来を憂えて、これまで六ヶ所の核燃料サイクル施設建設などに関し、青森県政に対して問題点を指摘し、提言をしてきた。
 しかし、このところの県政を見るとき、さらに憂慮の思いを強くする。

 第1に、国際熱核融合実験炉(ITER)誘致について、青森県は7月下旬、原子力政策青森賢人会議と県議会全員協議会を矢継ぎ早に開催し、県民の理解を得られたとして、同月27日に文部科学省にITER誘致提案書を提出した。

 しかし最近、青森地域社会研究所がまとめたITER誘致に関する県民意識のアンケートによれば、「本県へのITER誘致に賛成か反対か」の問いについては「分からない」が41.1%と最も多く、「反対」および「どちらかといえば反対」が36.1%、「賛成」および「どちらかといえば賛成」が 16.5%という結果であった(『東奥日報』2001年11月19日付)。このアンケート結果は「ITERとは何か?」について県民に対する説明がまだまだ不十分であることを物語っている。

 ところがその後、建設用地確保に80億円以上、高圧送電線敷設で120億円−150億円、研究者の住居整備に170億円を負担する用意があることを県が国側に示していることが明らかになった。県民はおろか県議会にとっても寝耳に水の巨額な債務負担である。経済波及効果が1兆とも1.2兆円以上とも取りざたされているが、木村知事はITER建設に伴う県民負担と地域振興の具体策を開示した上で改めて県論の集約をすべきである。

 第2に、2003年冬季アジア大会をめぐって、当初経費の積算額8億円が56億円に膨張したことについて、「大会経費39億円の枠内」とされてきたが、最近では「大会が終わらなければ経費は分からぬ」という始末である。これでは県は経費の積算能力がないことを自ら宣言しているようなものである。最近、アジア大会のボランティアの応募が少ないことが言われているが、大会そのものに対する県民の理解と歓迎の気持ちが冷めていることに県当局は気付かなければならない。

 第3に、県住宅供給公社の「14億円横領事件」である。事件発覚までに8年間も気付かなかったことは公社事業に対する県当局の経営能力と監督能力が根本的に欠如していることに他ならない。12月5日に知事らの減給処分が発表されたもののこれで事件の幕引きとされたのでは納税者である我々は納得しない。民間では会社役員の故意又は重過失によって会社に損失を与えた場合、役員個人が賠償する責任があるとされているが、今回の件は民間では株主代表訴訟の対象になるケースである。我々は今回の事件で理事長職にあった副知事の辞任と公社理事をつとめた歴代の県幹部が連帯して損害金を返還することを求める。また、県当局は事件の全容解明を内容とする調査報告書の作成、具体的再発防止策などを県民に提示する責任がある。

 最後に、県の2002年度から2006年度までの「中期財政見通し」(一般会計ベース)では、毎年300億円から600億円の「財源不足」が生じる一方、県債の残高は1999年度に1兆円を超え、2006年度に1兆3,300億円を超えると予測されている。青森県の一般会計当初予算総額は2001年度で約8,896億円であるから、県債はすでに単年度の歳入総額を超えているのである。県財政は今や赤信号が点滅している状態である。

 このような厳しい財政事情の中でかくも不明瞭の債務負担、経費膨張、不正事件を目のあたりにし、我々は、県知事を含め財政当局者の公金に対する金銭感覚は根底から麻痺していると言わざるをえない。今や地方財政悪化の温床ともなっている県公社や第三セクターの廃止も視野に、県当局は、当面の財政負担問題の解決にむけて公社事業や巨大開発、スポーツプロジェクト等の在り方や関わり方について根本的な見直しをすべきであると提言する。

  2001年12月15日

「青森県の将来を憂える会」          
代表 対馬 秀雄(医師、元青森県医師会長)
同  品川 信良(医師、弘前大学名誉教授)
同  石橋 忠雄(弁護士)        

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