■ くば小児科クリニック 院内報 2003年7月号


院内版感染症情報 〜2003年第27週(6/30-7/6)


	 2003年 第13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27週
インフルエンザ    1  1  0  0  1  1  0  0  0  0  0  0  0  0  0
A群溶連菌咽頭炎  0  2  2  0  1  0  0  2  1  0  0  0  0  0  1
感染性胃腸炎      6  3 10  8 12  3  5  4  1  2  3  4  7  6 10
水痘              0  3  2  2  2  2  1  0  0  1  1  1  1  1  0
手足口病          1  0  0  0  0  1  0  0  0  0  1  2  5  1  3
伝染性紅斑        0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
突発性発疹        4  3  1  2  2  1  4  2  1  0  1  0  3  3  2
風疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
ヘルパンギーナ    0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
麻疹              0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
流行性耳下腺炎    0  0  0  1  1  0  1  0  1  0  0  0  0  3  1
☆ 手足口病、ウイルス性胃腸炎が流行中

 現在の主な流行は「夏かぜ」で、発熱と頭痛、腹痛・下痢などのパターンが多く、上記の感染性性胃腸炎に分類している子は6月中旬から多めで経過しています。夏かぜの中で、例年7月がピークとなる手足口病が今年も保育園などで流行してきています。

<夏かぜワンポイント・メモ>

・熱が39℃〜40℃と高くなるが、1日半くらいで下がることが多い
・咳や鼻水は、さほどひどくならないことが多い
・結膜炎(目やに・充血)や口内炎(口の中のボツボツ)を合併しやすい
・便や唾液などを介して感染するので、手洗いは十分に
・脱水にならないように、少量頻回の水分補給を心がけてください
・まれに熱性けいれんやウイルス性髄膜炎などの合併症があるので注意


● 障害者や乳幼児・ひとり親医療費助成が削減の危機に…

 今年2度目となった県知事選が終わり、三村新知事が誕生しました。前県政の大変なハコモノ建設と今後の産廃撤去費や新幹線延伸などにより、青森県は破産寸前です。知事選でも財政再建が最大の争点となり、合同・個人演説会でも論戦が展開されました。その中で「聖域なき見直し」「歳出の10%削減」などといった言葉が行き交いましたが、有力候補からは最後まで「どういう考え方の元でどういう優先順位をつけ、何から削っていき、どこは削らないのか」という具体論を聞くことはできませんでした。

 その隠された重要課題は、医療・福祉です。

 実は、3月から前県政のもとで県単独医療費助成制度を検討する委員会がつくられ、来年から重度心身障害者、乳幼児、ひとり親家庭等医療費助成事業の3つ合わせて約30億円の予算が削減される方向で検討されています。福祉日本一を掲げておきながら、お金を浪費して底をついたら、障害者という最も弱い立場にある人たちから真っ先に削ろうという考えのようです。

 これまでの話し合いの中で、重度心身障害者医療費助成事業の約20億円だけを削減の対象にすることになっていましたが、委員会の結論がこれから出て、新知事がどう判断するのか、皆さんもぜひ注目していってください。来年度以降も「乳幼児」「ひとり親家庭」の方も削減という話がいつ出てくるかわかりません。

 「知事なんて誰がやっても同じ」と思っているかもしれませんが、このように生活の隅々まで政治や行政というものは大きく関わっており、それを決めていくのは一部の政治家や県の役人ではなく、私たち県民自身なのです。知事選のときに医療・福祉問題でアンケート調査を実施しました。ここでは、三村新知事の回答の一部だけ紹介しておきますので、公約が守られるように見守っていき、私たちからも働きかけていきたいと思います。
(アンケートの全文は http://aomori2003.tripod.co.jp/ に掲載されています)

 <三村知事の回答>
重度心身障害者医療費削減は必要ない
乳幼児医療費助成制度削減は必要ない
ひとり親医療費助成制度削減は必要ない
小児科救急医療についての県予算全く不十分
屋外タバコ自動販売機撤去問題県条例を作らず、撤去を関係団体・業者にお願いする
役所・学校・病院などの喫煙全面禁煙
知事の退職金引き下げる


● SARSいったん終息宣言 〜 この冬への備えを!

 3月以来、院内報でも継続してお伝えしてきた新型肺炎SARS は、6月21日に新感染者が初めてゼロになり、23日に香港が感染指定地域から解除されたのに続き、24日北京、7月2日トロント、そして5日には唯一残った台湾も解除され、最初の感染者が出てから8か月弱で終息宣言が出されました。4日までの累計で世界のSARS 患者(可能性例を含む)の累計は32カ国・地域で8439人、うち死亡者は812人に上り、治療中の人も196人残っています。

 SARS に対する有効な治療手段を持たないまま制圧に成功したのは、ウイルス本来の持つ流行の季節性に加えて、各国における徹底した対策の正しさが証明されたものと考えられます。

 よほどの幸運が重なったのか、日本国内では感染者が出ずに終わりましたが、もし一人でも感染が確かめられたらこの国の現状では中国の騒ぎを笑えないほどのパニックに陥っていたことは想像に難くありません。

 そして、これだけ蔓延したウイルスが自然界から姿を消してしまうことは考えにくく、動物から人への感染ルートがはっきりしない以上、今年の秋から冬にかけてが SARS 対策の正念場だということは感染症の専門家も一般の医師も一致した見解です。

☆☆☆ SARS対策にインフルエンザの予防接種を ☆☆☆

 もちろん、SARS とインフルエンザは別モノであり、インフルエンザの予防接種はSARS 発症を予防することはできません。しかし、この2つのウイルスは初期症状(悪寒、発熱、筋肉痛、咳・鼻汁など)も流行する季節も、そして流行の発信地(中国が中心)もいずれも同じで、この2つが同時に混合流行したら一般の医療機関では相当の混乱が予想され、最悪の場合「お手上げ」の状態になりかねません。

 そこで、予防手段のあるインフルエンザについて今年はワクチン接種を徹底させることにより、両者をなるべく区別できるようにして、診断や治療の混乱を少なくすることがWHOや厚生労働省でも推奨されているのです。

 当院でも、今シーズンは昨年の倍の本数を確保する予定です。また、できるだけ多くの方に受けてもらえるようにこれまでも値下げを繰り返してきましたが、今年は兄弟姉妹・いとこ・ご近所のお友達などで同日接種される方には割引価格を予定しております。(詳細は未定)

 予約・接種開始時期などを含めて、次号以降でまたお伝えいたします。

 もちろん、これまでの「水際作戦」に代表される対策の徹底に加えて、早期診断技術の確立と普及が必要なことは言うまでもありません。

※SARSに関する情報のリンクとこれまで院内報などに掲載したSARS関連記事は、こちらのページにまとめてあります。


○ 7〜8月の休診日、急病診療所、各種教室の予定

 7月の休診はありません。8月は14・15日がお盆休み(13日午前中は通常通り診療)、30日(土) は日本外来小児科学会出席のため休診とさせていただきます。毎年この学会のときにはお休みをいただいておりますが、皆さまに最新の医療を提供するために必要な生涯学習の場ですので、当日たまたま具合が悪くなった方にはご不便をおかけしますが、ご了承下さい。

 急病診療所当番は7月9日(水) 夜、20日(日) 昼、29日(火) 夜で、8月の当番は未定です。次回の赤ちゃん教室は7月19日(土) 、ぜんそく教室は第2回が7月26日(土) 、第3回が9月6日(土)の予定です。(いずれも無料)

 第2回 ぜんそく教室 「喘息児の日常生活」
  日時 7月26日(土) 15:00〜16:00 (14:30〜ビデオ)
  内容 家庭での環境 日常生活・学校・行事 体をきたえる
     喘息のセルフ・ケア 前回の復習

 真夏は比較的落ち着いていることが多い季節ですが、お盆過ぎて涼しい風が吹きはじめると喘息の発作も散見される季節に入ります。
 第1回のぜんそく教室はちょっと詰め込みでしたが、薬の治療をはじめとした基礎的なことを一通りお話ししました。第2回は環境対策を中心に、日常生活や学校生活などについてまとめてみたいと思います。喘息の治療は薬だけではありません。発作をおこしてからあわてないように、発作のないときにコツコツと貯金をためていくつもりで一緒に勉強していきましょう。第1回の簡単な復習からはじめますので、前回出席できなかった方も是非参加してみてください。


発行 2003年7月10日 通巻第88号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
TEL 0178-32-1198 FAX 0178-32-1197
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