平成15(2003)年11月1日

八戸市の中学生貧血検診についての要望

八戸市長   中村 寿文 殿
八戸市教育長 菊池  武 殿

   八戸市医師会長 土井 三乙
八戸市学校保健会会長 縄田 與幸

 八戸市の中学生女子貧血検診は、八戸市医師会・八戸市学校保健会からの提案を取り入れいただき、3年間のパイロット調査の後に1993年より市内全校で実施され、昨年までで10年間が経過いたしました。今般、この10年間の検診結果を集計・検討し、更に間近に迫っている市町村合併への対応をふまえて、次の2点について要望いたしますので、ご高配の程よろしくお願いいたします。

要 望

  1. 中学生の貧血は学校保健における重要な問題であり、検診の費用対効果も高く、合併後も全校で事業を継続していただきたい。
  2. 現在、女子だけに実施されている検診事業を、男子にも拡大していただきたい。

理 由

  1. 10年間の八戸市中学2年女子貧血検診の集計で、次のような傾向が認められました。(別紙資料)
    1. 一次検診の再検率(ヘモグロビン値12g/dl未満)は13.0%、二次検診における要治療者は全体の4.9%と高率であった。
    2. 最近3年間(2000〜2002年)の一次検診再検率は13.5%と10年間の平均より高く、増加傾向にあるとは言い切れないが、少なくとも検診によって貧血の頻度が減少しているとは言えなかった。
    3. これらの結果は、東京都や金木町における同学年の検診データと比較して高値であり、八戸市の中学生女子は貧血の頻度が高いことが示唆された。
    4. ヘモグロビン値が8g/dl未満の高度貧血が0.5%(最近3年間の3969名中19名)に認められ、そのうち6名はヘモグロビンが6g/dl台で正常の半分しかなかった。また、要治療者の約7割は運動部であり、これらの生徒は検診がなければ貧血に気づかれることなく学校生活を送り、そのまま成長していた可能性が高い。
    5. 貧血の頻度には学校間・地域間の較差が明らかに認められた。平均ヘモグロビン値は浜通り6校>市街地9校>郊外7校の順に高く、学校間の比較では平均ヘモグロビン値で最大1程度の差が認められた。
    6. 二次検診における事後処置については医療機関におけるばらつきが一部で目立った。
    7. これらの結果は、本年の日本小児科医会および八戸医学会において発表し、メディアにも公表する予定である。

  2. 男子への検診の拡大について
    1. 一般に、中学生では女子の10人に1人、男子の20人に1人に貧血が認められる。
    2. 東京都のデータでも、中学生女子の6.4%、男子の3.3%が基準値以下の貧血であった。
    3. これらの事実を八戸市女子のデータにあてはめてみると、中学2年男子の約6.5%が要再検となり、約2.5%が要治療となるものと推測される。
    4. 以上を勘案すると、女子全員にスクリーニング検査を行う一方で、男子には全く実施されず貧血が放置されて成長していることは、学校保健上の合理性に欠くものと考えられる。(事業開始時より、男子への拡大については検討課題となっていた)
    5. 日本小児科学会の全国調査でも、女子だけに検診を行っている地域は少数にすぎない。
    6. 2003年(平成15年度)から、1人あたりの検診の単価が440円から280円(-36.4%)へと大幅に引き下げられている。

  3. 思春期の貧血については、次のような特徴的な事実が知られています。
    1. 思春期の鉄欠乏性貧血は緩徐に進行するため、自ら症状を訴えて受診することは少なく、運動時の息切れや動悸などはかなり進んだ状態でみられるものである。
    2. しかし、検診で発見された生徒に詳しく問診すると、疲れやすい、持久力がない、めまいがする、動作が緩慢で意欲に乏しい、学習面でも消極的で意欲がないといった症状が明らかになり、これらが原因となって学校生活上の問題や不登校にもつながりかねない。
    3. 貧血のない鉄欠乏状態においても、筋肉、心臓、脳、肝臓、胃腸、免疫系などの障害が起こることが知られている。
    4. 特に、鉄欠乏症によって精神発達の遅れや、集中力や持続力の低下、記銘力や言語学習能力の低下がおこることが明らかになり注目されている。
    5. 学校保健法に記載されている眼瞼結膜の視診によるチェックでは、かなり高度な貧血を除いて確度が低く、熟達した医師でも偽陰性(見逃し)が多くなることは免れないため、スクリーニングは採血法によらざるをえない。
    6. 日本小児科学会の全国調査では、少なく見積もって毎年100万人以上の中高生が貧血のスクリーニング検査を受けているものと推測されたが、標準化されたスクリーニングシステムや方法の確立が課題となっていた。
    7. 近年、貧血や鉄欠乏が増加している背景には、成長に伴う需要増大や月経による出血などに加えて、食生活の偏り、ダイエットの流行、過度のトレーニングなどの要因が絡み合っているものと推測されている。
    8. 1994年の学校保健法の改訂により、採血による貧血検診を行う学校が減少したことが、生徒の貧血に対する意識の低下と関係し、貧血の増加という結果として現れているのではないかとも推察されている。
    9. 貧血検診の本来の目的は、異常の発見だけでなく、地域における貧血頻度の減少であり、そのためには地域や家庭と連携した食生活や生活習慣の改善指導など、健康教育の一環として貧血検診を位置づけていく必要がある。
    10. 貧血検診における要再検・要治療者の割合は高く、しかもほとんどの生徒が症状に気づかれることなく学校生活を送っていることから、この検診の重要性や費用対効果は非常に高いものと考えられる。

特別付録へ     ホームページへ