■ くば小児科クリニック 院内報 1999年8月号
● 結核をめぐる状況
先月もBCGについて少し書きましたが,最近厚生省から「結核緊急事態宣言(http://www.jata.or.jp/rit/rj/9907kinkyu.html)」が出されて報道でも取り上げられており,うちの子も結核ではないかと心配になってきたという方も増えてきました.
簡単に状況を説明すると,戦後急速に低下した結核の罹患率は,他の先進国と比べるとはるかに高いレベルで下がり止まり,1997年には新登録患者数が42,715人(前年比+243人)と微増ながら初めて増加に転じました.しかしながら,高齢化に伴い70歳以上で1221人も増加しており,他の年齢ではすべて減少しています.子どもの結核が急に増加しているという事実はありません.ただし,BCGの効果がなくなった20歳代で減少が鈍化し微増に転じており,若い人のツ反陽性率は非常に低いレベルにあります.また,学校や病院・施設などにおける集団感染や院内感染が増えており,薬の効かない多剤耐性結核も一部では問題になってきています.
このようなことから,同宣言では「現在の我が国の結核の状況は,今後,患者数が増加し多剤耐性結核がまん延する等、再興感染症として猛威をふるい続けるか否かの分岐点に立っている」と位置づけています.つまり,ここ数ヶ月で新しい事態が生じたわけではなく,長い目で見て今が褌を締め直す時期だと言っているわけです.(褌って読めます?)
子どもの結核は,年長児の場合は学校などにおける集団感染が問題になりますが,乳幼児の場合,そのほとんどが同居している家族からの感染です.家族で長引く咳をしている人がいたり,おじいちゃんおばあちゃんが昔結核にかかったことがあったような場合は注意が必要になりますのでお申し出下さい.
もちろん,「咳が2週間以上続くようであれば,風邪だと思いこまないで医療機関で受診しましょう(同ページより引用)」.その場合でも,咳が出ている方すべてに検査をするわけではなく,普通は抗生物質を使うなどして数日から1週間程度経過観察して,経過が思わしくない場合に考慮することになります.ツ反は一番痛い注射ですから,あまり頻繁にはやりたくないのが本音ですね.
また,BCGは乳児期のできるだけ早い時期に済ませておいた方が良いので,今月のBCGは逃さず受けるようにしましょう.なお,八戸市ではBCGは7〜8月にしか受けられないのは問題が大きいので,小児科医会でも市に申し入れをしているところですが改善されていません.暑いときに集中してやるなんて,大変ですよね.
● 院内版感染症情報 〜1999年第30週(7/25-7/31)
1999年 第15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 感染性胃腸炎 21 17 19 5 16 15 14 10 9 5 9 5 9 9 11 5 突発性発疹 8 0 1 1 4 1 4 1 1 0 1 1 2 2 3 5 ヘルパンギーナ 0 0 0 2 0 0 1 0 0 1 1 1 1 0 3 3 伝染性紅斑 4 0 4 0 2 2 2 1 2 3 2 1 0 1 3 1 水痘 4 2 2 5 6 3 13 2 12 6 6 6 5 6 1 1 溶連菌感染症 0 2 1 1 2 2 1 4 0 5 4 4 1 0 1 1 ウイルス性発疹症 1 1 1 0 0 2 2 1 0 1 2 1 1 0 1 1 手足口病 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1 1 0 1 0 咽頭結膜熱 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 流行性耳下腺炎 0 0 0 0 1 0 0 0 1 3 0 1 0 0 0 0 麻疹 0 0 0 0 1 1 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 MCLS 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 インフルエンザ 2 3 2 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0今年は暑い夏になりました.例年この時期に流行る手足口病は今年はほとんど見られませんが,類縁の手足や体に発疹の出るウイルス性の夏かぜも散見されます.ヘルパンギーナが7月下旬にかけて増えてきました.その他には,熱とおなかの症状が主な夏かぜが流行しています.
● インフォメーション
○ 育児相談・子どもの心相談(無料)
昨年も院内報でもお知らせしたのですが,水曜午後または土曜夕方に,週1〜2人,時間は30分くらいゆっくりとって様々な相談におこたえしたいと思います.専門的なカウンセリングではありませんが,子どもの心と身体に関する心配ごとの窓口としてご利用下さい.日本小児科医会研修会の「子どもの心相談医」という資格を得ましたが,今後は継続的に日常診療の場で少しずつ役立てていきたいと思っています.
○ 母乳とダイオキシンその後
母乳のダイオキシン汚染について1998年度の調査結果が発表になりました.要点だけお伝えすると,日本の母乳中ダイオキシン類濃度は欧米諸外国と比べて同等で(産生量は最悪なのですが),1970年代以降減少し続けており,1997年度との比較でも減少傾向は確認されています.1日の摂取量に換算すると,体重1キロ当たり103.6ピコグラムとなり,成人の耐容1日摂取量(4ピコグラム)の25倍以上となります.厚生省の「母乳の安全性に問題はない」という言葉を100%信じるわけではありませんが,減少し続けており,諸外国でも母乳を禁止している国はなく,人工乳に対する母乳のメリットが大きいことから,引き続き母乳栄養を推進していただいて大丈夫というのが現段階での結論です.
○ 休診日:8月13・14日,28日(土)午後(午前は通常通り)
○ ぜんそく教室 は9〜10月に2回開催予定.
発行 1999年8月4日 通巻第41号
編集・発行責任者 久芳 康朗
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