新しい市民病院の見学記  (1997.4.26)

(この見学記には512×384のJPEG画像が全部で34枚掲載されておりますので暇なときにゆっくりとご覧下さい)

 八戸市立市民病院(以下市民病院と記載)は八戸の街中にあって長年市民に親しまれてきましたが,老朽化のためこのたび市内南類家に新築移転し,9月から診療を開始することになりました.今回,医師会員向けに見学会を開催するということを聞き,新しもの好きの私は早速参加することにしました.

 私が参加したのは2回目の4月26日土曜日,おりしも例年になく早い桜がほぼ満開となり,花見日和の暖かくて良い天気でした.私のクリニックからは車で10分弱,近くなりましたが肝心の周辺の道路が未完成です.あとで聞いたところ開院までには間に合わせるようですが,四本松から新井田を抜ける道(トンネルを含む)は遺跡が出たため予定より遅れるそうな.あてにしていたんだけど.さて,新井田川の橋を渡ると,薄いえんじがかった落ちついた色の病院はもう目の前,7階建ての病棟はひときわ目につき偉容を誇っています.

 まずは中央診療棟2階の講堂に集合.ここもちょっとした研究会が開けそうな広さと立派な設備です.窓のブラインドも自動開閉ときたもんだ.簡単なレクチャーを受けた後,二手に分かれて院内の見学へと出発.

 玄関から入ってまず驚かされるのは,天井まで吹き抜けとなった広い "ホスピタルモール"天井はウミネコをイメージしており,壁の照明もなにやらムードがあり,今までの市民病院を知る人はまずその変わりようにビックリでしょう.ミニコンサートや絵画展も考えられているようですが,まずはこのホールは新しい病院のシンボルとして合格と言って良いでしょう.つきあたりには木の椅子で区切られたちょっとしたスペースもありくつろぎの場となりそう.玄関から入って右側に自動再来受付機が並ぶとのことですがまだ設置されてませんでした.初めての方は左側の総合受付へ.その前の待合室はさほど椅子が多くないけど大丈夫かな.

 次に玄関から入って右側奥へ進み,カルテ庫へ.カルテは中央管理となり,受付の端末からの情報を受けて自動的に取り出され,振り分けられてリニアモーターカーに乗って院内数キロの旅にでるのだそうだ.途中で迷子にならないか心配になりますが,まあ世の中進歩したものです.カルテの中央管理もこれからの時代当然のことなのかもしれませんが,医者の立場からはちょっとやりにくい面も出てくることでしょう.

 その奥の食堂はちょっと狭い気がしましたが,他にもあるのでしょうか,聞きそびれました.

 その次に玄関から正面右手奥へと進み,外来の診察室へ.途中の案内板が番号だけで何科か書かれていないのがちょっと気になるところ.受付電光掲示板に番号が表示された人は中廊下の待合いへと進みます.基本的に声による呼び出しはありませんとのこと.診察室は廊下の左右にずらっと並んでおり,窓がない診察室が大半なのは設計上仕方がないのかもしれませんが,診察する医師にとっては苦痛かも.

 ぐるっと一回りして検査室の廊下を通って再びホールへ戻り,ホテルのようなエレベーターホールから病棟最上階の7階へ.各階には休憩スペースがあり,7階からの眺めは非常に良好.まわりはまだこんな感じで田園風景が広がっていますが,これも数年後にはだいぶ変わっているかもしれません.畳コーナーがあって休めるのもOK.病室は4人部屋個室でいずれもトイレ洗面つき,個室(特室)はバストイレつきでちょっと贅沢な気もしますが,これからはこれくらい当たり前の設備となるのでしょう.各部屋のプレートはえんぶりをあしらったものでセンスは悪くありません.東西の病棟のナースステーションは各階の中央にあって中でつながっています.

 さて,2階に戻って,救命救急センター・集中治療室へ.ここはその広さとベッド数の多さに驚かされます.麻酔科の先生も大変かもしれません.全体的に感じたことですが,これだけの施設をフルに生かすには相当のマンパワーが必要でしょう.器はつくったけれどそれに見合う人数とそれなりの手当がまかなわれるのか気になるところです.

 隣接する手術室は全体にグリーンでまとめられています.一番大きい部屋は移植手術も可能とのこと.更に2階の探検はつづき,次は赤ちゃんとお母さんの総合管理を行う周産期センターへ.NICUにはクベース(保育器)を接続するユニットがずらっと並びなかなか壮観.オープンしてここが小さな赤ちゃんでいっぱいになった頃にまた見学させてもらいたいと思ったけど,その頃には戦場のようになっていることでしょう.隣接する分娩室はピンク色でまとめられていました.生まれた赤ちゃんへの面会案内はこの写真の通り.廊下は全館どこもそうですが木の手すりと木の壁が落ちついた雰囲気を醸し出しています.

 さて,最後は特別大公開(...と言うほどでないか).コメントなしで,院長室医局当直室です.当直室がずらっと並んでいたのにはビックリ.全部で10部屋くらいあったでしょうか.これは大変なことになりました.そして,総婦長室の隣にある地域医療室.中は何の変哲もない普通の部屋ですが,ここが市民病院と医師会員を結ぶ拠点となるかどうか,こちらの働きかけ次第かもしれません.

 駆け足でとばして1時間余りの見学がおわり,再び講堂に集まり質疑応答.ここでは外来予約制についての質問が出たりしました.資料によると,全科の外来で予約制をとり,従来の3時間待ちを1時間に改善するというふれ込みです.予約制の定着のためにはくり返して患者さんに周知させることが必要ですから,大きな病院では大変かもしれませんが,患者さんにとってメリットが実感されるようであれば意外と早く定着していくかもしれません.

 本文中にもいくつかギモンを書き連ねましたが,最後にこれはどうなのかなと思う点を3つあげておきます.単に私が知らないだけなのかもしれませんので,関係の方でお気づきの点がありましたらメールでお知らせ下さい.

1)なぜ救命救急センターが2階にあるのか

 ERではありませんが,救命救急センターは1階にあって救急車からダーッと駆け込んでくるのが当然と思っていました.どうして2階なんでしょう.ICUや手術室とつながっているのは良いとしても,患者搬入時に不便ではないのかなぁ.

(と書いたのですが,これを読んだ市民病院の先生から,救命救急センターの診察室は1階,入院が2階だということを教えてもらいました.1階は見せられなかったのでわからなかったのですが,おかしいと思った.御指摘ありがとうございました。 ←97.6.5追記)

2)食堂や喫茶店などを民間業者でいくつか入れても良かったのではないか

 これは実際にはどうなっているのか知らないで書いているのですが,これだけ人が集まる大きな病院なのですから,メインの食堂以外にいくつかの選択肢があれば良かったのではないかと思います.まわりには食べ物屋さんなんて全然ないし.

3)医局の各先生の机にはLANの配線が来ておらず,外部ネットワーク(インターネット)に接続することができないと聞きました

 この点は声を大にして言いたい.この先30〜50年はこの病院を使うことになるのでしょうが,市民病院の先生はネットワーク社会から切り放されつづけていくのでしょうか.そして,私たちが電子メールで市民病院の先生と連絡をとりたいと考えても,いつまでたっても不可能なままなのでしょうか.

 ちょっと疑問を投げかけたりもしましたが,新しい市民病院に対する市民と医療関係者の期待は非常に大きいものがあります.その機能を十分に発揮していただくことを希望するとともに,私たちもスムースな病診連携に努めていきたいと考えていることを記して見学記をおわることにします.

1997.5.16 記

くば小児科クリニック
久芳 康朗

特別付録 くば小児科ホームページ