■ ブラジル「変わるか喫煙天国」 (2002年2月25日 日経新聞)
ブラジルで2月から、タバコの箱に禁煙を促す衝撃的なカラー写真が印刷され始め、愛煙家の度肝を抜いている。体中に医療用チューブを取り付けた未熟児や、やせ細った肺がん患者の姿など全9種類。2000年から始まったタバコ撲滅政策の一環だ。
中南米地域は世界でも喫煙者が多い。ブラジルも禁煙マークの真下でタバコに火をつけるスモーカーを見受けるほど、喫煙に甘いお国柄だったが、ついに政府が禁煙に本腰を入れ始めた。
すでに米国に先んじてインターネット上の宣伝を禁止。来年には、タバコ会社が文化・スポーツイベントに協賛できなくなる。国の強硬姿勢に対して国内シェアー1位のソウザ・クルス社は、ショッピングセンターに無料の豪華喫煙室を設置して必死に存在をアピール。フィリップ・モリス社では「F1マシンからマールボローの文字が消える」と危機感を募らせる。
禁煙推進の立て役者は10月の大統領選の有力候補、セラ前保健相。昨年、貧困国のエイズ撲滅のため、先進国の製薬会社を相手に特許を無視した安価なコピー薬の生産を表明した人物だ。弱者のヒーローとして国内でも喝さいを浴びたが、最近の矢継ぎ早のタバコ対策には売名行為との批判もある。はたして「寛容の国」を、米国をしのぐ禁煙大国に変えられるだろうか。
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