青森県単独医療費助成制度の見直し作業に疑問があります
− 県が一般に公開していない報告書の全文を掲載 −前置きは省略しますので報告書と関連新聞記事をご覧下さい。この見直し作業は木村前県政の末期に始まってそのまま三村新県政に引き継がれたものですが、委員会の設立経緯や目的から実際の検討作業、そして検討内容そのものに至るまで様々な疑問や矛盾、問題点が見受けられ、県当局が口にしている「公平・公正」とは全く相反するものであり、このような県政の進め方・あり方は、県民に新生・三村県政に対する大きな不信感を植えつけるものと言わざるを得ません。見直し作業の全てについて反対しているのではなく、検討委員会の報告書に基づいた、開かれた透明性の高い議論による県民が納得できる県政を求めているのです。
まずは、下記の投書をご覧下さい。(著者の許可を得て転載)助成制度見直し 本音を聞きたい (2003年11月25日 東奥日報投書欄「明鏡」より)
◇重度心身障害者医療費助成制度の見直しについては、有識者による検討委員会の結論を尊重すると、県は繰り返し述べてきた。その結論は「障害者にも社会の構成員として応分の負担を求めるべきだ。しかし、自立できる制度的裏付けが必要で、導入時期は慎重にすべき。入院時食事療養費負担は給付の対象から除外が適当である」というものだった。
◇これを受けて県は、検討委員会を再設置して検討を継続する。入院時食事療養費と六十五歳以上の人が重度障害者になった場合(現在の対象者は除く)の医療費は全額自己負担にすると表明した。検討委に障害者代表を入れて、検討委の再設置を決めたのは評価できる。しかし、食事療養費の自己負担という県が望んだ結論だけを先取りにした。さらに検討委の結論を無視し、報告書には一言もない削減案を盛り込んだ。六十五歳以上で新たに障害者になった人は、同助成制度を適用しないというものだ。それも既に市町村に方針を説明している。検討委の結論、県議会での知事の答弁も無視し、強引に押し切ろうとしている。障害者団体等からの意見聴取はなんであったのか。
◇同制度の削減理由として、県は「不公平感がある」としていたが、六十五歳を境に一層の不公平になることに、矛盾はないのか。県は、助成制度の見直しは「財政とは関係ない」と強弁してきたが、今回の見直しは、理念と整合性のある福祉政策とはいえず、逆に財政しか眼中にないことを如実に示している。
◇三村知事が本協会に寄せたアンケート内容について県議会でただされ、「財政的な見地からの削減は必要ないと回答した。不公平を是正するには削減もある」旨の答弁をしたが、今回の案ではそのかけらもない。知事の本音を聞きたい。
(八戸市・県保険医協会会長・河原木俊光)問題と思われる点をピックアップしてみます
- 県の方から情報公開をしようという姿勢が全くみられない
- 検討委員会が設置された経緯、目的、設置要綱がホームページに掲載されていない
- 検討委員会の議事録および報告書がホームページに掲載されていない
- それどころか、検討委員会の存在自体の情報がホームページに全く掲載されていない
- しかし、検討委員会自体は、傍聴したり議事録や報告書の請求が可能であった
- また、設置要項には、この検討会が非公開であるとはどこにも書かれていない
- 以上から、県は本来公開されるべき(そして実際に公開可能であった)情報を、自ら都合の悪いものは積極的に県民に知らせようとはしなかったと判断することができる
- 検討委員会の報告書の大半を無視し、先に「応分負担」という結論ありきで話をすすめていた
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- 当事者である障害者の代表を検討会に参加させず、期限を区切って結論を急がせた
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以下に、県がホームページに掲載していない報告書の全文(2003年9月17日提出)、関連記事(東奥日報へのリンク)、県知事選における三村知事の公約(リンク)を掲載しておきます。報告書は長いものではありませんので是非一度目を通してみてください。OCRで取り込んだものを間違いのないよう修正したつもりですが、誤字脱字が残っていたらご連絡下さい。このページは今後の経過に伴って追加修正していく予定です。
くば小児科クリニック 久芳康朗(八戸市)
健康福祉部
県単独医療費助成制度検討委員会の報告書(骨子)について
1 重度心身障害者医療費助成事業について
(1)医療費負担について
障害者も社会の一構成員であり、構成員として応分の負担をしていただくことを基本とすべきである。
ただし、負担能力については、本来的には障害者個人の負担能力で判断すべきであるが、現行の福祉・医療保険制度上や税法上は世帯単位となっていることから、現状では負担能力を判断する場合は、世帯単位とせざるを得ない。
したがって、障害者に対する応分負担を求める場合は、障害者が健常者と同様に自立できるような制度的裏付けを待って、負担を導入すべきであって、その導入時期については、慎重を期すべきである。(2)入院時食事療養費標準負担額について
日常、在宅で負担している食事と性格は変わらず、入院中は在宅時の食費がかからないことから、入院に伴って新たな負担が生ずるとも言えない以上、給付の対象から除外することが適当。(3)対象者ごとの給付内容の違いについて
対象者すべてを同等に扱い、自己負担については一旦白紙に戻した上で、改めて自己負担のあり方について検討することが妥当。2 乳幼児はつらつ育成事業、ひとり親家庭等医療費助成事業について
(1)医療費負担について
ア 乳幼児はつらつ育成事業
4歳以上児のみ入院1日につき500円の自己負担としている現行の扱いについては、一旦白紙に戻して改めて応分の負担の是非を検討することが適当。イ ひとり親家庭等医療費助成事業
母(父)の医療費のみ月1,000円の自己負担とし、子どもについては全額公費負担としている現行の扱いについては、乳幼児はつらつ育成事業と同様、子育ての負担を軽減する観点から現状維持が妥当。(2)入院時食事療養費標準負担額について
重度心身障害者医療費助成事業と共通する問題であるが、少子化対策として、子育て負担の軽減といった観点から、現行どおりの扱いが妥当。
前文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ l I 重度心身障害者医療費助成事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 II 乳幼児はつらつ育成事業、ひとり親家庭等医療費助成事業について ・・・・・・・・・ 6 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 県単独医療費助成制度検討委員会における審議経過・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 県単独医療費助成制度検討委員会設置要綱・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 県単独医療費助成制度検討委員会名簿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
前文
近年わが国では、社会福祉基礎構造改革の下に「措置制度」からサービスを選択できる「契約制度」に変わり、社会福祉の理念が対象者の「保護」から「自立支援」へと改められたのは時代の新しい潮流によるものであろう。
特に障害者については、旧来の社会的弱者として捉え、国家保護を与えるという発想から、障害者を自立した市民として捉え、社会に完全に参加・参画する権利が尊重されるものとされ、社会の一構成員としての役割が期待されるようになった今日である。
しかし、現在の社会は、障害者、なかでも重度の障害をもつ人々を受け入れる体制が整っているとは言い難い実情にある。
このような状況の中において県単独医療費助成事業の見直しを図ることは、時代の新たな潮流からの視点では時宜を得たものと考えるが、他方、現在の障害者を取り巻く環境、少子化の現状等を考慮すると医療費に限らず、各々の事業を全般的視点から検討すぺきであるとの意見もあったことを付け加えておく。
限られた時間の中で、与えられた課題について検討を重ねてきたところであるが、検討にあたっては、第一に、対象事業に対するできる限りの本質的アプローチを心掛けることとし、県の財政事情や福祉日本一のスローガンについては特に考慮に入れなかったこと、第二に、市町村との関係は重要な課題であるが、それぞれの議会や条例等との問題があることから、検討委員会レベルの議論ではなく、行政レベルの責任で検討されるべきものと考え、審議の対象にしなかったことをお断りしておく。
1 見直しの視点
(1)本事業のモデルになった老人医療費が全額公費負担から自己負担1割となっているのに、本事業が全額公費負担のままであるが、これでよいか。
(2)入院中の食事については、制度改正により、医療費と切り離されて、標準負担額を自己負担することになっている。この分について本事業が全額公費負担しているが、これでよいか。
(3)
1) 本事業の創設時(昭和50年4月)から対象となっている身体障害者手帳1・2級、愛護(療育)手帳A所持者は医療費の自己負担はないのに、
2) その後(平成5年10月)対象拡大となった身体障害者手帳内部障害3級所持者は、老人医療と同様の自己負担1割となっており、
3) 更に(平成12年10月)対象拡大となった精紳障害者保健福祉手帳1級所持者は精神の入院に限り、月額1万5千円を上限とする自己負担が設定されているが、
それぞれについて、これでよいか。2 検討結果
(1)医療費負担について
前文に記述したように、国際的にもノーマライゼーション(共生社会)とリハビリテーション(全人的復権)の時代となり、我が国においても、社会福祉基礎構造改革の中で、諸法の改正が行われ、社会福祉の新しい理念が明確に示されている。
即ち、障害者を社会的弱者として捉え、国家保護を要する対象とした旧来の発想が改められ、障害者を自立した社会の一員として捉え、自己決定権が尊重される時代を迎えている。
障害者自身においても、必要な支援を受けつつも、一方的なサービスの受け手としてばかりでなく、社会の一構成員、一県民としての役割も期待されているところであり、ノーマライゼーションの積極的な意義がここにあるといえるのではないか。
このような認識に立てば、重度心身障害者医療費助成事業の今後のあり方については、単に老人医療費における負担との比較で論ずることは適当ではなく、また、重度障害者であることをもって、直ちに「保護すべき存在=全額公費負担」と考えるのも妥当ではない。このことは、障害者を他の人々と平等に扱うものでもなけれぱ、逆に特別に扱うものでもなく、公平に扱うことを意味する。
では、公平に扱うとは、どのような扱いか。その焦点となるのは、障害者を社会の一構成員である自立した市民として捉えることである。しかし、障害者の「自立」をどう捉えるか、である。これには二つの考え方がある。一つは、健常者と同じ意味で捉えることであり、もう一つは抱える様々なハンディキャップを抱えていることを前提として、それへの支援や介確によって支えられていることを含めた存在を自立とする捉え方である。
この自立に対する二つの意味が、社会の一構成員として障害者も医療費に対して応分の負担問題の鍵を握る。前者の自立の意味は、負担能力を個人の単位とすることになる。補助の対象は障害者個人であり、新しい福祉理念の上からも障害者の主体的な生活の尊重という観点からも対象者個人の負担能力で判断すぺきで、家族を福祉資産とするべきでないことになる。
このような考え方は、今後の福祉施策の基本的な方向性を示すものであり、検討課題である重度心身障害者医療費助成事業に対する立脚点を示すものである。
然るに、この立脚点に立つことは現実的ではない。なぜならば、例えば、医療保険制度の自己負担上限額は世帯の課税状況に応じた区分毎に設定されており、この区分による自己負担額分を本事業で助成していることからも、応分負担を導入する場合は世帯単位でなければ整合性を保てない。一般的に、世帯の一員として生活している以上は生計は同一であり、負担能力についてのみ個人で捉えることは無理がある。現行の制度上からすれば、障害者の自立は、後者の意味として捉えざるを得ない。
それゆえ当検討委員会は、障害者も社会の一構成員であり、構成員として応分の負担をしてもらうことを基本的認識、基本的方向性に立ちながらも、障害者が健常者と同様に自立できるような制度的な裏付けを待って、障害者に対する応分の負担を行うことが公平であるとともに現実的であると考え、医療費の負担導入の時期については慎重を期すべきものと判断する。
なお付言すれば、障害者が社会の一員として、社会活動に参加し、自立した生活を営んでいける社会生活環境が整っているとは言えない現状で、社会の一構成員だからといって負担を課すことは、重度障害者に負担のみを強いる結果となりかねない。行政においては、重度障害者及びその家族が様々なハンディキャップを抱えている現状の把握に努めるとともに、障害者が自立した社会の一員として実感できる社会生活環境づくりに向けて、障害者福祉全般にわたる更なる取り組みを行うよう要請するものである。(2)入院時食事療養費の標準負担額について
入院時食事療養費の標準負担額は医療費そのものではなく、入院に付随する食事の実費という性格であり、現行医療保険制度においては、低所得者に配慮し、所得階層に応じた額が設定されている。
乳幼児はつらつ育成事業、ひとり親家庭等医療費助成事業について
1 見直しの視点
県単独医療費助成事業として、重度心身障害者医療費助成事業における見直し結果との整合を図る点があるか。2 検討結果
(1)医療費負担について
ア 乳幼児はつらつ育成事業
制度発足後の中途から対象となった4歳以上児のみ入院1日につき500円の自己負担を設定しているが、公平性の観点から、一旦白紙に戻し、改めて応分の負担の是非を検討する必要がある。
なお、検討に当たっては、当該事業が深刻化する少子化の対策として、就学時までの乳幼児の医療費負担を軽減し、乳幼児が病気になっても受診しやすい環境づくりをすることで、重症化防止など乳児死亡の改善を担っていることを考慮する必要がある。
少子化及び乳児死亡が改善されていない現状では、むしろ子育ての負担を現行以上に軽減する方向での検討が必要であると考える。イ ひとり親家庭等医療費助成事業
母(父)の医療費についてのみ、受益者負担として医療機関毎に月1,000円の自己負担が設定され、子どもについては全額公費負担となっているが、乳幼児はつらつ育成事業と同様、子育ての負担を極力軽減する観点から現状維持が妥当と考える。(2)入院時食事療養費標準負担額について
重度心身障害者医療費助成事業において、入院時食事療養費標準負担額は、「入院に付随する食事の実費という性格であり、医療費ではなく、また、入院に伴って生ずる新たな負担とは言えない」とされた点については、当該事業においても共通するものである。
しかし、ひとり親家庭等医療費助成事業及び乳幼児はつらつ育成事業については、少子化対策として、子育ての負担を極力軽減する観点から、現行どおりの取扱とすることも、やむを得ないものと考える。
県単独医療費助成制度検討委員会は、平成15年3月から8回にわたって、県単独医療賛助成事業の今後のあり方について検討を重ね、ここに結論に至った。
検討を終えるにあたって、一つだけ問題を指摘しておきたい。すなわち、検討すべき事項の性質からして、それを検討し、審議を行う時間が、あまりにも少なすぎたことである。
県単独医療費助成制度の検討を行うためには、なによりも本県の実体を充分に把握することが不可欠である。そのために、必要とされる資料は事務局から適時提出されたが、重度障害者を始めとする本助成制度に直接影響を受ける方々の意見を聞く機会が限定されざるを得なかった。また、検討すべき事項は、重度心身障害者医療費助成事業のみではなく、乳幼児はつらつ育成事業、ひとり親家庭等医療費助成事業も含まれた。重度心身障害者医療費助成事業に時間を割かざるを得なかったために−これ自体も検討の時間が足りなかった−、他の事業の検討に充分な時間を割くことができなかった。
もちろん、検討時間が多ければいいというものではない。しかし、当該事業によって日々の暮らしに多大な影響を受ける人々がいることを考えると、時間の許す限り精力的な議論を行ってきたものの、慎重審議に基づく結論を出すためには、半年という時間はあまりにも少なかった、と委員全員が抱いたことは否定できない。
今後、このような事項の検討においては、審議・検討するための充分な時間を設けることが望まれることを申し添え、本報告の結びとする。
平成15年 2月7日 県単独医療費助成制度検討委員会設置 3月5日 県単独医療費助成制度検討委員会(第1回)開催 4月30日 県単独医療費助成制度検討委員会(第2回)開催 5月29日 県単独医療費助成制度検討委員会(第3回)開催 6月4日 県単独医療費助成制度検討委員会(第4回)開催 7月4日 県単独医療費助成制度検討委員会(第5回)開催 7月17日 県単独医療費助成制度検討委員全(第6回)開催 8月11日 県単独医療費助成制度検討委員会(第7回)開催 9月5日 県単独医療費助成制度検討委員会(第8回〉開催
(設置目的)
第1 国の抜本的な医療保険制度改革等社会情勢の変化に伴い、県単独医療費助成制度である乳幼児はつらつ育成事業、ひとり親家庭等医療費助成事業及び重度心身障害者医療費助成事業の今後の在り方を検討するため、県単独医療費助成制度検討委員会(以下「委員会」という)を設置する。(委員)
第2 委員会は、次に掲げる者のうちから知事が委嘱した委員をもって構成する。
(1)学織経験者
(2)市町村関係者
(3)診療報酬審査支払関係者(組織)
第3 委員会に、委員長を置く。
2 委員長は、委員の中から互選により選出する。
3 委員長は、委員会を代表し、委員会を総括する。
4 委員長が事故あるときは、予め委員長が指名する者が、その職務を代行する。(会議)
第4 委員会は、委員長が招集する。
2 委員長は、必要があるときは、委員以外の者に対し、委員会への出席を求めることができる。
(事務局)
第5 委員会の庶務は、健康福祉部こどもみらい課及び障害福祉課において行う。(その他)
第6 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関し、必要な事項は委員長が定める。附則
この要綱は、平成15年2月7日から施行する。
委員(8人)
区 分 氏 名 職 名 等 学識経験者等 白取 肇 弘前福祉短期大学教授 吉川 公章 県立保健大学 講師 吉原 正彦 青森公立大学教授(経営学) 一條 敦子 あおもり女性大学1期生 北村 其夕美 (株)青森経営研究所代表取締役社長 市町村 中野渡 春雄 十和田市長(市長会) 福士 孝衛 七戸町長(町村会) 診療報酬審査
支払関係者斎藤 繁 青森県国民健康保険団体連合会
事務局次長
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