■ くば小児科クリニック 院内報 2003年4月号
● 院内版感染症情報 〜2003年第15週(4/7-4/13)
2002年 第01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15週 インフルエンザ 0 0 8 31 52 39 21 8 10 21 7 7 1 1 0 A群溶連菌咽頭炎 0 1 0 1 0 1 2 2 2 0 1 2 0 2 2 感染性胃腸炎 4 3 7 8 3 4 24 15 13 12 5 5 6 3 10 水痘 3 2 1 1 3 3 3 7 1 5 4 2 0 3 2 手足口病 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 伝染性紅斑 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 突発性発疹 0 2 1 1 0 2 1 2 1 1 0 2 4 3 1 風疹 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 ヘルパンギーナ 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 麻疹 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 流行性耳下腺炎 0 2 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0☆ ウイルス性胃腸炎の流行は継続、SARSは国内でも臨戦態勢に
● 結核の対策が変わります〜学校のツ反・BCGは中止
既に学校から伝えられているかと思いますが、要点をまず書きます。
(A) 平成16年度以降、乳幼児期のツベルクリン反応(ツ反)は中止して生後6か月までに直接BCGを接種するようにする。(今年度はこれまで通りツ反をしてからBCG接種)
(B) 平成15年度から、小1・中1のツ反・BCGは中止し、全学年に問診票を使った結核のチェックを行う。
(C) 結核患者や過去に罹ったことのある人と接触した人の健診を徹底させ、症状のある人を早期に発見し診断する。
(D) 教職員への健診も徹底させ、保護者や教職員へ結核の知識を普及させる。
この変更点のメインは(A)と(C)を徹底させることなのですが、(B)が先行して実施されることになったため若干の混乱がみられているようです。これらの背景については院内報でもお伝えしたことがありましたが、もう一度簡単にまとめてみます。(1) 子どもの結核は減少したが、高齢者を中心とした成人患者は依然として多く、学校などにおける集団感染も問題になっており、その半数以上は教職員が感染源になっている。(2) 学校健診で結核が発見されるのは10万人に1人程度で、胸部X線検査などの精検や予防投薬が必要以上に行われてきた一方で、新規患者の多くを健診で発見することができなかった。(3) 乳幼児へのBCGは髄膜炎などの重症結核を防ぐためにきわめて有効だが、ツ反陰性の学童へのBCG接種の有効性は確かめられておらず、かえって診断の妨げになる場合もある。
これらのことから、約50年も変わることなく続けられてきた結核対策を早急に変更させる必要がありました。結核は過去の病気ではなく現在も流行の続いている重要な感染症ですが、感染力はさほど強くないので比較的濃厚な接触をしないと発症しません。子どもの場合は、子ども同士で感染することは稀で、むかし結核に罹ったことのある祖父母などの家族や、保育園・学校・塾の先生など身近な大人から感染する場合が大部分なのです。
なお、来年度以降の乳幼児のBCGについては、八戸市における現状の7〜8月に限られた集団接種という方式では全ての子が生後6か月までに接種することが不可能なことから、大幅な変更が見込まれています。今後市当局と交渉していくことになりますが、わかり次第お伝えしていきたいと思います。
● 小4の「色覚検査」も廃止に
この件についてはデーリー東北に記事が載っていたのでご存じの方も多いかと思います。色覚検査は、かつては小学校入学時から高校まで毎年行われていましたが、昨年までに小4のみ1回の実施になっていました。しかし、色覚異常は発見しても治療方法がない上、以前は色覚異常を理由に進学や就職を制限されることが多く、「日常生活にはほとんど支障がないのに、ただ差別を生み出している」という批判もあり、今年から廃止になったのです。
色覚異常は伴性劣性遺伝で、遺伝子はX染色体(性染色体)上にあります。日本人男性の約4.5%、女性では約0.2%が色覚異常、つまり1学級に1人はいる計算になります。これらの子どもは色がわからないわけではなく、違うなりに認識できているのですが、色使いが周りと異なるなど学校生活上でも多少の戸惑いは起こり得るそうです。パイロットや船長など一部の職に就くには依然として制限があるため、あらかじめわかっていないと、いざ就職しようとしたとき突然困った事態に陥ることも考えられます。文部科学省では「色覚に不安を覚える児童生徒に対しては、本人と保護者の同意を得て個別に検査を受けられるような体制を整えること」と通達を出しています。今後は希望者のみの実施になるため、各家庭には色覚の正しい知識が求められることになります。
● 子どもの肥満、10年間で2倍に
極端なスリム体型を目指して拒食症に陥るような子もいる一方で、子どもの肥満は着実に増え続けているようです。昨年12月に発表になった「2002年度学校保健統計調査」によると、青森県の子どもは体格で全国トップクラスを維持しているものの、肥満や視力低下、虫歯などが目立ち、健康状態に課題を抱えていることが示されています。特に小学校の児童の肥満傾向割合は4.31%で、10年前の1992年(1.6%)の約2.7倍に増加しています。
肥満増加の原因は「ライフスタイル」の一言に尽きます。TVゲームの普及による外遊びの減少、一部の運動のできる子に偏った競技中心主義の運動部、ジャンクフードや外食の増加によるカロリーオーバーと脂肪摂取の増加など、イマドキの子どもたちの生活習慣はまさに「生活習慣病」を生み出す母胎となっています。
一方で、青森県の食糧自給率は100%を越えているものの、日本全体では40%、穀物の自給率は29%しかありません。食物の輸入がゼロになれば、敗戦前後の食料難時代を上回る飢餓状態に陥ると予測されています。また、イラクやアフガニスタンだけでなく、世界中で低栄養をベースにして感染症などで亡くなっていく子どもたちもいます。
生活を50年前に戻すことは不可能ですが、20年前ならそんなに難しくないかもしれません。ごはんと和食を中心にして鉄分やカルシウムなどのバランスもとれた食生活、お手伝いや外遊び、親子で楽しめるスポーツなど、できることから少しずつ始めてみませんか(…自戒を込めて)。青森県には健康的な農作物がいっぱいあります。なるべく地元の食材を使うようにして、県内の農業が崩壊しないように地域循環型の生活サイクルを再構築していくことも考えてみましょう。
○ 4〜5月の休診日、急病診療所、各種教室の予定
4月〜5月はGWも含めて暦通りの診療となりますが、5月17日(土) は仙台での学会出席のため午前中のみの診療で午後休診となります。
急病診療所当番は4月16日夜、27日昼、5月5日昼、以後は未定です。次回の赤ちゃん教室は5月31日(土) です。
☆ 今月は発行間隔と時期の関係で予定表は掲載しませんが、4月の予定は同時にお渡ししている3月号(3月31日発行)をご覧下さい。月末までには5月の予定を別にお届けするつもりです。
発行 2003年4月13日 通巻第85号
編集・発行責任者 久芳 康朗
〒031-0823 八戸市湊高台1丁目12-26
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