歴史の転換点に立って:2001年7月25日 〜 小泉改革の虚実

※以下の文章は大学の同窓会誌「艮陵」にアンケートの回答として書いたものです。

 2001年(平成13年)の国内外の事件をそれぞれ三つずつあげよとのことですが、私には様々な事件が一連の繋がったものと感じられ、上手く区切って答えることができません。そして、それらが複雑に絡み合いながら、歴史の転換点を曲がった年として記憶されることでしょう。

 ニューヨークとワシントンで起こった多発テロ事件を殆どの方がトップにあげていることとと思います。しかし、その前のブッシュ大統領および小泉首相の誕生から話は繋がっていました。ブッシュ新政権の孤立的・独善的政策、グローバライゼーションに代表される米国中心主義、京都議定書批准拒否に代表される二十世紀型後ろ向き政策、そして中東における強硬政策。国内では森前政権の惨状を元に「偽首相公選制」により誕生した小泉政権(首相自身は森前政権を支え続けた張本人)。市民による市民のための政治とはほど遠い、靖国公式参拝や集団的自衛権見直し論議に代表されるタカ派的体質、首相公選制導入により三権分立をなし崩しにして首相の指導力(という名の権力)を高めようという姿勢、そして「聖域なき構造改革」という錦の御旗の元に、20年前の米英をモデルとする弱肉強食の新自由主義的政策を全面的に押し進めようという時代認識。景気はさらに悪化しデフレ経済に突入しながらも、小泉首相を圧倒的に支持し続ける国民。

 そのような歴史の文脈の中であの事件は起きるべくして起きたのかもしれません。そして、その後の米国による踏み絵政策と報復戦争、タリバン政権崩壊とビンラディン捕獲失敗。炭疽菌事件(真相は未解明)。国内では低レベルの国会議論の末に自衛隊の後方支援が決定し派遣(実質的な参戦=集団的自衛権の行使)。

 医療においても市場経済の導入と自己負担増や医療費削減政策など社会保障の縮小路線が進められようとしていますが、マスコミの大々的な擁護の元で国民の反対の声はかき消され、高支持率を支えに強行突破されるのは確実な情勢になっており、戦後の政治、経済、安全保障、そして社会保障の全てが瞬く間に大きく変貌してしまいました。

 参院選の投票日を間近に控えた2001年7月25日の新聞を読んで転換点に立っていることを痛感し、記事を保存しておきました(このページ)。この時点では、あのような事件が起こることを予感しているものは誰一人いませんでした。

 医療者の端くれとして、テロにせよ聖戦にせよ自由のための戦いにせよ、人を殺すことによって問題を解決しようという考え方に賛成することはできません。

#7月26日の報道から(誰が何と言ったのか覚えておきましょう)

「他の国が戦没者にどういう慰霊をするか、私は文句を言うつもりはない。平和国家として世界の繁栄に尽くすと誓うことが、なんで批判されるのか分からない」「無念の思いで命を落とさなければならなかった方々に、心から敬意と哀悼の誠をささげるのは当たり前と思っている」(小泉純一郎首相)

「アジア諸国に与える影響を理解していないのではないか。過去の問題に謙虚に思いをめぐらす姿勢が小泉首相からは感じられない」(韓国・崔相龍駐日大使)

「日本はやや怖いような気がする。一つの方向を向いたら、風が吹き抜けていく怖さを感じる。日米安保体制は重要だと思うが、日本は今、周辺諸国に対し心配りが足りないのではないか」(自民党・野中広務元幹事長)

「被害を受けた人のことを思わないのなら、いくら小泉さんが『平和』『友好』を叫んでも、むしろ日本はアジア、世界から孤立してしまう。そうなればこの国は沈没する。そんなことに考えが及ばない総理は危険だ」(羽田孜民主党特別代表)

「靖国問題は総理自身が自分の判断で心で決定できること。内閣総理大臣として戦争を肯定するものではないとずっとおっしゃっているが、そうであっても、天皇、皇后両陛下がこられて戦没者慰霊の会が武道館でありますね、あれで必要にして十分ではないかと感じてまして、なぜあえて靖国神社に日本にたった1人しかいない余人をもってかえがたいポストについている方が、行かれるのかなと思う」「新しい国立墓苑をつくるべきだと思う。毎年8月15日の度にこういうことが起こるということが本当に不幸だと思うし、そういうことをもう1回帰ったら総理とお目にかかる機会をつくって頂いて率直に、私がアメリカや中国や韓国の代弁者ということではなく、私自身の思いをしっかり伝えたい。あとは総理がご判断することです。私は行かないでほしいと思いますね。それは一貫してます、初めから」「現職の総理は1人しかおられませんし、時期ややり方の工夫というのは私は小手先のことだと思いますね」(田中真紀子外相)


7月25日 0:17
参院選:「痛み」の風景 「政治家に分かるものか」
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20010725k0000m010158000c.html

 「改革」を最大の争点とする参院選は、「痛み」を問う選挙でもある。くらしの中の「痛み」を見つめた。

 睡眠薬とナイフ、ウイスキーを抱え夜の砂浜にうずくまった。真冬の神奈川県・江の島。でも田島武雄さん(54)は死ねなかった。昨年2月、倒産の2日前だった。

 塀、車庫などの工事を扱う会社を経営していた。バブル崩壊、破たん。1億3000万円の借金が残った。保証人になった長男(26)にも災禍は及んだ。初孫の娘が生まれたばかり。大学4年の二男(23)は学費未納で除籍。1億2000万円の評価額だった自宅は半値以下で処分した。財産も家族のきずなも失った。

 今はがむしゃらに働く。郵便局の徹夜アルバイトで8600円、昼は駐車場の交通整理で時給900円。「痛み、と軽く言うが冗談じゃない。政治家に痛みが分かるものか」

 東京都文京区の加藤庄一さん(50)は勤めていた信用金庫が破たんし、半年前からハローワークに通う。妻と専門学校生の長女(20)と小学6年の二女。信金時代の年収は600万円台。「営業か事務職で月に30万〜35万円あれば……」。求人情報パソコンの検索結果はこの日も「ゼロ」だった。

 金融機関はもういやだ。「統合、合併で先が見えない。事後処理でお客さんに迷惑をかけた」。不良債権の処理も信用していない。「すべて明るみに出せば、経営責任を追及される。するはずがない」。幹部は融資先の会社の関係先に受け皿が用意された。「今ごろはクーラーのきいた所で涼しい顔をしていますよ」

 ポロシャツ姿にデイパックを背に職安に通う。スーツとワイシャツはタンスに眠ったままだ。

 2週間前からハローワークに通う東京都墨田区の沢口健一さん(51)は2年前に7000万円の負債を抱え自己破産。メリーゴーラウンドなどを販売・管理する会社を経営していた。妻(35)と5歳の男の子がいる。「あと15年は働かなくては」。妻はコンビニのパートに出た。家族のことを考えれば、職種は問わない。「宝くじが当たって、もう一度、メリーゴーラウンドを回してみたい」。それが夢だ。

 小泉改革。「子供たちの時代が明るくなるのなら」と思う。ただ、注文がある。「政府や役人がまず痛みを背負うことだ」 (文中仮名)

 【早坂文宏】=つづく

 総務省によると、昨年の完全失業率(季節調整値)は、最悪となった99年と同じ4・7%。完全失業者数は年平均320万人(前年比3万人増)で過去最多。今年5月の完全失業率は4・9%、完全失業者数は348万人と雇用環境は悪化している。内閣府は主要銀行の不良債権を処理した場合、39万〜60万人が離職し、13万〜19万人の失業者が発生と試算した。だが、民間シンクタンクなどは110万〜150万人が失業とはじく。

 バブル崩壊後、中高年の自殺者も増え、特に50歳代は倍増した。

[毎日新聞7月25日] ( 2001-07-25-00:18 )


7月25日 0:15
参院選:小泉現象を考える 政治に「熱狂」似合わぬ
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20010725k0000m010157000c.html

 民主政治は能率の悪い仕組みだ。

 ものごとが決まるにも実行に移されるにも時間がかかる。

 世間の役に立っていない特殊法人が一つあるとする。その「無用」さについては異論はほとんどない。さっさとつぶせばいい。税金のムダ遣いがその分ただちに減る。だが、民主政治では、そう簡単にはいかない。

 まず、議論が必要だ。いろんな意見が出る。こんな主張もあるだろう。

 「無用だと言っても、そこで働いている人や家族がいる。いきなりつぶしてしまうのは民主政治の理念に反する」

 とにかく合意が成立しなくてはならない。それから、「やっこらさ」ということになる。

 プラトンは哲人王が統治する「理想国家」を描いた。正義を実現する哲人王は「まちがったこと」をしない。議論や合意のプロセスはいらない。能率的な善政が行われる。

 しかし、そんな万能の哲人王がいるはずはない。古代ギリシアにおいてしかり。いわんや現代においておや。哲人王ならぬ人間が政治の全権を握った場合、しばしば「まちがったこと」をしてしまう。社会は取り返しのつかない事態に陥る。

 こうした経験が、私たちに民主政治を選ばせた。できる限り多くの成員が参加し、社会を運営する仕組みを決める。「能率」ではなく、「過ちの可能性」をより少なくする道を採ったのだ。

 選挙はその社会で民主政治が機能しているかどうかを実証する行事(お祭り?)である。

 今回の参院選では、この国に絶えてなかった風景が見られる。小泉純一郎首相の街頭演説にはどこも1万人を超す人々が集まる。首相の支持率は相変わらずの高率である。「熱狂」が炎暑の列島を覆っているらしい。何への「熱狂」か。むろん、小泉首相その人への、である。

 「熱狂」の理由は何なのか。すでに多くの分析がある。人々は小泉首相の言葉とパフォーマンスに政治的な閉塞感からの解放を感じ取っている。

 成員の参加と関与を基礎にする民主政治が「熱狂」を排除する理由はない(選挙がお祭りなら、「熱狂」はよく似合う)。だが、「過ちの可能性」をより少なくする非能率な仕組みである民主政治にとっては、どうか。

 私たちが投じる一票の集積が何かを変えるかもしれない。あるいは変化の方向ははっきりするかもしれない。だが、いずれにしろ、私たちが営む政治の仕組みはひどく能率が悪いことを忘れてはならない。その非能率さに直面したときの「熱狂」のゆくえが気になる。

 一時の「熱狂」は民主政治には似合わない。参加と関与への持続する意思だけが私たちの国の政治をあるべき方向に変えていくだろう。静かに、ゆっくりと。 【奥武則】

[毎日新聞7月25日] ( 2001-07-25-00:15 )


7月24日 22:18
参院選:各党有力政治家遊説録
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20010725k0000m010131000c.html

 加藤紘一自民党元幹事長「後世の歴史家は今年のサミットを『サミットの終わりの始まり』と言うだろう。世界同時不況と言われかねないような現状なのに、具体策は何もない。だから、日本で株価が下がり、バブル期以降最低になった。アメリカでも株が下がった」(鹿児島県鹿屋市で)

 山崎拓自民党幹事長「(小泉純一郎)総理が『ジェノバサミットで、聖域なき構造改革を断行する、構造改革なくして景気改革なしということを自分は言ってきた。G8で発言したので、これは国際公約だ。必ず実行すべきものと考える。ぜひよろしく頼む』と(皆さんに伝えてくれと)いうことでした」(広島市で)

 福田康夫官房長官「決して楽な選挙じゃない。自民党は今日の新聞を見ると何か調子がいいように書いてあるけど、これが一番危ない。みんな油断しちゃう。3年前の参院選ではまさにそういうことで負けた。前評判は非常に良かった。ところが途中から空気が変わった。今度の選挙でそんな空気にならないように神様にお願いしたいような気持ちだ」(埼玉県松伏町で)

 亀井静香・自民党前政調会長「米国経済が減速を始めたため、(政府・与党で4月に)緊急経済対策を作った。それを4月、5月に実施しなきゃならなかった。ある面ではトゥー・レイト(手遅れ)だ。通常国会中にやるべきだった。秋にやろうとしても結果が出るのは来年。年内は打つ手なしだ。(このままだと景気は)ズドーンと底まで落ちる」(富山市での講演で)

 菅直人民主党幹事長「今の状況では、自民党が(参院)選挙で勝って日本は沈没する。小泉政権は場合によっては2、3年続くかと思っていたが、間違いなく1年持たない。なぜ持たないのか。小泉純一郎首相は何もわかっていない。改革という言葉はわかっているが、そのやり方はわかっていない。この選挙が終わった途端から、あらゆる危機が噴き出して、それを調整することは不可能になる」(埼玉県蕨市で)

[毎日新聞7月24日] ( 2001-07-24-22:18 )


7月24日 22:09
総合規制改革会議:医療、福祉などの「聖域」に踏み込む
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20010725k0000m010127000c.html

 5月に発足した総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)が24日発表した中間報告は「聖域なき構造改革」を掲げる小泉内閣の人気に乗って、森内閣以前の同種の組織が積み残してきた課題を総ざらいした。医療、福祉などの「聖域」にまで踏み込んだことから、省庁や業界団体の反発も激しく、内容面で一部後退も余儀なくされた。参院選後には自民党内からも異論が噴き出すのも必至だ。特殊法人改革と合わせて、今後の行方は小泉改革を問う試金石となる。 【鈴木直、犬飼直幸、末次省三】

 「医療と医療制度の本質的理念を変革する内容だ。かなりの驚きの念で受け止めている」

 日本医師会の糸氏英吉副会長は今月17日、東京都内で記者会見し、総合規制改革会議の姿勢を強く批判した。宮内議長から中間報告の素案について説明を受けた直後のことだ。「タブー」とされてきた事柄に踏み込もうとしていることへの警戒感の表れだった。

 医療分野は、需要が価格で左右されないなどの「特殊性」から、規制改革の対象となることは少なかった。しかし、同会議は「これまでの施策では、少子高齢化の進展、医療技術の高度化・先進化、患者のニーズの多様化などに対応できない」と指摘、既得権益の打破と競争原理の導入に力点を置いた。

 第一は診療報酬体系の見直しで、(1)コスト意識を働かせるために定額払い方式の拡大(2)患者1人の1日分の薬価が205円以下の場合、薬剤名、投与量などを省略して薬剤費の請求ができる「205円ルール」の廃止(3)公的保険による診療と公的保険によらない診療との併用に対する規制緩和――などを挙げた。

 現行の診療報酬体系には、連合などが「ムダで不合理な慣行を含んでいる」と批判的だ。205円ルールは最近その不透明性がクローズアップされている。

 また、(1)医療機関の広告の規制緩和(2)レセプト(診療報酬明細書)審査の各健康保険組合への開放(3)株式会社の参入を含めた医療経営の規制見直し――などは、医療を一般のサービス産業と同じように規定し直し、患者サービスの質の向上を目指して盛り込まれた。

 しかし、医療という専門性の高い分野の変革を迫る分、課題も多い。厚生労働省が「マクロ経済の視点では医療は語れない」と反論したり、205円ルールの事実誤認を指摘する場面もあった。素案段階の項目はすべて中間報告に残ったが、目標年次が削除されたり、表現が「後退」した部分も多い。

 医療保険制度の来年度からの抜本改革に向けた論議が秋から本格化する。改革は本来、昨年4月から実施予定だったが、日本医師会、健康保険組合連合会などの利害の調整がつかず、2年間先送りされた経緯がある。専門家の議論が進まない現状の中、同会議の提言が「カンフル剤」となる可能性はある。今後、担当省庁や医師会などの「プロ集団」との折衝の中で、どれだけ「理想」を貫けるかが注目されている。

 地方自治体の社会福祉法人への補助を見直し、「公設民営方式」を含む民間企業の活用を図ることを盛り込んだ。福祉に市場原理を導入してサービスを向上させるとともに、受給者の選択肢拡大を目指している。

 特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人は施設整備や運営の大半を都道府県の補助金に頼る。サービスの供給を増やすには補助金の増加が前提となる。しかし、自治体財政がひっ迫し、補助金の増加は望めない。そこで「介護報酬など施設の収入によって成り立つ法人のあり方を検討すべきだ」と結論付けた。

 当初は設置基準について「市町村の実態に応じて、緩和、多様化を進める」という内容を、改革案に盛り込む方針だったが、厚生労働省が「設置基準はサービスを一定水準以上に保つために必要」と反対し、最終案から削除された。

 商品の価格にあらかじめ預かり金を上乗せして販売し、回収時に消費者に払い戻すデポジット制の導入に向けて、02年度中に検討結果を取りまとめることを求めた。また、現在の一般廃棄物と産業廃棄物との区分見直しも提言している。

 デポジット制は、ドイツでは飲料の容器で義務付けられているが、日本では一部地域に限られている。回収のためのコストがかかることから、業界から強い反発も出ている。また一般・産業廃棄物の区分見直しは、一般廃棄物として市町村が処理しているオフィス系の紙くずや、建築業の木材くずを産業廃棄物に含め、排出者の責任を拡大することを目指した。

 民法602条の短期賃貸借権の廃止方針を打ち出した。短期賃借権は賃借人の保護などが目的で、賃借後、土地で5年、建物で3年以内は抵当権者の明け渡し請求に対抗できる。バブル経済の崩壊後、暴力団が悪用して競売を妨害するケースが問題化したため、同会議では「弱者保護より、悪用の弊害が大きい」との意見が大勢を占めた。法務省も前向きで、賃借人の保護のあり方を含め、同省の法制審議会の部会が見直しを協議している。

 老朽化の深刻化が予想されるマンションの建て替え要件については区分所有法の簡素化を打ち出した。全国の築30年超のマンションは現在約12万戸。10年には約93万戸になることが予想されており、将来を見越して規制の緩和を求めた。法務省は見直しに前向きで、簡素化案のほか、簡素化せずに諸要件の基準を明確化することなどを含めて、法制審議会で協議している。

 総合規制改革会議の宮内義彦議長の話 厚い壁と思われたテーマも多く取り上げることができた。小泉内閣の強い力が追い風になった。参院選後には(省庁の)抵抗があるかもしれないが、今の内閣は全面的にバックアップしてくれるだろう。(中間取りまとめ後の記者会見で)

 総合規制改革会議は森内閣時代の4月に設置された。3月で期限が切れた前身の規制改革推進委員会の後を受け、内閣府設置法に基づく首相の諮問機関。審議は、小泉内閣が発足した直後の5月から始まり、「民間にできることは民間に任せる」を基本方針に、各省庁と交渉を進めてきた。

[毎日新聞7月24日] ( 2001-07-24-22:09 )


7月24日 21:33
小泉首相:靖国神社参拝重ねて表明 株価対策には否定的
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20010725k0000m010118000c.html

 小泉純一郎首相は24日、毎日新聞などとのインタビューに応じ、靖国神社参拝について「総理大臣である小泉純一郎として8月15日に参拝する」と重ねて表明し、「二度と戦争を起こしてはならないという意を込めて、哀悼の誠を示す。日本国民として、日本国総理として当然のことだと思う」と語った。中国、韓国両国との関係修復については「参拝後に状況を見て、大局的見地に立って考える。靖国問題以外に幅広い分野で協力できる面がある」と述べるにとどまった。

 株安を受け、与党3党で緊急対策が検討されていることに関しては「改革なくして成長なし。改革をしないから経済もよくならず、株価も上がらない。株価対策に小手先は通用しない。目先のことだけ考えて経済再生はしないと思う」と述べ、公的資金による買い支えなど従来型の株価対策には否定的な考えを示した。

 小泉純一郎首相は24日の毎日新聞などとのインタビューで、参院選後の内閣改造について「閣僚本人が辞めたいと言うなら別だ」と述べ、小幅の改造もあり得るとの考えを示した。首相は公明、保守両党とは参院選後に閣僚人事に関し協議するものの、自民党の閣僚は「基本的に代えない」との方針を示していた。この日の発言は、基本方針は貫くものの、自民党の参院側が閣僚の交代を求めた場合には応じる姿勢を明らかにしたものだ。

[毎日新聞7月24日] ( 2001-07-24-21:34 )


7月24日 20:33
参院選:株安に気をもむ自民党 反撃に出る野党
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20010725k0000m010085000c.html

 週明けからの株安に、参院選で優勢が伝えられる自民党が気をもみ始めている。一方、小泉人気にかすみがちだった野党側にとっては数少ない反撃材料。「小泉首相の言う構造改革に中身がないことが、市場や世界の失望を買っている」(小沢一郎・自由党党首)と批判を強めた。

 自民党の山崎拓幹事長は24日の与党幹事長会談で、選挙後、速やかに金融政策や税制改正などに取り組むことを申し合わせた。公明党の神崎武法代表が補正予算編成に言及するなど、公明、保守両党にも不安が強まっており、25日には与党政策責任者会議を開き景気対策を協議する方針だ。

 ただ、小泉純一郎首相は「株価に一喜一憂しない。改革が景気回復につながる」との姿勢を崩しておらず、「今、具体策を出すと政府与党間に不協和音が出る」(橋本派幹部)という声もある。

 前回参院選で、当時の橋本龍太郎首相が恒久減税を実施するのかしないのか揺れ動いたことが大敗につながったとの見方は強い。このため、今回は株安に手をこまねいていないことをアピールはするものの、具体策はとらない“苦肉の策”で、乗り切る構えだ。

 これに対し、民主党は「小泉人気に浮かれていたら、取り返しのつかないことになる」とアピールする戦略。菅直人幹事長は24日の街頭演説で「どういう構造改革をやっていくのか。手術が必要だというのは分かったが、どういう手術をするかが分からない」と批判した。

 共産党は景気を最大争点に据える方針を決め、不破哲三議長は「小泉改革をやったら、大変な失業と倒産が出る」と“痛み”を強調。社民党の土井たか子党首も記者会見で「大量失業、倒産ラッシュは明らか。経済無策に陥っている」と足並みをそろえた。 【前田浩智、中村篤志】

[毎日新聞7月24日] ( 2001-07-24-20:32 )


7月24日 20:33
参院選:争点にならない老人医療費の伸び率抑制
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20010725k0000m010084000c.html

 経済財政諮問会議が基本方針で打ち出した「老人医療費の伸び率抑制」は、来年度の医療保険制度改革の中心テーマとなるが、参院選では各党の争点にほんどなっていないのが現状だ。この問題も、小泉純一郎首相の言う「痛みを伴う改革」の1つのはずだが、有権者に判断材料が与えられないまま選挙は終盤戦を迎えている。【末次省三】

 83年度に始まった「老人保健制度」に基づく老人医療費は、原則70歳以上が対象で、患者の一部負担分を除き、7割を各医療保険からの拠出金、3割を公費でまかなっている。過去10年間、平均8%前後ずつの伸び率を記録しており、99年度は約11兆円(国民医療費の36%)に達した。

 厚生労働省の試算では、15年度には27兆円(同48%)、25年度には45兆円(同56%)になる。現行制度のままだと、拠出金の負担により、各医療保険が破たんするのは確実。制度改革では、いかに持続可能な制度設計をするかが問われている。医師の診療報酬を下げたり、高齢者の受診件数そのものを何らかの形で減らす――などを念頭に、伸び率抑制論が浮上してきたのは、このためだ。

 5月から6月にかけ、全国4都市で、日本医師会、健康保険組合連合会、連合などが参加して「医療改革フォーラム」が開催された。6月28日に横浜市で開かれた最終回の討論で、厚労省の渡辺芳樹保険局総務課長は「経済財政諮問会議の基本方針では、老人医療費について『経済動向と大きくかい離しないよう目標となる伸び率を設定する』としている。わざわざ『大きく』と入れて、今の経済低成長の中では無理だとはっきり言っている」と解釈してみせ、「基本方針がすべてではない」とまで言い切った。

 厚労省は秋に制度改革のたたき台をまとめるが、もともと老人医療費抑制には消極的な立場。この発言は「たたき台作成は、基本方針にとらわれない」との宣言と受け止められた。

 厚労省の強気=政府内の不協和音=の背景には、与党内でも「みんなが結論先送りが得策と思っている」(自民党政調幹部)という空気がある。自民党厚労部会は基本方針の閣議決定をはさんで会合を重ねたが、老人医療費の伸び率抑制に対しては反発が続出。公明党の神崎武法代表は「どちらかと言えばノー」と表明している。さりとて、小泉改革を真っ向から否定するわけにもいかない事情もあり、結局、争点となるのを避けているように見える。

 一方、野党側は、共産、社民の両党がほほ反対の姿勢。民主党は、鳩山由紀夫代表が「医療費伸び率抑制はあり得る形」と述べる一方で、「賛成というところまで党としては(結論を)出していない」とも語り、やはり「痛み」につながる発言には気をつかっているようだ。

[毎日新聞7月24日] ( 2001-07-24-20:32 )


7月24日 19:50
規制改革:中間報告決定 医療、福祉に市場原理を導入
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20010725k0000m010057000c.html

 政府の総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は24日、第6回会議を開き、規制改革の方針をまとめた中間報告を決定した。医療機関やケアハウス経営への株式会社参入のほか、マンション建て替えを円滑にするため関係法の要件緩和などを求めた。医療、福祉など公共性が高い分野にも市場原理を導入し、新規産業や雇用の創出を促すのが狙い。同会議は各省庁と調整を進めたうえで、年末に最終報告をまとめる。 

 中間報告は、医療、福祉など社会的分野が経済分野に比べて規制改革が遅れ、「官業構造」が温存されてきたと指摘。改革を進めることで、社会的分野の「システム全体の変革」を図り、「国民生活の質の向上」につなげるとの基本方針を示した。

 対象は医療、福祉・保育等、人材(労働)、教育、環境、都市再生の6分野。各項目ごとに目標年次を設け、実効性を上げるよう求めた。ただ、関係省庁の合意を取り付けられなかった項目もあり、今後調整に手間取ることも予想される。

 医療分野では、診療報酬の定額払い制導入を段階的に実施するよう求めたほか、特殊法人の社会保険診療報酬支払基金などが独占しているレセプト審査の民間開放は01年度に検討し結論を出すよう要請した。

 福祉・保育等では、慈善・博愛事業を行う民間への公金支出を禁じている憲法89条に言及。「福祉=慈善・博愛」という固定的なとらえ方を修正し、民間経営の介護施設や保育所と、社会福祉法人が経営する公的施設との助成の格差を解消すべきだと指摘した。

 また、都市再生では、マンション建て替えを円滑にするための要件を緩和。現在、区分所有法で(1)所有者の5分の4以上の賛成(2)建て替え費用が補修費用よりも安い――となっている要件を、「5分の4の賛成」だけに簡素化する法改正案を03年度までに国会提出するよう求めた。

[毎日新聞7月24日] ( 2001-07-24-19:51 )

特別付録 くば小児科ホームページ